【聖杯戦争】獅子の牙、再び

■ショートシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:7〜13lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 80 C

参加人数:10人

サポート参加人数:8人

冒険期間:08月08日〜08月13日

リプレイ公開日:2005年08月19日

●オープニング

「‥‥と言う事で、人手を借りたいのですが手隙な方はいるでしょうか?」
「いますよー、キャメロットにも比較的多く冒険者が残っていますからね」
 迷走から立ち直ったその直後、遅ればせながらキャメロットへと舞い戻って来た円卓の騎士が一人であるユーウェイン・ログレスはキャメロット近郊の様子を探り、その様子から冒険者ギルドで依頼を頼んでいる最中だった。
「それで、外の様子‥‥どうでした?」
「ゴルロイスが放ったアンデット達が未だ蔓延っている、アンデットの襲撃に遭ったと言う話は私も聞いてはいたがまさか此処まで酷い状況になっていたとは‥‥」
 最近まで冒険者ギルドに詰めっぱなしで様々な話を聞きこそすれ、円卓の騎士が悔しげな表情を湛え、語る話に状況を改めて聞いた彼女はその光景を思い浮かべると眉を顰め、沈痛な表情を浮かべたが
「大丈夫、皆に遅れた分だけこれから私と‥‥流石に一人では無理だから協力して貰える冒険者達の力を借りて出来うる限りのアンデット達を倒して来ますから‥‥皆を守る為に、ね」
 ユーウェインが紡ぐ決意と同時、その瞳が自身を捉えている事に気付くと急に照れ臭くなって目線を外す受付嬢だったが‥‥実際に見据える先はもっともっと大きなもの。
 それに気付く筈もなし受付嬢は、勘違いしたまま頬を赤らめ何とか彼に視線を戻すと
「それではお願いします、獅子の騎士が名に置いて‥‥今こそキャメロットを守る為に力を貸して欲しいと」
「‥‥あ、はい。分かりましたぁ〜」
 それを受けてユーウェイン卿、最後に一言だけ残して早々に踵を返す中でいつもの彼女らしからぬ、でれーんと返事をすれば‥‥やがて彼が消えた後には鼻歌交じりで軽快に羊皮紙へ筆を走らせ、早々に依頼書を書き上げるのであった。

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 ミッション:未だキャメロット周辺に蔓延るアンデットの群れを駆逐せよ!

 成功条件:アンデットを一定数以上、退治した時(種類問わず)。
 失敗条件:成功条件を満たせなかった時。
 必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は忘れずに。
 それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
(販売されていないアイテムに関して、使う場合はプレイングにて根拠の明示を忘れずに)

 その他:聖杯戦争は終わりました‥‥が、まだその事後処理は山の様にあります。
 今回、ユーウェイン卿が依頼として持ち込んで来たのはそんな案件の内が一つ、キャメロット近郊に今もまだ蔓延っていると言うゴルロイスが引き連れて来たアンデットの『掃討戦』になります。
 ‥‥とは言え、流石にこれだけの人数で全てを退治するのは無理だと思いますので可能な限りでの退治をして頂きます様、宜しくお願い致します。
――――――――――――――――――――

●今回の参加者

 ea0447 クウェル・グッドウェザー(30歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea1458 リオン・ラーディナス(31歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea1542 ディーネ・ノート(29歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea1757 アルメリア・バルディア(27歳・♀・ウィザード・エルフ・イスパニア王国)
 ea2179 アトス・ラフェール(29歳・♂・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea2307 キット・ファゼータ(22歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea3519 レーヴェ・フェァリーレン(30歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea3799 五百蔵 蛍夜(40歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4358 カレン・ロスト(28歳・♀・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 eb1600 アレクサンドル・リュース(32歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)

●サポート参加者

カファール・ナイトレイド(ea0509)/ チカ・ニシムラ(ea1128)/ 倉城 響(ea1466)/ ジャドウ・ロスト(ea2030)/ ネフティス・ネト・アメン(ea2834)/ 灰原 鬼流(ea6945)/ ジャッド・カルスト(ea7623)/ 野乃宮 美凪(eb1859

