腐森蘇生
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■ショートシナリオ&
コミックリプレイ プロモート
担当:蘇芳防斗
対応レベル:6〜10lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 9 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:05月25日〜05月30日
リプレイ公開日:2005年05月31日
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●オープニング
「うわーん、此処は何処ですかー?!」
‥‥キャメロットより程近い何処かの森、たまには遠出をと言う事でいつもの馴染みの森ではない、その真中で彷徨っていたセシル・アドルニー。
今日も今日とて元気に外出してみれば、道中こそ珍しく何事もなく鼻歌交じりで森へと入り気持ち良く寝られそうな場所を探すと、いつもの不運を全開に今へ至る‥‥ちなみに余談だが、先日冒険者ギルドに持ち込まれた依頼、そんな事は露知らない彼女は当然の事ながら呑気に一人で決行したが‥‥いや、やはりここでは書かないでおこう。
「出口は何処ですかー!」
‥‥さりとて、元気だけで何とか踏ん張ってセシルは森の中をとてとてと歩き回るのであった。
「‥‥‥‥」
歩く事暫く、森のやや深い所に来ては彼女の歩が止まる。
先程までと全く違う、腐り果てた木々に草花の姿をその目に捉え少なからず彼女の表情に動揺が走る。
「どうして‥‥?」
自然が大好きなセシル、それ故にこの光景に戸惑うが彼女にそれを知る術はなかった‥‥冒険者でない以上、当然ではあるが。
だが耳のいい彼女は何か這う様な音を捉えれば即座に危険を察し、慌てて踵を返すとその場を脱兎の如く駆け出す。
「これは‥‥きっと私への試練ですね!」
うーん、それはちょっと違う気がする。
しかしその光景は頭から離れず、彼女は駆けながら自身で何か出来る事はないかと考えを巡らすのだった。
それから一週間後(ちなみにキャメロットからその森まで一日と半の時間を要すが‥‥)。
「‥‥と、そう言う事で森のピンチを一緒に助けてくれる方を集めたいんです!」
何処かから飛んで来たカップを後頭部で受け止めながらも、今はそれを気にせず力説するセシルに受付嬢は
(「森がそう言った状況になった話は聞いた事が‥‥ちょっと大仰に聞こえるのは気のせいかなぁ」)
等と内心思いつつも頷くと、彼女のとある言葉に気付く。
「ん、『一緒に』って言う事はセシルさんも行くんですか?」
「勿論です、私がこの目でしかと結果を見届けないと! そして事が終わったら植林をして少しでもあの森を救いたいんです」
彼女の真直ぐな瞳を受けて、うーんと唸る受付嬢‥‥そりゃ前回、セシル直属の執事から彼女についての話を聞いているだけに不安になるのも当然だったが、その瞳からは意思は固い事が伺え悩んだが
「それじゃ、これだけ約束して下さい。皆さんの足を引っ張らない様、自分の身は自分で守る事。これが守れるのでしたら‥‥」
「守ります! これからお父様にお願いして訓練付けて貰って鍛えて来ますから!」
受付嬢が言い終わるより早く、セシルが珍しく真面目な声音で決意を告げるとその強さに根負けしてか、彼女は依頼書を書く為に筆を取る。
「ありがとうございますっ」
そして感謝の気持ちを込めてセシルが頭を下げれば、タイミングよく彼女目掛けて飛んで来た紅茶入りのカップがその頭上を通り過ぎると、依頼書を書こうとしていた受付嬢へ見事に命中するのだった。
『‥‥だ、大丈夫かなぁ‥‥』
頭から紅茶を被っては熱がる受付嬢とそれに慌てふためくセシルの姿を見て、冒険者達はそう思わずにはいられなかった。
そう、次は我が身なのかも知れないのだから‥‥。
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ミッション:森を腐敗させている根源を探し、断ち切れ!
