【何でもござれ】紅葉狩りへ行こう!
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■ショートシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:5
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:09月18日〜09月25日
リプレイ公開日:2007年09月25日
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●オープニング
●一段落‥‥?
先日、伊勢国司邸宅へ密かに潜り込んだ殴られ屋の京香とエドワード・ジルスの二人は今、京都に戻ってきては冒険者ギルドにて何事か話し込んでいた。
「‥‥良いの?」
「良いよ良いよ。暫くは大人しくしているつもりだから、その間はエドもゆっくり休みな」
京香が紡いだ唐突な提案を前、首を傾げる彼だったがその様子は一行に気にせず、彼女は首を何度も縦に振ると
「‥‥でも、何をすれば良いか‥‥」
「参ったね、それは」
戸惑いを覚える彼に京香は苦笑を浮かべる‥‥それもその筈、彼女はエドへ少しだけ暇を与えると言ったのだから。
幼いながらも冒険者になった『あの日』から、冒険者として日々を費やし過ごして来た彼にしてみれば少しの暇でも、一人ではその際の過ごし方が分からないのも当然と言えば当然だろう。
「なら‥‥紅葉狩りなんかどうだい? ちょっと早いだろうけどね」
「紅葉‥‥狩り?」
「これから紅葉の季節になる訳だけどそれを見物する、一種の行楽さ。お弁当とか持ってね」
その、詳しい彼の事情こそ知らないものの京香は何となく察して思案する事暫し‥‥やがて一つの案を紡げば、またしても静かに首を傾げる魔術師へ珍しく丁寧に解説する殴られ屋。
「‥‥紅葉狩りをするにしても何処へ行けば良いか分からない、って顔だね」
「うん‥‥」
「‥‥しょうがない、取って置きの場所を教えてあげるよ。しかも温泉付き」
だったが、未だ困惑をその顔に浮かべるエドを前にすれば素直に頷く彼の前、彼女も困惑を覚えるが止むを得ず、自身が密かに知る場を教えるとそれを聞いた後に彼。
「でも、どうして‥‥?」
「‥‥あんたみたいな子がきな臭い事ばかりに首を突っ込んでばかりじゃいけない、ってお姉さんからの助言だよ」
京香が珍しくも親切にしてくれた事‥‥からではないのだが、率直に覚えた疑問をそのまま口にすると彼女、嘆息を漏らした後にしたり真面目な顔でその本心を告げれば再び口を開こうとした彼を今度は阻んで、エドの肩を叩けば微笑むと
「まぁそう言う事だから紅葉狩り、行ってきな。最初にも行った通り、まだ確かな紅葉は見られないだろうけど気の知れた友達とかに声を掛けてさ。根詰め過ぎも良くないから冒険者でもたまには休ないとね」
「‥‥うん」
最後にそれだけ言えば、漸く本心から頷いたエドが踵を返すと
「それじゃ、私は先に戻っているけどエドは好きなタイミングで伊勢に帰ってきな。今、色々と慌しいみたいだから少し‥‥間を置いた方がいいかもねー!」
彼が見えなくなるまで見送った後、彼女は嘆息を漏らせば自身も歩き出しては単身で伊勢へと再び戻るべく歩き出すのだった。
「やれやれ‥‥っと、それじゃああたしも動こうかしらねぇ」
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依頼目的:一足早いが季節を先取り、紅葉狩りでのんびりと。
必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)、若しくは相応の金銭は必要なので確実に準備しておく事。
それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
(やるべき事に対し、どの様にしてそれを手配等するかプレイングに記述の事)
対応NPC:エドワード・ジルス他(他NPCを誘う場合はプレイングに明記の事、但し希望に添えかねる場合があります)
日数内訳:目的地まで五日(往復)、依頼実働期間は二日(一泊二日)。
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●リプレイ本文
●紅葉狩りへ行こう!
