【救出作戦】人喰いの森

■ショートシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月11日〜01月18日

リプレイ公開日:2005年01月18日

●オープニング

「またですか‥‥」
「これでもう五人目、しかも皆未だに帰ってきていません‥‥」
 頭を抱える村長に、更なる詳細を伝える自警団の長も頭を振ると苦虫を噛み潰した表情を浮かべながら村長に一つの提案をした。
「先日行方不明になった人達を探しに出て、唯一戻ってきた自警団の一人の話ではゴブリンの姿を見たと言う話でした、しかもあの遺跡の方向に姿を消したと」
 その話を聞いて村長は残された手段が一つしかない事に考えが至ると、決断を口にする。
「あの遺跡か‥‥それならば冒険者ギルドと騎士団にこの案件の解決を依頼しよう、至急手配を頼む」
 そう言って、窓の外に広がる森をみつめるのだった。

「キャメロットより少し離れた村では最近、森に入って行った人やそれを探しに行った自警団の人が行方不明になっています。それで今回の依頼なのですが、消えた人達を探し出し、無事に村まで送り届けて貰う事になります‥‥恐らくゴブリン達の仕業だろうと言う話でした」
「しかし‥‥何だってゴブリン達が人を攫うんだ?」
 受付嬢の話に、尤もな疑問を投げ掛ける一人の冒険者だったが
「それについては分かりかねますが、その森にある遺跡が絡んでいるのかも知れません‥‥依頼人であるその村の自警団長の話では、ゴブリン達が消えた方角から考えると捕らえられている人達がいるであろう場所はそこだろうと言うお話でした。遺跡についての文献等がないので自警団だけでは入る事を危険と判断し、その知識に長ける私達の所に依頼としてやって来た次第です。ゴブリン達の行動や遺跡について詳しい事は分かりませんが、もしかすれば何かあるのかもね」
「なるほどね‥‥」
「尚、ゴブリン達の退治については騎士団に一任していますので皆さんは村人達の救出を最優先に行動して下さいね。詳細については後で張り出す依頼書をご覧下さい、それでは宜しくお願い致します」
 そう言って彼女は頷く冒険者に微笑むと、恭しく一礼してその場にいる皆に協力を求めるのだった。

●今回の参加者

 ea1165 ソルシウス・タルブラン(28歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3100 ジャック・ナイフ(41歳・♂・レンジャー・パラ・イギリス王国)
 ea9116 レイラ・ブラッド(23歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb0302 アリス・フォンティーヌ(27歳・♀・クレリック・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

「今回、この依頼において騎士団を統括する‥‥そうだな、ジェイとでも呼んでくれ。宜しく頼むよ、君達」
 一行は目的の村に着くと、ゴブリン退治を一手に担う騎士団と簡単な打合せをする為に顔合わせをするも、その人数の少なさに騎士団の面子は少なからず内心で頭を垂れる。
「ジャック・ナイフだ、こちらこそよろしく頼む」
 だが彼はそれを表には出さず、前に一歩進み出たジャック・ナイフ(ea3100)がジェイの挨拶に応じるとそれを皮切りに、その場にいる皆は握手を交わし始めた。
 そんな中ではあったがジェイは早速、行方不明になった村人達を救出する為の段取りを改めて行う
「簡単な話は聞いていると思うが、私達が派手に立ち回ってゴブリン達の目を誘い出すからその間に君達は遺跡まで静かに到達し、捕らえられているだろう村人達を救出して村まで戻って来る事になる」
「まぁ聞いたままだな‥‥って俺らもそうだが、あんたらもその人数で大丈夫か?」
 改めての内容に把握しながらも、ジャックは騎士団の頭数を数えながら尋ねる。
 確かに騎士団の人数は一行より僅かに多い程度だったから出た質問だったが
「ゴブリンもそう数も多くないと聞くし、少なくとも君達よりは場数を踏んでいるからな。上の判断による編成だ、ゴブリン如きに遅れは取らないさ」
「それもそうか、疑っている訳じゃないんだが気になってな」
 どことなくチンピラっぽい雰囲気を醸し出す彼の質問に、別段気を悪くする事無く答え立ち上がると彼は微笑んで
「とりあえずシャルハ‥‥だと不安だからゼルエス、彼らのサポートに回ってくれ。我々が先行して奴らの相手をしている間に迅速に事を成せ」
「えー」
「了解しました」
 部下に指示を出してジェイは扉を開けると、彼らの発言を背中で受けながら一行にも言葉を贈る。
「我々で全てのゴブリンを倒すつもりだが、何があるか分からない。様々な事を想定し、各個に何が出来るか、何をすべきか考え行動して貰いたい。今だけでなく、今後もな‥‥それでは皆の健闘を祈る」
「初めてだからって事は言い訳にはしない、やるべき事はしっかりやってくるさ」
 その言葉に彼は力強く答えるとジェイは頼もしげに一つ頷き、二人は揃って外へと足を踏み出した。


