泣く人々
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■ショートシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:6〜10lv
難易度:難しい
成功報酬:8 G 55 C
参加人数:4人
サポート参加人数:3人
冒険期間:06月05日〜06月19日
リプレイ公開日:2008年06月13日
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●オープニング
●戦が与える、混乱
延暦寺と尾張の戦いは漸く、一先ずの幕引きこそ見せる。
だがこの戦は思いの他、周りへ大きな影響を及ぼす‥‥その一つは鉄の御所。
延暦寺と組めば平織の軍に襲い掛かったその経緯から、多少の分別が付く筈もない鬼達の一部は京都の町へも雪崩れ込んだ。
鉄の御所に明らかな意思があっての行動とは言え統制に分別がある延暦寺や平織軍と違い、この介入は明らかなまでに厄介で性質が悪い事この上ない。
確かにその大半こそは既に蹴散らされているが‥‥それでも戦いが終わった今、市街に住み人々へは未だに不穏な影を落としていた。
また、不安視されるのはこの戦が混乱に便乗して活発になる者‥‥野盗の類等と言った者が良い例である、それらの存在。
この事態を前に当然の如く、戦の最中から新撰組は京都市街を慌しく動き回っていたが‥‥彼らとて京の街並みが全てに手が回る筈もなく、未だ混乱覚めやらぬ中で不安に駆られる人々はやがて、それぞれが独自に自身の身を守る為に動き出すのはこの情勢を考えれば必然だった。
●
京都の冒険者ギルドは今、各地各所からの依頼でてんやわんや‥‥理由は今更言うまでもなく、延暦寺と平織軍が衝突による影響を拭う為である。
「なぁ、なんで俺らが巻き込まれなきゃならないんだよっ」
そんな冒険者ギルドの中、声を荒げる男が一人‥‥いや、一人だけではなく複数人、いた。
身形からすれば京都市街に住むだろう人々がこぞい、冒険者ギルドへ押し寄せてはそれぞれに憤りや動揺を露わにしていた。
「戦だからな‥‥」
「あぁ、その通りだ‥‥だけど、誰も俺達を守ってくれないのかよ!」
「そんな事は、ない」
それを前、ギルド員の青年は努めて冷静に‥‥と言うよりは冷淡に現実を突き付けると、それは認めながらも一人の男が最後には語気を荒げて彼に詰め寄るも、その様子を前にしても青年は冷静なまま首を左右に振り、男性の言葉を否定すれば
「そうだ。だから俺達は此処まで来たんだ‥‥今は文句を言っている場合じゃあない」
「‥‥そうだったな」
集った人々を統率しているか、青年とそう年の変わらない男が声を響かせて他の皆を宥めると多少ながらも漸く場が落ち着きを取り戻せば改めてギルド員の青年へ今日、此処まで足を運んだ理由を彼は告げる。
「俺達が住んでいる界隈の防衛に、なるたけ位の高い冒険者を雇いたい。新撰組も頑張ってくれてはいるが‥‥京都も全域となれば、その全てにまで手を及ばせるのも一苦労だろうからな」
「まだ何か遭っての事ではないけれど、何かが遭ってからじゃ遅いし‥‥」
「鉄の御所から出張ってきた鬼達がまだ何処にいるかも知れない‥‥こんな状況で町だけは何も起きないと考え、悠然に構えている方がどうかしている」
「それにこの情況を鑑みれば、他に何があるか知れたものじゃあないし」
「‥‥でも、俺達に家族だけでも力は」
すればそれを皮切りに他の者も次々に口を開き、言葉紡げば‥‥彼らの不安を目の当たりにギルド員の青年はそれを途中で遮って、先より幾分柔らかな口調にて場に介する皆へ告げるのだった。
「分かった、みなまで言うな。今の状況を察すれば十分にその心中は察する。だから少しだけ、待って欲しい‥‥この情勢下、ギルドとしてもどれだけ希望に沿えるか分からないが、全力を持って皆の為にも動こう」
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依頼目的:京都の一画の防衛及び近隣住民の慰安等を行なえ!