普段は様々な戦いに身を置く冒険者達が一行は今、京都よりそれなりに離れており適度な高さを誇る、紅葉が美しいと言われている山を目指して真直ぐに伸びる道を歩いていた。
「残暑が未だ厳しいが、既に色鮮やかな衣を纏う自然の季節‥‥秋がもうすぐそこまで来ておるのでござるんば」
「あぁ、この季節のみ見られる一時の姿。紅葉の舞う姿は何時見ても飽きないな」
その道すがら、遠目ながらも所々の山々に見える紅を見て天城月夜(ea0321)は自身の髪を撫でては顔を綻ばして口を開くと、和久寺圭介(eb1793)がそれに応じ頷けば
「とは言えやはり、まだ少々早い様ですね」
「まぁそこは、気分の問題で何とでも」
「そうですね」
兄が伊勢で精神的痛手を被り伏せているにも拘らず、彼に呼ばれその傍らを歩くアリア・レスクードがまだ緑の比率多い山を見つめ言うも尚、笑顔を湛えては圭介が彼女を宥めると今回の依頼人と変わらない年頃のメリア・イシュタル(ec2738)も笑んで頷けば歩き続ける一行。
「しかし、ゆっくり出来るのは久し振り‥‥の筈ですが、伊勢がこれまでに無く慌しい時に紅葉狩りと言うのは少し、落ち着きませんね」
「そうだな、だが‥‥こう言う時間は大切にせねばとも思う。自分達が何を守っているか知る為にも」
「その通りでござるな」
その中において、声音を強張らせてルーティ・フィルファニア(ea0340)が言葉紡げば今、伊勢が置かれている状況こそ案じるも‥‥だからこそ、五節御神楽が同僚であるルクス・シュラウヴェル(ea5001)が彼女を宥めると、先を歩く月夜も振り返ってはそれに続けばやがて一度だけ頷くルーティ。
「昨今では外国の方も多くジャパンに来られ、時々鷹狩り等の一種と勘違いされる方も。紅葉も同じ名前にございます故、何度か間違われて危ない目に‥‥ですからエド殿は、くれぐれもお気を付け下さいませね」
「‥‥うん」
その、道中にて様々に紡がれる話の中において依頼人であるエドワード・ジルスは見た目麗しい志士が火乃瀬紅葉(ea8917)と話を交わしており、彼の忠言を受けてエドは素直に‥‥だが、素っ気無く頷くと
「‥‥年下も良いかも知れませんね」
「えー!」
「どうか、されましたか?」
「あ‥‥うん。な、何でもないよ〜」
その光景を傍らにて見止めた一条院壬紗姫(eb2018)が果たしてボソリ、呟けば‥‥エドとは旧知の仲であるミリート・アーティア(ea6226)は唐突に叫ぶも、その反応を前に壬紗姫は艶やかな髪をたなびかせ振り返っては尋ねると途端、先までの勢いを失ってミリートは答えに窮し、しかしすぐに首を左右に振るが
「‥‥あ、あれれ? 何か、変かも‥‥むぅ」
やはり、唐突に疼いた胸の違和感に気付けば狼狽こそするも皆はそれに気付く事無く、目指すべき山へ早く至るべく歩を進めるのだった。
●綻ぶ紅 〜紅葉狩り〜
やがて、辿り着いた山は確かにまだ紅葉と言うには早かったが‥‥それでも確かに勧められた通り、その山は他の山に比べれば大分秋の色に染まっていた。
「確かに此処も紅葉狩りにはいささか早い様ですが、たまにはこう言うのも良い物にございまするね。それに秋の味覚も見付かればまた、格別にございまする」
「ふむ‥‥松茸等探してみるのも面白いかも知れぬの」
その山を登り、やがて開けて場所に辿り着くと一先ず一行はそこに座すれば紅葉狩りの準備に勤しみながら、頭上で燃える紅を見上げながら同じ名を持つ志士が頬を緩ませ言うと、それを聞いて月夜が辺りに視線を配する中‥‥一つ、溜息が響く。
「‥‥贅沢を言うなら、素敵な殿方と二人で歩けたなら良かったのでしょうが」
