天空烈火
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■ショートシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:10 G 85 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:05月24日〜05月29日
リプレイ公開日:2008年05月31日
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●オープニング
●伊勢、会議の後に一騒動
「それでは妾は行くぞ?」
果たして伊勢にて開かれた、非常に重要な会議が無事に終わり皆が斎王の間より出て天照大御神と斎王こと祥子内親王、そしてレイ・ヴォルクスのみがその場に残された中‥‥そう言葉を発したのは天照大御神だった。
「行くって‥‥どちらへ?」
「決まっておる、戦場じゃ」
無論、その呼び掛けに対して尋ねたのは斎王だったがその疑問を前に太陽神は愚問だと言わんばかりに鼻を鳴らし応じれば
「あの宣言だけで抑止とは成り得ぬ、そして主らが動かぬと決めたのなら妾が動く以外にあるまい」
「しかし‥‥!」
「単身で向かう故、主らの足は引っ張らぬし適当な所で引き上げてくるわ‥‥あくまで主らの望みはこの戦の早期終結と、『敵』の抑止なのじゃろう。ならば妾が動いた方が一番に早いわ」
自身が行動の真意を次いで紡ぐと、言うまでもなく慌てふためく斎王は抑止の言葉を投げ掛けようとするも、それよりも早く天照は自身が行動の指針だけは確かに告げて、背後にあった窓から中空へ身を投げ出さんとし
「レイ!」
しかしその直前、斎王の言葉が響けばレイが無詠唱にて魔法を完成させたのはほぼ同時だったが‥‥五節御神楽の長が完成させた拘束の魔法は彼女を縛る事叶わず、やがて二人の視界から天照の姿が掻き消えると
「ふむ、効かなかったか‥‥ならば至急、少数で天照の回収が手配を済ませて来る」
直ぐにレイも次なる行動へ移るべくやはり窓から身を躍らせれば、一人場に残された斎王は溜息を堪え切れずに呟くのだった。
「血気盛んなあの人の性格の事、すっかり忘れていたわ‥‥」
●
あれから天照大御神を追いかけたレイだったが彼でも途中、その追跡を振り切られれば止むを得ずその足を京都の冒険者ギルドへ向けると今回の一件、ギルドへ依頼として託す事とする。
「‥‥と言う事だ」
「全く、何と難儀な依頼を‥‥」
「何、俺も皆に着いて行く。問題はないだろう」
「‥‥‥」
かくかくしかじか、と言う事でその詳細を話し終えるとやはり斎王と同じく嘆息を漏らすギルド員の青年は、次いで彼の根拠のない自信も聞いて尚も疲労感を覚えるが
「延暦寺の方へ向かい可能な限り、早急に天照大御神を連れ戻すと言う事で‥‥良いな」
「あぁ」
目の前にいる男は夏も近付いているのに相変わらず皮尽くめで胡散臭さが爆発しているが、それでも今の情勢から考えればこの事態は伊勢にとって不利益以上の何者でもなく‥‥そして今後、これを引き金にして起きるかも知れない無用な戦を避ける為にも青年は首をやがて縦に振るが我慢出来ず、ボソリと思った事をそのままに言葉にして呟く。
「‥‥正しく神とは、浮世離れしているな」
「全くだ、それには同意しよう。では済まないが至急‥‥頼む」
するとそれにはレイも同意すれば、珍しく意見が一致した事に青年は驚くが‥‥それには微笑のみを返して胡散臭い彼、ギルドの片隅にある椅子へ腰を掛けながら皮の帽子を脱いで頭を垂れるのだった。
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依頼目的:戦場へ向かった天照大御神を可能な限り至急、伊勢へ連れ戻せ!
