暗深双槍

■ショートシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:8人

サポート参加人数:4人

冒険期間:07月05日〜07月12日

リプレイ公開日:2005年07月13日

●オープニング

「此処に戻って来るのも久し振りだが、さて‥‥」
 キャメロットから僅かに離れた場所にある洞窟の前にて、久々に家に帰って来たレイが洞窟の前にて頭を抱えていた。
「この内部にある物はまぁ、問題あるまい。後はもう一本だが‥‥依頼で回収を頼むか、余り時間がない事を踏まえれば」
 一人呟き、久々の家を前にしながらも決断早くそう決め早々に踵を返しては冒険者ギルドに向かうのだった。

「‥‥なるほどなるほど。でもそこの洞窟は確か一年近く前に別件の依頼で行っていますね、どうして見付からなかったのかしら?」
「念入りに偽装したからな、はたから見ただけではそう簡単に見つからん‥‥そう言えば暇だったからいくつか通路だけを掘っては埋めたな」
「‥‥それ、いいんですか?」
 と言う事で冒険者ギルド、受付嬢へ再会の挨拶もあっさり終わらせれば内容から向かうべき洞窟に思い当たった彼女の問い掛けに時間が惜しいのか、レイは簡潔に答えると彼女が呆れて溜息を付くより早く次の句を紡ぐ。
「済まんが可能な限り早くノッテンガムに戻らねばならない、急かす様だが早々にそこに向かって最深部にある筈の槍を回収して来てくれ」
「はいはい、でもそこまでして隠す槍って‥‥魔法の武器?」
 様子からはそう見えないが、いつもと違った声音で改めて内容を告げるレイにまたしても彼女が問えば、その返事の代わりに首を横に振る。
「‥‥何、大事な友から託された至極普通の槍だ‥‥それでは頼む」
「あ、ちょっと!」
 そして帽子を目深に被り直し、それだけ言えば羽織る皮のコートを翻し颯爽と冒険者ギルドを後にするのだった。
「‥‥報酬、置いていっていないんだけど‥‥」
 ギイとまだ揺れている扉へ受付嬢、依頼主がもう既にいないのは分かっているが肝心の報酬がない事をその場で告げずにはいられなかった‥‥。

――――――――――――――――――――
 ミッション:洞窟の最深部にあると言う、レイさんの槍を持って帰って来る事。

 成功条件:最深部と思われる箇所に到達し、槍を無事に持って帰って来た時。(完全成功)
 失敗条件:槍を持って帰れなかった時。(完全失敗)
 必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は忘れずに。
 それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
(販売されていないアイテムに関して、使う場合はプレイングにて根拠の明示を忘れずに)

 その他:洞窟についてですが、レイさん‥‥比較的最近隠したと言う話にも拘らず詳細についてはほとんど覚えていないそうです。
 ただ、ご丁寧に槍をしまった部屋までの道は岩等で封鎖しているのは覚えていて、かつ通路だけの外れがあると言う話なので、探索がメインになると思います。
 入口を探すのはそれなりに大変でしょうし、封鎖されている区域もあの人の事なので何があるのか待っているのか‥‥十分に警戒して下さい。
 ちなみに報酬は今現在頂いていませんので、槍をお渡しする際に直接請求して下さい。
 でも余り無茶は言わない様に、忘れる人も悪いと言えば悪いんですけどね。
――――――――――――――――――――

●今回の参加者

 ea0453 シーヴァス・ラーン(31歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea1754 ギルツ・ペルグリン(35歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea2269 ノース・ウィル(32歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea4460 ロア・パープルストーム(29歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea5678 クリオ・スパリュダース(36歳・♀・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea6237 夜枝月 藍那(29歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 ea6870 レムリィ・リセルナート(30歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea8088 ガイエル・サンドゥーラ(31歳・♀・僧侶・エルフ・インドゥーラ国)

