ハウリングケイブ 〜Verケンブリッジ〜
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■ショートシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 52 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:05月07日〜05月12日
リプレイ公開日:2005年05月15日
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●オープニング
「‥‥や、これは」
ケンブリッジの外れ‥‥とは言っても歩いて二日程の所を散策しているのは十河小次郎、何かを見つけては一人日本語でボソリと呟く。
その目には一つの洞窟の入り口がぽっかりと口を開けていた。
それを見て考える事暫く
「‥‥あ、これ面白いな。授業に使えそうだ」
何事か閃いた十河は手を叩くとそれをする為にまず、洞窟内へ足を踏み入れるのだった。
「‥‥て事で、これ頼むわ」
数日後、舞台はクエストリガーにて受付のお兄さんに話を持ち掛ける十河。
一枚の紙を差し出し、それに目を通すお兄さんを傍目に
「授業に使えそうなものがないか、ケンブリッジのあちこちを色々と見て回っていたら放置されていた洞窟を見つけたんだ。それでアイデアが沸いてここ数日で色々弄ってみたんだが‥‥ちぃっと気合入れ過ぎたかも知れなくてな。有志を募ってとりあえず安全性と実際にどの程度のものなのか、テストをしてみたいんだ」
「その試みは面白いと思うんですが、安全性を試す必要性があるものを作らないで下さい‥‥」
まだ乱筆なイギリス語の綴られる紙に一通り目を通し、彼の説明に溜息を漏らしては突っ込むも彼は動じていない様子で
「まぁこれ位なら大丈夫だとは思うんだが、念の為って奴だ。犬も歩けば棒に当たるとジャパンでは言うしな!」
ますます勢い付く十河に今度は頭を抱えるお兄さん
「ま、まぁ‥‥この程度の内容であれば問題はないでしょうが‥‥何処からこんなものを」
正確に読み取れはしなかったが、所々に踊っている可笑しな単語が文字通りだったとしたら‥‥ちょっと時期外れな気もしなくはないと思う彼だった。
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ミッション:様々な仕掛け(?)が満載な十河先生作の洞窟を突破せよ!
成功条件:洞窟最奥部にある一振りの刀を回収し、それを持ち帰って『一人でも』外に出て来る事。
失敗条件:成功条件が達成出来なかった場合。
必須道具類:保存食、その他必要だと思われるものは各個人で準備の事。
その他:洞窟内は入ってから戻って来るまで一日を要します、コンディションを万全にするためにも最低三日分の保存食は持って行くべきかと。
罠が主だった仕掛けになりますが、読みかじり聞きかじりで十河先生が作ったものなので危険度は‥‥中には酷いものがある気もするけど、まぁ大した事はないです多分。
モンスターはいませんので戦闘になる事はないんですが‥‥とにかくそう言った事で気をつけて下さい。
洞窟に照明はあり、結構広い(三人並んでも左右にゆとりがある)のですが刃物の類は持ち込み禁止です、持っていても入る際に十河さんが回収するそうです。
尚、依頼終了後(成功でも失敗でも)十河さん持ちで公共浴場に行こうと言うお招きがありましたので、もし宜しければそちらもどうぞ。
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●リプレイ本文