●リプレイ本文

●First Attack(初刃)
「ユーウェイン様、短い間ですがどうか宜しくお願い致します」
「いや、こちらこそ宜しく頼むよ。皆の力、頼りにさせて貰うからね」
 キャメロットの門を出てすぐ、僅かに漂う臭気を気にせず円卓の騎士であるユーウェイン・ログレスと互いに微笑を交わし和むカレン・ロスト(ea4358)‥‥臭気等お構いなしに何とも言えない不思議な雰囲気が漂う場であったが、戦いを前に緊張しているよりはいいかも知れない。
「お話は少し伺っていましたけれど、ユーウェイン様が復帰なさって何よりです。慢心妄信より迷い悩みながら進む道の方がきっと良い結果を生むでしょう、頑張って下さいませ」
「ありがとう、だがアルメリア殿にも頑張って貰うよ」
 その不思議な場の雰囲気が中に置いて、アルメリア・バルディア(ea1757)の静かな響きは獅子の騎士へ礼を紡がせるも、続く言葉には僅かに慌て‥‥だが笑顔を浮かべる。
「しかし恥ずかしい限りだね、殆どの者が初めて会うのに先の話を聞いているとは‥‥」
 彼女の話から苦笑を浮かべ呟くユーウェインだったが
「でも大丈夫だ、この剣を掲げる先はもう見据えて揺るがない。後は‥‥」
「ならいいけど、オレなんて年中悩みっぱなしだよ? 彼女出来ないとか、彼女出来ないとか、彼女出来ないとか‥‥」
「それとは全然、悩むレベルが違うぞ‥‥」
「あ、やっぱ?」
 剣を翳し、その瞳の光は強く皆へ言い‥‥次いで何か言いかけるもそれを遮る様にリオン・ラーディナス(ea1458)は円卓の騎士が肩を遠慮なく叩いてぼやくと、キット・ファゼータ(ea2307)の無愛想な突っ込みに苦笑を浮かべながら同意すれば途端、場に溢れる笑い。
「獅子の騎士が名に置いて‥‥キャメロットを守る為に力を貸す、獅子奮迅の働き御覧あれ!」
「まぁそこまで、肩肘張らなくていいかな。皆が皆、出来る事をやって貰えればそれでいいと思う‥‥それがきっと最善だろう」
 だがそんな場でも静かに闘志を燃やすアトス・ラフェール(ea2179)の宣言にはその獅子の騎士は剣を納めながら、最初こそ苦笑を浮かべて彼を宥めるが‥‥僅かな間を置いて決意固く、それでも一行へ穏やかに言って一つ笑えば
「アンデットとは、死なない者ではなく死ぬ事が出来ぬ者達‥‥安らかに、眠らせて上げましょう」
 我が身に香油を振りかけ、神聖騎士らしい言葉を持ってユーウェインに続き皆へ呼び掛けるクウェル・グッドウェザー(ea0447)は寂しげな微笑みを湛えながら、だが強い響きを含ませたその言の葉は一行を頷かせ、未だ解放されない魂の群れを天へ帰す為に動き出した。
「‥‥僅かな間だけ、協力して貰える者もいるがその力、今度こそ貸して貰うよ」

「よっし、これでまた一匹〜」
 水の礫で朽ち掛ける肉体の中枢を穿ち、指を鳴らしディーネ・ノート(ea1542)はまた一体のズゥンビを屠る。
「キャメロットの近くはそう多くない様だな、もう少し様子を見ないと分からないだろうが」
「そう、だな‥‥所でユーウェイン卿、どの様なアンデットがいるのか分かる範囲で教えて貰えないか?」
 キャメロットより少しずつ離れながらまず初日は状況の把握に勤める一行の中、五百蔵蛍夜(ea3799)の言葉は正しく、かれこれ小一時間の進軍にも拘らず打ち倒したアンデットの数はまだ十にも満たず、のんびりした歩みの中でアレクサンドル・リュース(eb1600)の問いへユーウェインは
「そうですね‥‥私が見た所では精々、グール止まりですね。ですが余りにも多く、また頻繁に見掛けました‥‥あの俊敏さを持って、かつ群れて襲われると非常に危険でしょう」
 首を傾げながら、簡潔にそれだけ言って内心では一人ごちる。
(「まぁ、私にこの様な資格はないけど‥‥折角の機会だから君達の『強さ』を見せて貰うよ」)
 意図を含ませた言い回しの後、皆を改めて見回すも‥‥その瞳には恐れや怯えと言った負の光は宿っていなかった。
「‥‥それしきの事で退いてはいられん。俺達は大事な者を守る為に今、此処にいるのだからな」
 そんな彼の意図に察しがついてか、レーヴェ・フェァリーレン(ea3519)が力強く紡ぐ言葉に円卓の騎士は皆へ改まって頭を下げると
「皆の力を借りる事が出来る‥‥これ以上誇らしい事はない、改めて宜しくお願いするよ」
 顔を上げ、一行と笑顔を交わすのだった。