必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は各自、準備しておく事。
また、必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
(やるべき事に対し、どの様にしてそれを手配等するかプレイングに記述の事)
日数内訳:目的地まで二日(往復)、依頼実働期間は最大三日。
対応NPC:祥子内親王(同道せず)、レイ・ヴォルクス(同道)
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●リプレイ本文
●天空烈火
「邪魔じゃ、退けよ有象無象がぁっ!」
果たして戦場の片隅、空の高みから猛烈な熱線を放ち咆哮轟かせたのは天照大御神‥‥彼女が放った一撃は平織軍の片隅でも容赦なく抉り薙ぎ払うと尚も速度を上げ、平織軍の本陣へ迫ながら声も高らかに己が名を告げる。
「妾は天照大御神、天津神の頂点が一柱なり!」
そして一瞬の後、咆哮と共に再び放たれた熱線は地を切り裂き、灰燼へ帰す。
「魔王が首‥‥妾が陽光の刃にて断ち切ろうぞ!」
だがそれは中枢、平織虎長がいる所までは至らず‥‥何時取り出したか、碧の光放つ穂先携えた槍を掲げれば遂には直接、本人へ躍り掛かった。
「‥‥となっていたらどうする?」
「いや、流石にそれはないかと‥‥それに脚色し過ぎでは?」
と京都の冒険者ギルドを発って急ぎ、延暦寺が僧兵達と平織の軍が衝突しているだろう戦場へ向け、歩を進めながらレイ・ヴォルクスが脚本による『天照様、平織軍を屠る』と言う題目の大筋が話を語りながら、同道する冒険者へと尋ねれば自身の上司とは言え呆れルーティ・フィルファニア(ea0340)は言葉を返すが
「思えるか?」
「珍しく、問答のつもりでござるか?」
それでもレイは改めて、皆をまた見回して尋ねる。
神だからこそ人とは懸け離れた力を有している事を、そしてそんな存在を果たして解する事が出来るか‥‥その覚悟を確認すべく。
そんな彼の思惑など知ってか知らずか、それでも穏やかに笑んで次に応じたのは天城月夜(ea0321)。
「答えは応、でござるよ。時間がない故に説明はしなくて良いな」
「先ずは天照様を見付けないと」
「まぁ、及第点だな」
躊躇いも見せず、断言すればルーティに皆も続いて頷くと‥‥その反応に相変わらず被る皮の帽子の唾を下げながらレイ、呟かれた言葉の割に笑みは隠せず。
「しかし、伊勢に関わる者であるのを隠せとは言え‥‥既に伊勢の者なのは明らかな気も」
「えぇと‥‥どちらかと言えば、そうですね」
そのやり取りの後、しかし直後にガイエル・サンドゥーラ(ea8088)は斎王に刺された釘の事を思い出して溜息をつけば緋芽佐祐李(ea7197)もまた彼女に倣い頷くと次いで揃い、皮尽くめの男を見つめる。
「何故にこちらを見る」
『‥‥何でも』
すれば二人のみならずやがて皆の視線を一手に受ける、胡散臭い男は果たして問うも頭を左右に振って全員が応じれば
「ともかく、可能な限り早く事を成す必要がある‥‥急ごう」
「えぇ、そうですね」
その何時もと変わらない緊張感のなさを今は引き締めるべく東雲八雲(eb8467)が声を響かせると神楽聖歌(ea5062)が彼に頷き応じれば、一行は早く天照大御神を先ずは捕捉するべく道中を急ぎ、駆けるのだった。
●天照様を探せ!