ケンブリッジから歩く事二日、山の麓にある洞窟がやっと一行の目にも見えてきた。
「よし、今日は此処まで! 各自明日に備えてじっくり休むよ事、小次郎はこれから洞窟内の様子を見てくるから今日だけはまぁくつろいでくれ‥‥こんな所だけどな」
苦笑を浮かべ、小次郎は早速踵を返しては洞窟に入ろうとしたが
「今回の依頼、洞窟探索って事になるじゃん‥‥って、やっぱランタンは必需品か?」
「まだ余り依頼を受けた事がないな、澳継は? 依頼書はちゃんと読んで来いよー、ちなみに洞窟内に照明は設置してあるから大丈夫だ」
「ま、買い忘れてたから正直助かったぜ」
李家澳継(ea7051)の質問に苦笑を浮かべ振り返れば丁寧に答える小次郎に、彼もがさつな口調ながら苦笑を浮かべ返すと今度はシュリデヴィ・クリシュ(ea7215)。
「所でと‥‥小次郎、洞窟内の罠はどう言うものがあるのだ? ロープが張ってあったり、落とし穴があったり、奥にある刀に何か仕掛けてあるとか」
「さぁ、それは自身の目で確かめてくれ。そう言ったものもあるかもな」
直球な質問をぶつけるも、小次郎は静かに言い放つと暫し沈黙と睨み合いが続くがやがて先に根負けしたのは小次郎で、先に目線を逸らせば
(「ふむ、それらの事は気に留めて置いた方が良さそうだな。後で皆に伝えよう」)
それを表情には出さず、口元を隠して笑う彼女に小次郎は再び踵を返せばそそくさと洞窟の中へと入って行くのだった、彼もまた同様に微笑みながら。
「全く、錬金術と関係ない依頼を受けてしまいました」
「まあ、基本に立ち返るのもまたいいものだ」
しかしそんな事は露知らず、やる気なさげなハーフエルフのエリス・フェールディン(ea9520)に熟練した重装備の戦士、トール・ウッド(ea1919)は友人から貰った傷薬を確認しながら皆に呼び掛けると、まずは明日に備える為の行動を開始した。
「さ、じゃあ始めようか!」
翌朝、小次郎に起こされ一行やや眠たげな様子ではあったが開始を告げる叫びに途端、冒険者らしい表情を浮かべる。
「よし、じゃあ洞窟に入る前に刃物は全部回収。後でちゃんと返すからな、隠さず小次郎に渡す事。ペットも小次郎が預かって餌付けをしておくからここに置いて行けよ」
彼の指示に従いトールと、ハーフエルフだとばれても問題ない場所なのだが相変わらず耳を隠すカンタータ・ドレッドノート(ea9455)が剣の類の物を全て渡せば
「それではごきげんよう、小次郎さん」
「あぁ、またな」
準備を済ませた他の皆が洞窟前で待つ只中に駆け寄る前に、小次郎に挨拶をすれば彼もそれに応え笑顔で皆を送り出した。
「ケンブリッジに入学して初めての授業だし、頑張ろうっと♪」
「先日の依頼、演技とは言え真に迫りちょっぴり本気で泣きたくなりましたよ‥‥」
「あの時はごめんね〜」
灯りが照らす通路を進む中、初めての依頼にカヤ・ファーレンハイト(ea9936)が自身を鼓舞すれば、先日の依頼であった出来事を思い出しカンタータは鼻歌混じりに隣に並ぶミカエル・クライム(ea4675)へ言えば、彼女は冗談半分なそれを察して詫びながらも彼女の頭を撫でると
「今の所、何もないですね」
上品そうな神聖騎士のマカール・レオーノフ(ea8870)は一行の先頭に立ち、ロングロッドで地面や壁を小まめに叩き続く皆に声を掛けるも
「‥‥どうやら予想通り、か」
次の瞬間に地面が消え、穴が開くとシュリデヴィは安堵しつつも拭えない不安感からか、静かに呟いた。
「あれはなんだ」
「あそこの壁、おかしくですね?」
その通路の真中にある落とし穴を左右に避けて進めば、神聖騎士の隣で先を見通しているトールとカヤの目に僅か映る、明らかに作り物と分かる壁。