●サポート参加者

ノア・キャラット(ea4340)/ 朱 華玉(ea4756)/ アルラウネ・ハルバード(ea5981)/ ハーヴェイ・シェーンダーク(ea7059

●リプレイ本文


「とりあえずさ、記憶はクリアーにしてお・こ・う・な」
 笑顔を湛え、依頼人と好意も握手を交わすシーヴァス・ラーン(ea0453)は右手には自身が持ち得る力を全て乗せ握れば、今回の依頼人であるレイ・ヴォルクスも負けじと握り返す。
「あぁ、全くだな。皆に迷惑をかけて済まないと、思っている」
「ぐぐっ‥‥な、ならいいんだけどさ‥‥」
(『うさんくさっ』)
 言葉だけ謝るも、僅かに表情を歪めるシーヴァスの様子から結構本気なレイを確認すれば一行はジト目で彼を見据えたがそれこそ彼のペースであり、その事に察しがついてか夜枝月藍那(ea6237)が洞窟について尋ねた。
「どの辺りに通路があるとか通路はどの位の広さなのか、使った岩はどの位の大きさなのかって事、もし覚えていたら‥‥」
「知らん、忘れた」
 だが取り付く島がない程の即答に、藍那は敗北を悟り地に膝をついてうなだれる。
(「忘れた、か‥‥何とも平和な御仁だな。まぁ、それが仕事であればこなすだけなのだが‥‥」)
 その光景の中で静かに佇むギルツ・ペルグリン(ea1754)は冷静に内心だけ、そう思ったが自身が知らぬ内に呆れる様な表情を浮かべていたらしく
「気にするだけ無駄よ。彼は‥‥ね、レイ」
「ふむ、久し振りだなロア。元気そうで何よりだ」
「お久し振り、お元気? 事情は知らないけど大変そうね、柄にも無く心配しちゃったわ。これから暑くなるけど気をつけてね」
 背後からロア・パープルストーム(ea4460)に諭されれば、彼はいつもの表情を浮かべる中で二人の会話は続く。
「所で件の洞窟なのだけど鍾乳石を傷付けない様に話があるのに穴、掘っちゃったのね」
「あれは‥‥そうだな、掘ったが許可は得たぞ!」
 友人が今回の依頼に関する事を調べ纏めた羊皮紙を見るレムリィ・リセルナート(ea6870)をちらと見て囁けば、それだけ言ってレイは一歩その身を引くと
「‥‥頑張って家の掃除をして、オレも早く槍を見付けないとな! それじゃあ皆、そっちは頼んだっ!」
「ま‥‥て、と言おうとしたのだが」
「行っちゃった、あぁ言う人にはなりたくないね〜」
「全くだな」
 くるりと踵を返し一行の前から離れ行く彼は、ノース・ウィル(ea2269)が引き止める間もなく途端に走り去りレムリィが反面教師にしようと誓えば、ガイエル・サンドゥーラ(ea8088)も頷いて同意を示したりと皆は揃って呆れたがその光景をクリオ・スパリュダース(ea5678)は目を細めながら見てはやがて、皆へ呼び掛けるのだった。
「真実は村人達に聞けば分かる話、彼に呆れるより一応は依頼なのだからまずは目的の村に向かいましょう」