●Night of Ghost(死霊の夜)
「死んだ後もしゃしゃり出てきて未練がましいったらないな」
 ぶつくさと蠢く屍へ文句を言いながらも三日目の野営を築くキットは、一通りの作業を終えると手早く狼煙を上げる。
 もう日が暮れるのも間近、激しいだろう戦いに身を投げ出す事から休息にも重きを置く考えで望む一行の作戦が一つだった。
「しかし今日も団体様ご一行は見付からなかったな」
 上がる狼煙を見上げながら蛍夜の呟きは確かに、初日こそ人を掛け‥‥昨日からは二つの組に分かれながらもアンデット達を捜索、撃滅を試みるもその手応えは捕捉し倒したアンデットの数だけがいまいちだった。
「既に後退をしているか‥‥いいえ、もしかすれば‥‥」
「何処かで私達の隙を伺っているのかも知れないね」
 それは決して一行の力が足りない事を理解していたからこそ、逆にアルメリアが漏らした推測は途中で頭を振って否定するその途中でユーウェインに引き継がれると、頷き
「えぇ‥‥余り、考えたくはありませんが」
「夜の闇に乗じて、襲撃してくる可能性も十分にありますね」
 肯定の意を示せば、彼はそれに釣られ暗くなりつつある周囲を見回すも
「でも大丈夫です、きっと。皆さんがいますからね」
「だな。さ、飯の準備でもしようぜ」
 アルメリアが紡いだ言葉と同時、別行動をしていた五人を伴い舞い戻って来た自身の鷹へ止まり木の代わりに腕を差し出しキットは皆へ呼び掛けた。

「状況はまぁ、今回と非常によく似通っていたかな? 今の所、その数に違いがある位‥‥だけどこの状況を考えると油断は出来ないだろう」
 薪の爆ぜる音が響く中、以前にアンデットを掃討した際の話をアトスに尋ねられては答えていたユーウェインが皆に倣ってバックパックを漁り、保存食を取り出そうとしたが僅かに眉を顰めた。
「ん、どうしたよ。ユーウェイン?」
「‥‥いや、どうやら保存食を忘れてしまった様でね」
『えー!』
 過去の依頼で保存食を忘れた冒険者を嗜めた筈の彼がそれを忘れた、とあっては驚かない筈もなし‥‥まぁそれを知らずとも、彼程の人がと言う意味で驚きはするだろうが。
 ‥‥しかしそれでも驚きは一瞬、保存食に余裕のある者がバックパックからそれを取り出そうとすれば、当の本人はそれを手で制し笑う。
「いや、済まない。ちょっと試してみたくなっただけだよ、持って来ているから安心して‥‥」
 ‥‥のだったが、周囲の異変に気付き口元に指を当てれば皆は静まり‥‥声の代わりに響く木々のざわめきが聞こえた。
「何かが、近付いて来る音じゃ‥‥ないわね」
「辺りの木々が勝手に動いているのか?」
 比較的開けた場所であったが不自然な動きを見せる周囲の木々にディーネの判断は正しく、それならとアレクサンドルの問いへは
「これは‥‥ポルターガイストですね、物に取り憑き人を驚かせる事を愉しむ霊体。ですが攻撃もしてきます、皆さん気をつけて下さい」
 霞んで見える霧の様なものをその目に捉えたアルメリアの答えと同時に蠢き出す、その霧の群れ。
「‥‥わりぃな皆、場所の選定を間違った様だ。手前の不始末は自分の手で付ける」
 それを自身のミスとみなし戒めれば、いち早く立ち上がったキットが武器を手にそれ目掛け躍り掛かれば皆もそれに続き、月下の元に舞が始まった。

●Revving Dead(疾き屍)
「‥‥途端に沸いてきたな」
 その翌日から一行は死霊の群れと衝突する事となり、レーヴェは今日だけで五度目になる十数体からなるズゥンビの群れを小高い丘の上で発見すれば、周囲の地形を頭に叩き込んだ上で一先ず軍馬の手綱を引いて踵を返し、今頃は一息入れているだろう皆の元へ駆け出す。