その溜息の主が壬紗姫、ルクスらと共に携えて来た料理やら甘味やらを並べながら一点を見つめていれば、そちらを見て一行は納得する。
「小次郎がいないと張り合いがないが、邪魔されないのは良いものだ」
「‥‥そ、そうですね」
「久し振りだからとて、そう緊張する事はないよ?」
その視線の先にてマイペースに、義妹より貰ってきた料理を早くも摘まんではアリアと近距離にて向き合い、語らっている圭介を見たのだから。
「‥‥あぁ、今は菊花が傍に居てくれましたね。ごめんなさい」
「いずれ、良縁と巡り合う日が来るでござろう」
「そうですよ、だから余りめげないで下さい」
が直後、壬紗姫は己の傍らにて養う愛犬が鼻を鳴らすと苦笑を湛えながらその鼻面を撫でたが‥‥それでも堪え切れずに再び溜息をつくとその彼女の肩を叩き、月夜が慰めればルーティもまた視線を合わせ頷けば苦笑を彼女も漸く頷き応じると漸く圭介とアリアから視線を外し、ある事に気付く。
「そう言えば、エド殿はどちらへ?」
それは可愛い物好きの彼女が密かに気を留めていたエドの存在で、自制こそしていたが彼に慰めて貰おうと思ったのだが、生憎と姿がない。
「‥‥もうそろそろ準備も終わりそうですし一寸、辺りの様子を見て来ましょうか?」
その事にルーティも気付けば、何事か思い至ると月夜と視線を交わしては提案するのだった。
●
そのエド君、ミリートに連れられては辺りに映える紅に誘われて散策へと赴いていた。
「あはっ、自然の中って気持ち良いね。こう言う所も好きだよ♪」
「‥‥うん、でも‥‥」
満面の笑みを湛えては紅に染まる風景の中、両手を広げては辺りを見回し言うと頷くエドではあったが、相変わらずに浮かない表情と言い淀む口調に彼女。
「まだまだお互い子供だよ? 楽しむ時に楽しまないと勿体無いって♪ それとも‥‥私と一緒じゃ面白くないかな?」
「‥‥う、ううん」
ずいと顔を彼へ近付け宥める様に言葉を掛ければ僅かな間を置いて珍しく、言葉に詰まりながら応じるエドの普段とは違う、僅かに紅潮するその表情を見て思わず固まるミリートは漸く今の状況に気付くと否応なく高鳴る鼓動の中、更にエドとの距離を互いに触れるまで縮め‥‥。
「羨ましい限りでござるのぅ‥‥」
「本当に‥‥」
「なっ、ななななな‥‥何ー!」
「いえいえ、何でもありませんよ‥‥ねぇ?」
「あぁ、そうじゃのぅ」
ようとしてしかし、唐突に声が場に響けば正しく飛び上がって彼女が辺りを忙しなく見回せば木陰から顔だけを出す月夜とルーティがヒソヒソクスクスと言葉を交わす様にミリート、肩をいからせるが
「皆さん、準備が出来ましたよ〜」
彼女らへ何か言うよりも早く、メリアの声が辺りに響き渡れば‥‥その声に応じて逃げる様に駆け出したエドを見てミリートは次に肩を落とすのだった。
●
そしてそれより、始まる酒宴には遅れてアシュド・フォレクシーも駆けつけると皆は様々に紅葉の赤を眺めては秋の訪れを楽しむ。
「アシュド殿。私達がついていながら‥‥済まなかった」
「気にするな」
その中に置いて響いた詫びはルクスが紡いだもので‥‥先日、天岩戸での決戦にて起きた悲劇の事に頭を垂れれば、しかし悲劇の中心となった人物と縁の深いアシュドは別段何時もと変わらない表情と口調にて言葉を返すも
「‥‥ルルイエ殿は強い人だ、だから必ずまた会えると私は信じている。そしてそれは無論、天照様もだ」
むしろ、その反応に居た堪れなくなったルクスだったが‥‥それでも、己が意を決するべくして再び口を開き静かに、だが力強く言霊を響かせれば
「だからその日が来るまで、力を‥‥貸して貰えるか?」
「あぁ、言われるまでもない」
「今回は、大丈夫みたいですね」
