奪賊破陣
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■ショートシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:5〜9lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 40 C
参加人数:10人
サポート参加人数:4人
冒険期間:05月13日〜05月24日
リプレイ公開日:2005年05月19日
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●オープニング
吹き荒れるは土煙、それを舞い散らすは盗賊達が駆る馬。
その機動力を十二分に活かし、早々に村内を巡っては食料やら金目の物にあまつさえ女性に子供も攫って行く。
「な、何卒これでご容赦を‥‥」
僅かに残る金貨を集めた袋を差し出して、そう申し出る村長に首領と思われる浅黒い褐色の肌のいかつい男は馬上からその袋をはぎ取る様に奪うと
「‥‥ばっか、こんなんじゃ足りないわよ」
袋の重さで大まかな量を把握し、露骨に不満そうな表情を浮かべると足元に佇む村長の顔を思い切り蹴り飛ばす、野太い声で女性の口調を用いる首領。
「あら‥‥ちょっと強かったかしら? ごめんなさいね〜、でも今私達にはどうしてもお金がいるのよ。だからまた準備しておいて頂戴、この前からそんなに間隔が空いていないから‥‥そうね、今度は二週間待ってあげるからそれまでに金貨百枚ほど準備しておいて、ね? それが準備出来たらお嬢さん方は返して上げる、それまでは勿論手出ししないから‥‥でも、もし準備出来なかった時はこの村がどうなるか。そう言う事で一つ宜しくね♪」
長々と、怪しい口調で捲くし立てる首領は言い終えると口笛を吹いて部下達を集めるとやがて去ろうとするが、何事か思い出して踵を返せば村人達にもう一言だけ呟く様に言い放つのだった。
「あ‥‥ちなみに冒険者を呼んでも無駄だからね。私達、強いから! それじゃあお元気で、くれぐれもお金の手配を忘れないでね〜」
‥‥投げキッスは余計だと思うが、首領が最後の言葉を残して駆ければ九騎の部下達も人質を連れて彼の後を追う様に村から去っていった。
その後、選択を強いられた村人達は相談の結果‥‥一つの結論を導き出した。
「冒険者を雇って全員捕まえて貰おう!」
決まってからの行動は早く、皆が持ち寄り集めたなけなしのお金を足の速さでは村一番の青年に託し、キャメロットへ駆けて貰うのであった。
村人達全員の希望を携えて。
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ミッション:村を襲う盗賊団を撃退せよ!
成功条件:盗賊団を全員捕まえろ!
失敗条件:盗賊団を一人も捕まえる事が出来なかった時
必須道具類:移動日数分(三日)の保存食、村に滞在している間の食事は出ます。
その他、必要だと思われるアイテムは各自で『予め』準備して置いて下さい。
その他:キャメロットから徒歩で二日程南に行った場所にある村へ定期的(一週間に一回)に襲撃をしてくる盗賊団を全十人、逃す事無く捕らえて下さい。
警護等の期間として五日取っていますが、次の襲撃が予想されるのは皆さんが村に入った四日目になります。
襲撃日に関してはあくまで予想ですが、盗賊団が来るまでに何かしら対策を講じたいと言う方はそれまでの間に(大丈夫だとは思いますが念の為)許可を貰った上で実行して頂く様、宜しくお願いします。
襲撃日についてはある程度、こちらで操作出来るかも知れません‥‥馬を操っている位ですから行動範囲は広いでしょうし。
最後に盗賊団の構成として、二度の襲撃の際に見た装備や特徴から纏めた話に寄れば『騎士崩れ四人、ファイター二人、レンジャー二人、ウィザード、クレリック』が三組程に別れ村中を駆け回るとの話でした。