「疾いですね、思ったより‥‥っ!」
 道反の石により動きは鈍っているものの、疾風怒濤に駆けて来るグールの群れにクウェルは呆れながら、それでも魔法で援護を続けるアルメリアに迫ろうとする一体の眼前に立ちはだかり身を挺して彼女を守れば
「電光石火よ!」
 僅かな詠唱の響きを聞いて彼はグールの動きを縫い止める様に一撃、肩口へ見舞うと続いてアルメリアが放つ雷撃の束は見事に直撃するが‥‥しかしグールの身は少し、揺らぐだけ。
「背中が隙だらけだぞっ!」
 だがそれに次いで叫び、得物を振り下ろす蛍夜の斬撃は僅かに浅く振り返るグールは嘲る様にぞろりと牙を覗かせたが怯まずに続け刀を突き入れると、今度は振り上げ頭部を半ば強引に両断する。
「流石に切れが鈍って来たな‥‥数が多過ぎるぜ、全くよ」
 刀を振るって、刀身にへばりつく腐肉を払い辟易とした呟きを漏らしながら自身の血に濡れた体を揺り動かし、予備の刀に交換しようとするが
「カムシン!」
「次が来ます! 攻撃に備えて!」
 一時、間を置く為に鷹へ牽制させ後退するキットに続いてアトスが聖なる領域を広げると途端、グール達も動きを止めれば場を包むのは緊張に似た静寂。
「連携すれば必ず倒せる‥‥行きますよ!」
「この緊張感、悪くはないが‥‥そろそろ終いにさせて貰うぞっ!」
 風の囁きだけ、遅れて響くとアトスの叫びと同時に再び動き出す場へ緩やかに緑の光をその身に舞わせ、アルメリアは再びライトニングサンダーボルトを解き放った。
「迸れ、閃光の一撃」
 それは正に一行を前に導く、一条の光となった。

「神の加護よ、御身が元へ降り立ちよ‥‥」
 静かな響きを持ってカレンが紡ぐ詠唱は完成し、円卓の騎士の傷を癒せば
「久し振りで少し、張り切り過ぎてしまった様だね。助かったよ」
 接触する額と額を離し、感謝するユーウェインだったが
「だからって、何もあれだけの群れの真只中にいきなり飛び込んで行くなんて‥‥もう、大人しくしていて下さい」
「あぁ、折角だから後は休ませて貰う事にするよ。直に終わるだろうしね」
 彼女のお説教にも近い言葉には苦笑を浮かべ呟くと、彼が見守る中で未だ続く戦いの勝敗はその通り、既に決しようとしていた。
「雑魚も数が集まればうっとおしい、な‥‥」
「本当ねっ!」
 一行の中で比較的に経験は浅いながらも自慢の膂力を持って数少ないグールの一体が半身を削り取れば、まだ動くそれの止めにディーネのウォーターボムがその頭部を根こそぎ抉り取る。
「やっと終わり、か」
「だな‥‥後はこいつだけだなっ!」
 冷静に周囲の状況を判断し、前衛と後衛のサポートに徹していたレーヴェが二十体以上いた群れの残数を確認すればそれにリオンは頷き‥‥残る手負いのレイス目掛け、闘気纏う一刃を振るうのだった。

●Lion’s Fang(終幕)
「まぁ流石に全部は無理だったろうけど、相当数のアンデットを『救う』事が出来たと思うよ。ありがとう」
「こちらこそ、役に立つ事が出来たなら幸いだ」
 無事に最終日まで戦い終えた一行へ頭を下げ、礼を言うユーウェインにアレクサンドルが声を掛ければ笑顔を浮かべ、皆と握手を交わしていく。
「まだ自身を鍛えなければ‥‥力も、それを扱う意思も」
「余り、気を張り詰め過ぎないで下さいね」
「騎士として、その勤めも正しいとは思うがな」
 その中で不意に小さく呟いた彼だったが、それはアルメリアの耳に届くと彼女と次いで同じ騎士であるレーヴェに諭され、苦笑を浮かべると
「‥‥さて、とりあえず状況は把握出来たからアーサー王へ報告してくる事にするよ。皆の協力、本当に助かった」
 改めて礼だけ言って踵を返し、皆へ手を振るその背中へリオンが珍しく真面目な声音で言葉を投げ掛ける。
「やっぱ体裁を守る騎士より民を守る獅子の方がイイと思うよ、オレは」
「あぁ、ありがとう。私に出来るなりの事を精一杯頑張るよ‥‥それでは皆、『また』会おう」
 彼の表情は見えなかったがそれだけ言って円卓の騎士は城内へ姿を消せば、一行は消えるまでその背中を見送った。