成功条件:???(完全成功)
達成条件:根源を断ち切る事。(通常成功)
失敗条件:根源を断ち切れなかった場合。(完全失敗)
必須道具類:期間中の保存食は忘れずに。
その他、必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
その他:敵についての詳細は不明です、けれど何となく察しは付きますが‥‥とにかくその敵を探し出し、退治しては彼女の植林お手伝いまでをしてあげて下さい。
腐敗こそしていますが森と言う地形を失念しない様に、けれどその為でしょうか、比較的視界は開けているそうです。
植林の話ですが良家のお嬢様でありながら、親の力を借りず自らの出資で苗等を工面するのでそう沢山は準備出来ないと言う話でした。
そちらの面でフォローして上げるのもいいかも知れません。
尚セシルさんには十分気をつけて下さいね‥‥色々な意味で無事に帰って来る事をお祈りしておきます。
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●リプレイ本文
「腐敗した森‥‥か。うーむ、原因はなんだろうか? 私には全く持って思いつかぬが、原因を断ち切らねば後々厄介になるだろうな」
出発を前に静かな図書館で小さく呟いては少しでも役に立つ文献がないか、調査に励むノース・ウィル(ea2269)だったが
「‥‥いかん、もうこんな時間か」
気配りを忘れない彼女は植林についても併せて調べていた為、太陽が今いる位置を確認してはいつの間にか夢中になっていた事と集合時間が近い事を同時に理解すると、慌て駆け出すのだった。
「アリッサ・クーパーと申します。よろしくお願い致します」
立派な姿勢でアリッサ・クーパー(ea5810)は恭しく一礼しては顔を上げ営業用の微笑を浮かべると、それに釣られ依頼人であるセシル・アドルニーも笑顔で彼女の両手を握り
「宜しくお願いします、足手纏いには絶対なりませ‥‥ぶっ!」
挨拶を交わそうとするもそれは突如、彼女の背中目掛けて突っ込んで来た悪意なき子供の全力体当たりを持って中断。
「‥‥セシルさん、これを持っていて下さい。何もないよりは多分、安全だと思います」
突っ伏す依頼人の姿が一行の行先を暗示している様で、先程まで一緒に植林する為の木々の苗を選別し、共に買っていたが未だ人見知りしてだろうフィーナ・ウィンスレット(ea5556)は彼女を助け起こすと同時に嫌な予感を振り払う為、その片手にウィニング・イースターを握らせればぎこちなく微笑む。
「ありがとうございます〜」
それにセシルも微笑めば丁度、ノースが路地の向こうから駆けてくる姿が見え依頼人はやっと全員揃った事に喜ぶと腕を掲げ、叫べば
「誰の為でもない、森の為に諸悪の根源を必ず断ちましょうっ!」
それと同時、何か風を切る音がフィーナの耳を打ち一寸して己が眼前を通り過ぎる一本の短剣が踏み出そうとした場所を貫いた。
「あ、興奮してつい抜いちゃった。ごめんね」
『‥‥‥‥』
舌を出し、悪びれもせず謝る彼女に一同絶句‥‥これが天然でない事を祈る様にアリッサはこめかみを押さえ、天を仰ぐのだった。
「今度の敵は分からない〜、それでもパラはやっつける〜。パラの戦士は探険家〜、森を守るぞパラッパラッパラ〜」
ボルジャー・タックワイズ(ea3970)が先頭を切って機嫌良く‥‥なのかは不明だがお世辞にも上手いとは言えない鼻歌を歌いながら進む道中、その後ろに続く四人‥‥正確には三人か、の女性陣はこれ以上ない程の何とも言えない疲労感から顔を歪めていた。
「‥‥押し売りと思しき人達、何処から来たのでしょうか。とてもしつこかったですね」
「‥‥それもそうだが、どうして何処からあんなに沢山の蜂が出て来る」
「‥‥疲れました」
三人が三人、ここまで至るまでの惨劇(?)を思い出し静かに呟いては後ろを歩くセシルを同時に見やれば、枝を振って彼の歌に合わせて元気良く歩く彼女はその様子に首を傾げると
「どうしたんですか皆さん、あと少しで目的地に着きますよ。これからが大変なのに大丈夫ですか?」
「そうそう、これからこれから。だからもっと張り切って行こう!」
(「‥‥誰のせい‥‥?」)
