市街復興

■ショートシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:1 G 4 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:06月09日〜06月20日

リプレイ公開日:2008年06月18日

●オープニング

●戦終わり
「‥‥とりあえず、終わったか」
「その様じゃな」
 伊勢の斎宮、久々に稼動を果たした『闇槍』が一人の得てきた報より尾張が平織軍と延暦寺の戦いが終わった事を知れば、安堵してか呟き漏らすレイ・ヴォルクスへ天照大御神も相槌を打つと次いで彼方を見ていた視線を斎王の方へ向けて、神はその口を再び開く。
「伊勢の内情はどうなっておる」
「まぁ、進むべき所は着実に進んでいますよ」
「‥‥敵の動きは?」
「黒門の様子は未だ、窺い知れず‥‥」
「焔摩天らの動きもようと知れませんね、いやはや」
 率直なその問い掛けに斎王も簡潔に応じれば、返って来た答えに微かだが眉根を顰めつつも再三、響いた神の疑問へ今度は十河小次郎に猿田彦神が続き彼女へ答えるが‥‥それを機にして唐突にも顔を紅潮させる天照様。
「‥‥むがー!」
「あぁっ、天照様がご乱心を!」
「今少し、落ち着いて待てよな。一応皆だって頑張って探しているんだからよ」
 簡潔な報告だからこそ分かる進捗芳しくないその有様に思わず、手近にあった卓をすらりと伸びた足で激しく蹴り飛ばせば憤慨を露わにすると、直ぐに回りの皆から宥められる彼女だったが、言うまでもなく即座に落ち着く気配はない。
「‥‥さて、それじゃあ京都の方へ足を伸ばしましょうか?」
 その光景を前に、斎王はやるべき事を思い出して踵を返す‥‥決して天照様から逃げる訳ではない、と自身に言い聞かせながら。
「‥‥物資の方は既に、揃ってある」
「ありがとう、護衛の手配もしているし‥‥後は現地のお手伝いさん探し位かしら」
「そちらも既に、手は打っている」
 そして斎王の間にある襖の一つの前で固まっていた伊勢藩主が藤堂守也は彼女の視線を受け我に帰ると、端的に頼まれていた件について報告をすれば‥‥笑みを返して彼女、人員の手配も既に済んでいると言うレイの言葉を受ければ尚も騒がしくなる背後の方は振り返らず、足早にその場を去るのだった。
「さて‥‥これから漸く、忙しくなるわね」

 一方の京都、レイの命を受けて冒険者ギルドを訪れていたのはエドワード・ジルス。
「‥‥久し振りだな」
「‥‥うん」
「今回は‥‥伊勢からの用件かと思うが、何用だ?」
「京都の‥‥復興支援」
 相変わらず寡黙な調子でギルド員の青年に応じながらも、彼は手早く用件を切り出していた。
「それの、お手伝いしてくれる人を」
「探しているか」
 そんな彼の調子に合わせながらも最後までは待ち切れず、エドの口から途中まで紡がれた言の葉は遮り言えば幼き魔術師、表情を変える事無く首を縦に振るだけ。
「ふむ‥‥復興資材も持ち込んでの対応か、伊勢らしいと言えば伊勢らしいな。尤も今回の一件、これ以外に出来る事はないか」
 そんな彼の様子に苦笑を浮かべながら、仔細が記された文に目を通して青年は多少ながら伊勢の内情を知るからこそ、今更になって動き出す伊勢の対応に納得すれば再び視線をエドに戻すと
「依頼自体に問題はない、人員はこれから集めるから暫く待ってくれ」
「うん‥‥」
 彼へ今回の依頼、その受理を告げるとやはり簡潔な返事のみ紡いで彼は踵を返し冒険者ギルドを後にする。
「さて、これから果たしてどうなる事か」
 そして彼が消えた方を見つめたまま青年はこれからのジャパンを、これからの伊勢を行先を案じて溜息を漏らした。

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 依頼目的:伊勢からの支援物資を京都へ送り届け、市街復興に努めよ!

