【何でもござれ】はろうぃん‥‥?
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■ショートシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:11〜lv
難易度:やや易
成功報酬:3 G 80 C
参加人数:8人
サポート参加人数:4人
冒険期間:10月28日〜11月02日
リプレイ公開日:2007年11月05日
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●オープニング
●西洋のお祭なんだけど‥‥あれ?
京都の近くにある一つの村のその路上が片隅で何時もの様に遊ぶ子供達と、それを見守る大人達が何時もと同じ長閑な時間を何時もと変わらずに過ごしていた。
「ねーねー」
「なんだい?」
「最近、『はろうぃん』って良く聞くんだけど‥‥『はろうぃん』ってなーにー?」
「西洋のお祭だ、って聞いた事はあるけれど‥‥」
「えー、それだけー」
「よし、それには俺が答えてやろう!」
そんな折、唐突に響いた一人の子供が何処から仕入れたか『はろうぃん』に付いて疑問を投げ掛けると大人達は揃い、顔を見合わせてはうろ覚えに聞いた話をただ一言でだけ答えるが‥‥それだけでは不満だったらしく頬を膨らませて応じると丁度その時、何用かでこの村に立ち寄った一人の冒険者がその話を聞きつけては大人達の代わりに応じると
「ジャパンで言うお盆に行う送り火の様な物でな、三十一日の夜になると死者の霊が家族の元を訪れたりする事から、魔除けの焚き火を焚いていた事が起源なんだってよ。実際に何をやるかと言えば‥‥蕪をくり貫いた中に蝋燭を立てた『ジャック・オー・ランタン』ってお化け蕪を作ってな、魔女やお化けに仮装した子供達が『トリック・オア・トリート』って言ってお菓子をくれなきゃ、いたずらするぞと唱えて近くの家を一軒ずつ訪ねるんだ」
「それでそれで?」
「家庭では予めこの日の為に蕪の菓子を作り、子供達は貰ったお菓子を持ち寄ってそれから後に皆で集い、ハロウィン・パーティーを開いたりする‥‥まぁ、お祭みたいな物だな」
「へー‥‥面白そう!」
「おう、面白いぞ」
群がってくる子供達を前に『はろうぃん』に付いて、掻い摘んだ起源を端にしてまだ年若い冒険者が語り出せば、その話に聞き入る子供達は皆一応に瞳を輝かせ‥‥やがてその話が終わると次に子供達は揃い冒険者へ様々な疑問を響かせるが
「それじゃああれも、『はろうぃん』?」
「ん‥‥」
その中の一人が発した疑問と、次いで向こうの方を指差せば冒険者も視線をそちらへ送り‥‥ガタゴトと揺れている一軒の家屋を視界の中に留めると大人達へ一つ尋ねた。
「なぁ、あの家‥‥誰か住んでいるのか?」
「いいえ。あそこは今、空き家ですよ」
「それじゃあ‥‥」
しかし返って来た答えを聞いても尚、家は未だ揺れ続けていれば彼はその光景を前に危険を察し、得物へ手を伸ばした直後。
「西洋じゃあ、そんな祭があるんだねぇ‥‥楽しそうで良いわね」
「っ!」
「そんな面白い事があるのなら此処で一つ、やってみるのも一興かしら?」
唐突に彼の背後から響いた女性の声に慌てて振り返れば‥‥血の気の欠片もない、青白い表情を携えている女性が何時の間にか佇んでいる事に今更気付き、その存在が何であるかも察して長剣の柄を握るもその背後に低位ながら十体程度の死人を見止めれば優雅に佇み彼女が呟いている間、彼は判断を下す。
「‥‥愛し姫に家鳴り、それに死人‥‥か。一人で対するには数が多過ぎる、なら今は村人を逃がす事を優先する‥‥!」
「あらあら、これからだって言うのに釣れないわねぇ‥‥ま、良いわ。折角だから此処を借りて一つ、やってみようじゃないの。いずれまた、人が来るでしょうしねぇ」
そして直後、近くにいた村人達を促せば場が慌しくなる中‥‥それでも愛し姫は悠然と佇んだままに微笑めば、逃げ出す人々はそのままに踵を返してはコロコロと笑い闇の中へ姿を消すのだった。
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依頼目的:愛し姫や家鳴り等を退治して村を取り返し、本当のハロウィンを行おう!