「丁度この辺りで見失ったな、方向はそうだな‥‥比叡山の方か」
遠くに見える狼煙を見つめながら、彼方を指さし佐祐李の問い掛けに応じるレイはやがてその指先を比叡山の方へ向け、止める。
「‥‥とは言え、あの容姿でもこの戦場の中から探すとなると流石に骨ですね」
「しかし、やらない訳にも行かない」
「勿論です、それでは手筈通り二手に分かれて探しましょう」
皆がいる位置からは未だ遠くながら、それでも人の並が押し合いへし合っている様がまざまざと伺え、聖歌は嘆息を漏らすが厳しい口調で八雲が言葉紡げば頷きながらルーティも彼方の山を見つめたまま一行へ告げると、いよいよ動き出す一行だったが
「それでは、気をつけて捜索に当たってくれ」
「少し待て、レイ。何処へ行く気だ‥‥」
「空だ」
羽織る皮の長衣を珍しく脱いで抱えているレイを見てガイエル、彼の行動こそ何となく予想出来たからこそ念の為に聞けば彼の答えが場に響くより早く彼女は彼の両肩を掴み、諌めるのだった。
「これ以上、事をややこしくする要因を増やすのは勘弁してくれ‥‥」
鋭い眼光にてレイをねめつけながら。
●
と言う事で陸の班、佐祐李と聖歌に八雲‥‥それと渋々ながら加わったレイの四人は戦場の只中、両軍の中をあちらへこちらへ彷徨っていた。
「迷子が得意な、方向音痴の仲間を探しているのですが‥‥こんな方を何処かで見掛けませんでしたか?」
その面々、どちらへ着く事無くそれらしい素振りにて振舞っては両軍から天照大御神のその行方について遠回しに尋ね回る‥‥この行動は確かに正しいと言えるだろう。
「今の所、怪しまれずに推移しているな」
「えぇ、これだけ慌しい中です‥‥気にする余裕はないでしょうね」
何せ戦場の末端とて漂う緊張から人探しをする一行の事等、聖歌が言う様に仔細に及ぶまで確認を取ったりする余裕等ある筈もないのだから、その捜索は比較的容易に進んでいるかの様に見える。
「‥‥とは言え、やはり地上は人の壁が立ちはだかっていれば早々簡単には見付からないか」
だがレイが次に言う通り、あちらにもこちらにも多過ぎるまでの人がいる以上は幾ら特徴強く目立つ筈の天照大御神とは言え、未だ視界の片隅にも映らない。
「ともかく、私達が頑張る他にありません。私達が手間取っている内にも天照様は‥‥」
しかしそれでも、佐祐李は現状故に覚える微かな焦りを何とか押さえ込みながら強く言葉発すれば‥‥それに皆、頷いて後に行動を起こすも
「はい、それでは私は向こうの方に」
「なら俺は、仮設村の方へ‥‥」
「‥‥しょうがない、それならば俺は戦場の方へ」
聖歌と八雲は見送りながら、最後に踵を返したレイだけはなびく長衣を掴んだ上で釘を刺す。
「やはり、レイさんはどうしても目立つので八雲さんと一緒に仮設村の方へ行って貰えますか?」
「だが、有事には飛ぶぞ?」
「それは‥‥しょうがありませんか」
執拗なまでの抑止にレイはそれでも苦笑を浮かべながらしかし、自身が成せる事も最後にははっきり告げると‥‥佐祐李は止むを得ず折れ、彼と別れながら決意した。
「でもそれまでには必ず、見付け出して見せます」
●
一方、空の班と言えば余り宜しくない状況下の中にいた。
「何と執拗な‥‥」
上空からの捜索、それは確かに戦場を一望出来て天照の捜索を容易に進ませる物ではあったが‥‥逆に言えば彼女らが視認出来る位置からだと打ち合う両軍からもその存在は丸見えで、ましてやどちらの軍に属しているのか分からなければこぞって両軍から攻撃の対象として認定される。
何をする気か、何か重要な物を届ける途中か、それとも‥‥彼女らの真意もまた見えなければその存在は脅威の他にどう捉えられているか、容易に分かる。
「彼らから見れば、私達はどうやらどちらかの不穏分子として映っている様でござるなぁ」
「良く考えれば、至極当然か‥‥こうなると更に高くへ上るか、地へ降りて陸上からの捜索のどちらかだが」