村の規模はそれなりに広く、馬に乗って駆け回るスペースは場所にもよりますがあります。
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●リプレイ本文
「此度は宜しく。期待に添える様、努力する」
「それで早速なんだけど村の数箇所に穴を掘っても大丈夫かな? あ、勿論終わったら後で埋めておくよっ」
「こちらこそ何卒宜しくお願いします‥‥が、穴ですか?」
村に入った一行、まずに向かうは村長の元で上品な顔立ちだがそっけない口調で挨拶を交わすルクス・シュラウヴェル(ea5001)と可愛らしい装備に身を包んだ魔術師のチカ・ニシムラ(ea1128)の話に、彼は首を傾げると一行は考えて来た作戦の概要について語り出した。
「えぇ、落とし穴と柵を設けたいのだが‥‥」
行動の許可を村長から得た一行は次に村を駆け回りその傍らで、知人等から得た盗賊団についての情報を纏めていた。
「この僕が来た以上、一人も逃さないよ。うん」
「全くだ、弱者から金品を掠め取るとは許せぬ、しかし‥‥馬は厄介か」
情報収集は皆に任せていたハーフエルフの魔術師、ユウン・ワルプルギス(ea9420)は知略を振るう事を誓えば、盗賊団へ静かに怒りを燃やすピノ・ノワール(ea9244)の言葉は尤も。
「奴らを馬から降ろさなければ、何か妙案はないでしょうか」
「それならアトス、ロープを利用してみてはどうでしょう? 古い手ではありますけどね」
今まで得た情報より、機動力では一行より上回る盗賊団からアトス・ラフェール(ea2179)は悩むも、直後にクールなクレリックの提案にユウン
「使い古された罠? そんな事はないよ、効果があるからこそ誰もが使うのさ。と言う事でこの案でどうかな、皆?」
彼の意見に賛同を示せば改めて提案すると、特に反対なく作戦の詳細を練り始める。
「それにしても‥‥冒険者を呼んでも無駄、って自分で言うなんて相当自信があるんだね〜。盗賊さんのお頭さんはちょっと変わった人みたいだけど」
そんな一行の中でチカは盗賊団について聞いた話を思い出し、その首領格の男を想像し‥‥冷汗を流した。
「ふぅ‥‥いやぁ、朝から良い汗かいてんなぁ、あたし!」
翌朝、早くから照る太陽の下でライラック・ラウドラーク(ea0123)は明るい声音を響かせ、盗賊団を捕らえる為の罠作りに励んでいた。
「さて、二重の罠‥‥果たして無事に乗り越えられるか?」
白い袖のない肌着に腹巻と女性ながらも随分ラフな格好で穴を掘る手を休め彼女、盗賊団が罠に嵌る姿を想像しては笑みを浮かべるとその手を再び動かそうとしたが
「お疲れ様です」
頭上からロレッタ・カーヴィンス(ea2155)の声が降ってくれば、彼女は見上げ
「ロレッタこそお疲れ、それでどう?」
「ルクス様の妹様が大雑把に纏めた地図通りで、大体は把握したと思いますが‥‥どうでしょうね」
村に来てから村の地形を把握しようと励むロレッタに調子を尋ねれば、マイペースに小首を傾げるもライラックはそんな彼女だからこそ信頼して
「それじゃ、こっちはもうほとんど終わったから次は‥‥」
「こちらを手伝って貰えませんか?」
罠を仕掛けるに相応しい場所を尋ねれば、向こうで馬の進路を制限する柵を拵えていたクラリッサ・シュフィール(ea1180)の呼び掛けに応じようと二人はその騎士の元へと向かうのだった。
「期日の日までに必要な金が何とか用意出来る目処が立ち、村長も胸を撫で下ろして‥‥」
盗賊団の襲撃に怯えるのは近隣の村も同じで、それぞれが村の長へたどたどしい英語で状況を伝える神聖騎士のアリオス・セディオン(ea4909)の姿が近隣の村で見掛けられた。
その思惑は盗賊団が襲撃する日を変えない為の偽情報であったが、それは果たして功を成すのか。