必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は必要なので確実に準備しておく事。
それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
(やるべき事に対し、どの様にしてそれを手配等するかプレイングに記述の事)
日数内訳:目的地まで二日(往復)、依頼実働期間は三日。(ハロウィン込み)
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●リプレイ本文
●『はろうぃん』を開くべく
冬も徐々にだが近付く、神無月の終わり‥‥京都の冒険者ギルドを前に集うのは練達なる冒険者達。
「はっはー、吹き荒れる一陣の黒き風邪。ドナトゥース参上ー」
寒風が吹く中、それでもファイターのドナトゥース・フォーリア(ea3853)が白髪を靡かせ皆へ挨拶を交わすも、発音が何処となく可笑しいからか風と言っているのだろうが風邪と聞こえてしょうがない面々は揃い苦笑を貼り付けるが彼もまた、屈託のない笑みを浮かべるが
「初めまして、クノイチの百目鬼女華姫よ〜。ヨ・ロ・シ・ク♪」
「あ、あぁ‥‥宜しく頼むさね」
その彼に続き忍びの割、逞しい体つきを誇る百目鬼女華姫(ea8616)が頭を垂れると、彼女を前にして初めこそ鼻白むドナトゥースだったがそれも僅かな間だけで、すぐに馴染んでしまえばそんな二人を見つめて先行きに不安を覚えるガイエル・サンドゥーラ(ea8088)。
「‥‥大丈夫だろうか」
静かにだがはっきりと思った事こそ口にするが、目の前で繰り広げられるドナトゥースと女華姫のやり取りを暫く見つめれば顔を綻ばせて彼女は何時でも動ける様、魔法の草履へと履き替える。
「はろうぃん、と申したか‥‥まぁ、何を楽しむにしてもまずは厄介事を片付けなきゃな」
「折角のハロウィンだと言うに、無粋なアンデッド共に邪魔をさせる訳にはいかない」
「えぇ。話題に便乗し村を乗っ取り、人々を苦しめる死霊は決して許せません。その悪を祓います」
その中、頭を巡らせて鋼蒼牙(ea3167)が呟くと何時もと変わらずに素っ気無く、だが微かな怒りを込めて死せし者と常に対峙する神聖騎士のルクス・シュラウヴェル(ea5001)が口を開けば騎士のミラ・ダイモス(eb2064)もまた彼女に呼応するかの様、頷いては鞘に納められた剣を地へ突き立て憤慨するが
「さて、その愛し姫も家鳴りですがどちらも魔法か銀の武器じゃないと傷付かないので、その点は注意して下さい」
「さって、敵が敵なだけあってひっさびさに俺が役に立ちそうだ」
「それと愛し姫の魅了も厄介だ、最悪は拘束する他にないのだろうが」
次に響いたのは火を司りし志士が沖田光(ea0029)の警告と自身が知り得る限りの、愛し姫と家鳴りに付いての知識でそれを皆へ広げると意気揚々と応じる蒼牙ではあったが、それでもガイエルは他に留意すべき事項に付いて告げると
「そうねぇ。後はア・タ・シの、熱〜い愛の抱擁で目を覚まさせてあげても良いんだけど」
直後、女華姫が響かせた一つの対策に男性陣は一斉に後ろへ下がるとその反応を前にして彼女が微笑んだ、その時。
「遅くなりました‥‥蕪等は揃えましたが、仮装用で必要となりそうな資材の準備は如何でしょうか?」
「一先ずは。後は村へ行ってみない事には何とも‥‥なのでその時は村で分けて貰いましょう」
「そうですね、それでは参りましょう」
死せし者達を退治すると共に今回、依頼として請け負っている『はろうぃん』の開催に当たって必要な道具等を集めていた明王院未楡(eb2404)が遅れて場に辿り着くと、光の傍らにある大きな袋を見止めた彼女が尋ねれば応じる志士に頷くなり皆は揃い目的の村を目指し、歩き出した。
●妖怪退治