そんな状況下である事に考えが及んだ月夜が地上から放たれる矢を上へ上へ昇りながら避けつつ二人へ風吹く中、呼び掛けると判断も早くガイエルは一つ提案を紡げば応じてルーティ。
「そうですね‥‥なら、このまま継続しましょう。私はまだ上空からでも下の様子が見えますので敵の攻撃が届かない、空の高みからこのまま捜索を続けてお二人は役割を分担して捜索をしてはどうですか?」
「分かった。ならば私が魔法である程度の当たりを付け、二人でその地点を重点的に捜索しよう」
「分かったでござる」
上空からの捜索が尤も有効である事を把握するからこそ自身の意をはっきり告げ、且つ二人にもこのまま継続すべきである旨を言えば、長い付き合い故に信頼するからこそルーティへ頷き、それぞれが成すべき事を成すべく動き出せば
「さて‥‥何とかなりますよね?」
彼女らより少し離れ、更に空高くへ上昇しながらルーティは覚える不安を直ぐに拭うべく、ナフカの頭を撫でながら呟くも直ぐに目まぐるしくあちこちへ視線を飛ばし、今は何処にいるか知れない彼女の捜索を再開した。
●
それから後‥‥一日目は情報を交わして一行、徒労に終わった事だけは悟りながらもそれをも英気に変えて二日目へと挑めば、ルーティは追い求めていた目標の姿を千里眼にも等しき眼で漸く捉え、翼獣を速く飛翔させ、何を考えてか今は静かに浮遊するだけの彼女が眼前へ滑り込み、声を詰まらせながら彼女の名を呼ぶ。
「やっと、見付けましたよ‥‥天照様」
「何じゃ、何用で此処まで来た。伊勢はこの戦、不介入と決めたのじゃろうが」
「勿論、天照様を止める為です」
その呼び掛けに対し天照は憮然とした表情を湛え、つっけんどんにルーティへ応じ尋ねるも‥‥その態度を前、普段の落ち着きを取り戻してかエルフの魔術師は断言すれば暫しの間を置いて神。
「ならば今、伊勢の名は背負っておらぬか」
「はい。ですが少しだけ、私達の話を聞いて貰いたく思います」
再び彼女へ問い掛けると、首を縦に振るルーティへ今度は自らが表情に薄く笑みを張り付け、尋ねる。
「妾が首を横に振ったら主は一体、どうするつもりじゃ」
「‥‥伊勢の進む道を認めないのなら例え天照様とは言え、それは私達にとって危険因子と成り得ます。なので応として頂かない限りはどうやってでも止めないといけないんです、残念ながら。伊勢と共に私達が戦う限り」
十分に有り得るだろう、天照が紡いだその問いへの答えは僅かに生唾を飲み込んだ後、口を開いては静かに‥‥だが通る声でルーティは言い切ると鼻を鳴らして後に天照は彼女の申し出に応じるのだった。
「‥‥ふん、ならば主らの話位聞いてやろうではないか。幸か不幸か弱い物虐めの趣味は妾にはないしのぅ」
●理不尽で短気で頑固で不機嫌で(以下略
ルーティの意気を買い、彼女に連れられて舞い降りた先は八雲が提案した通りに延暦寺と平織軍の衝突に際し出来た、非戦闘員が集う仮設村のその片隅。
「お力添え、感謝致します」
あれから少し後、月夜にガイエルとも合流を果たせば地上にて捜索を続けている面々へテレパシーの巻物用いて僧侶が他の皆へ連絡を取り付ければ、即座に集う一行の中でその彼女が改めて深々と頭を垂れるも形式的な挨拶は一蹴して天照は早速本題を切り出す。
「‥‥挨拶よりも妾に話したい事があると言うから足を運んだのじゃ、はよう言え」
「神である貴方が直接、戦場に出るのは危険です。ましてや悪魔と鬼と黄泉人が暗躍する戦場で‥‥神や魔王が戦うとなれば被害は甚大。またそうと知られれば民人の動揺も大きくなるでしょう。貴方はそれだけに、目立ちます」
「簡潔に纏めれば、主らは妾を止めに来たと言う事か」
すれば率直に応じた佐祐李の話を聞いて後、冗長なそれをいともあっさりと纏めて鼻を鳴らせば、彼女の相変わらず不機嫌そうな表情とは裏腹に真剣な表情で頷く一行。
「『敵』の抑止。虎長だけの事でもなし、伊勢を中心にジャパンを考えると尚。伊勢とジャパンにとって良いなら拙者は同行するだけだが、どうも雲行きが怪しく」
