伊勢、その内情は?

■ショートシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:フリーlv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 93 C

参加人数:7人

サポート参加人数:1人

冒険期間:12月09日〜12月16日

リプレイ公開日:2009年12月21日

●オープニング

 長く音信不通だった伊勢。
 先日、警戒こそ厳ではあったが漸く落ち着いた内情を明かすも‥‥年の瀬を前に再び、静寂する。
 また再び、混乱でも起きたか。
 それとも‥‥単に知らせがないだけで実は平穏なのか。
 真実は、誰も知らない。

 と言う事で。
「‥‥宜しくお願いしますっ!」
 伊勢、と言うよりは伊勢にいる想い人が気になって気になってしょうがないミリート・アーティア(ea6226)はまたしても音信が途絶えたその内情を探るべく、同志を募って押し掛けようと画策すれば今は京都の冒険者ギルドへ足を運びその旨を訴え、依頼とするべく報酬が詰まった皮袋をギルド員の青年の眼前へドスンと置いていた。
「まぁ、依頼と言う事であれば問題はないが‥‥」
「何か問題でも!」
 そんな恋する乙女の真剣な表情に態度とは裏腹、何事か言い淀むギルド員の青年ではあったがそれしきに怯む筈もないミリートは挟む卓を気にせず、むしろ身を乗り出しては詰め寄るとむしろ彼の方が怯む‥‥そりゃあまだ、馬に蹴られて死にたくはないし。
「いや‥‥ないんだが、内情が分からないのに下手に干渉するのもどうかと‥‥何でもありませんごめんなさい」
 それでも言うべき事は言おうとして、だがやはりそれは途中でミリートの鋭い一瞥から詫びに変わる。
「‥‥ともかく、これだけは言っておくが何かあっても責任は一切こちらでは取らないから、そのつもりで」
「責任も何も‥‥問題は何も起きないし、起こさないから大丈夫っ」
 が最後には何とか言うべき事だけ言い、それに彼女も首を縦に何度も振れば漸くギルド員の青年は筆を取るのだった。
「‥‥分かった、ではこれから認めるから少し待ってくれ」

 それから少しして依頼書が出来上がれば間もなく冒険者ギルドに張り出される。
 果たして今回はどうなる事か。

――――――――――――――――――――
 依頼目的:伊勢藩の内情を探れ!
 伊勢の状況:伊勢へ至る街道等、特に閉鎖されていたり等と言った目立った異常はなし。
 外部からの観光客も普段と変わらず訪れている様で一見、大きな混乱はないと思われる。
 但しその内情については一切が不明、他藩との接触こそない様だが主要幹部の無事は確認されている。

 必須道具類:依頼期間中の保存食(移動期間分)は予め、準備しておいて下さい。
 伊勢滞在期間中は実費負担でも問題はありません。
 また、必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
 (やるべき事に対し、どの様にしてそれを手配等するかプレイングに記述の事)

 日数内訳:目的地まで四日(往復)、依頼実働期間は三日。

 報酬詳細:依頼人(ミリート)から一人6G程度。
――――――――――――――――――――

●今回の参加者

 ea0321 天城 月夜(32歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea3167 鋼 蒼牙(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea6226 ミリート・アーティア(25歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea6601 緋月 柚那(21歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 ea8088 ガイエル・サンドゥーラ(31歳・♀・僧侶・エルフ・インドゥーラ国)
 eb2174 八代 樹(50歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb3226 茉莉花 緋雨(30歳・♀・志士・人間・ジャパン)