必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は各自、準備しておく事。(但し、金銭があれば現地調達可)
また、必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
(やるべき事に対し、どの様にしてそれを手配等するかプレイングに記述の事)
日数内訳:依頼実働期間のみ、十四日。
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●リプレイ本文
●泣く人々
京の街並み‥‥何時もであれば落ち着いたその雰囲気の中、緩やかに闊歩する人々で賑わっている面影はある筈もなく、少なからず戦の影響を被った人々は意気消沈と佇めば街並みのあちこちに陰鬱な影を落としていたが、それでも戦が終わった以上は何時までも悲嘆に暮れている訳に行かず、人々はそれぞれに動き出していた。
「京を巻き込む戦いに、当然ながら民人は苦しんでいるのですね」
「これが、現実だ‥‥」
その町が片隅を眺め、果たして招かれた冒険者が内の一人である神木祥風(eb1630)が改めて、その光景に耐え切れず視線を逸らしながら呟くも‥‥依頼人が町人の男性は力強く言の葉を紡ぎ、確かに街並みを厳しい眼差しで見つめれば
「何時の世も権力者同士の争いで一番多く犠牲になるのは、それに巻き込まれた力の無い人々。少しでも多くの方が、元の平穏な生活に戻れる様にしたい所ですが‥‥」
「それでも、僅かでも力になれれば‥‥尽くさせて頂きますね」
「‥‥宜しく頼む」
それに追随して今まで多くの人と人との諍いや争いを見てきたからこそ、エルフの魔術師がゼルス・ウィンディ(ea1661)はその過去を思い出しながらもまた起きた、今回の『戦』に泣く人々を見つめ、しかしそれでも自身らに何処まで出来るかは彼でも分からず率直な想いを口にするが‥‥所所楽柚(eb2886)が次に発した言葉は事実に違いなく青年が皆へ頭を垂れると、頷く一行。
「とりあえず、この界隈を守れば良いのですわね?」
「あぁ、とは言えそれなりに広いのだが‥‥大丈夫か?」
そして次いで、言葉を響かせて改めて依頼の概要を神剣咲舞(eb1566)はなぞるが‥‥頷く青年がその最後に言い淀めば、四人しかいない冒険者を見回してやはり率直に不安を口にすると、柚。
「た、確かに‥‥そうですね」
「まぁ、なる様にして見せますよ」
「久々に、やり応えのある依頼かも知れないわね」
何処となく、と言う程に堂々とは振舞えず自信なさげにおどおどとやはり彼女も不安を抱くからこそ青年へ最初に応じるが‥‥それにはすぐ祥風は断言し、咲舞は不敵に笑んで応じると苦笑を湛えながらも青年は再び頷けば、それを気にして動き出す一行。
「さて、それでは‥‥一先ず土地勘を身に着けるべく、見回りも兼ねてこの辺りを巡ってみましょうか」
ゼルスが提案する通りに場と状況の把握をすべく、一行が二週間の間も滞在する街並みを見て回る事にするのだった。
●これからの道
冒険者が京都の街並みの一角を防衛する様になって、三日目‥‥界隈の道筋や人々の顔もそれなりに把握出来てから後、一行は人数こそ少ないが散ってそれぞれに出来る事をすべく邁進する。
「皆さんもご存知の通り、今の都は戦の影響で何処も慌しい状況にあります。助けを待つばかりではいけません。長い時間を耐えて過ごすより、その時間に自分達で出来る事を一つずつ片付けていきましょう」
その中、街並みの一画に集う青年達を中心とした男性陣を前に声を発したのはゼルス。
「それは‥‥自分の身は自分で守れ、って事か」