自らの不幸に巻き込んだ事を自覚していないのだろう、笑顔を振り撒いてセシルは三人の背中に抱きつくと一番経験豊富でそれ位のトラブルは気にもせず、皆の先頭を未だ元気にボルジャーが歩きながら同意して頷く中、表は笑顔の三人だったが一斉に心の内で彼女に問うのだった。
さて目的地の森の中、皆目見当がつかない敵を探す為にまず一行は彼女が見たと言う荒れ果てているだろう森の最深部をセシルの案内に従って進んでいた。
‥‥とは言え、そこに至るまでにはやはり様々な苦労があった訳で。
森林について土地勘が強くあるフィーナとボルジャーが依頼人の話を受けて進んでいる時は
「今の所、それらしい痕跡はありませんね」
「全く全く、まだもう少し奥なのかも」
彼らの視線の先に映る光景の中で生い茂る木々には不自然な所は見受けられず、更に奥へ奥へと進むも
「あっ!」
「ぺぎゃ!」
後ろから一行の後を追うその依頼人、初めての冒険に浮かれ気味の様子で足取り軽やかに歩を進めると木の根に足を取られ、倒れ‥‥ようとした直前にノースの足首をむんずと掴んで巻き込めば次の瞬間には可笑しな悲鳴が辺りに響く。
「‥‥大丈夫ですか?」
そんな倒れる二人に営業用の微笑を浮かべながら尋ねるアリッサだったが僅か、困った様な表情も浮かんでいた。
次には夜営を張り終え、休息の時間を静かに愉しんでいた時。
「うわーん、大きな蜘蛛の巣がー!」
五人が休む場所のすぐ間近にある、枝振りは見事だが然程高くない木に食べられそうな木の実を見付けたセシル、暗闇に隠れる蜘蛛の巣に気付かず雁字搦めにされればノースは彼女を気遣って近寄り、それを払おうとしたが
「少し大人しくしていれば取‥‥る?!?!」
直後にその言葉を聞かず暴れるセシルの左手が木を打ち据えると、直後に落下してきた様々な虫が服の内部に入り込み、目を白黒させると少し遅れて
『いきゃーーーーー!!!』
休む三人にも大量の虫が降り注ぎ、ボルジャーを除く全員が黄色い悲鳴を一斉に上げるのだった。
「‥‥参ったね、こりゃ」
その様子を静かに見つめ、自らに降り注ぐ虫を払うパラの戦士はこれから尚も起こり得るだろう事象を予想し、溜息をついた。
‥‥とこの様に不幸はセシルに集中して降り注ぐ事はなく、むしろ一行も巻き込むのだった。
「貸すべきではなかったのかも‥‥知れませんね」
その原因が彼女に託したウィニング・イースターの為かは分からない、だがそう思わずにはいられない魔術師の背中はいつもより少しだけ、小さく見えた。
「どうやら此処の様ですね、でも話とは大分‥‥」
そんなこんなを乗り越えて、翌日のまだ朝早い頃。
暫し歩けばやっと目が覚めたのだろう、いつもの調子に戻ったフィーナの目に映るのは黒く焼け爛れたかの様な木々の群れ‥‥ではなく、まだ比較的元気な木立だった。
「確かに所々、焦げた様な痕はありますがセシル様のお話程酷くはないですね」
「この前見た時はもっとこう、おどろおどろしい感じだった気がするんですけどね〜。おかしいな」
『‥‥』
おかしいのは貴女だと言う突っ込みは今更する気起きず受付嬢の話を思い出し、とりあえず彼女の早合点で大袈裟な話だったのだろうと皆は頭の中で結論付けると、パラの戦士は虫食いの様なあちこちの木々にある痕をしげしげと眺める。
「この痕は何だろうか〜、火ならこの程度じゃ済まないだろうし」
「もっとこう、草木が枯れて黒々しく且つ禍々しくてですね‥‥」
「火以外のもの‥‥一体何なのでしょうか」
「何でしょうね〜」
『‥‥‥‥』
ボルジャーの分析にセシルは尚も食い下がるが、アリッサが真面目な表情で首を傾げると今度は掌を返したかの様に一緒になって解けない疑問に呻いて、皆が沈黙したその時だった。
「つぅ!」
急に痛みが肩に走り、アリッサが自らの右肩を抱くと同時に辺りに辺りから響いてくる、草を揺らし擦る様な音が皆の耳に聞こえて来た。
「皆さん、気を付けて下さい!」
「‥‥何か、飛ばして来た様ですね。木々に残る痕はこれなのでしょうか」
変わらず断続的に響く音へ銀髪を翻し魔術師がセシルをその背中に庇い警戒を促すと、痛みに顔を顰めながらも焼け爛れたローブを見てクレリックが冷静に状況を伝え、先陣を切って果敢にパラの戦士が飛び出した。
「さぁ来い!! パラの戦士が相手になるぞ!!」
「格好いいですー!」