●サポート参加者

陸堂 明士郎(eb0712

●リプレイ本文

●伊勢 〜変わらない平穏を前に〜
「‥‥まぁ、思った通りだな」
「じゃな」
 伊勢の内部へ至り、鋼蒼牙(ea3167)は目の前に広がる街の活気と人々が交わす会話の波を前に開口一番、そう呟けば艶やかな長髪を撫でながら天城月夜(ea0321)も瞳を細め、静かな笑みを持って応じる。
「一先ずは落ち着いたと見て良さそうだが‥‥とは言え実際、何があったか気になる所だが」
 そしてそんな街中の賑々しい雰囲気にガイエル・サンドゥーラ(ea8088)もやはり安堵こそ覚えるも、それはあくまで目に見える所だけと判断してまだ己の内にある不安は完全に拭わない。
「そればかりは何とも。一先ず斎王様や天照様に会って直接、お話を聞いてみましょうか」
 だからこそ、逢いたい人がいるとて依頼人の意を汲んで今は少しだけそれを我慢して茉莉花緋雨(eb3226)が皆を見回し呼び掛けると
「うっ‥‥そうだね」
 今回の依頼人であるミリート・アーティア(ea6226)は彼女の意を知らずとも言葉を詰まらせながら首を縦に振り応じれば、斎宮の方へと歩き出した‥‥内心では緋雨と同じ心境だからこそ、肩を無意識に落として。
(「今更エド君にだけ会えればいいやー‥‥だなんて言えないよね」)
 そんなしょぼくれ歩く依頼人をそれぞれ、視界の片隅に留めて他の皆は微笑を浮かべつつも僅かにだけ歩く速度を速めた。

 この場に集ったのは、ある程度でもその内をそれなりに知った者同士。
 ならば誰にせよ、それぞれの思惑は口にするまでもなく知っているのだから。

●状況把握 〜色々ごめんね?〜
「皆、元気そうで何よりねー」
「‥‥全く、少しでも連絡をくれればいいものを」
 斎王の間の奥、伊勢神宮にて祭られている天照大御神が座するその傍らに斎王こと祥子内親王は何時もと何ら代わらない笑顔で皆へ呼び掛け手を振れば、溜息を漏らす蒼牙。
「だけど便りが無いのは無事な証拠って言葉もあるが‥‥まぁ、元気そうで良かった」
 他の冒険者から注がれる、生暖かい視線には気付かない振りをして一先ずは言いたい事を何とか堪え、何とか自身で出した矛を無理やりに収めると斎王。
「そうなんだけどね、内政に関わる事だし」
「拙者らに話がない、と言う事は‥‥余程重大な事でござるか?」
 やはり表情は変えないまま、簡単な答えを出しては言い訳をすると首を傾げる月夜が訊ねれば伊勢の重鎮が一人、藩主の藤堂守也が彼女の問いに応じる。
「重大と言えば重大だな」
 その答えこそ明確ではなかったが彼も知っている、と言う事は既に大よその話は纏まっていて且つ伊勢内の上層部にもこの話が伝播されている事を察しがつく。
「‥‥一先ず、それは置いておきましょう。とりあえずは此処最近の状況ね」
 何事だろう、と首を捻る皆を前に‥‥しかし斎王はその重大な話は置いて伊勢の近況について先ず語り出す。
「悪魔やら妖の類が出没した事例はこの三ヶ月の間、全くなし‥‥と言う事で完全に確認が取れた訳じゃないけど、一連の騒動については沈静化したと見ているわ」
「伊勢周辺の警戒、及び街の中でも不穏だろう場所は虱潰しに見て回っているが特に動きなく‥‥根城と思しき場所も数箇所発見こそしたが、既にもぬけの殻でな」
 そしてその話の後、追随して伊勢藩主も市街の状況を冒険者達へ伝えれば
「‥‥黒門絶衣、伊勢から引いたと言うか。だが」
「焔摩天や妖狐ばかりは何ともな」
 断定こそ出来ず、しかしそれらの話から一応はそう判断せざるを得ないガイエルではあったが‥‥彼女が別に気になっていた点はやはり、伊勢藩でも気にしており平穏を取り戻したとは言え不安要素の完全排除にまでは至っていない様だった。
「と言う事で、以上そんな感じ!」
「早っ!!!」
 まぁ端的に言えば警戒こそしているが以前ほど妖の騒乱は重要視していない、とそう言う訳で斎王はとっとと話を締め括れば驚く皆ではあったが
「その方が良い人も、いるんじゃないの?」
「はう‥‥っ!」
 冒険者達の中、心此処にあらずと言った風体で落ち着かないミリートの方を見て言えば、言葉を詰まらせる彼女に笑顔で応じると滞在する期間だけ聞いて後に祥子。
「そう言う事で、久々に伊勢まで来て逢いたい人もいるでしょうし少し息抜きしてきて頂戴な。肝心な話は後でも出来るし」
「ならばその席、何時もの様に‥‥」
「はいはい、分かっているわよ」
 そう言って掌を振り皆をこの場から追い出す仕草をすると、それぞれに立ち上がり場を離れる中で月夜の申し出に祥子はそれを途中で察し、苦笑を浮かべては応じるのだった。