 必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は不要、依頼人負担となります。
 また、必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
 (やるべき事に対し、どの様にしてそれを手配等するかプレイングに記述の事)

 対応NPC:エドワード・ジルス(既に現地入り、質疑対応)、祥子内親王、レイ・ヴォルクス、レリア・ハイダルゼム(出発日までに合流)
 日数内訳:目的地まで四日(往復)、依頼実働期間は七日。
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●今回の参加者

 ea0340 ルーティ・フィルファニア(20歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 ea0606 ハンナ・プラトー(30歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3167 鋼 蒼牙(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea6228 雪切 刀也(27歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea6601 緋月 柚那(21歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 eb2064 ミラ・ダイモス(30歳・♀・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 eb2099 ステラ・デュナミス(29歳・♀・志士・エルフ・イギリス王国)
 eb8467 東雲 八雲(32歳・♂・志士・人間・ジャパン)

●サポート参加者

カノン・リュフトヒェン(ea9689)/ シェルトミィ・ルーラー(eb5477)/ アレット・ロティエ(ec4865

●リプレイ本文

●戦い終わり、京都
「ふむ。話には聞いていたが、確かに酷いな」
「正直な所、思っていた程に酷くはないが‥‥それでも市街でこれだけの被害が出ているか」
 京都の街並みを前、果たして居並ぶ八人の冒険者達が目前に広がる光景を目の当たりにして揃い、呻いた鋼蒼牙(ea3167)と雪切刀也(ea6228)‥‥確かに刀也が言う通り、甚大な被害が出ている訳ではないがそれでも、これが昼夜に関わらず華やかな光景を宿していた京都かと言わんばかりの趣には彼らのみならず、他の皆も面持ちを厳しくしていた。
「暴れるだけ暴れて、後の事をどうこうなんて訳にもいかないだろ。曲がりなりにも関わったんだ、こっちもやらないとな」
「そうじゃの。それに困っている者あらば、放って置く訳にもいくまい。持てる力で支援に励もうぞ」
 そしてその風景に至る原因を、僅かながらでも担ったからこそ刀也が続き覚悟を決めて戦に望んだからこそ決意して言葉紡げば、緋月柚那(ea6601)も幼いながらに頷き応じるも
「とは言え‥‥肝心の荷はまだか?」
「そう言えば、幾ら何でも遅い気がするわね‥‥」
 京都復興に際し、今回の依頼人である伊勢の斎王こと祥子内親王と必要である復興支援の資材が未だ着かない事から蒼牙が微かに苛立ちか焦りか、露わにすれば彼の呟きを受けてステラ・デュナミス(eb2099)も滅多に遅参しない斎王の身に何かあったかと案じるが
「もう時期、来る筈だよ‥‥」
「あ、本当ですね。遠くに何か見えて来ましたよ」
 一行の微かな動揺を他所に今も寡黙なエドワード・ジルスが地の精霊達に働き掛け、探知した結果だけを皆へ告げれば直後にルーティ・フィルファニア(ea0340)もまた、瞳の中に写った光景を皆へ伝えると‥‥それから暫く後。
「待たせてごめんね、ちょっと準備に手間取って遅くなったわ」
 漸く一行の前に祥子内親王に護衛だろう、レイ・ヴォルクスとレリア・ハイダルゼムに話の通り馬に引かれ、数多ある復興支援の資材が着けば到着早々詫びる斎王ではあったが
「今回も、宜しく頼む‥‥」
「ご壮健で何よりでした」
「またー、そんなに堅苦しくしなくても」
「そうだよ、親しき仲にも礼儀ありって‥‥あれ?」
 それは気にせず、何時もの様に東雲八雲(eb8467)とミラ・ダイモス(eb2064)が恭しく頭を垂れると、その仰々しい反応には何故かハンナ・プラトー(ea0606)と揃い両の手を振っては二人の頭を上げさせ、そして首を傾げる楽師に次いで笑むと
「さて、これでやっと動けるか‥‥」
「そう言えば『五節御神楽』として動くのも大分、久し振りですね」
「まだ完全には、と言った所だけどね」
「まぁそれは追々、ね」
 その斎王の様子を前、普段と変わらない事に内心でだけ安堵しながらそれはおくびにも出さず、蒼牙が復興に取り掛かれる事だけ呟くと次いで響いたルーティの『五節御神楽』としての行動でもある今回の依頼、懐かしみを持って言葉にすればステラは頷きながらも全員の集結ではない事に苦笑浮かべ、斎王の方を見れば‥‥ゴニョゴニョと言い淀む彼女、果たしてこれから何かある様な、そんな気がしなくもない反応を垣間見せるが今はそれについて、誰も突っ込まない。
「そう言えば‥‥ちと頼まれてくれるかの? これを届けて欲しいのじゃ」
「‥‥何だ、これは」
「‥‥これか? 果たし状じゃっ!」
 そしてその一方で柚那、レイの元へ歩み寄るなり一通の書状を彼へ託す‥‥果たしてそれを手にする主は、今頃くしゃみをしながら何を作っている事か。
「どんなに深い爪痕だろうときっと、埋めてみせるよー」
「それじゃあ、張り切って行きましょうか」
 何はともあれ、面子は揃い荷も届いたからこそハンナが張り切って最初の音頭を取れば発した言葉と共に踵を返してステラが歩き出すと、いよいよ京都の復興に向けて『伊勢』の名を背負った冒険者達がその行動を開始するのだった。