 ‥‥と言う事で、村にて。
「レイ・ヴォルクスと言う怪人が、洞窟に穴を掘って危険な物品を隠したらしく‥‥私はその回収を依頼されて来た。ゴブリンが住み着いたのも彼のせいかも‥‥心当たりがないかな? 皮製の外套に帽子を目深に被り、口癖はブラボーと良く連呼しているのだが」
 ‥‥酷い言う様だが、ある意味的を射るクリオの問い掛けは誰も訂正せず村長の答えをただ待つ事暫し。
「ふむ‥‥確かにレイは知っておるぞ。この村の出身だからな」
 その答えに一行、僅かな沈黙を引き摺って驚愕に目を見開く。
「そんな話は聞いていないね‥‥尤も話す理由も聞く理由もないでしょうけど」
 だがそれもほんの少しだけ、聞いて尚素っ気無い口調で言い放つクリオに
「まぁ此処で色々とあったからのぅ、それに槍を隠す時より前に此処へ来たのが十年以上前じゃったし」
「それだけ村を離れる理由があるにも拘らず、槍だけ隠しに来ると言うのはどうにも腑に落ちないが‥‥」
「えーと、すいません。話を戻しますが、レイさんに鍾乳洞内部を掘ってもいいと言う許可はしたんですか?」
 続く村長の話を聞いて考え込むガイエルの傍ら、一先ず本題を問う藍那へ
「うむ。許可はしたが正直、どの様に掘って埋めたのか詳細は分からん。今までは大丈夫じゃったが今後もそうとは限らんし、済まんがわしからは調査の程を頼みたいのだが」
「分かりました、鍾乳洞を傷付けない様に十分配慮します。そう言う事で皆も気を付ける様に、悪い子がいたら罰として脇腹を小突くからね」
 村長の願いにそれを考慮していた事からクリオが代表して誓うと、他の皆も頷けば意外に時間を潰した事から早々にその場を後にする。
「しかしあいつも大分変わったのぅ」
 そして残された老人は一人、窓から見える空を静かに眺めるのだった。


「これは駄目ね、どれだけ時間が掛かるか分からないわ」
 村長より借りた地図を持って鍾乳洞内部の探索を開始した一行の中、一足先に終えたロアはグラビティーキャノンでの掘削を目の前にある硬そうで怪しげな岩壁に試していたが、数度打ち込んだ所で僅かにしか削られていない岩壁を見て
「ま、スクロールだからって事もあるだろうけど‥‥これじゃ埒が明かないわね」
 早々に見切りを付けて彼女は失った魔力を補充する為、穿った壁にもたれ座り込むと他の皆が戻って来るのを待てば
「レイ殿‥‥余程暇だったのだろうか?」
「そうでもなければここまでする必要はないと思うぞ」
「明らかにやり過ぎ、よねぇ」
 暫くして探索を終え戻って他の面子、それぞれが目視で見付けた怪しい場所を報告してはガイエルが書き加えている地図を見て、皆は改めて彼の所業に呆れる。
「あいつの話、参考になったな。おーい、オレのも追加な‥‥って、痕跡が残っている箇所だけでも十以上あるのかよっ!」
「ま、まぁまぁ。それだけ大事なものなんですよきっと‥‥」
「こんな所で力を使うより本人にそれを言う為、まずは依頼を全うしようじゃないか」
 最後に皆の元へ戻って来たシーヴァスがその地図を覗き込めば我慢ならずにぶち切れるも、慌てて藍那が宥めれば内心やはり呆れているだろうが、冷静にやるべき事を言うギルツの一言に皆は頷いたが‥‥それでも溜息だけ、止める事は出来なかった。

「次は此処か‥‥ふぅぅぅぅん!」
 三日目、ロアのウォールホールで槍がありそうな通路の当たりをつけてから道を切り開く事これで五箇所目、槍を携えたノースが気合を入れて目の前を塞ぐ岩をどかそうとするもそれは彼女一人の力ではビクともせず
「‥‥ふ、やはり動かんな」
「当然だろ、意外に間が抜けているな」
「‥‥五月蝿い」
 一人で照れるがシーヴァスの突っ込みへはそっぽを向いてふくれると同じ神聖騎士の彼は両手を挙げて首を竦めた。
「此処も風が流れている様子はありませんね」
「全ての通路が外に繋がっていない可能性はある、余り気にする必要はないだろう」
 そんな二人に苦笑を浮かべ藍那の呟きにギルスが静かな声音で判断を下すと彼女がロープを取り出す傍ら、佇むだけでは落ち着かず率先して撤去準備を始めると皆もその後に続くのだった。

