めりー‥‥くりすますっ!
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■ショートシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:フリーlv
難易度:やや易
成功報酬:5
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:12月24日〜12月30日
リプレイ公開日:2008年01月01日
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●オープニング
●珠の家にて
伊勢にてまだ小さくも、波が起き始めている今その最中。
「そう言えば‥‥」
「ん?」
「聖夜祭、そろそろ‥‥だよね」
「あぁ、そう言えば」
今としては伊勢神宮の幹部、神野珠を主とするこじんまりとした家の中で手紙を認めていたエドがふと呟けば、その傍らで長大な剣の手入れをしていたレリア・ハイダルゼムは彼の囁きに反応こそするも
「とは言え、ジャパンにその風習はない‥‥ましてや此処は伊勢、ジャパンの宗教的中枢が一つと言っても過言でないこの地で‥‥」
「‥‥‥」
「‥‥ふぅ」
次いで現実を口にする彼女へ、エドはむっつりと口をへの字に曲げ沈黙するとその様子を前に溜息を漏らす剣士だったが直後、何かがこちらへ飛来する音を捉えてレリアは視線を辺りへ配すれば、眼前の軒先。
「何だ?」
一羽の鳩が舞い降りており、その足に結わえ付けられている文を見止めると彼女は何事か思い浮かばないからこそ訝りつつもその鳩へ歩み寄れば、文を解いて眼前にて開くと英国語で記されていたそれへ目を通す。
『斎王より聖夜祭を執り行っても良いと許可を貰った。流石に寺社等で大手に行う事は叶わないが‥‥珠の家とその近隣程度であるなら問題はないそうだ』
「あの男‥‥」
そこに記されていた話とは正に今、エドと交わしていた話と同じもので‥‥この文を書いた主を知る彼女はその行動力に思わず呻くも、驚きはそれだけではなかった。
『尚、準備に際して人手もそれなりにいるだろう。暇人にも同じ連絡を入れている故、こき使ってやると良い。それでは、これより任務にて伊勢から離れるが聖夜祭当日には戻るつもりので、宜しく頼む』
「まさか‥‥暇人とはあれの事か」
いや、それは驚きではなく呆れか‥‥次の一文を読みながら視界の片隅、遠くの遠くで丘の上で何故か転倒してはこちら目掛け転がってくる重そうな鎧に身を包んだ影を見止めればレリア、溜息を漏らす。
「‥‥全く、余り気は抜けんのだがな」
「‥‥‥」
「とは言え、そこまで話が進んでいるのならしょうがない」
伊勢の現状を承知しているからこそ、剣士は渋面を湛え呟くが‥‥先より変わらぬままに沈黙を保ち、しかし視線だけは真直ぐにレリアへ向けているエドの姿を見ればやがて折れる彼女。
「しかし、人手があれだけなら聖夜祭をやろうにしても不安だな‥‥もう少し集め、招かねばならんか」
だったが‥‥転がってくる騎士が途中、あった石に衝突して進むコースを変え彼方へと去っていく中、それには嘆息を漏らしながら銀髪の巫女は呟くのだった。
●聖夜祭?