 それから一行は往路で唯一ジャックだけが持ってきた保存食を分けて貰った分だけ彼にお金で清算すると、不足するそれを今回は騎士団が持つと言う事で補充した後、ゼルエスと共に森の中へと向かう。
「しかし何を考えているんだろうな、あいつらって」
「それが分かれば苦労はしない‥‥分からないからこそお互いが戦うしか道がないのだろうな」
 改めて分からない、と疑問を口にしながら地面に転がる小石を拾うジャックにゼルエスが答えれば彼は渋面を浮かべる。
「そんな難しい事は考えた事がねーや‥‥っと」
 呟き、不意に視界に入って来たゴブリンを見て取ると皆に目配せし、木立の中へと身を隠す。
 暫くは辺りを警戒する様にキョロキョロと視線を彷徨わせるも、やがて遠くから響いてきた剣戟の音が聞こえたのだろう、その音がする方向へと去って行くのを確認すると安堵の溜息を漏らす一行の中、ジャックは
「急ごう、もしかしたら予想よりゴブリン達の数が多いかも知れない。早い所村人達を見つけて戻らないと」
 そんな懸念を抱き口にする彼に頷く一行は、再び辺りを警戒しつつ静かに森の中を疾駆するのだった、遺跡を目指して。

 それから暫く、何事もなく一行は遺跡の前まで辿り着く。
 ゼルエスはそのまま駆け込もうとするが、ジャックは自分より若い彼を手で制し先程拾っていた石を投げて見張りがいないか確認する。
「あんたもあんま、俺等とかわらねぇのな。騎士団に入って間もないのか」
「‥‥その通りだ」
 投げ込んだそれに特に反応がない事を感じてから先ほどのゼルエスの様子に思い当たる所があったジャックは静かに尋ねると的を射られたのか、呟きながら目線を外すゼルエスの様子に笑うと
「さ、とっとと行こうか。村人達がどこにいるか分からないからどれだけ時間を食うか分からないしな」
「そうだな、急ごう」
 そして頷く一行を先導する様に、ジャックはまだ人が足を踏み入れた事のない遺跡へと突入するのだった。

 ジャックがもしかすればあるかも知れない罠を警戒しながら一行の先を歩く中
(「ゴブリン達の事だ、そう奥にまでは行っていない筈‥‥比較的入口に近い所に幽閉されているんじゃないだろうか」)
 そう判断して、小声で呟くゼルエスの意見に一行は賛成すると入口からそう遠くない所にポイントを絞って探す事暫く。
 丁字路に差し掛かり、静かに先の様子を伺うジャックの目に留まる一匹のゴブリン。
 そのゴブリンが立つ傍らには部屋の入口と思われる口が開いていた。
(「‥‥多分あそこだ、手筈通り行くぞ」)
 そう言い終って、皆が頷くのを確認してから彼は再び持っていた小石を数個掴むとそれを丁字路の先にばら撒く。
 彼の目論みは程無くして当たり、然程警戒する事無くその小石の元にゴブリンが来ると、皆は一斉に襲い掛かってそれを瞬時に沈黙させそのままの勢いで部屋へと駆け込む。
「良かった、どうやら皆無事の様だ」
 一番に駆け込んだゼルエスはその部屋の奥で震えていた五人の村人を確認し、また村人達も一行の姿を見て安堵するもその時、その場にいる皆の耳に幾つかの足音が聞こえてきた。
(「‥‥どうやら戻って来た様だな、数は多くない‥‥討ち洩らしたか」)
 生憎と部屋はここで行き止まり、退路はなく今度は心配そうな表情を浮かべる村人達を見ながらジャックは彼らに安心しろと小声で囁き、懐に隠す短剣を引き抜くと一行もそれに倣ってそれぞれ武器を構え、戦う決意を決める。
 そして、部屋の入口に姿を現した一匹目のゴブリンが一行に気付くより早くジャックが頭部に狙いをつけたナイフを投擲すると、それが目標に刺さって地面に倒れるのを見届ける事無く一行は部屋に入っては驚くゴブリン達に踊りかかって行った。


「村人達を助ける事が出来た訳で、成功と見ていいだろうな」
「君らの動きがいささか硬かったけどな」
「それを言うならあんただって、警戒せずに遺跡に入ろうとしたじゃないか」
 あれから‥‥程なくして駆けつけた騎士団の手を借りて残るゴブリン達を退治し、遺跡に捕らえられていた人達を救出し、村で成功の余韻に浸る一行と騎士団。
 確かにゼルエスの言う通り、彼らの動きは硬かったがそこを突っ込むならとジャックもゼルエスの揚げ足を取れば、唸るしかない彼の様子に笑みを浮かべる。
「まぁ初めての依頼で皆も緊張していたんだろ、オレだってそうだったし話も上手く纏められなかったからな。けれどこれをきっかけに立派な冒険者になれる様、努力するさ」
 冒険者を代表して言うジャックにジェイも頷くと
「余りしてやれる事は多くなかったかも知れないが、今回の依頼で学んだ事を次から活かして貰えるなら、それ以上嬉しい事はない。我々でも君らを頼りにする時だってあるからな。君達の成長に期待しているよ」
 そして自らの右手をジェイが一行に差し出した時、空に飛び立つまだ小さな鳥の姿を見て一行はその姿に自らを重ね合わせる。
 もうジャック達もあの小鳥同様に羽ばたいているから。
 これから苦難を伴う事が多々あるだろう、今回以上に上手く行かない事もあるかも知れない、だが彼の言葉と自らが目指す道に誓って‥‥皆は彼と握手を交わした。
 これからの彼らに幸多き事を願う。