斎宮先見
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■ショートシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:6〜10lv
難易度:難しい
成功報酬:5 G 94 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:01月28日〜02月03日
リプレイ公開日:2008年02月06日
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●オープニング
●藩主の悩み
「斎宮の検分、か」
「失礼‥‥とどうかしたのか?」
伊勢藩主邸宅、その主が部屋において藤堂守也は一枚の和紙を見ては丁度溜息を漏らしていたその時、何らかの報告に来たのか十河小次郎が部屋へ入ってくるなり神妙な面持ちの彼を見止めたからこそ尋ねれば、藩主は先より凝視していた一枚の和紙を黙って彼の眼前へ突きつける。
「まぁいずれ天照が復活すると言うのなら、妥当な線かも?」
「時期尚早、と言う気がしなくもないが‥‥敵戦力の詳細を把握する事で今後の被害や攻め入る際の情報としては遠からず、必要にはなるのだろうが」
「まぁ、そうだなぁ‥‥」
そしてそれにざっと目を通しては小次郎、記されている大まかな内容を把握すれば考え込まずとも呟くと、藩主もまた自身の意を述べれば今度は思考を巡らせて小次郎は応じるも
「けど、藩内の方は問題ないのか?」
「市街に住む人々の事を指しているなら、問題はないが‥‥国司様の事を聞いているならば、何とも言えないのが実情か」
「‥‥大丈夫、なのか?」
それよりも先ず、伊勢藩内部の状況に付いて確認すれば‥‥答えを二つに分けて応じる藩主へ率直に、思い浮かんだ疑問を投げ掛ける小次郎へ藩主。
「そればかりは何とも、可能な範囲で京香に監視をして貰っているが」
「事が大きく動くより先に、何とかしたいな」
「‥‥今回の偵察如何で定めるとするか」
小さく肩を竦め、正直に現状を語れば何が起こってもおかしくない伊勢藩の状況故に小次郎が呟くと、当然に彼の意に同意する藩主は頷きながら斎王より回ってきたその文に改めて目を通し、呟きながら何事か考え込み‥‥やがて決断を下すと立ち上がれば眼前の彼へ告げるのだった。
「この任、私が直接赴こう」
●
後日、京都の冒険者ギルドには先日の話通りに伊勢藩主が姿を現せば稀にもないこの事態、内心でだけ僅かに驚きつつも青年はしかし努めて何時もの通りに振る舞っては藩主の話に応じていた。
「配置等は参考程度で構わないが‥‥出来得る限り、詳細な敵の種類に数は抑えたい」
「それは、斎宮の内部についてもか?」
「そこまで無理は言わないが、見付からずに潜入出来る手段があれば可能な範囲で行って貰えると助かるのは正直な所だ」
「‥‥となると、隠密での行動が絶対か」
「そうなるな」
その中、藩主は彼の狼狽を察しつつも至って穏やかな声音で依頼の詳細を語れば次いで上がった疑問にすぐ応じると、その依頼内容から行動の根幹を察して先に紡いだ青年へ笑みを返す。
「‥‥もしや、近々」
「そればかりは今、公にする事まかり通らない」
だが次に響いた、青年の推測に守也は暗に事実と認めながらもそれ以上言う事は叶わないと表情を途端に厳しくして遮れば、頭を垂れて改めて願い出る。
「そう言う事で今回、宜しく頼む」
「分かった、だが」
そしてすぐ踵を返せば藩主は準備を整えるべくか、久方振りに足を運んだ冒険者ギルドを後にしようとするが
「藩主殿、隠密行動の方は?」
「‥‥内部へ単身で潜入出来る程の腕前は持ち合わせておらぬ。だが実戦の勘を今の内に多少でも培っておければと思ってな」
その背へ最後、ギルド員の青年が一つの疑問を投げ掛けると‥‥それには進めていた歩を止めればポツリ、小さな声で答えを返すのだった。
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依頼目的:斎宮の偵察!
