【求めし力】外伝 〜それを成すもの〜

■ショートシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:4〜8lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 40 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:09月21日〜09月26日

リプレイ公開日:2005年10月01日

●オープニング

 ‥‥静かな昼下がりも終わりを告げ、今日も喧騒撒き散らすだろう夕刻が近付く頃。
 冒険者ギルドの扉が奏でた音に反応して慌しく作業をしていた受付嬢は振り返る。
「何時もお世話になっています」
「あ、ルルイエさんいらっしゃい〜。アシュドさん、大変そうだけど大丈夫なの?」
「そのアシュドさんから頼まれた事があるので、今は別行動中です」
「なるほど‥‥って言う事は依頼ですよね」
 すっかり顔馴染みな彼女の会話から受付嬢、頷くルルイエを見て先の会話から誰でも察しはつくだろう推論を口にすれば、自慢げにえへんと胸を張る。
「簡単に言えば、材料集めです。製造方法についてはアシュドさんと他の皆さんが調査するのでそれが問題なく終了した場合を考えて、即座にゴーレムの製造に取り掛かれる様に準備を平行して行なってくれ、と」
 今となっては友人と言っても過言ではない受付嬢の様子に穏やかな、水面に広がる波紋の様、エルフの魔術師は静かに笑ってはその依頼内容を告げると
「ある程度の材料は以前から集めているのですが、何か今までにないゴーレムも造りたいと仰ってすっかりやる気に」
「そりゃ、そうよねぇ」
 次いで紡がれるアシュドの話へ耳を傾けながら過去の依頼を思い出し、受付嬢が微苦笑を浮かべるも、彼女とは正反対にルルイエが小さな嘆息を漏らす。
「変に凹まれるよりはいいのですが、やる気があり過ぎるのも‥‥」
「大変そうね、何時も」
「はい‥‥」
 しかしその言葉の割、表情に雰囲気から落胆している素振りは見えず受付嬢がじっと彼女を見つめるとふと我に返ってルルイエ、咳払いをすれば
「‥‥えと、アシュドさんが集めていた材料でもまだ少し足りないものがあるので依頼の方、宜しくお願いしますね」
 それだけを改めて告げ、パタパタと足早に冒険者ギルドを去るのだった。
「困ったさん程、可愛く見えるのは何でかしらね?」
 彼女の心情を察し、言ってから自身でも思い当たる節に気付けば静かな冒険者ギルドの中で一人、受付嬢は微笑みながら筆を取った。

――――――――――――――――――――
 ミッション:ゴーレムを作る為の材料を集めろ!

 必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は忘れずに。
 それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
(販売されていないアイテムに関して、使う場合はプレイングにて根拠の明示を忘れずに)

 その他:特にこれと言った注意点等はありませんのでお気軽にお手伝い頂けます様、宜しくお願い致します。

 □例えばこんな場所でこんな物(一例)
 ・セルアンさん:貿易を行なっている為、幅広く物を取り扱っていますが物によっては『代償』が必要だとか‥‥?
 ・アシュレイさん:色々と人脈が広いだろう彼、上手くお願い出来れば色々と取り計らってくれるかも知れません。
 ・その他:街や人も勿論ですが、キャメロット近郊でも探せば何かあるかも知れません。
――――――――――――――――――――

●今回の参加者

 ea0980 リオーレ・アズィーズ(38歳・♀・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 ea1466 倉城 響(29歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea5866 チョコ・フォンス(29歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea6780 逢莉笛 舞(37歳・♀・忍者・ジャイアント・ジャパン)
 ea7059 ハーヴェイ・シェーンダーク(21歳・♂・レンジャー・エルフ・イギリス王国)
 ea9244 ピノ・ノワール(31歳・♂・クレリック・エルフ・ビザンチン帝国)
 eb2404 明王院 未楡(35歳・♀・ファイター・人間・華仙教大国)
 eb3225 ジークリンデ・ケリン(23歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)

