宣言 〜魔王、討つべし〜

■ショートシナリオ&
コミックリプレイ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:6 G 66 C

参加人数:7人

サポート参加人数:1人

冒険期間:05月13日〜05月20日

リプレイ公開日:2008年05月22日

●オープニング

●天照、立つ
 伊勢神宮‥‥本殿を背に、集まる人々を前に悠然と凛々しく太陽を背負って立っていたのは、その化身とも呼ばれる天照大御神。
 しかし天津神の長は何をする事無く、悠然とただ立ちつくすのみ。
 それでも人々は凛としたその姿に魅入っていた‥‥これから一体、何があるのかとも期待するからこそ。
 そして彼女は唐突に口を開く、皆の期待を感じてか。
「‥‥尾張藩、平織虎長が延暦寺に攻め入ろうとしている件、皆の耳には届いているだろうか?」
 その彼女の口から放たれたのは京都に入った尾張藩が延暦寺攻略の意思を示した話で‥‥彼女の問い掛けに、人々は首を傾げる者、頷く者と反応は様々だ。
「同じ人間同士であるにも拘らず、またジャパン全土が未だ混沌に包まれている中でこの様な愚かな行為に考えが至る事が出来るのは‥‥魔王以外、他にあるだろうか」
 再び口を開いた天照は辛辣な言葉を紡ぐも、すぐに頭を左右に振って否定する。
「否、この暴挙は魔王のみが行えると言えよう。今回の件は妾も、そして斎王も悲しみに濡れ、怒りに身を震わせておる‥‥何故に人間同士が戦を広げようとしているのか」
 するとその最後、声のトーンを落とし言葉を詰まらせる天照‥‥少々、演技掛かっている様な気がしなくもないが、それは些細な事らしく場に集う人達は真摯な視線だけを彼女に送りただ見つめるだけ。天照がここまで明らかな神意を示した事はかつてない、彼女のその口からこの演説が真意を聞くべくして。
「故に妾はここに告げるぞ、伊勢の民‥‥伊勢は明確な意を持って尾張の魔王に従わず、屈さぬ事を。そして必要とあらば力を持ってして抗い、皆を守る事も!」
 そして彼女は皆の前に姿を現したその真意を口にした‥‥尾張藩、平織虎長の行動を猛然と非難したばかりか、伊勢の民に総蜂起をと促したのだ。

●斎王の思惑
「ありがとうございました」
「‥‥全く、この手の類はこれ限りにして貰いたい物じゃ」
 それより演説が終わって後、本殿の傍らにある旧斎王の間へ戻って来た天照を労ったのは斎王で、彼女の礼に天津神三柱が内の一柱は鼻を鳴らすと斎王は苦笑こそ浮かべるが
「ですが実際、天照様はどうお思いで?」
「‥‥ふん、知らぬわ」
 次いで率直な意見を天照へ尋ねると、つっけんどんに応じる彼女ではあったが
「じゃが確かに、どうにも嫌な予感を覚える。それが虎長とやらによるものかは知らぬがな」
「それは良かった、私だけじゃなくて」
 暫し後、間を置いて息を吐いた後に天照は思ったままの事をやがて紡ぐと安堵して斎王、顔を綻ばせ‥‥直ぐに緩んだその表情を厳しい物に変える。
「これから、何かが起きます。今は単なる勘ですが‥‥それを目前にして人同士が諍い等、している場合ではありません」
「そうだな。この地の天使も動いているらしい。真実、虎長が魔王の一体かはまだ分からないが、人間の結束は試される事になるのだろうな」
 片隅に佇んでいたレイ・ヴォルクスは頷く。今回の宣言に至る経緯には、彼のもたらした情報も関わっていたが‥‥彼の素性を知るからこそ、斎王は問う。
「‥‥しかし、一体何処でそんな話を」
「それは秘密だ」
 しかし彼はその答えを言う事無く、帽子の唾を下げ口元だけ吊り上げては微笑むとその反応に溜息を漏らす彼女。
「それでこれから、どうするつもりじゃ」
 そんなやり取りの中で今度は天照が問いを紡ぐと首を傾げる事暫し、斎王は考え込むが‥‥やがてその答えを発するのだった。
「そうですね‥‥今回の宣言で『敵』の行動を戒める楔になれば良いのですが、それだけで戒められる筈もありません。そして今後の事も考えれば‥‥」
「頼りないな。良いのか、伊勢は尾張に戦を仕掛けようというのだぞ。人間同士の戦をな」
 神と魔の名のもとに、戦うのは人間。

