【遺跡探索】内部調査

■ショートシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月25日〜09月30日

リプレイ公開日:2004年10月01日

●オープニング

 あの、見た目はいいんだが少し考えが飛んでいる魔術師アシュド・フォレクシーが来てから二日後。
 あの時、彼が伴って連れて来たエルフの女性が改めて冒険者ギルドに顔を出した。
「ルルイエさん、でしたよね?」
「はい、アシュドさん方が遺跡に入って少し経ちました。時間的に余裕はありますが、ある程度遺跡内の危険の排除をアシュドさんにお願いしていたので、あまり間を開けずに遺跡内の調査を行っておきたいのです」
 尋ねるお姉さんに頷く彼女の言葉に、受付嬢は笑みを浮かべると筆記用具と紙を用意してルルイエが言葉を紡ぐのを待つ。
 受付嬢の準備が終わったのを確認してから、彼女は静かに口を開く。
「それで皆さんにお手伝い頂く内容としては、遺跡内部の調査です。先にこちらへ伺った時にも仰いましたが、遺跡の調査が余り捗っていません。皆さんには遺跡内部を可能な限り踏破して頂き、それと同時に危険の排除をお願いします。また何かを見つけた際には私かもしくは手近な調査員に報告をお願いします」
 ルルイエの言葉を記録として書き残す受付嬢は手を止める事無く、それを見て彼女は一息つくと再び喋り出した。
「注意する点として、遺跡内にある遺物だと思われる物は傷つけない様にして下さい。調査済みのものであれば何らかの形でマーキング等していると思いますのでそれを目印に、またマーキングをしていないものがあれば場所の把握をお願いします。それと最後にですが、遺物に関して持ち出す事は許しませんので何かを見つけたり手にした場合は、報告ないしは提出を徹底して下さい」
 淀みなく言う彼女に、受付嬢はそれらを全て書き終えるとルルイエに微笑んで
「分かりました。それでは至急手配を始めますので、ほんの少しお待ち下さいね」
 依頼書を張り出す板に今書きとめたばかりのそれを張り出すのだった。

●今回の参加者

 ea0383 プリムローズ・ダーエ(20歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国)
 ea0729 オルテンシア・ロペス(35歳・♀・ジプシー・人間・イスパニア王国)
 ea1049 カーク・ウィリアム(31歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea1716 トリア・サテッレウス(28歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea3451 ジェラルディン・ムーア(31歳・♀・ファイター・ジャイアント・イギリス王国)
 ea3803 レオン・ユーリー(33歳・♂・レンジャー・人間・ロシア王国)
 ea5382 リューズ・ウォルフ(24歳・♀・バード・パラ・イギリス王国)
 ea5768 ネル・グイ(21歳・♀・レンジャー・シフール・モンゴル王国)

●リプレイ本文

「此処が今回依頼でお願いした調査対象となる遺跡です」
 一同はルルイエと調査員の一人であるハステルの案内で遺跡の前へと到着していた。
「いつ頃の遺跡とか見ただけじゃ私は良く分からないけど何かわくわくするよね、こーゆーのは」
「僕も学があまり無いものでよく分かりませんけど、ムーアさんの言う通りですね」
 ジャイアントならではのがっちりした体躯でジェラルディン・ムーア(ea3451)は明朗に、学がなくとも冒険大好きと言った発言にニコニコした表情を浮かべ賛同するのはトリア・サテッレウス(ea1716)。
「ちなみにこの遺跡ですがアシュドさん方の報告では誰かの墳墓ではないか、と言う話を伺っています」
 ルルイエとは真逆に火を操るウィザード、ハステルの解説にふんふんと頷くネル・グイ(ea5768)は
「よっしゃ、本業兼ねて行こうかぁ!」
 一人張り切って、先んじて墳墓と思われる遺跡へ元気良く飛び出す。
 彼女の行動の速さに他の皆は舌を巻きながらも後を追う中、プリムローズ・ダーエ(ea0383)は本当の兄であるかの様に慕うレオン・ユーリー(ea3803)に少し不安そうな面持ちで
「余り無茶しないで下さいね」
「大丈夫だ、プリムこそ気をつけろよ」
 小さく呟いたが、彼はきっぱり告げながら自身も彼女同様に相手の心配をしながらプリムローズの髪を撫でると、遺跡に向けて皆より少し遅れて歩を進め始めた。