程無くして予定より早く一行は目的の村近隣に至れば、村人達より話を聞いた後‥‥やがて件の村へ辿り着くと、村の中央にたむろしては何事か盛り上がっている死者達の群れを前にミラが口上を切った。
「祭に乗じ村を乗っ取る悪霊は閻魔様に変わり、私達が裁きましょう」
「はぁ‥‥? あんたらはお呼びじゃないんだけどねぇ」
鬼の顔を模した面頬に派手な陣羽織を身に纏う彼女が静かに、だが力強く言の葉を紡ぐと一行の存在は気付きながらもあえて無視を決め込んでいた死霊達が漸く向き直れば、その頭だろう愛し姫も毒づくが
「すいません‥‥ですが、これからお祭りをしますので悪戯してもお菓子の貰えない皆さんは早々に黄泉へでもお帰り下さい」
「ふぅん、そう言う事。まぁそれなら殺る他にしょうがないわねぇ。皆、お行き」
その反応に際し、礼儀正しく頭を垂れて詫びる光だったが‥‥やがて顔を上げた彼、果たして厳かな声音を響かせれば抜刀しては告げると他の皆もそれぞれに得物を握り、印を組めば瞳をすがめて愛し姫はその宣戦布告を前に凄惨な笑みを浮かべると、自身の周囲にたむろする死霊達へ命令を下し、いよいよ戦いが始まる。
「そもそも亡霊に切り裂き技は効かなそうだよね」
「とは言え、蒼牙の闘気魔法が付与されていればその心配はな・し・よ」
「ならば後は恐れずに、挫けずに道を切り開くのみです」
「そうだった‥‥っと」
そしてわさわさと群れで動き出す朽ちし肉体を持つ屍や、虚ろな魂だけの存在を目に留めたドナトゥースは自身の得物を直後に見つめ、嘆息を漏らすが‥‥その彼の前、蒼牙より託された闘気を纏った武器を手に、女華姫と未楡が呟きながら駆け出しては愛し姫へ至る道を切り開かんと果敢に飛び込めば、それを目の前にしてドナトゥースも漸く動き出すが直後に近くの家が一軒、激しく揺れだす。
「家鳴り、か‥‥余り見ないが、それでも此処は引ける場面ではないな」
「えぇ、むしろこじ開けてこそです!」
その周囲に朧げながらも見える霧を見止めれば光から聞いた話と合致する条件にルクスが印を組み、瞬時にコアギュレイトを発動させると一行へ迫らんと伸びる霧状のそれは直後に動きを止めれば光、早く印を編み上げては紅蓮を纏うと飛翔する焔の鳥は家を燃やさない様、細心の注意を払った上で辛うじて家鳴りだけを焼き上げる事に成功する。
「あら、良いお兄さんじゃない‥‥一緒に私達と遊ばないかい?」
「‥‥流石にアンデッドまでは好みの範囲外ですさ」
そして立ちはだかる死者を只管に弔い続ける一行の眼前、果たして現れた愛し姫は穏やかな笑みを湛えドナトゥースを誘うも、それはあっさりと一蹴して彼は両手に握る日本刀を煌かせるが
「そんな釣れない事を、言わずに‥‥さぁ」
「はーい!」
「何とも調子が狂う‥‥だがっ!」
それが振る下ろされるより早く、愛し姫が喉を震わせ甘い声を発すれば遂に彼女の魅了に屈する戦士だったが、それを警戒していたからこそガイエルが(密かにその時が来るのを待っていた女華姫には悪いと思いながら)すぐにコアギュレイトの魔法にてドナトゥースを拘束すれば視線を死せし者へ注ぐがその間、その彼を盾にして後方へ飛び退る。
「とり‥‥あえずトリック! はろうぃんを楽しむには、ちょいとお前達はリアル過ぎるんでね!」
しかしその機を狙い、潜んでいた蒼牙が飛び出してはその退路を断つと闘気を纏った魔剣で切り掛かれば、その斬撃を浴びて凄まじい咆哮を上げる彼女へ肉薄するミラ。
「出来る事なら、生まれ変わって後に‥‥」
猛烈な勢いで愛し姫へ突進し交錯すれば、太刀を伝わり返って来た確かな手応えの後に囁くも‥‥それが最後まで響くより早く、蒼牙の振るった横一文字が愛し姫の首と胴へ永劫の別れを告げた。
●その末に
愛し姫を再び葬った後、死人の群れが瓦解したのは言うまでもなく程無くして村人達は数日振りに自身の家へ戻る事が叶う。
「一先ずはこれだけ揃えたが、十分だろうか?」
「えぇ、問題ありません」
そして人々が漸く落ち着いた頃になって村の大人達へ子供達に配布する菓子やらの調達を願い出ていたミラが並ぶそれらを前、揃えた村人の問い掛けに頷けば