必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は必要なので確実に準備しておく事。
また、屋外での行動になるので防寒着も必要な時期なので忘れずに持参して下さい。
それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
(やるべき事に対し、どの様にしてそれを手配等するかプレイングに記述の事)
対応NPC:藤堂守也(ez1096)
日数内訳:目的地まで四日(往復)、依頼実働期間は二日。
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●リプレイ本文
●斎宮先見
伊勢藩主、藤堂守也のその邸宅が内部の私室‥‥人払いも十分に成されたその場へ招かれたのは、五人の冒険者。
「志士の、東雲八雲だ。宜しく頼む」
「今更、その様な挨拶は不要だろう‥‥何せ見知った顔が多過ぎる」
「確かにな、遠慮は不要だ」
馴染みのある冒険者とて余り通す事のない、その部屋にて藩主と集った面々を前に何時もの決まった挨拶を交わす東雲八雲(eb8467)だったが、皆を見回して後に守也が生真面目な彼へ苦笑を湛え言葉を返せば侍たる結城弾正(ec2502)もまた藩主に同意して頷くと、気恥ずかしくなって八雲は苦笑いを浮かべればその光景に笑みを湛えながら侍。
「伊勢藩主殿の決意の程に胸打たれた。微力ながら助力しよう」
「済まんな」
「しかし、ボス自らこの様な任務に出陣とは‥‥最悪、伊勢藩が瓦解する恐れも孕んでいる事は承知されているべか?」
藩主へ向き直ると今回、依頼の端となった藩主の意へ頭を垂れては言えばそれに応じて守也もまた皆へ頭を垂れるが‥‥西洋で言う所の侍、ナイトに就くジョンガラブシ・ピエールサンカイ(ec2524)が英国の出だからこそか、訛りの強いジャパン語にて守也へ今回の依頼の危険度の高さを改めて訴える。
「自身の目で確かめねばならんのだよ、人を使う身であるからこそ‥‥いずれ部下を立たせる戦場はな」
「‥‥そこまで言うなら止めないども、ボス自らの偵察にしては手薄過ぎる故に重々気にされよ」
だが藩主はそれを受けても尚、決然とした声音にて言葉を紡ぐと‥‥その発言を前にすればジョンもそれ以上は何も言える筈がなく、警戒だけを促すと
「一先ず、話も落ち着いた様なので状況を整理したいのですが‥‥藩主様、伊勢や斎宮の状況等を詳しくお聞かせ頂けますか?」
「そうだな‥‥」
僅かに間を置いて後、次に久々にも伊勢へ足を運んだ護堂万時(eb5301)が口を開くと今までの動きを先ずは確認したかったからこそ藩主を見つめ、問えば‥‥頭上を見上げて守也は十二月の頃より動き出した話、天照大御神復活の為の宝具の回収を軸に今に至るまでの話を淡々と語る。
「成程‥‥」
「余り状況は‥‥変わらんか」
「やっぱ伊勢は難儀な所やの」
するとその話を聞いて後、納得しつつも徐々にとは言え流動し始めた伊勢の状況に万時が呻くと宝具回収の一端を担った八雲も難しい表情を浮かべるが、次に響いた言葉の主が大宗院沙羅(eb0094)はその割、何処か楽しげな笑みを浮かべ言うと
「そればかりは否定出来んな」
「まぁ良いや。ここで恩を売っておくと後々、斎宮の衣装の発注を優先的にして貰えるかも知れへんから頑張るでぇ」
「‥‥やはり、そんな所か」
「うちにとっては生活が掛かっているんでぇ、そんな事と言わんでな」