●伊勢からの使者
 伊勢にて天照が尾張藩との決別を述べてから数日後、京都の冒険者ギルドにて伊勢から使者が来たのは果たして必然か。
「会議?」
「はい、今後の伊勢における方針を確定する為の会議です。皆さんにもその会議に参加して頂きたく思い、足を運んだ次第です」
「随分と重要な話だが‥‥良いのか?」
 使者からの申し出にギルド員の青年は素直に、困惑を表情に出したのは言うまでもない‥‥その、重要さ故に。
「問題はありません。今まで伊勢における行動、活躍から皆さんが十分信頼に置くと足りるからこそ此処まで来たのですから」
「‥‥ふむ。そこまで言われては、こちらとしても断わる理由はないな」
「ありがとうございます」
 だが使者はそれを気に留めた風も見せず、肯定の意を直ぐに示せば青年は応じる他になくいよいよ筆を手に取れば一枚の和紙へ向かうと、頭を恭しく垂れて感謝する使者は懐から一枚の紙片を取り出し、彼の前に置く。
「会議については未だ大雑把で申し訳ありませんが此処に記されている案件について最低限、決めようと言う話になっておりますので参加される皆さんにはこの案件について事前にある程度、考えておいて下さいとお伝え下さい」
 そしてその詳細を伝えれば早く踵を返して場を後にする使者の背を見送りながら青年は我知らず、嘆息を漏らした。
「‥‥果たしてこれから、どうなる事か」
 混沌の一途を辿る、ジャパンの未来を案じて。

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 依頼目的:対尾張における対策会議に参加し、今後の方針を確定せよ!

 必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は不要、依頼人負担となります。
 また、必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
 (やるべき事に対し、どの様にしてそれを手配等するかプレイングに記述の事)

 対応NPC:祥子内親王、天照大御神、北畠泰衡、藤堂守也(他NPCは応相談、検討)
 日数内訳:目的地まで四日(往復)、依頼実働期間は三日。
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●今回の参加者

 ea0321 天城 月夜(32歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea1569 大宗院 鳴(24歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea3167 鋼 蒼牙(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea6381 久方 歳三(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb1422 ベアータ・レジーネス(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 eb2064 ミラ・ダイモス(30歳・♀・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 eb8467 東雲 八雲(32歳・♂・志士・人間・ジャパン)

●サポート参加者

木下 茜(eb5817

●リプレイ本文

●流動の刻
 伊勢、先日の混乱が余波は未だ残るがそれでも多少の落ち着きは見せる街並み。
 そして二見浦の方にある斎宮もまた、奪還を果たしてから漸く機能するに至ればその最先の務めは会議の場。
 先日も話し合いの場は設けられたが、その内容はあくまで伊勢内部に限っての事。
 今回の会議とは、尾張藩が主の平織虎長が延暦寺へ神皇の勅命を持って攻め入った事に関して今後、伊勢として対外的にどう動くかを決めなければならない。
 その重要な会議へ冒険者を招くのは伊勢としては初の試みで、それ故に不安の声は内部より当然に上がったが‥‥それでも種々あった意見を捻じ伏せた斎王は意気も高く場に臨む。
「さて、踏ん張り所ばかり続くけどまだまだ頑張らないとね」
 それは掴み処のないレイの口から珍しく真摯に語られた話からか、それとも天照大御神の根拠なくも強く抱く疑念からか‥‥否。
「私は私を信じるからこそ、無用な戦は早く終わらせなければ」
 ただ、自身の意思に強く従っての行動に他ならない事を確信し、皆が待つ斎王の間へと足を運ぶのだった。

