【遺跡探索】ゴーレムを探せ!
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■ショートシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月23日〜09月28日
リプレイ公開日:2004年10月01日
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●オープニング
「やぁ美しいお嬢さん、今日も元気に笑顔を振り撒いているかい?」
冒険者ギルドの扉がぎぃと音を鳴らす中、派手な装飾の杖に同じく派手なマントを羽織った一人の美男子がエルフの女性を従えて現れる。
一瞬受付のお姉さんもその青年に見惚れたものの
「まぁ、それでもゴーレム達の美しさに比べれば全然まだまだ、月並み以下もいいところだけどね!」
急転直下の扱いに内心腸が煮えくり返り、隣に佇むエルフはそんな彼の行動に慣れているのか微かに苦笑を浮かべるだけだった。
受付のお姉さんは職業柄と言う事もあって、止むを得ず表情は笑顔を取り繕いながらそのおかしな男に皮肉を込めて尋ね返した。
「それで、そのゴーレムを美しいと褒め称えるお方がこちらに一体どの様なご用件で参られたのでしょうか?」
「それなんだが、ゴーレムの捕縛補佐と遺跡の調査を併せて頼みたいのだよ」
「それは構いませんが、どちらまで行くのでしょうか?」
派手な魔術師の依頼にもっともらしい質問を投げ掛けると彼は
「最近私の家で調査し始めた遺跡の内部で起動しているゴーレムが発見されて、そのせいで遺跡の調査の方が進まなくなったのだよ」
「それではそのゴーレムの退治が今回の依頼なのですか?」
「いやいや、そうじゃない。今回の依頼内容についてなんだが、ゴーレムの捕縛の補佐をお願いしたい。それと、ゴーレムは今も動き回っているだろうからこちらから探す必要があるので、そのついでに可能な範囲の罠やモンスター等を潰して欲しい。後者については可能な範囲で構わない」
「分かりました。ゴーレムの捜索及び捕縛のお手伝いついでに可能な範囲で遺跡調査を円滑に行う為の下調べ、と言う事ですね」
テキパキと早口で捲くし立てる彼に、全てを聞き取って了承した旨を表し頷く受付嬢。
彼女の確認に一つ頷くと
「可能な限り傷付けずに捕縛したいが、ゴーレムの研究は未だどこの国でも進んでいないから最悪は破壊して貰っても構わないが‥‥努力はして欲しい、私もその場だけの付け焼刃の知識になるだろうが善処はする。そうそう、準備が出来たらフォレクシー家に来て貰えるか? ちなみに僕の名はアシュド・フォレクシーで、そして隣に立つ彼女が遺跡調査を担当して貰っているルルイエ・セルファードだ。それとこの依頼を手伝って貰えるメンバーにも寄るが連絡役としてテレパシーの魔法が使えるバードを雇う事も検討しているので、よろしくお願いするよ」
「調査隊の依頼についてはこちらの準備が整ってから、後日改めて伺います」
笑顔を浮かべそう言うと足早に、ルルイエは一礼をした後にギルドから立ち去った。
その名前を聞いて彼女は何かに思い当たり、一人ごちる。
「アシュド・フォレクシー、魔法の腕は確かな貴族の長男で一家の中でもその潜在能力はトップクラスで容姿端麗‥‥なのにどこかその考え方がずれているとか魔法にご執心だとかゴーレムに夢中だとか。そんな話は聞いた時があるけど、彼がそうだったとは」
何とはなしにうな垂れる彼女だったが、気を取り直して依頼書の作成を始めるのだった。
そんな受付嬢の呟き等いざ知らず、彼は外に出るとスキップを踏みながら
「ゴーレムの解析、考えただけで心躍る〜♪」
「これさえなければ、まともなんですけどね‥‥」
調子っぱずれな歌に周囲の視線が突き刺る中、彼を見てルルイエは密かに溜息をついた。
●リプレイ本文
遺跡に向かう前に一同はアシュド・フォレクシーの好意で必要な物を揃える為、道具屋に向かう。
「これなんか必要だよね?」
アシュドに向かってそう言い礼服一式を指差したのは市川綾奈(ea0680)。
依頼の事できっと浮かれているに違いないと読んで、色々買って貰おうと言う彼女の作戦だったが
「遺跡に礼服は関係ないぞ、却下」
「えー」
まぁ礼服は論外にしろ、意外に落ち着いている彼。
その後も負けじと頑張る市川だったが、明りの類に保存食と回復用のポーションを必要になるであろう個数だけを手堅く買うだけであった。
「ま、でも確かにこれだけあれば十分だね」
おちゃらけている様に見えるが根は真面目な彼女がそう言うと
「しかしランタンも所望だったとはね、私はこれ位なら皆持っていると思って消耗品だけ考えていたんだけど‥‥まぁ初めて依頼を受ける者も多い様だし、今回は特別に私から進呈する事にさせて貰うよ」
頬を掻く市川を見て微笑を浮かべながら言うと荷物を抱え、冒険者ギルドに足を向けるのだった。