「えぇ。そしてそれは無論、戦いに際しても同様です」
暗にそれが何を言うか察し、若者の一人が確認すべく声を響かせれば‥‥頷いた魔術師の目前にいる男性陣は揃い、それぞれに複雑な表情を湛える。
「それは確かにそうだが‥‥俺達に、出来るのか?」
「個々の力は劣ります、ですがその分は数で補えばいいでしょう」
「とは言ってもよ‥‥」
そして次に、不安を口にする人々を前に彼は場に居合わせる彼らの心中こそ察して妥当な案を言い、不安を拭おうとするが‥‥その言葉だけでは足りず、やはり言い淀む一人の青年に魔術師は、暫しの間を置いて後に緩やかに口元へ弧を描いては再び口を開いた。
「確かに厳しい事を言っていると自身、自覚しています。ですが‥‥出来ない事は、口にしませんよ? 後は、皆さんの勇気一つかと私は思います」
因みにこれを機に、自身らが出来る範囲での活動と言う事で自警団が結成されたのは冒険者達がこの界隈を立ち去ってから後だった事をここに付け加えておく。
「力仕事ならお手伝いしますわ」
「あぁ、済まないねぇ」
一方で咲舞、所々で鬼の襲来からか大半は軽微ではあるがそれでもあちこちが崩れ落ちている街並みの中を必死で修復する大工らの手伝いにと、専ら力仕事に励んでいた。
「それにしても‥‥」
そして改めてまじまじと崩れる家屋の群れを見つめ、咲舞は整った表情を歪める。
「酷いもんじゃろ、でもこれだけで済んだのは幸いと言えば幸いじゃ」
「怪我人も、この中にいる人だけですか?」
「あぁ、思いの他に少ないが‥‥それでも、あの惨事は容易く拭える筈もない」
すると彼女のその表情から内心を察してか、匠の大工だろう老人が咲舞に倣って表情を歪めながら苦々しい声音で呟くが、それでもこの界隈の被害が街並みの見た目の割には大きくなく今はそれだけに縋る様、無理に顔を綻ばせるも‥‥次に響いた浪人の疑問に匠はそれ以上の無理叶わず、改めて嘆息を漏らすが
「湿った話になったか、ともかく梅雨も近い故に早くこの家屋は直しておきたいんじゃ」
「‥‥そうですわね。そう言った話なら尚の事、早く直してしまいましょう」
やがて場に漂う微妙な雰囲気に自身で気付き、頬を掻きながら目前の大きな家屋を見つめると‥‥表情こそ引き締めながら、声音は努めて柔らかく響かせて咲舞は手近にあった木材を抱えた。
●対なる、本性
果たして冒険者達が訪れてより、その界隈に住む人々の中には安心感が芽生えるも‥‥それでもトラブルがなかった訳ではない。
「それならそうと言って貰えれば‥‥」
「お前らが何をしてくれるって言うんだ、施しか!」
例えば、炊き出しの際に住民達が起こした揉め事に際し、気付いたゼルスが素早くその間に入り話を聞けば、配布された食料の多少に関する些細な事で魔術師はすかさず騒動の発端である男性を宥めようとするが‥‥唐突に怒りの矛先はゼルスへ向けられる。
「お前らだって結局、変わらないんだよ‥‥平気で戦をして、終われば終わったで俺達の事よりも対外的な事ばかり気にする連中とな! 俺達、力のない人間の事なんかこれっぽっちも‥‥!」
今まで抑圧されていたからこそ鬱憤が爆発すれば自身が今、置かれている境遇の発端を間接的にとは言え担うだろう冒険者へ絶叫すれば、それも事実であるからこそ静まる場の中。
「‥‥考えていなければ、此処まで来ませんよ?」
「確かに、貴方は犠牲者ではありますが‥‥それでも、生きているのなら今もこれからも歩き続けなければならないわ。その覚悟があるからこそ此処にこうして今、生きているのでしょう」
「取り敢えず、もう少し落ち着いて貰いましょう。その後で話は聞きましょう」