 遺跡に入った一行は道中打ち合わせた通り通路や広間を半分ずつ捜索する為、二班に分けて左右一列ずつ縦隊に並んで極力離れない様に進んでいた。
「俺はカーク、カーク・ウィリアム。一応疾風使いかな、宜しくルルイエさん」
 カーク・ウィリアム(ea1049)の自己紹介に、彼女も微笑みながら皆に指示を出す。
「アシュドさんの話を彼から聞きながら、現状で調査の済んだ部屋や通路を書き加えた地図をお渡しします。また、以降調査が済んだ部屋については入口に印をつけているそうなので、それを目印にこの遺跡を期間内で出来うる限り踏破しましょう」
「現状の地図を見る限りではそう広くもなさそうだし、隠し通路でもなければ大丈夫じゃないかしら?」
 自らの肩に止まるシフールを指して改めて確認する彼女に、漆黒のフードを被ったオルテンシア・ロペス(ea0729)はランタンを掲げながらその背後から地図を覗き込むと、エックスレイビジョンを唱え周囲を見回す。
「まだ調査済みの区域だから、この辺りには何もないかしらね」
「それじゃあこの先が楽しみですね」
 透視した視線には何も映らず残念そうに呟くオルテンシアに、初めての依頼に胸を躍らせるパラのリューズ・ウォルフ(ea5382)はランタンを掲げて、癖なのか口笛を吹き後方の視界を補佐する。
「まだ入って間もないし、ゆっくり行きましょう」
 そんな少し浮かれている彼女を優しく声音で諭すオルテンシアに他の皆も頷くと、彼女は少し顔を赤らめながらそれでも元気よく言った。
「でも、頑張ろうねっ」

 それから一行は着実に遺跡内を丹念に調べながら進む。
 想像していたよりもガランとしている内部に落胆するプリムローズとジェラルディンだったが
「もし墳墓であるなら、奥に行けばきっと何か見る事が出来ると思いますよ」
 とのルルイエの言葉に気力を取り戻して頑張って探索を再開する。
 そんな彼女たちのやる気もさる事ながら、半々で分かれた通路や部屋を半分ずつ確実に探索しながら進む一行の効率は良く、露払いの為にこの遺跡に先行して入っていたアシュド達もしっかりその役割を果たしていた為、罠や最後尾を歩くレオンの警戒が杞憂に終わる程敵に襲われる事も無く、予定より早く未調査の区域へと踏み込んでいた。
「あそこの壁、エックスレイビジョンでも透視出来ないわ。魔法を阻害する何かがあるのかしらね?」
 意外に単純な構造の遺跡のほぼ最奥部と思われる広間、オルテンシアの呪文でも見透かす事の出来ない壁がある事を告げると、皆は彼女が指を指した辺りを調べ始める。
「みーつけたぁー」
 うっすらと壁に走る筋を見逃さなかったのはついさっきまでジェラルディンの頭の上で休んでいたはずのネル、何かあると言う事にいてもたってもいられなかったのだろう。
「それじゃあ押してみましょうか」
 彼女が嬉しそうにその場を飛び回る様子を見てニコニコしながら言うトリア。
 そんな彼の合図に皆は力を合わせて隠し扉を押すと、やがてそれは開き更に奥へと繋がる短い通路とその先の広間が飛び込んできた。
 しかし、奥の広間で何かが蠢いてこちらに向かって来るのをプリムローズとルルイエは見た。
「ズゥンビと‥‥奥のあれはなんでしょう?」
「マミー、ですね。墳墓に眠る主を死して尚守る従者。強い相手だが気付かれた以上、戦うしかなさそうだな」
 プリムローズの問いにハステルが答えると一行は各々が武器や魔法の詠唱を始め、戦端は切って開かれた。
「Ein KOrper ist ein KOrper―――!」
「破壊する物よ、炎を纏いて全てを焼き壊せっ!」
「清浄なる裁きを‥‥ホーリー」
 後衛職が豊富な一行の乱れかう魔法の間隙を縫って、両手に武器を携え駆けるレオンにハステルのバーニングソードを纏ったロングソードを持って守人の群れに突撃するジェラルディンと、皆の壁にとその身一つながらも自らにオーラパワーを掛けて果敢に飛び込むトリア。
 それからワンテンポ遅れてリューズのスリープだったが、精神なき者にそれは通じずうな垂れながらも
「他に役に立てそうな事は‥‥」
 己の未熟さを反省する前に、次の行動を模索し始める。
 そして三人は魔法で舞い上がる土埃が晴れると同時にズゥンビ達の懐に飛び込むと、魔法の直撃で弱ったズゥンビ達を刃と拳でまずは半分を打ち倒す。
「トリアちゃん、右っ!」
「っ‥‥!」
 その時響くカークの声、それに反応したトリアは腕を十字に組み飛び込んで来るマミーの体当たりを防ぐも、衝撃に部屋に立ち並ぶ像へと飛ばされる。
 彼がその像にぶつかる直前、オルテンシアとリューズがトリアを抱き止めて何とか防ぐ。
 その様子を見ながら、返す刃でレオンとジェラルディンの三つの斬撃でまた一匹のズゥンビを切り倒すと
「流石にズゥンビとは動きが違うな‥‥」
「でも一体だけなら‥‥やってやるよっ!」
 そう言って前衛の二人は左右に散って振るわれるマミーの爪を避けると同時に切り込んだが、相手もそれを見事に爪でレオンの連撃を受けた後に炎の剣を一歩下がって回避する。
「くっ、ここでは下手にファイアーボムも打てないな」
 マミーの弱点こそ知っているも、狭く密閉された空間では範囲が倍増されるファイアーボムの不便さに歯噛みをするハステルと攻撃魔法を覚えていないルルイエが見守る中、レオンに襲い掛かるマミーをプリムローズとカークは魔法で後方から牽制する。
「レオンさんは‥‥」
 彼女が言い終わるより早く、状況は再び動き出す。
 マミーは執拗な牽制に目標を変え、ジェラルディン目掛けて再び体当たりを繰り出して来た!
「待ってたよ、この瞬間をっ!」
 叫ぶ彼女はマミーの攻撃を甘んじて受け相手の動きを封殺すると、カウンターで勢いを乗せた紅蓮の刃をそれの頭頂へと突き下ろした。
 蓄積していた魔法のダメージに先の強烈な一撃で、やっとマミーは崩れ落ちた。
「な、何とかなりましたね‥‥」
 安堵するカークの呟きに緊張感が解けたのか、ルルイエとハステルを除く一同が膝をついたが
「お疲れさーん」
 宙を飛び回って錯乱しようと試み、相手にされず結局応援に専念していたネルの労いに倒れたままでも変わらずニコニコしているトリアは、手だけ上げて応えるのだった。