●サポート参加者

ラピス・リーフセルフィー(ea6428)/ アルフォンス・シェーンダーク(ea7044)/ バデル・ザラーム(ea9933

●リプレイ本文


「ルルイエさん、会いたかったよぉ〜!」
「お久し振りですね」
 冒険者ギルドの一角にてゴーレムの材料集めの為に集った冒険者達、その依頼人であるルルイエ・セルファードと顔を合わせるなり、久々の対面に感極まって彼女へ抱きつくチョコ・フォンス(ea5866)へ微笑を湛え応えると
「初めまして‥‥ですがアシュドさんのお噂は友人から聞いています。今回は宜しくお願いします」
「ルルイエさん‥‥先の聖杯戦争では、御世話になりましたわ。今までにない種類の、ゴーレムの材料‥‥でしたよね。先にご一緒した敵補給部隊への襲撃‥‥あの時の経験等を元に、材料を集めて見ますね」
 ルルイエにガッシと抱きついたまま離れないチョコはそのままに、ピノ・ノワール(ea9244)の落ち着いた声音での挨拶と、明王院未楡(eb2404)ののんびりとした挨拶に頷けば
「えぇ、皆さんのご協力に感謝します」
 集った皆の顔を見回し、その頭を礼儀正しく一度下げれば
「けれどアシュドくんのゴーレムスキーは相変わらずなんだね」
「でなければ、この様な依頼は出しませんよ」
 ハーヴェイ・シェーンダーク(ea7059)がこの依頼から一つ察して気さくに言って笑うと、彼の激しい握手に振り回されつつもその通りとうな垂れ、苦笑を浮かべるルルイエだったが
「‥‥それでは改めて、今回の依頼ですがゴーレムの材料集めです。アイデアだけでも構いませんので色々と集めて来て下さい、店等で材料を買う場合は一先ず私に報告して下さいね。私はこの時間、冒険者ギルドにいますので」
 即座に表情を引き締めれば気を取り直し、改めて依頼の目的を告げると
「さて、何がゴーレムさんの材料に適しているんでしょうかね‥‥」
「よく聞くのは石や鉄等の鉱石です‥‥が、折角の機会ですし変わった物を集めてみたいですね」
 十九歳にしてはやや幼い顔立ちの倉城響(ea1466)が人差し指で口元を押さえ、小首を傾げると魔術師で彼女よりも年上のリオーレ・アズィーズ(ea0980)の物腰柔らかい解説と笑顔に、響は感心に安堵を重ねて頷けば
「そう言えばあの時、ご一緒されていた方が鎧をゴーレムにする研究をされている方が居ると言われていましたよね。ゴーレムに着せるよりも、材料は少なくてすみそうですし‥‥便利そうですね」
「珍しい所で骨はどうでしょうか? ロープを束ねたゴーレムも簡単そうで珍しいと思います」
 聖杯戦争の際に出会った冒険者を思い出し、面白げなアイデアを出す未楡に落ち着いた雰囲気のまま、ピノも自身が考えてきたアイデアを彼女の後に続き言う。
「私はさっぱり見当も付きません‥‥ですが、私の中にあるゴーレム像に相応しい素材を探し、集めて来ます」
 そんな、色々なアイデアが飛び交う中で一人難しい表情を浮かべるのは銀色の長い髪に、人より長くエルフより短い耳を埋もれさせるジークリンデ・ケリン(eb3225)は、それでも上品な声音でそれだけ決めて固く決意すれば
「うん、それじゃ早速行ってみよー!」
 いつの間にかルルイエより身を離していたチョコの号令で、皆は一斉に動き出した。
「たまには‥‥妹の手伝いをするのも良いが、さて‥‥」
 賑やかなその中で一人、無愛想な逢莉笛舞(ea6780)は静かに色が違う両の目を閉じては、今頃はアシュドと共にいるだろう義妹の顔を思い出していたが
「舞にゃん、いこっ」
「‥‥あ、あぁ」
 チョコに右腕を掴まれ我に返ると彼女の呼び掛けに応じ、その姿を義妹と重ねながら冒険者ギルドを後にするのだった。