 それだけに伊勢と長い付き合いのある冒険者達‥‥これから一体、どう動くかと言えば。

●今、刹那だけでも
 十河邸を訪れた緋雨はその主が小次郎に旧友のアリア・レスクードへ挨拶を交わすなり、早々に汚いだろうと踏んでいた邸宅内の掃除を許可得た上で始める‥‥も、その内心は。
「小次郎先生の事が好きなのだけれど‥‥どっ、どうすれば良いだろうか?」
「えーと‥‥本当、ですか?」
「冗談で、こんな事は‥‥」
 意中の小次郎へどうアプローチしようか、その実妹へ相談に乗って貰うべく足を運んだのが本音で、戸惑うアリアを前にしかし決めた事から今更引く筈もない緋雨は思い詰めた表情で彼女に詰め寄ると、掃除をしながら小次郎について様々な話を聞き及べばその翌日には早く行動へ移る。

 生憎と時間がなく手編みのマフラーは作成を断念し、その身一つで呼び出した小次郎が訪れるのを伊勢神宮が見える、五十鈴川の辺で待つ。
「済まんな、遅くなった。で話があるとか言っていたが?」
「あっ、は‥‥はいっ!」
 やがて、彼女の背後から声が投げ掛けられれば振り返って緋雨はビクリと身を震わせつつも振り返れば彼の姿を見るなり、真直ぐにその気持ちを伝える。
「その‥‥す、好きですっ!」
 結局、アドバイスと言うアドバイスは得られずしかしその性格を考慮してストレートに伝えた方が良いと言ったアリアの考えは緋雨のそれと全く同じだったからこそまた一歩、前に踏み出せた。
「んあ?」
「だから‥‥小次郎先生が、好きなんです!」
「‥‥そう言えば、長く答えを返さず仕舞いだったな」
 その最初こそ間抜けな返事をする小次郎だったが改めて彼女から必死な想いの丈を告げられるとふと、以前にも同じ告白をされた事を思い出して頭を掻いて彼‥‥次に紡ぐべき言葉が見付からない。
「‥‥嫌い、ですか?」
「い、いや‥‥そう言う訳じゃないんだが」
「それじゃあ、お父さんの事が?」
「まぁ気になっていないと言えば嘘だが、お互い良い大人だしな」
 そして積もる沈黙に緋雨、耐え切れずにポツリ言葉を漏らすと途端に慌てる彼へ自身も気になっている事を訊ねるが、それを理由に悩んでではいない様子。
「‥‥とりあえず、もう少しだけ待ってくれるか?」
 とは言えすぐに答えも返せないらしく、しかしちゃんと緋雨に向き直った上で今精一杯の解を返す小次郎は自身の掌を彼女の頭に置けば、一度だけ頷いて後に緋雨は微笑んだ。