それに藩主は何とも形容詞し難い表情を湛え、言葉を捻り出すがそれでも商人は率直に自身の意を次いで紡ぐとそれなりに面識のある彼は予想していたその答えに苦笑を湛えるが、沙羅もまた自身が通さなければならない筋をはっきり口にすればそれには詫びの代わりか、首を縦に振って藩主が応じる。
「まぁ、そろそろ行きましょうか。今から発てば恐らく夜の頃には斎宮を目にする事が出来る筈です」
そんな光景の中、万時が皆を見回していよいよこれより赴くべき場へ赴こうと促せば‥‥果たして場に介する皆は頷くと、今は妖の巣窟と化す斎宮へ向けてその歩を踏み出すべく立ち上がるのだった。
●敵陣の、只中へ
「あれに見えるが斎宮だべか‥‥」
「ふむ、久しく見たな」
伊勢藩主邸宅より歩いて大よそ一日程度の時間を経てか、果たして辿り着いた二見の地‥‥海岸沿いに今も変わらずそびえる斎宮を遠目、ジョンはその初めて見た趣きに甚く感心すればその傍らで藩主もまた、久し振りに見ても以前と変わりのない建造物の姿に安堵すると
「‥‥思いの外、外見は余り変わりがない様で安心しましたが」
「確かにこれでは、容易に内部へ潜入は出来ないか」
その内心を万時が代わりに紡ぐが、直後に八雲の言葉が響くとその斎宮が周辺を見回して皆‥‥佇むこの場より見える斎宮の正面に蟠っている幾多の影を見止めたからこそ、揃って呻くも
「一先ずこの辺りに陣を敷いて後、最後の打ち合わせをする」
皆の心情が今、自身の想いと同じだと信じるからこそ藩主はその場にて静かに声を響かせるのだった、これより果たすべき事を確実に達するべく。
「見付かったらあかんのやろ。恥ずかしがらずに着いや」
と言う事でそれから暫く、打ち合わせも済めば‥‥呉服屋を開いている沙羅から何やら葉っぱや木の皮があちこちにびっしりと施された衣服を託される藩主。
「‥‥これをか」
「あぁ、念の為や。それと皆の分もあるでなー」
それを見て、思わず呻く藩主ではあったが沙羅は気に介する風も見せず皆へも同じ物を渡せば、自身もまたそれを羽織り始めると
「見た目はともかくとして、これは良い物かも知れませんね」
「別段、気にはしない」
「‥‥その通り、なんだがな」
「我侭は言ってられないんだべ」
それを手にしたまま四人、万時を筆頭に思った事を率直に言いながらも暫しは逡巡し‥‥しかし、沙羅の視線を受ける事となればやがてそれを先に羽織った彼女に倣い着込めば
「似合っとるで、皆」
「‥‥ともかく、時間が限られている以上は早々に行動へ移ろう」
笑顔を浮かべる沙羅のその傍ら、言おうとした言の葉は飲み込んで藩主が最後にそれを着れば吐息を漏らした後、毅然とした面持ちを上げると皆を見回しながら行動の開始を告げるのだった。
●斎宮内部
「‥‥進捗が遅れている?」
一行が着々と準備を進め、斎宮の状況を伺おうとしているその中で斎宮の内部が頂上にある斎王の間では焔摩天が正面にかしまずくアドラメレクを静かに睨み据えていた‥‥果たしてその話、これより伊勢に対して掛ける攻勢の段取りに関わる事か。
「最後の一押しが中々施せず、止むを得ずそちらへ誘導する為のきっかけ作りから始めなければならない事になりましてね」
「自身の無能さを明らかにしてどうする」
何らかの計画に対して遅れを示しているその理由をアドラメレクは明示すれば、それしきで自身を曲げる筈もない天魔は鼻を鳴らし侮蔑の視線を悪魔へ送るが
「まぁ良い、それがすぐに始められるのなら早く取り掛かれ」
「言われずとも、既に動き始めておりますよ」
正確たるアドラメレクだからこそ、すぐに気を取り直しては嘆息を漏らしつつも計画の遂行を促せば‥‥果たして頷いたアドラメレクのその背後にある窓の外に広がる闇を見つめ、瞳を細める焔摩天。
「‥‥ん?」
「どうか、されましたか」