「‥‥と、現状で分かっているのはここまでだ。それと最後に、遺跡内ではくれぐれも暴れ過ぎないでくれ給え」
「うみゅ‥‥新しい剣が欲しいですけど遺跡を荒らしちゃダメなのですね、我慢我慢でふ」
冒険者ギルドの一角でアシュドから遺跡の説明を受ける一同、そんな彼の言葉にミルフィー・アクエリ(ea6089)がぐっと握り拳を固め肝に命じる中
「それなら闇雲に歩き回るより拠点となる場所を基点に探索した方が効率いいんじゃねぇのか?」
「それもそうか、そうなると‥‥此処をその場所にするか」
彼の説明を受けて、一つ提案をしたのはクレリックのアルフォンス・シェーンダーク(ea7044)だったが、最初こそ
(「アシュド・フォレクシー‥‥なんっか胡散臭ぇ野郎だな、ちゃらちゃらしやがって」)
と腹の中で思っていたが彼の分析による的確な解説に舌を巻き、今ではまだ幾分だるそうな表情を浮かべてながら積極的な発言をしていた。
そんな彼の発言を素直に受けて踏破された区域の地図にある広場を指差すと、アルラウネ・ハルバード(ea5981)が彼に続いて一つ提案した。
「じゃあお話の時間はお終い、ね。まだ調査が終わってなくて大まかな事しか分からないなら後は直接現地で確認した方が早いでしょ」
「あ、最後に! ゴー君を捕まえる方法自体はアシュド君が用意してるんだよね?」
彼女の言葉に頷く一同の中、この依頼の本筋はゴーレムの捕縛である事を思い出してピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(ea7050)はアシュドに尋ねた。
「その手段がなければそもそも頼まないよ、安心し給え」
「ゴーレムでも何でも好きに研究すればいいが‥‥迷惑と心配だけはかけるなよ」
そう答え、改めての一礼をするアシュドにリオン・ルヴァリアス(ea7027)はクールに釘を刺すと当の本人はしっかりと頷く。
そして一同は目的の遺跡へと向かうのだった。
「遺跡っていかにも『冒険してます』って感じでいいよね、罠があればあるだけお宝がありそうじゃないか?」
遺跡に入って拠点とする広場に向かう道だと思われる途中、踏破されていない通路を進むアルフォンスの弟であるハーヴェイ・シェーンダーク(ea7059)はトラバサミに掛かりながら呟いた。
「ごめんねー」
隊列の後ろからマジカルミラージュを試みていてエックスレイビジョンを一時的に解いていたアルラウネから侘びが飛んできたが、彼は首を振ると罠の解除に取り掛かりそれを何とか済ませ気を引き締め直そうとしたが
「なんだかドッキドキなのです♪」
天然なミルフィーの発言に緊張感が抜け、思わず笑みを溢しながら再び歩き出した一行の前に、相談で決めた広場が広がる。
「それ程危険じゃなかったが、罠はそれなりにあったな」
遺跡に入ってから一行は慎重にアルラウネのエックスレイビジョンとピアレーチェのデティクトアンデットによる警戒を中心に、ある罠はハーヴェイが解除しながら、時折市川が引っかかったりもしたが他の一同も周囲の警戒を怠らずまずはここまで辿り着いた。
バックパックを置いて休憩をしながらそれを思い出して一同の中で一番経験が豊富な細身の騎士、カイ・ミスト(ea1911)でも思わず呟く位に未探索の区域は罠だらけだった。
それでも「それなり」と言っている辺りは流石である。
「じゃあもう暫くしたら、この奥に進むとしよう。時間が勿体無いからな」
「まぁそうだね。よし、皆そろそろ動けそうかなー?」
休憩を取る一同へ向けてのアシュドの提言に、アルラウネがそれを受けて皆に尋ねる。
「まだ少しだりぃけど、行けねぇ事はないな」
ぶつぶつ言いながらもアルフォンスが立つと一時の休息に終わりを告げる様に皆立ち上がり、ゴーレムを探し始めるのだった。
「ゴーレムかぁ、質実剛健! あの強さは憧れだよねぇ〜」
うっとりした表情でピアレーチェは名の指す意味が通り「気ままに、生き生きと」呟いたが、そんな彼女の気持ちとは裏腹に一向は土蜘蛛やら大鼠等には遭遇、撃退するも未だゴーレムを見つけられずにいた。
「恐らくは一定のルートを巡回しているのかもな、すると何処かで網を張るべきか?」
そう言うと依頼人はある程度書き足された地図から、歩き倒したルートに消し込みを入れる。
「こっちはまだだよね? 少し様子を見てくるよ」
その地図を後ろから覗き込み調査済みの印をつけた市川が言うと、先頭を切って進みT字路の突き当たりを覗き込もうとした時だった
「左右の通路に反応、ゴーレムだよっ」
「ウウウッドゴーレム!? 遂に見付けたぁっ!」
デティクトアンデットを唱えそれに気付いたピアレーチェの警告に止まる市川を追い越して、T字路のど真ん中で叫んだのは勿論アシュドだったが、それで一行の存在に気付いたウッドゴーレムはまずアシュド目掛けて飛び掛って来た!