 さて、視点を斎宮へ戻そう。
「もう久々かどうだってのはいいや。うん、やる事やっちゃおう」
「‥‥何よいきなり独り言だなんて気持ち悪い」
 あれから一人残っていた蒼牙は場にいた斎王以外の皆が全員引き払ってから、漸く安堵から肩を落として壁に寄り添い、ポツリ漏らすと頬杖をついて突っ込む祥子。
「えーと、うん。俺も正直すげぇ早まってる気がする。こう言う事をするのは余り俺らしくないと思ってもいる」
「だから何よ」
「が‥‥やりたいと思ったから、そればかりは仕方ない!」
「‥‥おーい、大丈夫ー?」
 しかし彼女の突っ込みは意に介さず、尚もブツブツと言葉を続けては拳を握る彼にいよいよ心配になってか斎王は立ち上がれば、蒼牙の目前で掌をヒラヒラと振ってみたその時。
 伸びた祥子の華奢な手を逃がさない様、がっしと両手で握って彼。
「俺は祥子さんが好きだ‥‥祥子さんの気持ちを言葉で聞かせて欲しい」
「それは‥‥ね」
 視線を彼女のそれと絡め厳かに告白を、問い掛けを口にすれば‥‥困った様な、しかし穏やかな表情を浮かべて祥子は口を開くが
「じー‥‥」
 わざわざ擬音をつけ、第三者がいるぞアピールをする誰かの存在に今更気付いた彼は斎王の手こそ握ったまま、顔だけそちらに向けると‥‥その視線の先、壁に体だけ隠して見つめていたのは天照を抱える月夜。
「‥‥何でいるんだ?」
「いや天照様を愛でようと思って」
 果たして彼女へ今更の様に問う蒼牙だったが、思っていたより彼女らしい答えが返ってきて‥‥だからこそ、大きな声で叫ぶのだった。
「何も此処じゃなくってもいいだろーっ!」

 因みにこの後、『重大な事』の為に奔走する斎王と二人きりになる機会はなかった蒼牙‥‥作為的な運命を感じずにはいられないが、それでもきっと明かした気持ちに彼女からの答えは返って来る筈。


「‥‥ふむ、駄目か」
 今は伊勢市街に居を構えているアシュド・フォレクシーの元を訪ねたガイエルはその傍らで未だ原因不明の眠りについているルルイエ・セルファードを癒すべく、自身使える魔法を様々に行使していたが‥‥そのどれにも、彼女は一切の反応を示さなかった。
「魔的な手段であれば、安全を確認した上でそれなりに試しはしたぞ」
「そうなると‥‥」
 その光景を前、それこそ様々に策を講じたのだろうアシュドが漸く口を挟めば僅かに肩を落としながらも思案するガイエル、手掛かりを持っている者に心当たりこそあるが‥‥それを捕まえるのは今、至極難しい事に思い至り渋面を浮かべる。
「やはり、レイがいればな」
「‥‥まぁ、それを言ってもな」
 果たして今は何処をふらついているか、その大天使の名を紡ぐ彼女だったがそれこそ見付けるには厳しい注文にアシュドが嘆息を漏らした、その直後だった。
「ん、何だ‥‥?」
 何かが門扉を叩いた様で音が聞こえ戸を開けてみると、そこには口に拙い筆遣いで『召集令状』と書かれた手紙が咥える、何処かで見た記憶のある犬がいた。

「嘘は言っておらんぞ? よう来たの、アシュドー」
「あぁ、その様で‥‥」
 差出人の名前はなく、場所だけ明記されたその手紙の通りに伊勢神宮の大鳥居が前まで二人来れば、その下には満面の笑みを浮かべる柚那がおり彼らと共に戻ってきた愛犬の頭を撫でては笑顔で言うと、疲労感拭えず肩だけ落とす魔術師。
「何じゃ、ガイエルも一緒か」
「まぁ、野暮用でな」
「ふむそうか柚那も同じ様なものじゃな‥‥でアシュドー、はにわんこは?」
 着いてきたガイエルを見るなり問えば、返って来た答えに頷くなり単刀直入に本題を切り出せばアシュド。
「‥‥あぁ」
「何じゃその間と反応はー!」
「冗談だ、まぁ後少しで実用段階と言った感じか。年末までには」
 僅かな間の後、生返事で応じれば憤慨する柚那だったが次に彼から返って来たまともな回答を聞けば表情こそ緩めるも
「‥‥所でお主、イギリスに戻りたいと思うておるか?」
「どうだろうな。一先ず、今すぐには無理だろう」
「そうか‥‥ならば、これからもよろしくの」
 次には唐突に表情を真剣なものに変えてアシュドへ一つ、問い質すと急なその質問の内容に内心では首こそ傾げながら、しかし彼も柚那の表情に釣られ真摯な気持ちで応じると‥‥その答えに満足してか、彼女は屈託なく微笑むのだった。