それでも凛と柚の声が場に響けば、咲舞も次いで言葉を紡ぐとその最後に祥風が動き叫んだ町人へ声を掛け、共に歩き出しては一先ず炊き出しの場を離れると‥‥二人の背中を視線で追いながら、浪人はポツリ呟く。
「‥‥戦って、人の心も傷付けるものなのよね。振り下ろす刃のその切っ先で切り裂くのは、目前の敵だけじゃない‥‥間接的でも何処かに繋がって、全く関係のない誰かも傷付けているんだわ」
「それでも、私達は‥‥」
そして最後に響いた、ゼルスの呟きはその最後までは響かず唐突に吹いた風に掻き消された。
●
それより時折、小さな騒動こそあるも殆どは平穏に時間だけが過ぎていく、またとある日。
「見ない顔だが‥‥どの宗の者だ?」
怪我人達を収容する、真っ先に大工達が修繕を試みていたこの界隈で一番に大きな家屋のその内部にて祥風は未だ多い怪我人の手当てをしながら何時もの様に代わり映えのない問答を、何時もとは違う延暦寺の僧だろう男性と交わしていた。
「‥‥それに答えを返すよりも私は、目の前の方々の苦しみを取り除きたいのですが」
そして何時もと変わらないその問答を受けた青年は多からずともまた揉めるだろうか、とぼんやり思いながらも目前で寝ている怪我人に巻かれている包帯を交換する手だけは止めず、やはり何時もと同じ答えを返しては何があっても良い様に心構えだけはするも
「‥‥そうだな。今はそれよりもやるべき事がある、か」
珍しく今日に限っては絡まれる事無く、むしろその祥風の僧は傍らに座れば別の怪我人を治癒し始めると、その光景を目の当たりに最初こそ驚きながら‥‥しかし微笑だけ湛えると彼は再び、目前の怪我人に視線を向けて上向きとなってきたその容態に今度は明らかな安堵の笑みを湛え、そして周りを見回す。
「一先ず、危なかった皆さんも何とか山を越えた様ですね‥‥」
この界隈に着てすぐの頃から怪我人の手当てに当たっていた祥風、その復調振りを漸く確認出来た事からさっきの僧も今までとは違う反応を見せたのかと今になって気付けば‥‥その功労者を笑顔で労い、励ますのだった。
「後もう少しで、動ける様になりますよ‥‥頑張りましょうね」
人とはかも弱く、かも強い‥‥改めてそれを目の当たりにした冒険者達の胸中に抱く想いとは。
●激突、火事場泥棒
依頼を受け、この界隈を訪れてから一週間‥‥少しずつではあるが復興の兆しが見え始めて来た、その日の夜。
「戸締りは大丈夫ですか‥‥?」
「あぁ、ありがとさん」
何時もの様に人手不足から個々で動いては夜間の戸締りを確認して回る冒険者の中で柚もまた漸く最後の家を訪れては呼び掛け、返って来た答えに笑顔を浮かべれば他の皆と落ち合うべく借りている家屋の方へ足を伸ばすも‥‥その途中、誰もいない筈の家のその中から物音がする事に気付けば暫し考え込んで後、異変かどうかを確認すべく静かにその家の戸を開ける。
「わっ‥‥?!」
すると果たして暗がりの中、蠢く幾つかの人影を見止めれば驚き思わず声を上げてしまう柚。
「見付かった‥‥?」
「わわわわっ!」
無論、上がった声に影が気付かない筈もなく揃い彼女の方へ視線を投げるが‥‥それよりも早く、踵を返して柚は慌て呼子笛を吹くも
「ぺぎ!」
「悪いが、自分の不運を祈りな‥‥っ」
それに集中し過ぎてか、平坦な道の真ん中で唐突に転ぶとその隙を逃す筈なく、家屋から出て来た不審な影達は彼女に追い着くと躊躇いも見せず一人が得物を抜き放ち、柚へそれを突き立てようとするが‥‥それよりも早くその影の足元が光に穿たれれば、怯んだその暇に闇の中から飛び出し柚と火事場泥棒達の間に割り込んだのは言うまでもなく、三人の冒険者達。
「この辺りは老朽化が進んでいる家屋が多かったので引き払って貰ったばかりなのですが‥‥それを狙ってとなると、火事場泥棒ですか」