 そして皆が待つ、斎王の間にて最後に足を踏み入れた斎宮が主は沈黙する皆を見回して後に一礼をし、自身の席へ座するとベアータ・レジーネス(eb1422)が皆を代表して礼儀正しく彼女へ挨拶を紡ぐ。
「部外者ではございますが、宜しくお願い致します」
「そんなに畏まらなくていいわ、こちらこそ宜しくね?」
 すれば会議の内容からして当然の、凛とした雰囲気が漂う場を自身の言葉によって和ませると、それを端に集う皆は口を開き始める。
「しかし、虎長に関しては復活してから胡散臭さしか感じさせなかったが‥‥魔王と来たか」
「妾がそう決めた、文句はあるまい」
「相変わらず、理不尽だな」
 果たしてその最初に鋼蒼牙(ea3167)が斎王の傍らにいる別嬪なお姉さん、天照大御神をチラ見しては嘆息を漏らすかの様に呟くと、それをしっかりと耳にした神は断言すれば彼はその強気な態度を前に呆れるが鋭い視線にて一瞥されると、今度は嘆息を漏らして後に軽口を叩く。
「それにしても復活した天照様って臍出しなのか‥‥いや、別に見ていませんよ? 見てませんったらははははー?!」
「不潔な考えを持つ輩は好かぬ」
 がそれは最後、大分出力を絞った陽光の煌きが直撃によって悲鳴に変わると鼻を鳴らす天照‥‥その様子と頭部がしっかりこんがり黒焦げになる蒼牙を見届けた後に大宗院鳴(ea1569)か、以前の一件にて懲りている筈なのに
「‥‥やはり何か、理不尽な様な気も」
 ボソリと呟くも無論、その微かな呟きをも聞き止めた天照大御神はと言えば氷よりも冷たいだろう視線を彼女のみならず皆へ浴びせると、直後の反応は決まったもので
『いえ、何でもありませんっ!!!』
「天照様には惚れ惚れ致すのぅ♪」
 未だ沈黙する蒼牙と、彼女を敬って止まない天城月夜(ea0321)以外の皆は異口同音に声を揃えれば、その光景をうっとり見つめる月夜。
「それにしても延暦寺との戦とは‥‥幾ら神皇様の勅命とは言え」
「いささか、度の過ぎる手段の様な気がするのだけどね」
「どうせなら皆で一緒にお腹一杯、美味しい物を食べれば仲良くなると思うんですが」
『あー、そうだね』
 それでも東雲八雲(eb8467)が次に言葉響かせれば、場の空気が引き締まる中で斎王も渋面を湛え応じるが相変わらずマイペースな鳴の提案が響くと、ある意味では納得しつつも話半分にて流せば
「ま、それじゃ始めましょうか」
 今度は苦笑を湛えたまま、祥子内親王は漸く会議の始まりを告げるのだった‥‥この会議を端に始まる動きへ、確かな責任感を抱いた後に。

●伊勢、如何動くか
「話し合いの前に少し、宜しいでしょうか」
「なぁに?」
「これを‥‥物資調達に使って頂きたく寄進致します」
 果たしてその前、口を開いた久方歳三(ea6381)は恭しく一礼をした後に斎王の前へ進み出れば、一つの包みを斎王の前に差し出すと‥‥その中身を察し、彼女は暫く考え込むが
「この使い道は話し合いの後に詳細をこちらで決めさせて頂きます、ありがとう‥‥それでは先ず、伊勢としてこれからどう立ち回るかなのだけど」
 僅かに笑んで礼を言えば直後、議案の一つを切り出すと‥‥その始めに応じたのはベアータ。
「あくまで一個人の意見ですが私は伊勢の防衛を第一とし、伊勢内の不穏分子を平定しつつ平織軍と比叡山の動きの見える位置まで救援部隊を派遣し、動きを静観かと」
 先ずは率直に、結論から彼は述べると頷く皆を見回して後に次いでその理由を明示する。
「こちらから手出しはせずに比叡山が危機に瀕した時に僧侶や僧兵、一般住民達の避難誘導や収容等を主眼とすべきかと愚考します」
「そうですね、その意見には私も賛成です。今回の一件、伊勢は完全に中立を保ち守備に内情を固めつつ都の異変に対して臨機応変且つ、民救済の為の支援物資を何時でも送れる様に準備するべきだと思います」
「今は四方を固め、志摩と紀伊も含めた近隣の民達の動向を窺い、伊勢の磐石に当たるべきかと」
 なれば紡がれた彼の理由にミラ・ダイモス(eb2064)も首を縦に振れば、月夜と揃い内政の地盤固めを推すと、他の皆も同じ意だからこそそれ以上は言葉にせず頷けば斎王。
「皆の見解は一致、ね。まぁ確かに」
 早く纏まった、冒険者からの意見に伊勢の国司に藩主を見つめればやはり、頷く彼らの反応を見届けて後に此処までの話をあっさり纏めるも、蒼牙はその細部について自身が抱く不安を吐露する。
「それもそうだが、宗教関係者もなるべく動かさない様にすべきだろうな。現状どちらかの陣営に駆けつけたいという者が多いだろうがしかし、それを許してしまっては騒ぎになってしまって余計な混乱の元だ。それは避けたい」
「‥‥‥」
 今まで言葉を発する事無く沈黙を続ける天照が不気味と言えば不気味だが、それでも蒼牙は言葉を続ける。
「だが宣言をした以上、大人しくさせるとしたらどうするかだが‥‥伊勢神宮は斎王様がいるから良いとして、ジーザス教は北畠さんに抑えて貰うしか無いが大丈夫だろうか?」
「あぁ、それは構わぬ」
 伊勢内にいる宗教関係者の掌握に斎王と国司へそれぞれ願い出ると二人、確かに頷けば一頻りの話が出揃ったと判断して斎王。
「それじゃ、皆の意見としては伊勢として今回は介入せず内部を固めながら臨機応変に状況に応じる、と言う事で良いわね?」
「あぁ、だが延暦寺から避難して来た人達が居たとしたら受け入れる事が出来るのか‥‥」
「それについては備えておきましょう、ね?」
「何ら問題はない」
 場に集う皆を見回し尋ねれば、皆が頷く中で八雲が最後にと口を開けば十分に在り得る非戦闘員の受け入れについて問うと、それに頷いて斎王は藩主を見つめれば‥‥彼は力強く首を縦に振り、八雲の問いに応じた。