 マミーとズゥンビの群れを倒した一行は休憩を挟んだ後に墳墓の更に奥へと突き進む。
 通路を暫く進むとやがてまた大きな広場へと辿り着き、先頭を歩いていたジェラルディンが足を踏み入れようとした時
「止まって下さい!」
 ルルイエの叫びに彼女は踏み出そうとした足を何とか宙で踏み止めながら、振り返って尋ねる。
「な、何?」
「奥へと進む通路の両脇にガーゴイルらしき石像が設置されています」
 彼女の言葉に一同はその先を見やると、それがガーゴイルかは良く分からないが悪魔を模した彫像が二つ、通路を挟む様に置かれていた。
「あれがガーゴイルだと仮定すると厄介極まりないですね。何をトリガーに動くのか分からない以上‥‥一度戻った方が無難かと」
「そうですね、先程の戦闘で皆消耗していますし下がりましょう」
 彼女の発言を受けてハステルはそう分析すると、ルルイエも頷き皆を見回して判断を下す。
「えー、此処が本番じゃないのー」
「命あっての物種ですよ♪ ルルイエさん達の言う通り、此処から出た方がいいでしょうね」
 少し不服そうなネルを宥めるトリアに一同も首を縦に振る他なく、渋々ながらも踵を返して墳墓を後にするのだった。

「ふむ、止むを得まい‥‥此処からは親父に投げる他なさそうだ。今の我々ではどうしようもない」
 ルルイエを筆頭に、一同の報告を受け今後の方向を決めたアシュドは皆に小さな皮袋を手渡す。
「思っていた以上に手間ばかり食わせてしまった様で申し訳ない、ささやかで済まないが受け取って貰えると嬉しい。この墳墓は親父に任せて私は手を引くが、別の依頼事が出来た時には又改めてお願いさせて貰うよ、その時は宜しく頼む」
 改まってのアシュドの礼に
「その時が来るなら、こちらこそね」
 オルテンシアは微笑を浮かべながらそう返し、アシュドやルルイエと握手で約束を交わすのだった。