「‥‥と言う事で皆にはその、聖夜祭とか言う催しに参加して貰いたいそうだ」
「へー」
「話では聞いた時があるけどな」
「他所の国じゃあ今の時期、至極普通にやっているぜ」
京都の冒険者ギルドにて後日、その話が早速持ち寄られては張り出されると集まってくる冒険者達へ、その内容を簡潔にギルド員が彼らに歩み寄っては説明すれば皆それぞれに言葉を紡ぐも
「とは言え、伊勢でやっても良いのかよ‥‥」
「まぁ斎王様の許可も出ているし規模も極、小規模だから問題はないだろう」
聖夜祭について詳細を知る冒険者が一人、果たして口を開き言えばギルド員の青年は一言だけ添えると
「と言う事で見物がてらに行ってみるのも良いかと思うし無論、知識があるのなら率先して手伝って貰えると依頼人も助かるだろう‥‥たまの息抜き、と言う事で余裕がある者は宜しく頼む」
細かい事は余り気にせず、珍しくも微かに笑みだけ湛えて最後にそれだけ言ってその場を後にするのだった。
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依頼目的:聖夜祭に参加せよ!(お手伝いも歓迎)
必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は不要、依頼人負担となります。
また、そろそろ寒くなって来たので状況によっては防寒着も必要になるかと。
それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
(やるべき事に対し、どの様にしてそれを手配等するかプレイングに記述の事)
対応NPC:レリア・ハイダルゼム、エドワード・ジルス、ヴィー・クレイセア、アリア・レスクード(以上、同行)、レイ・ヴォルクス(聖夜祭当日のみ参加)
日数内訳:目的地まで四日、強行軍だと三日(往復)、依頼実働期間は二日、強行軍なら三日で二十五日が本番。(準備一日、実施一日)
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●リプレイ本文
ジャパンでも近年、諸外国からの影響を受けて聖夜祭が行われる事も少なくない昨今‥‥遂にはその宗教的中枢と言っても過言ではない伊勢でも、極小規模ではあるが斎王の許可にて開かれる事と相成る。
陰でも陽でも様々な形で流転する姿を見せる伊勢、果たしてこの聖夜祭ではどの様な姿を見せるか‥‥?
●ジャパンでの聖夜祭?
京都を発ってより一行、伊勢への道を急ぎに急げば予定より早い内に聖夜祭が開かれる会場、と言ってもしがない一軒家に辿り着く。
「お疲れ様です、皆さん」
「未楡さんもお疲れ様ー!」
「何から手伝いましょうか?」
すると料理の材料等の手配から先行して伊勢に着いていた明王院未楡(eb2404)の労いを受けると、慌しく場を駆け回っているエドワード・ジルスやらヴィー・クレイセアの姿を見止めつつもミリート・アーティア(ea6226)と異国の文化に触れてみたいと言う好奇心から参加した、ミリートとは知り合いの蝦夷出身であるパラがレラ(ec3983)が彼女へ応じると
「聖夜祭かぁ‥‥欧州で過ごしていた期間が長かったから懐かしいな」
「そうですね。こう言うイベントは好きなのですが‥‥生憎と自身、出来る事が少ないのが悩みで」
「それならこれを機会に色々と覚えればいいと思うよっ。何なら私も教えて上げるから、ね?」
未だ完成には遠そうだが、聖夜祭の装いに近いその光景を前に逢莉笛鈴那(ea6065)が感慨に耽れば、その傍らにて茉莉花緋雨(eb3226)も頷きながらしかし溜息を零すも、それを聞き止めた鈴那に励まされれば漸く笑みを湛える彼女。
「しかし伊勢でクリスマスか‥‥何とも色々な意味で複雑な気分ではあるな。場所の事もそうだが、やはり気掛かりな事があれこれとな」
「ふん、気にするだけではしょうがあるまい。出来る時に出来る事をして、羽目を外す時は精一杯外す」
「うん‥‥でも」