「確かに最近、と言う程最近じゃないけどキャメロットに来てたね」
 冒険者ギルドにて一人、何者かの聞き込みをしているハーヴェイは五人目にしてやっとその人物を知る冒険者を捕まえると、それから暫く言葉を交わすも
「何処に出てくるかとか、知ってる?」
「流石にそこまでは‥‥ねぇ」
「分かった、サンキュー!」
 それでもやはり知っている事は非常に少なく、ものの五分で話題が尽きればその冒険者へ礼だけは忘れずに言ってから、ハーヴェイは一先ず冒険者ギルドを後にする。
「さって、いるらしいと言う事は分かったけれど‥‥どうやって誘き出そうかな。兄さんに話を聞きに行ってみようか」
 そして少ない情報からどうしようかと暫し逡巡するが、自身の兄を思い出すと情報交換をする為に待ち合わせの場所へ駆け出した。

「お願いしますね。リオーレさん」
「こちらこそ、それでどちらに伺いましょうか?」
 その一方、穏やかな雰囲気を辺りに漂わせては挨拶を交わす響とリオーレ。
「そうですね‥‥ルルイエさんの話にあった、アシュレイさんとセルアンさんからまずは話を伺ってみようかと思ってます〜。埴輪を作る為の粘土でしたよね?」
 その雰囲気故に人々の目を惹く彼女らはそれに気付く風もなく、リオーレの疑問に確認を持って改めて浪人へ
「えぇ、話だけでしか聞いた時がないので個人的にも興味があって‥‥所で、埴輪とは確かこんな感じでしたよね?」
 一枚の埴輪と思しき絵が描かれている紙片を彼女へ見せては頷く魔術師だったが
「え、えぇ〜っと‥‥」
 芸術が爆発している前衛的な絵に響は何と返すべきか、言葉に窮するがやがて、一言だけ呻く様に返すのだった。
「‥‥凄く、強そうな、埴輪です、ねぇ‥‥」

「ゴーレムの腰に‥‥着脱式の二輪の荷台を付けた様な形にするとか、馬の胴体が大きく長いケンタウロスを模して、馬の胴体の部分に荷を仕舞える様にするとか」
 そしてまた別な場所、清楚な雰囲気漂わせる未楡はそれとは場違いな武器屋へと立ち寄り、大きな鎧を物色しながら過去の教訓を元に考えに耽っていた。
「なるほどですわ‥‥何も用途を戦う事だけに絞る必要はない、と言う事ですね」
「えぇ。戦う力がなくても、襲撃に負けない堅牢さとそこそこの移動力があれば、実用的だと思いますわ。何よりも一般化すれば‥‥安全に品物が行き来する様になって、物価が下がり主婦としても助かりますし」
 その人妻の傍らで魔術師のジークリンデは、強靱にしなる鉄弓を眺めつつも彼女の話に賛同の意を示し頷き返せば未楡はその最後、現実的に締め括ると静かに微笑んだ。

「近頃は陸で起きていた話にとんと疎くてね‥‥誰か! 近頃この辺りでゴブリン達と大規模な戦いがあった事を知っている人はいませんか?」
 大きな水面が一面に望める港にて、ピノは何時もの様に慌しく辺りを駆けていたアシュレイ・ゼルガードを何とか捕まえると、僅かな時間を割いて貰い今回の依頼に付いての話をすれば丁寧な対応をする船長。
「申し訳ありません、ご親切に」
「知らない訳ではないからね、彼の事は‥‥それに丁度休憩したかった頃合だったからね」
 海の男、と言う割に紳士的な彼へ一言礼を告げ、頭を下げるピノへアシュレイはそう言って悪戯めいた笑みを浮かべると
「‥‥ありがとうございます」
「礼には及ばないですよ、まだその話を知っている者がいるか分かりませんからね」
 落ち着いた面持ちはそのままに、だが敬意を持って再度の礼を述べる白きクレリックだったが、周囲の反応がない事にアシュレイは彼の肩を静かに叩くと暫くの間、ピノと一緒に広がる海を眺めるのだった。