「一旦下がる、来た道を引き返して拠点に」
「我は【双牙】!! 牙無き者の牙也!!」
アシュドの状態を見てアルフォンスが咄嗟に指示を下す中、カイがアシュドの前に躍り出て自らに気合を入れる為の口上を叫んで気を引くと、一行は踵を返して広場へと向けて駆け出した。
そんな中、見蕩れているのか全く動かないアシュドをアルラウネがその首根っこを掴み
「ほら、チャッチャと走るよ」
「‥‥やはりゴーレムは素晴らしい‥‥」
言うも、呆けた表情で彼女の言葉など耳に入っていない様だった。
ゴーレムご執心なウィザード、噂の真偽が気になっていたアルラウネはそれが分かると溜息をつきながら、それでも依頼人を引っ張って駆けるのだった。
そんな一行の視界にやがて、通路を塞ぐ形で網とロープが張り巡らされている光景が飛び込む。
ハーヴェイの提案で彼が仕掛けた足止め用の罠であったが、ゴーレムが予想していたよりも小さく軽そうで、十分捕縛用として使えそうだった。
「兄さん、皆、早く!」
しかしその分機動力があるウッドゴーレムに追いつかれそうになりながら、広場で待機するハーヴェイが急かす中一行は罠の下に空く隙間を滑って潜り抜けた後に振り返ると、一体は網に身を絡め取られ、もう一体も罠こそ突破したがやはり体にロープを巻きつかせその動きは鈍い。
「ほらアシュド君っ、ゴー君を捕まえるチャンスだよっ!」
その光景に未だアルラウネに首根っこを掴まれたまま呆けているアシュドだったが、ピアレーチェの檄に我に返ると
「そうだ‥‥今はあれを捕まえねばっ」
今度は鼻息荒く、彼は一瞬で印を組むとアイスコフィンを完成させ動きが鈍った一体を氷の牢獄に閉鎖する。
「もう一体は壊してくれ、サンプルは一つあれば十分だ」
変り身早くいつもの調子に戻ったアシュドの指示に、バックパックから取り出したロングソードでカイがもう一体を地に縫い付ける。
「取り敢えず、依頼はこれで終了ってか? 意外にあっさり終わったな、っと」
「あっ、そこ‥‥」
やれやれとアルフォンスが壁に手を着く、直後アルラウネの警告が飛んだがその時既に遅く、広場の両サイドからズゥンビが現れた。
あちゃ、と頭を抱えるアルフォンスを見て
「まだ生きている罠があったか‥だがこの程度なら問題あるまい」
フォローするかの様に呟き、己が身にオーラパワーを宿すリオンと
「抜けば弾散る鋼の刃! 寄るな寄るなぁ、寄らば斬るぅ〜!」
近くにいたズゥンビに切り掛かり口上を述べるミルフィーと、そんな彼女を心配しながらもそれは表に出さず、カイも両手で短剣を握ると手近なズゥンビに飛び掛る。
「こいつら位ならっ☆」
ズゥンビを自分より弱そうだと判断した市川も張り切ってズゥンビ目掛けて、数珠を巻き付けたスタッフを振るい撲殺を始めるのだった。
「‥ゴーレムの捕縛は完了したので我々は遺跡から出る、取り敢えずこれだけ伝えてくれ」
ズゥンビとの戦闘が終わり、アシュドは自らの肩に止まる雇ったバードのシフールにルルイエ側のシフールにテレパシーで遺跡内の様子を伝える様、指示を出す中
「ゴーレムなのに小さいですね〜」
「だな、あの罠で何とかなったのは幸いだった」
氷の棺に閉じ込められたゴーレムの姿を見て残念そうに呟くピアレーチェと彼女の言葉に自ら作った罠に安堵するハーヴェイに
「やはり美しい‥‥」
顔を赤らめながら呟くアシュドだったが、冒険者達の呆れた視線に慌てて笑顔を浮かべると
「君達のおかげでこいつを捕まえる事が出来た。中々楽しかったし、また何かあれば宜しくお願いしよう」
彼の言葉と一礼に、一応皆はこの依頼が成功した事を改めて実感したのだった。