そして場は人も増えた事から否応なく盛り上がり始める中、ガイエル・サンドゥーラ(ea8088)はそれを目の当たりにしながらも伊勢が置かれている現状故、嘆息を漏らすが珍しくもヴィーが普段は見せない気配りを見せると苦笑を持って彼へ応じればエド。
「その前に、もう少し机‥‥並べないと」
「おう、我に任せろ」
何処から手配してきたか、庭の片隅に然程多くないとは言えある木製の机を指差しては騎士へ呼び掛けると、素直に応じてヴィーはそちらへ駆け出したその時。
「あ‥‥」
「その、ん‥‥久し振り、だね‥‥」
「うん‥‥良かった」
息を飲んでエド、久し振りに見た親友以上の存在を目の当たりにすれば声を失うとミリートもまた同じだった様で、言葉に窮しながらも彼へ挨拶を交わせば暫しの間の後にエドは頷き返し、何処となくぎこちない笑顔を浮かべる。
「ふぅむ、どうやら話は本当の様だったな」
「‥‥それにしても、相変わらずエド殿は愛らしいですね‥‥はぅ」
「料理の方の人手が足りない、そちらを手伝うぞ」
その、傍から見れば時が止まっている様に見える光景を初めて目の当たりにしたガイエルが表情は変えないままに頷けば、また別な方で一条院壬紗姫(eb2018)が何やら身悶えするも‥‥その二人へレリア・ハイダルゼムが果たして呼び掛ければ二人、それへ素直に応じながらも揃って肩を竦めるのだった。
さて、レリアが言う様に場を整理する傍らでは既に未楡を中心として調理が始まっていた。
「成程、それは確かに美味しそうです」
「でしょう? それに加えて伊勢は様々に良い材料が手に入りますし、良い所です」
「でも牛乳が手に入り辛いのは何処も同じなんだね‥‥うーん、どうしようかなぁ」
主にその場を取り仕切るのは未楡で、彼女の手際の良さに感心しながらレラはその補佐に材料の下拵えを行うその傍らで鈴那、作ろうと考えていた料理の殆どに使う牛乳が今回は手に入れられず頭を抱えている様に声を掛けようとするが、その折に真剣な面持ちを浮かべては何かを作っているトウカ・アルブレヒト(eb6967)の姿が先に目に入ると
「トウカさんは‥‥おにぎりを作っているんですね」
「はい、料理の腕は余り自信がありませんがこれ位なら」
「そう言うものもあると確かに躊躇わず、箸を伸ばしてくれそうですね」
やがて何を作っているか気付き、先ずは彼女へ声を掛けると返って来た答えにレラが頷き返せば顔を綻ばせてトウカ。
「これでよし、出来ました。後は味見を‥‥」
未だ味見がまだだった事が気付くと、過去の失敗を今度こそしまいと自身が拵えたおにぎりを一口、頬張れば‥‥口内に広がる甘い味からすぐ、自身の周りを見回しては塩だと思って使った調味料を指で掬い、舐めてみれば見事に甘いそれに思わず渋面。
「うあ‥‥」
それは何とか苦労して入手した、お世辞にも量が多くない砂糖を使っている事に気付けば彼女はすぐ、レラにもお願いして作り直すのだった。
●
「そう言えばどうして、小次郎先生はいないのですか?」
それから暫く、一通りに場を整え料理を作り終えた一行はやはり未楡の提案から女性陣はおめかしと言う事で一時場より席を外し、珠の家の中にて身支度に勤しむその中‥‥響いた緋雨の問いへは言うまでもなく彼の妹であるアリア・レスクードが答えた。
「藩での仕事が今、多くあって抜け出そうとしたんですけど‥‥途中で見付かって、仕事量が倍増したそうです」
「‥‥何をしているのだか」
すると、その答えを聞いて緋雨は容易に想像出来るその場面を思い浮かべ小さく噴出すと続き、呆れてガイエルが嘆息を漏らせばアリアもそれに同意してやはり溜息だけ返すが
「アリアちゃんも、此方へいらっしゃい」
「え、でも‥‥このままでも十分です」
一行の身支度もそろそろ終わりに差し掛かれば、周囲の状況をつぶさに把握する未楡が優しい声音響かせ、未だ普段の格好のままであるアリアを呼ぶも遠慮する彼女ではあったが
「折角の席ですから少しでも綺麗な姿、綺麗な装いで楽しみたいですし‥‥ね?」
無理強いはしない様に声は穏やかなまま、未楡が改めてアリアを呼ぶと‥‥漸く折れて、彼女は鋏を携えている未楡の元へと歩み寄るのだった。
そして、異国での聖夜祭はその幕を開ける。
●めりー‥‥くりすますっ!