●市街復興
 そして斎王達が資材の追加発注を可能な範囲、どれだけ追加する事が出来るかその算定をしつつも伊勢へ五節御神楽の派遣等を文にて飛ばす中、一行の殆どは京都でも被害が大きいと言われている東及び西地区へ赴き、人々を言葉にて励ましながら心身の治療に当たり、また危険な状態にある家屋の解体に臨む。
「では先ず、この辺りからで良いでしょうか?」
「そうですね」
 さて、一行が先ず主眼において臨むのは倒壊しそうな家屋の解体‥‥ミラが知る伝から京都市街にある『壊し屋』へ支援の依頼を願い出れば、それなりに慌しい中ではあった彼らだが以前にも世話になった事からこの場へ足を運び、今は場の状況からミラと共に先ず崩すべき家屋の選別を行い一先ずの当たりをつけていた。
「しかし戦のおかげで仕事にありつく事が出来るのは何とも‥‥複雑だな」
「ですが生憎、うちに仕事を選ぶ程の余裕はありません。今回の仕事がなければ果たして明日はどうなっていたか‥‥ともあれ、今は仕事を全うしましょう」
 そして改めてその光景を見回して『壊し屋』の中で頭首と呼ばれる割、一番に若い男性が珍しくも仕事のある情況ながら‥‥それが与えられた状況故に嘆息こそ漏らすも、年長者の男性がそれを宥めつつ仕事に取り掛かろうと促せば
「あぁ、それには同意だ。このままでは何時崩落があってもおかしくない‥‥早く、潰そうか」
「さて、この前の様に上手く行けばいいが‥‥」
「とは言え、以前ほど繊細に作業をする必要はなさそうですから余り気負わずに行きましょう」
「‥‥そうだな」
 冒険者が男性陣もまた、刀也の呼び掛けを機に動き出すが‥‥やはり『壊し屋』と共に仕事をこなした事のある八雲は正直に不安を口にし、しかし以前とは状況も違う事をミラから諭されれば緊張する身を伸ばし、解して後に『壊し屋』から借りた破砕用の得物を手に、風になびく白絹の手拭いをちらと見てからそれを振り翳した。

 そのかたや、武に長けない女性陣はと言えば炊き出しの準備やら人々の治療やら復興の為の協力者を募るべく市街を駆け回っていた。
「柴わんこらに芸をさせるのじゃ。行くぞ、月読! 須佐!」
 一行が京都にて復興の支援を行い始めてから三日目、柚那は希望の灯火とも言える子供達に柄は尾を取り戻すべく愛犬を引き連れては彼らが多くいる場目掛け、元気良く駆け出そうとし
「因みに、傍目からビーム‥‥も健在じゃ、悪い子がいればこれで懲らしめて」
「それは今回、遠慮して貰えますか?」
「冗談じゃ、流石にそこまではせんて」
 唐突に振り返っては何時の間にかいたルーティとエドの方へ振り返り、瞳を怪しく輝かせては懐から巻物取り出しほくそ笑むも‥‥それは流石に止めるルーティへ彼女も今回ばかりは自重しているからこそ、言葉を返すと
「よし、ではエドも来ると良いのじゃ!」
「うん‥‥」
 ふと考えを巡らせ、エドと会うのも久し振りと思い柚那は彼へ声を掛ければ二人は揃い駆け出すと果たして嘆息を漏らす、一人だけその場に残された魔術師。
「エドさんもいるから大丈夫だと思いますが‥‥って私も行かないと!」
 遠ざかって行く二人の背中を見つめながら、しかし唐突に自身が成そうとしていた事を思い出せば慌て、自身も連れて来たペットを引き連れ彼女らを追い駆けるのだった。