 さりとて、この依頼を出した主であるミリートと言えば大好きでしょうがないエドワード・ジルスの捜索に全力を注いでいた。
 尤も、何時もの様に珠の家にて静かに過ごしていた為に労せず見付ける事が叶えば何時もいる筈の女剣士の姿がない中、二人は寄り添い語らっては穏やかな時間を過ごす‥‥のだが専ら話すのはミリートで、一方のエドはと言えば彼女の話に相槌を打つ程度と淡々としたやり取りだけで、だからこそ不安になった彼女はエドに尋ねる。
「エド君って余り、自分の事を話してくれないよね?」
「ん‥‥」
 元来の性格が静かとは言え、共有する時間が少ないからこそ膨らむその不安に‥‥彼は頷くと晴れ渡る空を見上げ、口を開く。
「何も、ないから‥‥」
「そんな事、ないよっ!」
 その、紡がれた先の問いへの返事にミリートは弾かれたかの様に怒ってか彼を見れば眦を上げながらも、瞳の端から一筋の涙を流して次いで彼を抱き締めると
「初めて会った時の頃は、そうだったかも知れないけど‥‥今もそんな事、言わないで」
「‥‥ごめん」
 エドの耳元で囁いて彼女、詫びる彼の言葉を途中キスで遮れば暫しの後に身を剥がせば改めて彼の澄んだ瞳を見つめ言う。
「名前を呼ばれて、優しく抱き締められて唇を重ね‥‥それは、温かくてとても嬉しいの。大切な人だから。だから、一番にエド君の側に在りたい‥‥エド君は違うの?」
 その優しい問い掛けにエドは口こそ開かず、だがしっかりと頷き応じれば満面の笑顔を浮かべてミリートは誓った。
「私は、エド君が好きだよ。私がずうっと、傍にいるよ?」

●温泉に浸かりながら 〜重大発表?〜
 それぞれに、僅かとは言え大事な時間を過ごす一行ではあったが三日と言う時間はあっと言う間に過ぎる。
 そんな一行が京都へと帰る前夜、二見にある温泉にてやはり何時もの様に宴は行なわれていた。
「そう言えば、重大な話があるとか言っていたが‥‥?」
「その話ね、言いましょう言いましょう」
 生憎と混浴ではなく、蒼牙だけが小次郎やらエドやらが一緒に男湯に浸かっている中‥‥女湯の方で天照の髪を(抗われながらも)梳いて洗いつつ、月夜がふと一つの疑問を思い出してはそれを口にすると、問い質してきた彼女が持ち寄った鯛の刺身をつまみつつ斎王は二度三度頷いてから『重大な話』をいよいよ切り出した。
「私、斎王辞めます!」
「「「「「「な、何だってー!」」」」」」
 それは余りにも突然なもので、壁隔てて向こうの男湯から蒼牙の絶叫も聞こえて来るとなると、彼すらも知らなかった事態に改めて女湯にいる冒険者一同は驚きを隠せない。
 だが、衝撃はそれだけではなかった。
「そして年が明けてから伊勢神宮で‥‥合同になるけど、大規模な結婚式をやりますー!」
 そして次に響いた宣言について、皆の反応は以下略。
「と言う事で、相手を見付けて挙って参加すると良い!」
 やがて何処かでししおどしが石を叩けば、響く乾いた音の中で先の喧騒は何処へやら、沈黙を重ねる皆の胸中は果たして‥‥まぁ、想像に難くはないだろう。

 と言う事で急転直下な展開を見せる伊勢、内部の思惑を含めたその仔細についてはまた後日となるが‥‥果たしてこれから、どうなる事か。

 〜一時、終幕〜