そして先の魔法を放った祥風は眼光も鋭く彼らをねめつけ、その素性を察するが‥‥返ってくる答えはなく、しかしその騒ぎを聞きつけて辺りの家を漁っていたのだろう他の仲間達がわさわさと現れれば、抜き身の得物を未だぶら下げる男は仲間達を一喝する。
「‥‥相手はたった四人。冒険者とは言え、数ではこっちが上だ。ここでやっちまえばわかりゃしねぇ」
「それでも、火事場泥棒に遅れを取るつもりは更々ありませんわ」
「何を‥‥!」
彼の言う通り、数で言えば冒険者達が四人に対して火事場泥棒はそのゆうに三倍‥‥やがて一行と対峙する泥棒らはそれぞれに持つ得物を抜き、構えるがそれでも咲舞は悠然と笑んでは赤銅の刀身を持つ刀を抜き告げると、火事場泥棒の一人が応じては彼女へ飛び掛らんとしたその刹那、こてんと地に転がる。
「すいませんが、確かに多少なりとも私達が不利の様なので先手を打たせて頂きましたが‥‥宜しかったですよね?」
すれば次いで、涼しげな声を響かせて祥風は尋ねる‥‥先のやり取りの暇、コアギュレイトの詠唱を織っては今も地に転がる彼を縛り上げた事に今更ながら、承諾を得るべく。
「良くねぇっ!」
「それでも貴方方には申し訳ありませんが、早々に退場願いましょうか‥‥っ!」
無論、その挑発に応じる火事場泥棒の一人は激昂も露わにして叫ぶが‥‥やはり何時の間にか風を纏うゼルスの、決然と響いた声と共に辺り一帯を吹き荒れる暴風を前にすれば次の瞬間には自身らが吹き飛ばされる事を悟りつつも、悔しげに歯噛みだけはするのだった。
●微かでも、僅かでも‥‥それでも
やがて、依頼期間である二週間が経てばその翌日の早朝‥‥一行はこの間、京都の一角に住む人々の為に尽力した事を改めて静かに朝焼けに照らされる街並みを見つめながら振り返る。
「お世辞にも、復興と言う点では進捗は芳しくなかったかも知れませんね‥‥」
「ですが、出来る限りの事はしたつもりです」
「まぁ‥‥酷い怪我を負っていた人は治したし、治安の維持にも努め、家屋の修復や取り壊しもしたのが主な所かしらね?」
果たして柚が最初に紡いだ言葉を皮切りに、確かに彼女の言う通りでこそあったがそれでも祥風は自身が成した事に誇りを持つからこそ惑いも見せず断言すれば咲舞は指折り数えて改めて自身らが成した事を呟くが
「‥‥名残惜しくありますが、期間は過ぎました。私達も日常へ戻りましょう」
それでもゼルスは既に依頼期間も過ぎたと告げ、踵を返せば四人は静かな界隈を後にしようとするが
「‥‥寂しくなるねぇ」
「え?」
唐突に響いた老婆の声に思わず柚が振り返れば‥‥続き振り返った一行の目前には何時の間にか、この二週間の間に世話をし世話になった人々が全員ではないながらも何時の間にか居並んでいた。
「礼も告げずに帰す程、私達は無礼ではないよ」
「色々と迷惑ばかり、掛けたと思うが‥‥ありがとう」
「皆がしてくれた事の大小に関わらず、感謝しているよ」
そして、依頼人である青年が不敵に笑んで口を開けばそれをきっかけにして場に集う町民達はそれぞれ、一行へ礼を告げると皆は握手を交わして彼らへ応じるが
「‥‥また縁があったら、会いましょうね。それでは」
ゼルスだけは一歩も動かず、その光景を見つめたまま‥‥やがて一段落着いた後に言の葉紡げば、その場より誰よりも早く歩き出して去ると他の三人もまた頭を垂れて彼に追随すれば
「意外にドライだねぇ」
「そうでも、ありませんよ‥‥」
その傍らに並んで咲舞は茶化すも、遠慮がちな響きを含んで言葉を紡いだ魔術師の双眸は微かに濡れており、それに気付いたからこそ祥風は笑顔を持って願うのだった。
「‥‥これを機に、復興が一層進むと良いですね」
〜終幕〜