「こんな状況だと、流石に何処も人手不足ね‥‥」
 そしてステラ、市街の中を奔走しては協力者の捜索に当たるも‥‥紡がれた言の葉の響きに湛える表情は厳しいもので
「やっぱり、余り芳しくないですか?」
「あら、ルーティさん‥‥どうしたの?」
「えぇと‥‥ちょっと、年甲斐もなくはしゃぎ過ぎて。それよりも」
 その傍らを柚那とエドに遅れ、通りすがろうとしたルーティはその彼女の様子に気付くと急ブレーキを掛け尋ねれば、遅れてステラは彼女の存在に気付くと逆に尋ね返すが‥‥ルーティは真剣な表情で先の質問の答えを言葉少なく促せば
「まぁ、中々‥‥ねぇ」
「それなりに裕福な方でも、これだけの事となれば保身に走るのも仕方ないですが‥‥」
「だから私も出向いているんじゃない、それにまだ少ししか回っていないのにこれしきで諦めちゃ『五節御神楽』の名が泣くわよ」
 近くにある、小振りな屋敷から出てきたミラと斎王を見つめつつ米神を押さえ呻くと巨人の騎士もまた、ステラと同じく厳しい表情を浮かべるが‥‥それでも祥子がこの状況を打破すべく自身も赴いている事を改めて告げ、二人へ発破を掛けると
「だが、良い知らせもある‥‥」
 それに続き響いた女性の声のその主はレリア、何時現れたか知れずとも彼女は何時もと同じく淡々と‥‥しかし、口元だけ綻ばせて艶のある表情でその場に居合わせる皆へ告げた。
「追加の資材と、五節御神楽の人員が今しがた到着した。これで今よりも出来る事は増えるだろう?」

「久々にお前達に指揮する事になったな。今回の戦場は此処‥‥命を守る為と言う点では何時もの戦場と変わりない。総員、気合を入れろよ」
「応!」
 と言う事で、追加で投入された人員‥‥『五節御神楽』に属する者らへ与えられた部下を前、蒼牙は自身らの部下と久々に再会するもその最初は何時もとは違う真面目な様相にて喝を入れ、彼らもまたそれに応じればミラの隊と揃い市街の巡回へと向かう。
「さ、それじゃあ私達は私達で炊き出しでもしましょうか」
「そうだね、人手も多いし夜までには結構な量が作れそうかなー」
 そしてそれ以上に、今までより増えた人員を用いて炊き出しに臨むステラとハンナの隊だったが
「えっと‥‥うん、皆さんで頑張って下さい。わ、私は応援でも‥‥」
「と言う訳にも行かないだろう、料理が出来ないのなら材料を刻む事位‥‥」
 しかし一方でルーティ、過去に何かあってかその輪の中から唯一離れて皆を応援するも‥‥それを見止めてレリア、片手に得物の長剣を、片手に肉の塊を持ってはそれを宙へ投げ長剣振るえば次の瞬間。
「出来るだろう?」
『‥‥はい、頑張ります』
 雑にではあるが宙へ投げた肉の塊が細切れにされ皿の上に落ちる中で途切れた言葉を紡げば、ルーティと斎王は渋面を湛えながら答えを返し
「武器は使っちゃいけないでしょ」
 だがレリアはレリアで、得物を使って刻んだ事からステラに叱られたりと少々先行きは不安で、それを見守っていた人々は果たして苦笑を湛えたとか。