漸く一頻りの準備を終えれば皆、庭に面するお世辞にも広くないながらも丹念に飾りを施し、皆で拵えた鳥の丸焼きからおにぎりに和洋様々な甘味を揃えた料理が卓へ並ぶ部屋にてやはり、それぞれに飾った姿を披露していた。
「えと‥‥変、じゃないかな? その‥‥あんまり、こう言う格好とかってしないから‥‥」
「‥‥ううん」
その中でミリート、装いこそ至極普通に和風の礼服で纏めていたが先までとは異なり栗色の髪を下ろしてエドへ問えば、何時もは反応が希薄な彼でも微かに頬を朱に染め応じると
「似合っていますよ、とても」
「余り、この手の服は着慣れないから自信が無いのですが‥‥」
「アリアはもっと自信を持っても大丈夫ですよ」
その傍らではアリア、親友から勧められた純白のドレスに戸惑いを覚え緋雨へ尋ねるが彼女とて無論、無粋な返事で応じず満面の笑みで確かに応じたりと場は和やかな雰囲気に包まれる。
「それで、音頭は一体誰が取るのか?」
「何だ、誰もいないのか‥‥それならばこの我が取ろう!」
だがそのままで聖夜祭を始める訳にも行かず、ガイエルが辺りを見回しては疑問を発すると果たしてそれに応じたのは騎士のヴィーで、少なからず彼を知る者は不安を覚えるも
「清しこの夜、天上の星は我らに輝き月は明るく場を照らす‥‥」
「意外にまともですね」
皆の許可を得るより早く彼が言葉並べれば、準備の間に垣間見た勢いだけの行動の割にはまともな始まりを告げる騎士に感心するレラへ皆も頷くが‥‥程無くしてそれは瓦解する。
「‥‥と言う事でだな‥‥」
(「長い‥‥」)
それもその筈、始まってからかれこれ十分は経つもののその挨拶が一行に終わる気配を見せず、場に介する皆は揃い内心にて呻き困惑するが‥‥それでも救いの神はいた。
「‥‥乾杯、ですね」
「あ、まだ我の挨拶がまだ‥‥皆まで揃って、ちょっと‥‥これからが‥‥良い所」
ヴィーの話がまだ途中、やはり我慢出来なかったのだろう未楡が彼の話を代表して遮り手に持つ杯を掲げては言うと、彼女に倣い皆も漸く杯掲げれば賑わい出した場にヴィーの懇願は悲しくも埋もれるのだった。
●
そして聖夜祭が始まれば程無くして近隣より人々が寄ってくる。
付き合いの多いこの家の主だからこそ、それなりの動きを見せると興味を覚えるのは彼らの習慣。
「先ず、聖夜祭って何か分からない人ー?」
『はーい!』
そんな近隣の住民達を前、先までは配膳に会場を駆け回っていた鈴那が一区切りをつけて尋ねると皆が皆、揃って諸手を掲げれば彼女。
「えーとですねぇ、聖夜祭とは‥‥」
一つ、咳払いの後に携えていたイギリス王国博物誌を片手にその歴史を紐解いていくが‥‥それも途中、好奇心旺盛な人々の激しい質疑の数々に遭うと最初こそ丁寧に応じていた鈴那だったが
「‥‥えーと、まぁぶっちゃけ、欧州でエラい人が生まれた日を皆でお祝いしようって話で、ご馳走が食べられる日だと思えば間違いないよ!」
『なるほどー!』
最後には一言で核心を斬って捨てれば、それでも納得する人々を見てレリア。
「‥‥あながち間違いではないが、それで良いのだろうか」
「皆さん納得していますし、良いんじゃないでしょうか? 一応的は射ていますし」
その光景を前に真剣な面持ちにて考え込むが鈴那の話を遠くで聞いていたトウカは彼女を宥めるべく口を開いては、聖夜祭に相応しい華やかな笑みを湛え応じた。
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それからそれから‥‥身動ぎ一つしないエドの傍らにて何処か照れ臭そうにしながらも、しかし傍からは離れようとせず静かで穏やかな曲調のメロディを横笛にて奏でる中、緋雨はとある事に気付く。
「聖夜祭と言えば一つ、足りませんね」
「足りない? 何が足りないのでしょうか‥‥?」
欠かせない、と言う程ではないが何となく『その存在』が見えない事に今更ながら至るも、その存在は知らないレラは何の事か分からず彼女へ問うと‥‥その答えが紡がれるより早く、それは空から降り立った。
「はっは、遅くなったな」
「一応、あれなのでしょうね?」