●伊勢、鍛えるべき弱所
 一つ目の議案、伊勢の今後の立ち位置に付いては場に集う皆の満場一致にて中立の立場を取る事と決めれば次に今後、伊勢を舞台に起きるかも知れない乱を想定しての対策等について話し合われる。
「単純に募兵による兵力の増強や、狼煙台による連絡網の強化が必要だと思います」
「先の一件を鑑みれば先ず、斎宮にとって密偵に相当する『闇槍』の強化はしておくべきだと思うな」
 その最初にミラが言葉を発したのを端に蒼牙が先日、伊勢にて起きた内紛を振り返るからこそ意見紡げば八雲がその後に続き、自身が考えてきたその延長線となる案を語る。
「外部の助力を経て幾つかの部隊を作り対妖魔、物資と輸送手段の確保、情報の収集等々と言ったそれぞれに対応する事項をそれぞれ重点的に解決して行くのはどうだろうか」
「えぇ、そうですね。後は火災対策の点については確実に講じるべきかと」
 すればその後に追随して歳三も言葉紡げば三人が語った案に対し、果たして応じたのは国司が泰衡。
「そうじゃな、情報網については言うまでもなき事じゃが火災についてはそれが起きた際の被害を考えると、十分過ぎる程に備えがあった方が良いのじゃろうな」
 肯定的に首を縦に振れば、特には火災の話について強く興味を覚えたからこそ早急に手を打とうと直ぐに回答を返せば、頭を垂れる歳三。
「部隊の強化について、予測される敵に関する知識を高める事も手っ取り早いと思います。相手の能力を知っていると言う事は戦闘を有利に進める事が出来ますしね」
「まぁ、その点については確かに面倒臭いと言う事もあって抜かっていたが今後、考慮する必要はあるな」
『‥‥‥』
 それから話は部隊強化へ戻り、知識の点を打診する鳴へ彼女らしからぬ案にしかしレイは率直に開けっ広げな答えを返すと、皆を呆れさせるも
「それもそうだが、尾張だけに限定して言わせて貰うと‥‥かの軍には水軍がいるでござる。今後を考慮するなら対水軍に対しての防衛面も考えておく必要があるかと」
「水軍、ねぇ」
「正直に言えば、厳しい相談だな。これから伊勢で水軍を編成したとしても実戦での運用は何時になるか。確かに何らかの策は講じる必要こそあるとは言え‥‥」
 それなりに付き合いがあるからこそか、月夜は気にした風もなく彼の次に言葉響かせるが‥‥これには斎王と藩主、彼女は流しても良いと後で付け加えているにも拘らず揃って渋面を湛えながらに答えを吐けば、この最後の話だけは会議が終わるまで纏まる事はなかった。
 だがそれを差し引いても、比較的に有意義で積極的な話し合いになったと後に斎王は語ったとか語らないとか。