「こちらの方も準備は万端です」
戦い終わった後に京都へ踵を返し、夫に頼んでいた菓子作りの為の材料を携えて未楡も何とか、その日の内に村へ舞い戻って来ると『はろうぃん』を開く為の準備が始まる。
「さて、ハロウィンは噂でこそ聞き知ってはいるが実際にするのは私も初めてだ。子供達の要望に応えられるかは判らぬが、力を尽くしたい‥‥が何分、料理は得意ではない故に美味くはないかも知れぬがな」
「何、それは愛情でカバーすれば良い」
「‥‥ふむ、そう言うものか」
「そう言うものですよ、それでは時間も余りありませんし早く始めましょう」
「協力の程、宜しくお願いする」
そして改めて揃った調理担当の面子と村の女勢の中で珍しく、弱気を言葉にするガイエルだったが割烹着を身に纏い、腕捲りをしながら淡々とではあるがルクスが彼女を宥めるとそれでも何処か、不安を表情に宿す僧侶へ尚も未楡が頷き掛ければ無言ながらも漸く彼女が首を縦に振ればその反応に微笑むと次には場にいる皆へ声を掛け、ルクスも村の女勢へ頭を垂れれば動き出す場。
「いよっし、揃う物も揃ったしそうなると後は‥‥」
その光景を前、自身が予め携えて来た菓子を改めて確認しながら蒼牙が呟けば次いで人だかりが出来ている方へと視線を投げた。
●
その先、村人達の中心にいては口を開いたのは大柄な白髪の戦士。
「先ずは簡単に、『はろうぃん』の事に付いてお話しまーす」
先ずは口上を切って後、果たしてその口より紡がれたのはハロウィンの由来。
「ええと、確か七教会の賢者が灰になると地獄の蓋が開くとか‥‥そんな感じでっす!」
「‥‥何処でそんな話を?」
「アラビアで聞いて来た記憶がそこはかとなくー」
「ふんふん、成程ねぇ〜」
「いや、一寸‥‥と言うか大分違いますので、真に受けないで下さい」
だと思いきや、偉く物騒な事だけは分かるその話を聞いた村人達は言うまでもなく一斉に後ずさると、遅れてその場に駆けつけたミラの疑問へ彼が曖昧な答えを返すと嘆息を漏らす騎士は傍らにて納得する女華姫も諭せば、引き気味な村人達を前にミラが改めて『はろうぃん』に付いて語り出す。
「そもそも『はろうぃん』とは妖精と言う見えない精霊達に祈りを捧げるお祭りで、悪戯好きな精霊が悪さをしない様にお菓子を与え、お祭りを捧げるお祭りです」
「イギリスとかフランク辺りの人達にとっては秋の収穫祭と鎮魂のお祭りだったんですさねー。ジャパンで言えば‥‥そう、盆踊りとか秋祭りが近いですさ」
『ほー』
「知っているのなら、最初からちゃんと‥‥」
そして今度こそ語られた『はろうぃん』のその端を聞けば、先とは裏腹に全うな補足を付け加えるドナトゥースへ彼女はやはり嘆息こそ漏らすが、村人達の強張りが一先ず解けた事に安堵するとミラは引き続き、自身が知る限り『はろうぃん』の歴史や振る舞い方に付いて彼と漫才さながら、話を続けた。
●
その傍ら、話に飽きた子供達を中心に光は調理の合間を縫ってやって来た未楡と共に仮装を施す。
「さぁ、皆はこの中のどれになりたい? それとも蕪お化けみたいな西洋妖怪の方が良いかな?」
「僕はこれー!」
「私、これがいいなぁ」
そう言葉を掛け、自身携えて来た百鬼夜行絵図を見せながら子供達へ尋ねれば返って来る数多の答えを前、顔を綻ばせては応じる光は傍らにある布やら小道具の類をそれぞれへ宛がうも
「こうすると‥‥はい、可愛らしい魔女さんとお化けさんの出来上がりですよ」
「わーい!」
「あー、ずるーい!」
その間、未楡の近くにいた子供が早くも仮装の第一号として衣装だけだが雪女に扮すれば、一層騒然とする子供達。
「あぁ皆、順番にしてあげるから‥‥!」
さすれば我先にと光へ殺到する子供達に彼は努めて穏やかな声で宥めるが‥‥それが最後まで響くより早く、次々と飛び掛って来る子供達には流石に彼も地に倒れ伏すのだった。
●とりっくおあとりーと!