「五月蝿い‥‥」
彼の今の意も聞くべく、恐る恐る声を掛けると‥‥ルクスが抱いていた不安とは裏腹にアシュドはやはり、先までと調子を変えずに応じると何時の間にやら二人の近くにいたルーティが彼を見やり口元に手を当て、ほくそ笑めば長い付き合いの彼女を前にアシュドはただ、呻くのが精一杯で手近にあった団子を一口で頬張れば咽ると彼は取り急ぎ近くにあった杯を呷れば安堵すると
「一体、何の話を?」
「あぁ‥‥伊勢の話を少し、な」
「そうでしたか、最近は何処も物騒でございますからね‥‥」
ルクスの元へ今しがた姿勢良く歩み寄って来たばかりの紅葉がそのやり取りを何事か尋ねると、彼の後輩と縁のある神聖騎士は未だ固い表情のまま答えればジャパン各国の置かれている現状を自身、知る限り思い出して彼は嘆息を漏らすが
「不穏な情勢下だからこそ楽しむべき時は楽しみ、休むべき時は休み、心身ともに癒すべし‥‥戦が始まればそんな暇もなくなるのですから、ね。なのでお二人も、どうぞ」
だからこそと壬紗姫が笑顔で二人へ告げれば手にする杯を呷り、益々頬を朱に染めて彼女は酒を勧めれば唐突に吹いた風に靡く髪をそのままに、夕暮れの陽光の中で尚も映える紅を見つめた。
●湯気の向こう 〜悲喜交々〜
やがて紅葉狩りも終われば一行はやはり、エドの案内で近くにあると言う秘湯に足を伸ばすと晴れ渡る星空の下、心地良い湯に浸かっては酒を酌み交わしていた。
「‥‥温泉で冷酒を頂く‥‥ふふ、最高の贅沢ですね」
「全くでござるな」
かたやの女湯、そのはっきりした月影を臨んでは湯船に浮かべる盆の上に乗る日本酒を杯に注いでは呷り壬紗姫が顔を綻ばせ言えば、応じる月夜ではあったが
「浚われたルルイエ殿、何処ぞへ姿を消した天照様、狙われた斎宮。果たして天岩戸に何が眠るのか‥‥いやいや、頭を切り替えなくては」
「そうだな、ルクス殿は少し難しく物事を考え過ぎでござる」
その傍らでルクスは綺麗な夜空を見上げたままに眉根を顰めボソリ、伊勢が抱えている問題を連ね上げ‥‥そして今、自身が置かれている場の事を思い出すと渋面を湛えたままに湯の中へ頭を沈めれば、その光景を見て月夜が苦笑を浮かべるが
「さぁ〜、ルーティ殿にミリート殿‥‥月夜式整体術、第一段でござる♪」
「ちょ、月夜さん‥‥ん、そこはー!」
「やきゃー!」
それを機に、傍らにいたルーティやミリートを抱き寄せるなり指を怪しく蠢かせれば‥‥月夜の哄笑と他二人の絶叫にも似た、笑い声が辺りに響いた。
「‥‥えーと、何をしているのでしょうか?」
冒険者とは言え、まだ年端も行かないメリアの眼前で。
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「やれやれ、女性ばかりだからしょうがないとは言え‥‥一寸勘弁して貰いたいかな?」
その騒ぎは無論、隣接する男湯までに響くものでそれを聞き止めた圭介は果たして肩を竦めるが、僅かとは言え気になるのは男としての性であるがそんな折、場に足音が響けば彼とエドははてと首を傾げる‥‥それもその筈、今回の面子の中で確か男性は。
「どうしたでございまするか?」
「あ、いや‥‥」
そしてやがて、湯気に煙る中に足音の主が姿を現せば固まる圭介にエドはそこにいる紅葉の姿に固まるも、その二人の様子を前に彼は首を傾げれば圭介は言葉を詰まらせながら今更な事を口にすると
「男だったか、紅葉は」
「今まで、気付きませんでしたか」
「‥‥うん」
それを受けて紅葉は僅かに肩を落とし、苦笑を湛えては尋ねると素直に頷くエドに苦笑を浮かべ溜息こそ漏らすが
「まぁ、こちらはこちらでのんびり静かに温泉を楽しみましょう」