「今再び垣間見せよ、かの光景を」
「‥‥」
余りにも露骨過ぎるそれに皆は呆れるが、ハーフエルフのバードとウィザードは揃って魔法を唱える。
「沢山のおじさん達がいます‥‥数時間前、そこの奥に入って行った様ですよ」
「なら静かに潜んでいる様ですね、バイブレーションセンサーには何も‥‥」
そして魔法で得たカンタータとエリスの情報を皆に伝えた時だった、その壁の張りぼてが勢いよく破られ十人近くのおじさん達が飛び出して来たのは。
「捕まえて、着せ替えして遊ぶのよ〜!」
『‥‥‥』
何故そんな人達が、と思うも駆けて来るおじさん達に一行は逃げる機を失い立ち尽くせば、その群れはシュリデヴィへと一直線。
「っ‥‥」
それに彼女は目を閉じウィニング・イースターを握り締め、身を固めると次に来るだろう衝撃に備えたが、それはやって来なかった。
「うぉあー! 離せっつうんだよ!!!」
「私も、ですか‥‥」
ウィニング・イースターが効果を発揮したのかは分からない、だが目標はシュリデヴィではなく彼女の近くにいた澳継とマカールの様で二人はおじさん達に抱えられ連れ去られようとしていた。
「皆、邪魔ですわ‥‥」
だがおじさん達と接触したのだろう、それを引き金に狂化するエリスは瞳を赤々と輝かせローリンググラビティーをその群れの只中に仲間共々打ち込めば、今度は一行目掛けて呪文を放とうとし
「や、止めて下さいっ!」
カヤの叫びが洞窟内に木霊した。
それから歩く事暫し、一行は狂化したエリスのおかげで親父集団を撃退するも彼ら同様に被害を受けたが何とか宥め落ち着かせる事に成功し、珍妙かつ意味不明な罠の数々を乗り越えて来た。
「露骨に罠だと見えている辺り、それとなく性格が出ているぜ‥‥しかし」
例えば腰程の高さに張ってあるロープ、露骨に怪しいがミカエルのアッシュエージェンシーでわざと引っかかれば異臭と共に、粘度の高い液体が降り注いで来たのが恐らく一番酷かったろう。
そりゃあ、ぱっと見で分かる罠に引っかかる者等この中にいる訳はない。
「や、やっと此処まで辿り着いたな」
そして澳継の呟きと同時に洞窟の最深部へと辿り着く一行、そこには一つの台座があり一本の至極普通な刀が刺さっている。
「見た所、何もなさそうですけど」
「刀を取ってさぁ帰りましょう、と終わる訳はないでしょうね」
最深部が入口で休憩しては静かに佇む台座と刀を見、カンタータとマカールが疑いながらもそれを見つめていると
「とは言え、取らない事には帰れないぞ」
「では、行きますよ‥‥本当は魔法に頼りたくないんですが」
トールの掛け声に皆が立ち上がれば今は落ち着いたエリス、やや不機嫌そうにサイコキネシスを唱えるとそれは成功し、やがて彼女の手に収まる。
「何も、起きないか?」
「静かに」
だが周囲で何も起こる事はなく、シュリデヴィが皆に確認するとカヤはその耳に何かの音を捉え‥‥いきなり台座奥の壁が思い切り開け放たれれば、巨大な岩が転がって来るのだった。
「酷いわっ、先生!」
それに思わずミカエルが叫べば一行は迫ってくる岩に追い立てられ、出口へ向かい全力で駆け出した。
「よっ、お疲れさん」
『‥‥‥』
小次郎の掘った落とし穴を逆に利用し、岩を回避した一行は洞窟の入り口まで後僅かな所で佇み待っていた彼の呼び掛けに、恨めしそうな視線を注ぐ。
「けど意外に元気だな、やっぱ罠の専門家を呼んだ方がいいか?」
「聞かないで下さい」
肩で息をしてはマカール、小次郎の問い掛けにきっぱり答えると
「あ、待て。仲良き事はいい事だが一対一を忘れるなよー」