「初めての部屋、ね‥‥この距離なら」
「此処は私がやろう、ロア殿は大分お疲れだろうて」
 そして本日二本目の通路を進む一行の視界に部屋らしきものが飛び込めば、ロアの状態を察してガイエルが巻物を開いて赤外線視覚を得る。
「‥‥熱源無し、モンスターが潜んでいない様だ」
「入ってみようぜ」
 彼女の言葉にシーヴァスもホーリーライトで入口から直接内部の様子を観察し、安全な事を確認すれば皆に手で合図を送る。
「‥‥無造作に置いているね、まぁしょがないかも知れないけど」
 目的の槍は部屋に入ってすぐ皆の目に留まり、レムリィは額に手を当てるも頑丈そうな岩肌からそれも止むを得ずと思い、その槍を手に取り見れば次には周囲を見回してみる。
「槍を隠せそうな場所は他になく、此処にもない様だな‥‥ならこれがその槍と見て間違いないか、穂先に布を巻き付けている辺りが如何にもと言っている気がする」
 が女戦士より先にノースが今まで確認した通路の様子からそう推論付けると
「それじゃ戻るとしますか、一応此処を塞いだ上で」
「その前に一つ、やっておきたい事がある。村への報告もあるだろうから、二手に分かれて‥‥」
 シーヴァスの提案へ皆は頷き、一先ず踵を返そうとしたがクリオを見ながらギルツが紡ぐ提案に耳を傾けるのだった。

「‥‥何もしないよりはマシだろう」
 先に村長へ誓ったクリオの言葉を受けて、ギルツの提案は実行へ速やかに移されれば探索の際に発生した岩の塊の撤去を行っていた。
 ‥‥今回の探索で発生したそれより、隠れていた通路内部に点在するレイが残していったと思しきゴミ(?)の方が多かったのは此処だけの話。
「考えがあって槍を隠したのは後で聞けば分かる話だが、これはいささか‥‥」
 作業は続けながら、だがこの依頼に入ってから何度ついた事か分からない嘆息を漏らすガイエルだったが
「思考が平和な御仁だからな、無駄かも知れないが後で言って聞かせる他ないだろう」
「いや、その身で知って貰った方がいいかも知れぬ気がするな。『知る』と言う事を‥‥例えば、ヨッシーを‥‥」
 ギルツの案に頷きかけ、しかしそれでは温いと判断してか外で大人しく待つ愛犬をけしかけようかと言う彼女へ、静かな騎士は首を竦めるとエルフの僧侶は静かに微笑った。


「そもそもこの槍には何があるのだ?」
「うん‥‥流石にそれは分からないけどこの槍、とても大事に扱われていたみたい。刃毀れがなければ永らく放置されていたのにも拘わらず激しい腐食もないし‥‥持ち主さんが昔からこれを大事にしていた事だけは分かるよ」
 そして帰路に着く一行。
 穂先に留められている蒼い布が吹く風で舞う中、作りは至ってシンプルな槍を眺め呟くノースの疑問に鍛冶師の視点でそれを見定めるレムリィが言う通り、その刃はまだ辛うじて煌きを失っていなかった。
「何かを傷付ける為じゃなく、何かを守る力を得る為‥‥訓練か何かで使われていたんじゃないかな? 血や脂の痕跡が全くないよ」
「‥‥正直、考え難いな。その様な考えをレイ殿が持っている事に」
 この槍を使っていた者へ思いを馳せてか、虚空を見つめ囁く彼女へノースの的確な突っ込みは皆の賛同と頷きを得、レムリィはそんな他の皆へ苦笑を浮かべるも
「でも、良かった。これだけ大事なものを無事に助ける事が出来て」
 その槍が振るわれた想いを察し持ち主へ返す日が近い事に安堵すると静かに微笑めば、武具の手入れをする道具を取り出して磨き始めるのだった。