それ、とは赤と白の暖かげな衣装に身を包んだ大柄な男性でその背からは翼を生やしていた奇怪な存在‥‥少なからずその姿見から緋雨が思い浮かんだのは、サンタクロース。
「ねーねー、あの赤と白のおじさんは何ー?」
「あれはね、『さんたくろーす』って言うんだよ。ジャパンで言うなら福の神かな」
無論、子供達はその存在は知らず好奇心を持って鈴那へ尋ねれば応じる彼女の答えは明瞭に場へ響くと、レラも漸く納得して頷けば
「良い子にしていたブラボー達へは特別に、贈り物を進ぜよう。そして無論、そこな大人達も受け取ると良い」
『さんたくろーす』と呼ばれる彼は担いでいた袋を下ろせばその口を開くと、個装され詰められていた大小様々な『贈り物』を辺り構わずにばら撒けば騒然とする場。
「‥‥そんなあからさまにして、良いのか?」
「気にするな、今日この日だけだ」
だがその中、一人だけ悠然とその元へ歩み寄ったガイエルは彼を知る者なら当然にするだろう疑問を口にするが『さんたくろーす』はそれだけ言い、微笑むが
「とは言え、任の途中だったのではなかったか」
「うむ、実はその帰りだ。それでは急ぎの用がある故、名残惜しいが私は此処で失礼する‥‥皆、良い夜を!」
その次に再び響いた彼女の指摘に漸く、大事な事を思い出すと彼は袋の中の殆どをばら撒き終えた後、それだけ告げては颯爽と翼を羽ばたかせて空へと去っていく‥‥その袋の一番底にある、伊勢にとって非常に重要な物だけはそのまま携えて。
「所であの方をご存知の様でしたが、一体どなたなのですか‥‥それにあの翼はもしかして」
「話せば長くなるのだが、伊勢の守人が一人と言った所か」
「‥‥そうですか」
そして『さんたくろーす』が去って後、その方を見つめる皆だったがトウカだけはガイエルへ抱いたばかりの疑問をぶつけると苦笑を浮かべて彼女は曖昧な答えを響せると、首を傾げる魔術師ではあったが、先程自身の袂に舞い降りた一つの包みに目線を落とせばそれ以上は深く尋ねず、頷くと
「‥‥伊勢とは、楽しい所ですね」
「そうなの、だろうか‥‥?」
「はい、私はそう思います」
様々な人達の存在を目の当たりに天然なレラは率直に、ずれて聞こえなくもない感想を呟けば首を傾げる伊勢に尤も近しい僧侶だったが、彼女の尚も浮かべる屈託のない笑みと断言には確かに頷くのだった。
●清し、この夜
そして祭も終わればその夜‥‥密かにミリートに呼ばれたエドは目印となる、ヤドリギの枝で編まれた特注のリースが飾られている樹の下にいる彼女を見付け歩み寄れば彼女の傍らに並び、その樹に寄り掛かると暫し沈黙が広がる中。
「少し我儘、いいかな‥‥?」
「‥‥何?」
やがて意を決しミリートから静かに話を切り出せば、彼女の方を確かに見て首を傾げるエドへ笑顔を向けたまま、自然と上がる体温を自覚しつつ、再び口を開く。
「ぎゅって‥‥抱き締めて、欲しいや」
すると彼女の希望が響いて後、エドは先ず滅多に見せない狼狽を露わにその場で右往左往すれば‥‥クスリと笑い彼女。
「ん、ごめんね‥‥」
恋愛感については彼も自身と余り大差がない事に気付き、年下である事に改めて思い至ればミリートはエドが背を向けた瞬間‥‥何となしに詫びながらエドを諌める様に抱き止めると漸く、彼がその動きを止めれば静かに降る雪の中。
「暖かいや、ね」
「‥‥うん」
互いに宿す体温を確かに感じて、その体温が互いに共有されている今を嬉しく思ってミリートが彼の耳元で囁くと、それにはエドも頷けば二人はそれから寒さも感じないままに雪が降り積もる中、飽く事なく何時までもその身を寄せ合う。
「羨ましい‥‥」
そんな光景を邪魔せぬ様、庭に面する部屋の柱の影に隠れて二人の為にと西洋では『男性は、クリスマスの日にヤドリギの下にいる女性にキスをしても良い』との言い伝えがあるヤドリギ、そのリースを発注した壬紗姫は寒々しい風景の中で寄り添う揺らめく二つの灯火を見守りながら、彼女らだけにではなく今を確かに生きている人々へ向けて夜空に神々しく煌く星々を見上げ、切に祈るのだった。
「皆さんに、幸多からん事を‥‥」
〜めりーくりすます!〜