とまぁ、そんな調子でドタバタと準備を繰り広げられながらもやがて迎えた最終日の夜‥‥果たして準備が整えば、村中にて『はろうぃん』は開催された!
「ひゃっほー! とっりくあーんどとりーと!」
その第一声、真っ白な布だけを引っ被った蒼牙が着れば数多ある蕪の提灯に照らされる闇の中で和洋を問わず光や未楡の手によって本番の仮装を施された子供達が村内を闊歩し、皆から教えられた様に『Trick or treat』の掛け声を響かせては村内にある家を一軒ずつ回る、その中。
「正確には『Trick or treat』‥‥お菓子をくれなきゃ悪戯するぞの意であって、それだと性質が悪いな」
「ほぅ、成程‥‥あ、そういやルクスさん。『はろうぃん』ってお菓子配った後は俺も脅かし役になってお菓子を徴収しても良くて、それで見事に脅かせたらお菓子が貰えるんだっけ?」
「え、えぇと‥‥?」
律儀に最初の掛け声に付いて蒼牙に呼び掛けた、獣の耳をあしらうヘアバンドに何時作ったか猫の尻尾を模したそれをつけるルクスだったが‥‥感心する彼の口から次に出た質問には何と答えた物か、珍しく表情に困惑を宿して答えに窮する。
「ねぇ、そこの貴方‥‥良ければご一緒に、踊りでもどうですか?」
「ん、俺で良いの?」
「えぇ、先ずは見知った方から」
それでも夜の祭が続く中、凛とした面持ちに出る所はでて引っ込む所は引っ込んでいる女幽霊の仮装か、白一色の着物に身を包み艶やかな黒髪を靡かせる妙艶の女性から声を掛けられるドナトゥース‥‥問い掛けながらも表情からして満更ではなく彼女からの答えを待てば、やがて返って来たそれに首を傾げる今日は魔術師っぽい格好の彼だったがやがて、その真意を知る。
「なななっ!」
「ドナトゥースでこの反応だから‥‥他の人ならもっと、楽しめそうね☆」
それもその筈、首を傾げたドナトゥースを前に彼女は微笑むと唐突にその姿形を変えれば、筋骨隆々の体躯に違う意味でビックリする笑顔を湛える女華姫を眼前にしたのだから‥‥そして硬直する彼を前にその反応を喜べば彼女、一人納得しては踵を返すと
「ではでは他の皆さんもこの『はろうぃん』、楽しんでね」
「成程、あの様に振舞えば良いのか」
「‥‥まぁあながち、外れてはいないのですが」
周囲へいる皆に呼び掛け次なる獲物を捜すべく闇の中へ姿を消せば、その後姿を見送りながら『はろうぃん』が初めてであるガイエル‥‥黒い布をローブに見立て羽織れば箒を手にして感心こそするもそれはすぐ、傍らを浮遊する妖精に合わせて普段着こそ纏いながら鬼の角だけをこっそり生やしている光によって宥められるが
「とりっくおあとりーと!」
「悪戯は勘弁して貰いたい故、これで」
「わーい!」
「まだまだ夜は長いですから、しっかり楽しんで下さいね」
「うんっ!」
直後、様々な妖怪やら妖精等に扮する子供達からの襲撃を受ける事となり‥‥しかしそれには笑顔を持って魔女が応じればはしゃぐ彼らに未楡もまた、微笑を湛えては声を掛けると返って来た答えに尚、一行はそれぞれに表情を綻ばせる。
「やはり、この様な光景は何時見ても癒されますね。この光景を守る為にも僕達は‥‥」
「もっと、強くありたいですね」
その、賑々しくも穏やかな光景を目の当たりにして果たして光は微笑みながら‥‥しかし、確固たる意思を新たに固め呟くとミラもまた彼と意を同じくして頷くのだった。
〜終幕〜