 さりとて無事にキャメロットまで戻って来た一行はレイと対面するなり、早速
「報酬、忘れてないよな?」
「無論だ、踏み倒す訳があるまい」
「‥‥でも、ついさっきまで忘れていたとか言わないよな?」
 彼へ手を差し伸べて正当な報酬を要求するシーヴァスの二言目にはレイ、無言で頷き懐を弄ると
「私はお金、要らないわ。その代わりにスクロールを頂戴、テレパシーとかいいわね」
「あたしなら友情の証に値段は付けられないわ〜」
 真直ぐな意見をぶつけるロアにレムリィはわざとレイを試すと当の本人は一瞬、懐に入れた手を止めるがやがて皆に一つの皮袋と、ロアにだけ懐から巻物を取り出せばそれらを手渡した。
「‥‥真っ白じゃない、これ」
「以前没収していたものだからな、返却するに値する仕事をして貰った訳で今返そう」
 そしてロアが巻物を開けばその事に気付き問うも、レイの回答へ彼女は叫んだがそれはさらりと無視をする。
(「‥‥ひでぇ」)
 そんな様子を見てシーヴァスは内心でそう漏らすも、もっと酷い人間は世の中に沢山いる訳でして。
「けれどレイ、いくら自身が生まれた村で許可を得たからってあれはやり過ぎだと思うのよね‥‥私としては村に補償すべきだと思うのよ。村の観光資源でもある訳だし、ね」
「うっ」
「200‥‥せめて100Gでも返すべきだね、余り村にも帰っていないんでしょう。それを持ってたまにでも帰ったら?」
「‥‥う、む。善処しよう、いや、この槍に誓って必ず!」
 鍾乳洞内の様子からいつもの商人に戻ってクリオのある意味当然だろう提案へ、レイは彼女の鋭い一瞥もあってそれに従うと約束したが
(「‥‥何かすっかりいい人っぽくなったわ、癪ね」)
 当初の予定とは方向が変わり、自身でも別人の様な振る舞いに内心複雑な思いに囚われるクリオ。
「しかし何故、わざわざ槍を隠す必要があったのか?」
「大切なものを隠したい気持ちは判りますが‥‥」
「‥‥弱かっただけだ。いや、それは今もかも知れない‥‥」
 そんな彼女の心情は知らず、今も風に舞う蒼い布を見てガイエルの疑問に藍那も呆れながら続けばレイは託された槍を片手で振り、先と違う重い独白を紡ぎ一行は槍に込められている想いを垣間見た気がした。
 そして場を沈黙が包むも、彼をそれなりに知る者の一声が破る。
「らしくないわよ、レイ。今は今、貴方は此処にいるじゃない。それで十分でしょう、それともお腹が空いてテンション低いとか? レイの奢りなら私達も付き合って上げるから‥‥と言うか奢って貰わないと私の気が済まないから、ほらっ!」
「勿論皆だよな‥‥んじゃ、早速行こうぜ!」
 レイの背後からロアが優しく言葉を掛け、だが次には彼の帽子を奪って駆け出せばシーヴァスの問いへレイが答える間すら与えず皆は彼の言葉に従い、次々にレイを追い抜いて行く。
 そんな一行の後姿を眺めていればその最後にレムリィ、彼の肩を叩くと
「槍を大切に扱ってあげてね」
 鍛冶屋の端くれとしてそれだけお願いすると笑顔を浮かべるも、やはり彼に背中を向け駆け出した。
「そう、だな‥‥『お前』とまた、同じ道を歩きたいものだな。彼らと一緒に」
 その言葉にレイはこの槍の本当の持ち主へ想いを馳せるが、皆の叫びによって今へ戻されると慌てて駆け出すのだった。

 その翌日、予定より一日早くレイはキャメロットを発つのだった‥‥二本の槍をその背に携えて。