経験浅いながらも友情パワーで同時に飛び掛らんとする澳継とカヤに気付き、慌て言えばそれを聞くと
「‥‥やめようか」
「一対一なら無理です」
二人仲良く白旗を上げたが、怪しい笑みを浮かべるミカエルは引かず
「小次郎先生〜? 通してくれないと‥‥この後、ケンブリッジ生活どうなっても知らないよ〜?」
「何がどうなるんだ、教えてくれないか?」
脅迫めいた言葉を口にするも、微笑んでは動じない志士に彼女は火の鳥と化した。
「ウィザードにとっては魔法が刀なんだからっ! 焦げなさい!」
「甘い」
そして小次郎目掛けて飛び掛るも、目を細めては踏み込み避ければ容赦ないカウンターで火の鳥を落とす。
「先生‥‥痛い、痛いよ」
「そうだろうな、でも最初に掛かって来たのはミカエル、お前だし‥‥っと」
「ちっ、後輩にいい所を見せさせてくれよ」
本気の斬撃を浴びながらそれでもミカエルは策を講じたが、彼の反応に力尽きると同時、飛び込むトールは攻撃を回避され舌打ち一つ。
「気持ちは分かるが手は抜かないぞ。トールなら、本気を出した方がいいか」
「っ!」
鍔迫り合いの様相を呈す中、小手先で武器を絡め取ろうとする小次郎の次の一手を読んで益々力強く相手を押さえ込もうとするトールだったが、腕前は生徒に劣っても経験豊富な小次郎の反応にそれは僅か遅く、刀は中空に舞った。
「惜しい、流石に腕前だけなら俺を凌ぐだけ在る‥‥一杯一杯だったぞ」
「それならこれでは?」
「あ?」
彼の実力を素直に認め褒めるも続け様に今度はエリス、トールが持つ刀が飛べばサイコキネシスで彼の後方から石を命中させ
「皆さんに剣の腕は負けますが、これなら!」
前につんのめる小次郎へ、舞った刀をキャッチしたマカールがその隙逃さず着地すれば惑う事無く駆け抜け様にディザームで何とか小次郎の刀を飛ばすと
「今度からは魔法も禁止する事にしよう」
地に倒れ伏す先生を傍目に、その脇を駆け抜けて行く生徒達を先程とは逆の立場になると小次郎は恨めしそうに呟くのであった。
「‥‥やれやれだぜ」
「汗を流した後はやっぱお風呂だよねっ!」
「そうそう、疲れた体を癒すには此処ね♪」
後日、ケンブリッジに戻って来ると一行は小次郎の誘いに乗って公共浴場の湯船へとその身を躍らせていた。
「風呂で酒は駄目だろうか? 美味いんだけどな、風呂での一杯」
「うーん、とりあえずやめておけ。気持ちは分からんでもないけどな」
公共浴場故に混浴だったりする訳で女性陣が多いその中で男性陣の肩身は狭く、はしゃぐ彼女らを傍目に澳継の提案を自身も我慢しつつ諭す小次郎。
「ところで小次郎さん、当地で未婚の女子は他の方に肌を晒すと自刃しないといけないんですよぅ」
そんな同郷二人組へその背後から語るカンタータの話は衝撃的で
『本当か?!』
驚きの余り叫んでしまったりする、まぁ嘘なのだろうが彼女は二人が振り向かない事をいい事に静かに笑えば
「しかし、もう少しまともな罠が作れないのか。それに何故怪しい親父共に攫われなければならない! 故にあれは罠とは言えないぞ、そもそも罠と言う物はだな‥‥」
「あぁ、悪かった。もう少し学んでおくから今は勘弁してくれ」
「いいや、しっかり言っておかねば気が済まん!」
続くシュリデヴィは、湯船にその身をしっかり沈めて洞窟内の事を思い出すといつもの様に説教を開始し、宥め賺す小次郎の話は聞かず連なる言葉に彼は観念するも
「錬金術を学べば、もっと凄い罠が作れますよ」
「ほー、どんなのだ?」
エリスの一言に興味を覚えたのか、傍らでひたすら説教を続ける僧侶を傍目にしばし小次郎はその話に耳を傾けるのであった。
ちなみにその洞窟は一時閉鎖、また来るべき日に備え(?)今は改修中だとか。