●その他、何かあったっけ?
 そして議題も最後、各々が携えて来た様々な疑問に付いて皆で頭を寄せ解消する段階へ移行する。
「天照様と猿田彦様以外を呼び出す事は出来ないのでしょうか。もし出来るのなら、その方に延暦寺の防衛をお任せになるのも良いと思います」
 此処までの間、非常に長いものではあったがそれでも鳴は集中力を珍しく切らせる事なく、近頃各地にて降臨している神々について今回の一件に携わって貰えないかと尋ねるが
「以前、伊勢での宣言から多からずとも天津神に動きは見受けられますが伊勢でとなると、他に誰かいたでしょうか?」
「‥‥知らぬわ。それと言うておくが、虫の良い話は好かぬ」
 天井を仰ぎつつ猿田彦神は考えながら彼女へ応じ次いで天照を見つめるも、何処か不機嫌そうな彼女は鼻を鳴らし鳴を一瞥しては冷たくあしらうだけ。
「各地方の情勢‥‥特に尾張藩内部の情勢について、情報収集とそれに対する迅速な対応が必要かと。また延暦寺や各所だけでなく、朝廷や尾張藩にも働き掛けを行うべきではないでしょうか?」
「以前五条の乱の際、独立を宣言した近江の浅井長政公の動向が気になります。かの御仁は平織軍の上洛に協力するでしょうが、比叡山焼き討ちにも協力するかは定かではありません」
 その反応に鳴がしょげ、肩を落とす傍らで今度は歳三やベアータらを筆頭として皆から一斉に響いた疑問は総じて纏めると全て各地の情報に関わるもので、それを前に斎王は諸手を挙げれば
「ちょーっと待ってね、こんなご時勢だけどまだ完全にこっちの情報網が機能していないのよ‥‥とりあえず、控えている?」
「はい、抜かりなく」
「‥‥なので現状では今後の収集対象に入れ、必要に応じて対応するとしか言えないわね」
 その理由を明示して後、傍らに控えている側近へ尋ねると頭を縦に振るのを確認してから斎王は今、答えられる精一杯の回答を明示するも
「それでは‥‥比叡山近くにはあの『鉄の御所』がありますが、かの鬼達が延暦寺に味方した場合、私達は鬼達にどう接すればよいのでしょうか?」
「私達、と言うとどの立場か図りかねるのだけど単純に冒険者と言う事であれば、自身が動くべき意に従って協力、敵対しても良いと思うわ‥‥?」
 質問の方向性を変え、再びベアータが口にした疑問は伊勢として今まで殆ど接点のない鉄の御所に関わる話へ変わるのだが、それ故に斎王は無難でちょっと頼りなさげな回答を返すのみに留まり、皆はちょっと不審げな視線を送るが
「はい、それでは他には?」
 歯痒い答えしか返せない自身を自覚するからこそ、先よりもはっきりとした口調で次なる疑問を皆へ尋ねれば今度、果たして声を発したのはミラ。
「所でジーザス会の行動ですが、扇動されている気がします」
 此処で漸くジーザス会の事に及べば彼女はそのまま、自身が抱く所感を紡ぐ。
「とは言え、ジーザス教徒全てに対し弾圧を加える様な状況では争いは増すばかり‥‥伊勢内のジーザス会及びジーザス教徒に、この度の戦いに加わらない事を条件としてジーザス教徒と延暦寺の和解が図れる様、伊勢から働き掛けられないでしょうか」
「でも肝心のジーザス会の頭が何処にいるのやら」
「アゼルは動いてくれようも、果たしてそれが通るかは‥‥」
 彼女の言う事には確かに一理あり、だがそれを果たす為の人物が存在は彼らも知る筈はなく‥‥この案件についてもまた前向きに検討すると無難な回答のみで終わった。

●会議も終わり、天照立つ?
「それでは‥‥一先ずこの場は終わりとします、色々と至らない所ばかりで悪かったわね。それにも拘らず皆、様々な意見をありがとう」
「いえ、それではお暇致します」
「やれやれ、神と魔王との戦い‥‥ね。何時の間にか凄いものに巻き込まれてたもんだがまぁ精々、出来る事は頑張らせて貰うわ」
 やがて長きに続いた会議が漸く、斎王の言葉を持って終わりが告げられるとミラと蒼牙の場を辞する挨拶が響いて後、皆が斎王の間を退出すれば‥‥場に残されたのは斎王と天照、レイの三人のみ。
「それでは妾は行くぞ?」
「行くって‥‥どちらへ?」
「決まっておる、戦場じゃ」
 その静まり返った場の中、唐突に天照が踵を返すと同時に呟いた言葉を聞いた祥子は太陽神が言う言葉の意味が分からず尋ねると、単刀直入に応じる神へ驚きを禁じえず狼狽を露わにするが‥‥それより後はまた別の話となる故に此処での記載は控えるも、否応なく伊勢もまた大きな流れへ飲まれるのは明らかである。

 果たしてこれより後、伊勢の命運は‥‥。

 〜続く〜

●コミックリプレイ

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