その叫びと共に飛び出して来た、一体のスライム状の敵を力強い大槌の一撃で叩き落すとセシルの率直な感想とその緊迫感を楽しむ様に一つ笑えば、僅か遅れてノースも速やかに短槍を抜き放って戦闘を開始するのだった。
「く、意外に」
敵の頑丈さに遠近のバランスが取れた敵との戦いは膠着を極め、何度か飛来する液状の飛礫に再び纏う鎧を焦がしつつもノースは後衛の支援で動きを止めるスライム状の敵を貫けば、それはその身を崩壊させた。
「あと、何匹だ」
「‥‥一匹、でしょうか? 今は様子を伺っているみたいですね」
場の状況を常に把握し、その時々で臨機応変に対応する彼女は自身の脳内が上げる悲鳴を何とか抑え、冷静に周りの者へ訪ねれば即座に返って来たフィーナの回答に再び身構えると
「最後のは何処だー」
静まる場に敵を誘い出そうとし、大槌で大地を揺らしこちらの居所を教えるボルジャーの狙いは程なくして当たり、最後の一匹は飛び出して来た‥‥セシル目掛けて。
「っ!」
『駄目です!』
それでも彼女は意外に敵へ怯む事無く短剣を構え、前に一歩踏み出したがそれはアリッサとフィーナによって後ろに押し出され、先と同様の連携を取る彼女ら。
「流れ舞え、刻み踊れ、留まる事知らぬ風よ」
「その身、我が言霊にて拘束されし‥‥頭を垂れよ」
襲い来るそれらに僅か抵抗する敵だったが、動きを鈍らせる事に成功し二人は敵が負っている傷に前衛の二人を信頼して静かに微笑み、その結果を見る事無くセシルに手を差し出すと
「終わったー‥‥って大丈夫か?」
大槌で文字通り、最後の敵を粉砕したボルジャーは額に流れる汗を拭うと振り返ればその視線の先には敵の遠距離攻撃で弱り、セシル目掛け倒れようとしていた一本の細い木を支える二人が映り、何故か問い掛けると
「た、助けて下さい‥‥」
アリッサがもう限界、と表情で訴えつつヘルプを要請するのだった。
「それでは頑張りましょう、皆さん」
『おー!』
一行の中で一番に植物の知識に長けたフィーナが音頭を取る中、戦い終わった一行とセシルは十分な休息をした後に依頼のもう一つの目的である植林を始める。
「‥‥この程度の傷であれば十分に自然治癒出来る筈ですが老木も多いですし、いい機会ですね」
そして動き出した皆を見つつ、周囲の光景を見て木々の状態を判断すると彼女は森の恩恵を授かる身として感謝と同時、日頃の恩返しをすべく張り切って指示を出す。
「まずは比較的薄い、あちらの方から宜しくお願いします。偏り過ぎず均等に植えて行って下さい」
「おいらはパラっさ、元気に穴掘り〜。植えるぞ戻すぞ森の緑〜」
その最中でも鼻歌交じりに苗を植える為の穴を作るパラに、その近くに来てはテキパキと動くノースを筆頭に一致団結し手際良く木々を植えていけば、人の数こそ少ないもそれ故に森の魔術師が想定していたより植林作業は早く終わった。
「これで大丈夫、でしょうか?」
「えぇ、問題ありません。土壌もいいですし、後は時間を経る事でこの森は今よりも育ち若返ると思いますよ」
セシルが一人不安を呟くもそれを拭う様にフィーナが優しく諭すと辺りに植えられた苗の群れを見て未来のこの森の姿を心の内に描き、彼女を見つめて微笑んだ。
「パッラッパパッパ!! おいらはパラっさ!! パラッパパラッパ!! おいらはファイター!!」
一仕事終えてキャメロットへの帰路へ着く一行の中、歌については様々な点でお察し下さいだがボルジャーは達成感に満たされ大声で歌を紡げば皆楽しげに笑うと、先頭を歩くセシルがくるりと踵を返し、四人を見つめ
「今回は本当に色々とありがとうございましたっ」
ごごごごんっ
「‥‥今度依頼を頼む時があれば、もう少し検討して貰った方がいいのかも‥‥」
「‥‥うわーん!」
一行の役に立てなかった事から自ら率先して皆のバックパックを抱えていた彼女、勢いよく頭を下げ一礼すればやはり勢いよく振るわれるそれでボルジャーの脳天を打ち据えると、彼のぐうの音に慌てふためく彼女の様子に女性陣は複雑な表情を浮かべては静かに笑えば
「我らが神よ、犠牲者が出る事無く依頼を無事に終える事が出来‥‥感謝致します」
アリッサは素の表情を出し、本心から神に感謝するのだった。
‥‥セシルについて(今後の為に)
もしかすれば少しうっかりさん、不幸と併せ彼女の依頼を受ける際には十二分に留意が必要である、依頼内容によっては検討の価値あり。