腰回りのみ隠す艶っぽい肢体をやがて湯の中に沈めると彼はヒラリ、眼前に舞い落ちる一枚の紅の葉の影で微笑み、頬を緩めるのだった。
●去り際 〜願い、誓い、決意〜
そして温泉より上がればそれから夜通し飲み明かす一行ではあったが、流石に朝を向かえ秘湯の近くにあった宿場を出れば凛として朝日を見上げ、迫る別れをそれぞれに惜しんでいた。
「それではな、また会う時は何処か知れずとも」
「アシュド殿も、余り無理をし過ぎぬ様にな」
その中で皆より呼ばれたアシュドが誰へともなく皆を見回しては声を掛けると、決然とした面持ちを湛える彼を見てルクスも内心、安堵して応じると握手を交わすと
「それでは皆さん、気を付けて帰って下さいね」
「アリアもね。また暫く逢えないかも知れないが」
アリアもまた皆を見回しては笑顔で告げると誰よりも早く圭介が一歩、彼女の前へ躍り出てやはり顔を綻ばせ言うが‥‥それは言葉途中で止まり、キスへと変わると
「また、愉しみにしているよ‥‥そうだ、今度は混浴が良いかもね」
流石に皆の前、すぐに身を離して圭介は尚も笑顔で先の続きを紡ぐが直後に頬を辺りの紅葉より朱に染めるアリアが彼の腹部を思い切り小突けば、呻く彼に次いで場が沸くと
「‥‥と言う様に、あれを参考にしてミリート殿も」
「いやいやいやっ、しないよっ?!」
「何もそんなに今更、照れなくたって」
「‥‥むぅ」
その光景を見る一人が月夜、果たして指を指してミリートを促せば否定する彼女ではあったが、ルーティも便乗すると相変わらず静かに佇んではメリアと何事か話しているエドをチラリと見、ミリートは漸く意を決すると彼へ歩み寄れば
「あ、のね、エド君‥‥私の事、名前で‥‥呼んで欲しいかな。今まで呼ばれた事、無いし」
「‥‥‥ミリート」
何時もは明朗快活な彼女が言葉を詰まらせ、肩を縮こまらせては懸命になって言葉を紡ぎエドへ呼び掛けると‥‥暫しの間の後、どこか照れ臭げに響いた彼の答えを聞けば駆られる衝動に従ってエドに強く抱き着くミリート。
「‥‥兄上達と会ったせいでしょうか。こんなにも人恋しくなってしまうなんて‥‥私らしくありませんね」
「良いのではないか、人は決して独りだけでは生きて行けぬのだから」
「‥‥そうでございますね」
そんな突然の出来事に幼き魔術師がうろたえる中、その和やかな光景を見つめては四葉のクローバーを片手で弄りながら壬紗姫が感慨深げな面持ちにて言葉紡げば、しかしそれを聞いても尚ルクスが彼女を宥めると紅葉も頷けば、艶やかな黒髪を舞わせては壬紗姫も微笑み応じるとそれぞれが抱く想いに耽ると
「護り手たる私達が果たして、どれだけを守り抜く事が出来るのか‥‥出来る事なら来年は今、此処にいない皆さん達も一緒に楽しめる様に」
ルーティもまた、本来ならばこの場にいるべき人がいない事からか感傷に浸り‥‥それでも、今これより出来るべきを見据えては確かに決意する。
「‥‥難しいですけど、頑張りますか」
「あぁ、そうでござるな」
がすぐに毅然とした眼差しを崩し、何時もの調子で嘆息を漏らせば苦笑を湛える月夜に何時もと変わらない真面目な表情を保つルクスへ視線を配すれば揃い、頷けば
「明日も、明後日も‥‥晴れると良いですね」
まだ冒険者として経験が浅いからこそ束縛もないメリアはしかし、皆の気持ちを察して笑みを湛えれば呟くのだった。
●
「‥‥あ」
「どうかしましたか?」
それから暫し‥‥皆を見送って後にエドが唐突に声を漏らすと、その反応を前にアリアが尋ねれば肩を落とす彼は呟くと、視線を地へと落とす。
「お土産、渡すの‥‥忘れてた」
その視線の先にある、幾つかの包みを見つめたままに。
〜終幕‥‥?〜