「さて、どう来るだろうな‥‥」
とりあえず、偽の餌を撒き終わったアリオスは僅かな不安に狩られたが皆の賛同を思い出し、自信を持てば皆が待つ村へ向けて馬を走らせる‥‥盗賊団を捕らえる準備を手伝う為に。
「あーら、そうなの? 多めに吹っかけて正解だったわね。早めに襲撃しようかと思ったけど、折角だからその好意に甘えましょう♪」
アリオスが流した偽情報の報告を部下から受けた首領、それを知ってか知らずかは分からないが上機嫌で部下達に決行日変わらずと伝えれば鼻歌を歌いつつ、がっちりした体格で腰をくねらせ愛馬の元へと向かうのだった。
「冒険者、ね‥‥可愛い子いるかしら?」
ぶるっ。
盗賊団が指定した日の朝‥‥準備を終えて後は待つだけとなった一行の中、日課である髪の手入れをしていたクラリッサの背筋に悪寒が走る。
「‥‥何か寒気がしたのは気のせいでしょうか?」
「何か感じた気も、しますね」
理由は分からないがその感覚に思わず、隣で同じく日課の体操をするセレス・ブリッジ(ea4471)に尋ねると彼女も頷けば、その傍らでは
「ハイヨォー、緒羅四恩!!」
自身の愛馬に跨り叫ぶライラック、しかし馬の操り方が実の所良く分からない事から今も訓練をしていたが‥‥これでは騎乗戦において戦力にならない。
「‥‥乗れないのでしたらそう言って下されば良かったのに」
「こんなにも乗れないものだとは‥‥思わなかったんだよっ!」
何とも言えない空気が辺りに流れたがそれに動じずロレッタ、頬に手を当て言えば明るさが取り得の女戦士も流石に落ち込んだ時だった。
「お兄ちゃーん、お姉ちゃーん! もうちょっとしたら来るよー!」
「所で村人達の避難は済んだだろうか?」
「それは確認した、問題ない筈だ」
フライングブルームを操って敵情視察から戻って来たチカとルクスにアリオスが答えると
「柵で進路を制限して後は罠に嵌めるだけ‥‥皆さん、上手くやりましょう」
『おー!』
平静な表情とは裏腹に、熱の篭ったアトスの呼び掛けへ皆が応じると行動を開始した。
「小癪な策を講じているわね、でもその程度で」
村まで僅かに迫れば首領の目に映る、以前とは違う村の様子に微笑むと次にはこちら目指して駆ける五頭の馬が飛び込んで来る。
「結構可愛い子、いるじゃない‥‥さ、お手並み拝見よ!」
愉しげな響きを含ませ、首領が叫べばやる気十分にその距離は徐々に詰めて行くも‥‥美しい髪を靡かせる騎士を筆頭に五騎は踵を返し、村へと引き返して行く。
「倍も数が違うからって逃げるなんて。それとも‥‥まぁいいわ。いつもの様に行きましょう、私達が村長からお金を貰って来るから他の皆は適当に家捜しなさい。でも十分に気を付けてね」
怪しげな光が宿る瞳で皆を見回してただ一人、駿馬を駆る首領は手を掲げると速度を上げ十人は三手に分かれ村へと雪崩れ込んで行った。
「これじゃ仕事にならねぇ‥‥数も少ないし、先に奴らを潰す」
レンジャーとウィザードを伴っては騎士崩れの盗賊、敵ながら見事な腕前で先程から現れたり消えたりを繰り返す一人の神聖騎士に痺れを切らせば、射手が先行く冒険者目掛け矢を射掛ける中で乗り慣れていない魔術師を置き去り追い縋るも
「これでっ」
誰かの声に気付けば同時、馬を引掛けるに丁度いい高さへ張られるロープに気付き馬を宙へ舞わせると同時、声の主を確認すれば
「お疲れ様」
手を振って微笑むハーフエルフの姿を見付けたが‥‥馬はいつまで経っても着地せず、やがて衝撃と共に視界を土色が覆えば馬が落し穴に嵌り、自身が落馬した事に気付く。
「まだ、やりますか?」
慌て起き上がろうとしたが、おっとりした表情だが厳しい声音の神聖騎士が喉元に突き付ける剣を前に舌打ちすると、遅れてレンジャーも後方の落し穴に嵌るのを確認すれば
「私の魔法を受けてみますか」