 だがそれでも無事に夜を迎え、見回りに出た者達も戻って来れば炊き出しを行ったその界隈では冒険者達も住民も一様にそれをつつきつつ、ハンナらの部隊『楽し隊』による演奏に聞き入っていた。
「おおぅいえぇえー」
 ‥‥果たして紡がれるその歌が何の歌かはさて置き、それでも音を紡ぐ皆が楽しそうだからこそ人々も楽しげに聞き入るその中。
「エドの番じゃぞ‥‥さて、賽の目はどう出るかの」
「‥‥うーん」
 既に夕飯を終えた刀也は柚那と時期外れな双六を用い、遊んでいるエドの元へ歩み寄れば
「大分、雰囲気が変わったな」
「‥‥?」
「いや、良い風にだが」
 以前に見た時より、何となしに宿す雰囲気が和らいでいる彼へ声を掛けると首を傾げる魔術師に侍は微苦笑を浮かべると、彼へ本題を切り出す。
「ミリートから伝言なのだが『逢えなくてごめんね』、だそうだ。只の幼馴染だか腐れ縁だが、心配もしている‥‥故にあの娘の事は宜しく頼むよ」
「‥‥‥」
 そして紡がれた、エドと恋仲で結ばれている娘の名と彼女からの伝言に刀也が抱く本心を伝えれば、柚那が傍らに佇んだままエドは表情を変えず沈黙のみ紡ぐが
「うん」
 だがやがて、はっきりと首を縦に振れば刀也は口元だけでも綻んでいる彼の表情に満足して、笑みを返す。
「いえーい、あっりがとー! それじゃあ次は‥‥」
「‥‥まだ続くのか」
「まぁ、皆も喜んでいるから良いんじゃない?」
 そして男二人、友情を芽生えさせる中でハンナらが奏でていた歌がまた一曲終わると未だ飽きずに次なる曲を繰り出せば、先の珍妙な曲に苦笑を湛えながらも十数曲は続いているにも拘らず、まだ曲を奏でる元気がある彼女に蒼牙は感心を通り越して呆れればしかし斎王は彼を宥めると
「‥‥何だ、思ったより元気そうだな」
「何よ‥‥っ、元気で悪いっ?!」
「いや、心配して損したって話だけだよ‥‥!」
 彼女の顔を覗き込み、安堵からか屈託のない笑みを湛えれば‥‥その素直な表情の変化に斎王は身を翻し、自身の動揺を悟られまいと振舞うが次には何時もの調子でおどける蒼牙へ何となくむかついて、平手を見舞った。

●限りはあれど
 やがて、伊勢による京都支援を行う期限も終わりとなる。
「とりあえず、出来る事はやったのかしら‥‥ね」
「もう暫くしてみないと結果は出ないと思うけど‥‥でも、きっとそうだと私は思っているわ」
 決まった誰からかではなく多くの人々から感謝の言葉を貰い、復興こそ目に見えて進んでいる事は伺えたが‥‥それでも、今までにあった京都の街並みに戻るまでにはまだまだ足りる筈もなく、ステラは今回の支援がどれだけ役に立ったか不安に駆られながら今も人々が慌しく動き回る街並みを見つめ呟くも、斎王は未来を信じて彼女の肩を叩き笑顔で言うと他の皆も頷けばそれを今回の依頼の結果と受け止め、それぞれに帰り支度へ着くが
「そう言えば‥‥天照様はいないのか」
「今は伊勢にいるけど、どうかした?」
「虎長を何故『邪』と判断出来たのか、詳しく聞かせて貰えればと思ったのだが‥‥」
 その中で早く準備を済ませていた刀也はレイらに声を掛ける斎王へ一つ、伊勢にて天照が宣言で紡いだ事について疑問を発すると‥‥果たしてそれに応じたのは胡散臭い格好の男。
「ジャパンに古くからいる、天使から得た情報がその根拠だな」
「‥‥え」
「尤も、その天使が何を根拠としてそこまで断定したのかは知らん。生憎と知り合いでもないから俺が聞けたのはただの、それだけだ」
 その彼の話、レイを英国にいた頃から知る者が聞けば確かな話である事は間違いないと頷けるが‥‥それでも、その話は余りにも突拍子なく場に居合わせた他の皆はただ息を呑むだけ。
「私に出来たのは、ほんの微々たる事かも知れない。だけど、それが明日に繋がると信じて‥‥ね」
「あぁ、だが大丈夫だろう‥‥子供達が笑っているのだから」
 だがその状況でも、ハンナが何時もと変わらない明るい声音にて言葉紡ぎて先に斎王が発した願いに追随すれば、この依頼を通して多く子供達の顔を見た八雲は確信して珍しく笑顔を浮かべては断言するのだった‥‥只の駒でもそれを彼らに渡した際に見受けられた満面の笑みを、そして今も辺りを駆ける子供達も同じ質の笑みを浮かべているのを見たからこそ。

 〜終幕〜