「何か、夜空で動いた気がしたが‥‥ともかく伊勢で不穏な動きが見られる以上、伊勢神宮に立て篭もる輩は早急に潰す必要がある」
するとその反応に際し、アドラメレクが尋ねると先までとは裏腹に感じたままの事を口にしながら、今は瞳を細めても沸いてきた雲もあって闇の中にて蠢く存在は見止められなければ改めて自身らが果たさなければならない目的の為、立ちはだかる存在の壊滅を告げれば
「理想のままに事が運べば伊勢は掌握出来、天岩戸のその中に眠る欠片も‥‥」
「復活した主の為、何としても果たせねば」
計画されているその筋書き通りに話が進む事を前提に、アドラメレクが整った顔を綻ばせ言うと焔摩天も遂げなければならないその最終たる目的を果たすべく、掌を固く握り締めては目前に広がる闇を見つめ‥‥今はまだ、遠くに小さく感じるだけの主へ誓うのだった。
●反撃の、狼煙
斎宮内部でのやり取りは知らずとも、それより僅かに遡って‥‥斎宮の周囲を広く見渡せる高台にて万時は上空を見上げてはその天候を先ず、気にしていた。
「少々、天気が良過ぎますね‥‥雲を少し、呼びます」
「そやね。でも余り見た目、分かり過ぎない様に気ぃ付けてや」
その彼の傍ら、護衛にとつく沙羅の意見には素直に頷いて彼は懐に忍ばせていた巻物が一本を紐解くと、それを読み解く。
「眼前に広がりし雲よ、流れし風よ、降り落ちし雨よ‥‥今一時、我が意のままに動けよ」
すればやがて、織られた言の葉を詠唱として魔法を完成させれば‥‥空の天候は僅かずつ、彼の言葉に従ってその様相を変え始め夜空の部分部分を雲にて覆う。
「一先ず、この程度なら問題ないでしょう。後は‥‥」
「八雲次第やね、と言う事で一先ず手筈通りにここは引き払って次の見通しが良い場にいこか」
そしてその後、改めて上空を見回しては恐らくは不自然でないだろう量の雲を確認すれば万時は一人頷くと、その続きは沙羅が言えば二人はそそくさと目星を付けていた次の場へ向かい、静かに歩き出した。
「えぇ、八雲さんばかりに任せては置けませんから‥‥行きましょう」
●
かたや、森の隙間にある小さな草原より大凧を使い空の高みへ飛翔しては斎宮とその周辺を伺っていたのは八雲、先程焔摩天が夜空に見た影とは彼の事だったが今は万時が天候を操作し、見通しを悪くしたお陰で互いにではあるが視界は先と比べ悪くなっている、その中。
「‥‥流石に、高いな」
今更ではあるが、初めて大凧を使っては空の高みに昇ったからこそ自身が今いるその高さに感心するも、すぐに気を取り直せば眼前に見えた斎宮の方へ視線を走らせて彼。
「展開は‥‥前方だけか。数は上から見ると思った程でもないが」
先ずはその周囲に展開する妖を確認し‥‥地上と違って見えたその展開状況に改めて、空の高みへ昇る事の利点を学びながら八雲は凧を手繰り、斎宮の周囲を巡り始める。
「妖の種類は今までの傾向と余り、代わり映えがない。死霊の群れはその頑強さこそ厄介だが‥‥連携をとるには相応しくない分、相手取るなら楽ではあるか」
そして他の者へも自負出来る確かな視力を持って斎宮周辺に蟠る妖をつぶさに観察し、その詳細な分類を見分けていくが
「そう言えば‥‥」
ここで一つ、未だ見かけない存在がいる事を思い出せばすぐに視線を地から宙へと彷徨わせるとやがて、その姿が視界の片隅に映り‥‥次いでこちらへ向けて飛翔してくる軌道を取った事を確認すれば止むを得ず一度、凧の高度を下げ始める。
「お、戻って来たがや‥‥どうかしたべか?」
「恐らくは空にも妖が配されているのだろう。今までにも数多く見受けられている報告もあるからな」