今いる場所から見ないが、凛とした女性の声に仲間の魔術師も自分と大差ない場面なのだろうと察して、止むを得ず両手を挙げた。
「お馬さんに乗るのは得意じゃないけど、これならなんとか‥‥それっ♪」
フライングブルームを駆ってチカが可愛らしい声を響かせ、眼下を走る盗賊目掛けて仲間から借りた投網を放れば、狙いは僅かに外れたがそれでも馬だけ絡め取ると落馬した盗賊をクラリッサ、
「こちらはこの方でもうお終いです、村長宅に向かった主力のお手伝いに行って下さい〜」
手際良く拘束して彼女に叫ぶと、それに手を振り指し示された方へと飛ぶ。
「‥‥あ、れ?」
そして飛ぶ事暫し、彼女の目に映った光景は予想していたそれとは違う光景だった。
「アトス、早く追って下さい!」
「分かっています!」
黒き光で一人の盗賊を落馬させいつもは冷静なピノが叫ぶより早く、アトスが駆けるその先、
「くっ‥‥」
「その程度? 罠にしても、馬術にしても。折角愉しみにしていたのに‥‥残念」
一行の中で一番馬術に長けているアリオスがエルフの騎士より借りた駿馬に乗り黒い肌にチリチリ髪の首領を追い駆けるも、彼はただ一騎になりながら、皆より先を駆けていた。
「コアギュレイトもこの距離では、後はあの者だけだと言うのに」
「私達の腕ではどうやら‥‥」
その二人の後を更に遅れて追うルクスとアトス、首領以外は意外にも早々に捕まえて多少気の緩みこそあったかも知れないが、それ以上に最後の一騎を駆る彼の腕前が立っている事に気付くも既に遅く、今では見失わない様に追い縋るのが精一杯。
「なら、これで!」
先を行く駿馬がまた道を塞ぐロープに気付き、高く遠くに飛ぶとアリオスは揺れに僅か狙いがずれながらも剣を振るい衝撃波を飛ばすが、タッチの差で着地しては巧みに馬を操って何とか回避に成功する。
「惜しいわね〜、でもまだまだよっ! とは言え、もう皆捕まっちゃったのね。目的は果たしていないけど、此処は逃げるが勝ちかしら?」
「逃がしませんよ!」
「それは追い着いて来てから言いなさい〜。それじゃあ機会があったらまた会いましょう、可愛い冒険者さん♪」
風に乗って響く頭の女言葉にアトスは叫ぶが、それを軽くあしらうと追う一行へ手を振り、道を塞ぐロープに一瞬戸惑うアリオスは気にせず彼は村を囲う柵を越え、森の中へと消える。
「みゅ‥‥けど、あの後をつければアジトが分かるかも♪」
だが捕まえる事はまだ諦めず、チカは前向きに呟くと再び魔法の箒に魔力を込め唯一逃れた首領を追い駆けるのだった。
それから一行、チカと合流しその案内で時間がなく事前に見付ける事が出来なかった盗賊達のアジトに辿り着くも、一足遅く盗賊の頭には逃げられてしまう。
しかしながら捕らえられていた村人達に一部の金品が無事だった事は不幸中の幸いであったろう。
『後一歩で残念でした、馬の足を殺す罠は危なかったけど待ち伏せがいなかったので助かったわ♪ まぁそれでも今回は私も部下を失ったし痛み分け、次に会う時があれば今度は‥‥それまで元気でね』
「何が元気でね‥‥だぁっ!」
「お、落ち着いて下さい」
馬に乗り、格好良く盗賊を捕らえる事が出来なかったライラック。
残された一枚の羊皮紙を読み終えると、怒りでそれを引き千切りセレスが宥めるも一人、それは暫く収まらなかった。
‥‥とにもかくにも依頼を終え、予め呼んでいた騎士団に捕まえた賊達を引き渡しては村中に仕掛けた罠も撤去し終えた一行がキャメロットに戻ろうとした時、日は既に落ちかけ橙色の陽光が降り注ぐ頃となっていた。
「ありがとうございました」
「‥‥あぁ、聞こえる‥‥『ライラ、カムバーックッ!』と皆の呼ぶ声が」
『‥‥‥』
「誰か呼び止めてくれよ」
村人達の見送りに一行の中でライラックは、その礼に応えるも帰って来た沈黙に思わず突っ込めば一行が村に来て初めて響いた村人達の笑い声に安堵すると、安心してはキャメロットへ向けて走り出した。