その中、月夜が次に先の事も見据えての確かな言葉を響かせれば一度間を置いて後、改めて天照大御神へ向けて告げる。
「先に天照様が言われた事は解る‥‥宣言だけでこの戦、何もせぬのはのぅ。ですが此処は冒険者に任せて、後ろでどっしりと構えて居て頂けぬでしょうか?」
「今は一先ず伊勢へお帰り頂けます様、お願い致します」
「心配事があれば拙者らが‥‥天照様の為、身を張る覚悟は遠に」
「‥‥妾が帰って、どうなると」
そしてそれにガイエルも続いて後、天照の眼前に身を晒して月夜は尚も言葉紡げば‥‥その言葉を気に何時もの理不尽さ全開で唐突に熱線を浪人目掛け放つと、何時ぞやの侍に放ったそれとは比べ物にならない熱量に黒焦げだけでは済まない月夜。
それでも、何時の間にか抜いた刀を杖代わりに立ったまま気を失う彼女から視線を離し、残る皆へ尚も威圧的な態度で問い掛ける天照‥‥下手な覚悟は月夜と同じ事になる、と釘を刺すかの様に。
「天照様が『魔王』と定めた虎長を討ったとしても、今の段階では世論は付いてこない‥‥それこそ反平織を謳った伊勢藩が、天照様を虚言で騙し動かしたと思われる筈。先見の明を行動に移す事こそ大事ではありますがそれ以上に不利益を被る者も確かにおり、それを考えれば今こそ慎重に動かねば更に多大な被害が今度は伊勢に、降りかかるでしょう事から」
「‥‥言われてみると、そうなのやも知れぬな」
だが、それでも‥‥だからこそか八雲が今度は天照の前へ進み出れば懇切丁寧に言葉を並べ、彼女の行動が不利益を訴えると果たして同意する彼女に皆は動揺を覚える。
まさかそこまでも考えていない、今回の行動だったのかと。
「今回、天照様が御出陣された事は他の神々の参戦を正当化しかねません。虎長が『魔王』とは言え、万民にとってこれは人の戦‥‥それに決着をつけるのも、人以外の何者であってはなりません」
「それこそ、人が人である為に必要なもの。何卒、ここは我ら人にお任せを。そして天照様は皆を見守り加護下さいます様、お願い申し上げます‥‥それが我らにとって何よりの支えとなります故に」
「まぁ、自重しろと言う事だな」
だがそれが事実でも月夜の為、引き下がる訳には行かず決然と天照へ言い放てばガイエルも静かな声音にて続き告げると最後に呟いたレイは果たして直後、皆からしばかれる。
「もう少し、俺達に時間を下さい」
「‥‥とは言え、ただでと言うのも癪に障るの」
「それならば」
そんな中、八雲は彼の頭を小突きながらも天照へ懇願すれば色々な意味で不機嫌そうな表情を湛える神が漏らした呟きに彼は果たして。
●
「‥‥この手が利くのなら、準備しておけば良かったでござるな」
「‥‥とは言え、早々手軽に出来る事でも‥‥ない!」
その翌日、ガイエルの魔法にてすっかり傷も癒えた月夜は八雲が提案した酒宴の中で酒を飲み、上機嫌に浮かれている天照大御神を見て自身も僅かとは言え考えた案に嘆息を漏らすが‥‥そのリスクは計り知れなく、提案者はそれだけ何とか言葉にして卓の上に突っ伏す。
「何じゃ、言うた割には弱いのぅ」
「‥‥天照様が、強過ぎるだけ‥‥です」
今まで何度か酒宴があったにも拘らず、持つ威厳からか見せた事のないその様子と人の姿を象る神の構造が如何様な物か知れないとは言え、うわばみと言う言葉すら相応しくない天照が浮かべる笑みを前、聖歌もまた卓の上に伸びながら呟いてそれきり動かなくなる。
「おぅい、次じゃ次! 次を持ってくるが良いわ!」
だがそんな事は気にもせず、天照大御神は皆が延びかけている事も気にせず杯を進めるのだった‥‥すっかり途中で話の腰が折れている事には気付かず。
「‥‥英国に帰りたくなって来たのは果たして、気のせいだろうか」
その最後、果たして呟いたレイはそれでも依頼は達した事に一先ず安堵だけはした‥‥後にどうなる事と、今は知れなくとも。
〜続く〜