「ならば手筈通りに一度、近くに身を隠すぞ」
するとその八雲の異変に気付いた、地上にいる面々‥‥ジョンの疑問には弾正がすぐに応じると頷いて後、皆へ後退を告げる藩主に従って二人は近くにある手近な大きさの藪へ身を隠せばやがて八雲もその近くに降り立ち、皆と合流を果たすと
「流石に空へまで、警備を敷いてるんだな」
「妖らの本陣故、当然と言えば当然か。所で、内部の状況は‥‥」
小さな声で相手に油断がない事を告げれば弾正は嘆息を漏らすが、微かに息を荒げている八雲の方を見れば一先ず得られた情報について尋ねるも‥‥その途中、背後の藪が唐突にガサリと大きな音を立てる。
「‥‥勘付かれたか?」
「あぁ、勘付かれてもうたわっ」
「完全に捕捉はされていませんが‥‥すいません」
するとほぼ刹那、反射的に抜刀しては弾正がそちらの方へ向き直るも‥‥その藪から現れた影二つは果たして沙羅と万時で、八雲の問い掛けに対して沙羅と万時が立て続けに応じると
「どうされる、ボス?」
「一先ず、陣の方まで後退して様子を見る。以降の行動はそれからまた考えよう」
それを受けて逡巡する一行の中でジョンは今の主へと判断を仰げば、すぐに踵を返した守也はそれだけ告げると皆を伴い、足早にその場を駆け出した。
そしてそれより後も、周囲の状況を間違いなく確認しながら危険は冒さず斎宮周囲に蔓延る妖の、様々にある情報を間違いなく収集して一行は伊勢へと戻るのだった。
●帰還
そして無事、伊勢市街の藩主邸宅正門へと戻りついた一行。
疲労は困憊なれど、達成感はある‥‥のだが、それは望んでいた結果と対すれば最低限のもので皆の表情は疲労の色が未だに残るとは言え、それを差し引いても冴えなかった。
「無茶に付き合って貰い、感謝する」
「‥‥こちらこそ、最初に交わした約束の割に大した働きも出来ず済まない」
「気にするな、それを言えば私とてそうだ」
「忝い」
だからこそ、守也が皆を労うも‥‥それに弾正は大柄な体躯を何時もより縮めては応じるが、彼を宥める藩主の意をやがて知る事となれば深く頭を垂れると一つ頷いて後に守也。
「皆もご苦労だった、少なからずとも今回の目的は達する事が出来たと思っている」
「それでこれから、どうするおつもりですか?」
「‥‥何とも言えんが、仕掛けるなら短期で蹴りを着けねばならぬだろう」
「敵勢のその全貌も明らかにないすな」
皆へ改めて声を掛ければ得られた結果、一応に満足しているからこその回答を聞いた万時は次いで、疑問を響かせると‥‥僅かに後に藩主は口を開けば、その解を紡ぐとそれを暗に察したジョンが頷き応じれば場の空気は今後の伊勢の展開に思わずとも口を閉ざす。
「どうや、今回の件で藩の服はうちの呉服屋で発注したくなったやろ」
「‥‥そうだな、この一件が落ち着いたら前向きに検討しよう」
「おっしゃー!」
だがそれも大した時間は持たず、場を気遣ってか沙羅が以前から打診していた問い掛けを守也へ響かせると‥‥それには漸く折れて苦笑を湛えながらではあったが藩主が応じれば、言わずとも喜ぶ沙羅のその様子に笑みは貼り付けたまま、皆へ向けて最後に言葉を織る。
「今後、再び皆に願い出る機会がある筈‥‥その時は今回以上に厳しい事を願い出るかも知れないが、宜しく頼む」
「その時はミーに任せておくだがや!」
「あぁ、必ずや力になろう」
その彼を前にジョンと八雲は間も置かず応じると藩主は一度だけ首を縦に振った後、皆の姿が見えなくなるまでその背中を見送るのだった。
「電撃戦にて斎宮を奪還し、他勢力の干渉に備えて田丸城へ至るのが無難か‥‥?」
これより後の展開を己が内で検討しながら‥‥。
〜一時、終幕〜