「ゴーレム、ってなーに?」
 さて、その頃‥‥ジークリンデはと言うと、お子様数人が何やら熱心にお話の真最中。
 どうやら材料を探している際、好奇心旺盛な子供にゴーレムに付いて尋ねられた様子。
「正義と平和を守る『くろがねの巨人』ですわ」
 その問いに彼女の表情はそのままだが、声音には熱を込めて答えると
「それってつよいのー?」
「えぇ、とっても強いですわ。それはもう、誰も勝てない位に」
 続く、別な子供からの質問に今度は握り拳を作ってきっぱりと断言する。
「王様よりもー?」
「勿論、その体はどんな剣でも傷付かず‥‥」
 そしてそれから暫くの間、ジークリンデは子供達と同じレベルでゴーレムに付いて熱く語るのだった‥‥熱い、余りにも熱過ぎる話を。
 まぁ子供達は喜んでいたので、万事OKと言う事で‥‥いいのかなぁ。


 と言う事で市街組は比較的のんびりゆっくりやっていたが、キャメロットの郊外に出た者達はその逆、時間が限られている事から慌しく動いていた。

 舞の友人が案内に従って、チョコと舞がやって来たのはキャメロットより離れた場所にある、外れの森。
「ぜぇ、はぁ‥‥」
 木を切り出そうと言う舞の提案から此処までやって来た訳だが、自身が切り倒した木を借りて来た荷車に固定し終えた頃‥‥チョコは未だ、自身が定めた木を切り倒せずに肩で荒く息をしていた。
「‥‥チョコ、手伝おうか?」
「一本、この一本は私がちゃんと切って‥‥持っていくの。だから、大丈夫」
 それを見かね、作業を終えた忍者が静かに声を掛けるも彼女の決意は固く、それだけ言えば背筋を伸ばして深呼吸だけ一つ付くと
「チョコ、もうちょいだよ。頑張って」
「うん‥‥そうだよね」
 自らが繰る人形、はにゃ君の激励に自身を鼓舞すればチョコはもう何度目か、風の刃を目標とする一本の樹目掛け放ち‥‥そして、やっと打ち倒す事に成功すれば舞の静かな拍手の中でチョコは飛び上がり、はにゃ君を抱え喜ぶのだった。

「‥‥此処の様ですね」
 アシュレイから情報を得たピノはそれからすぐに郊外へと向かい、話にあった場所を見付ける。
 今は既に朽ちたゴブリン達が放つ腐臭に、だが彼は表情一つ変える事無くそれを見つめれば‥‥やがてその身を屈ませ、祈りだけは欠かさず呟いてはまずは供養するのだった。
「安らかに眠って下さい、今はただ静かに‥‥」


「‥‥来ない」
 依頼の期間も残すは一日となって、それでもハーヴェイはじっと待ち人を捕らえる為に今日は市街の片隅、民家が居並ぶ通りのど真ん中でマントofナイトレッドを餌に、物影で静かに待っていた。
 その待ち人の名はヴィー、騎士ながらその性格の特異さ故にキャメロットの冒険者ギルドでは‥‥ほんの僅か知られてはいるだろう変人。
「‥‥ノッテンガムにいるのかなぁ」
 日毎、罠を掛けるポイントを変えてはいたが一向に掛かる気配は無く、聞いた話を思い出して嘆息を漏らす。
『こっちにいる可能性は低いかも、過去の依頼のほとんどはノッテンガムだから』
「今日だけ待って見て‥‥駄目なら近場の森に行こう‥‥」
 そして肩を落とすも、まだ今日と言う日が暮れていない事からそれだけ決めればハーヴェイはもう少しだけ、彼を待ってみる事にした。
 ‥‥結局、ヴィーと言う騎士が捕らえられる事は無くハーヴェイは翌日、慌て近場の森に駆けて行った事を残しておく。

「粘土‥‥ねぇ、ロディ」
 響にセルアンとロディがリオーレの凄まじい埴輪の絵に絶句する中で、それでもロディに問い掛ける女性実業家へ
「在庫はあります、何時も卸している店への供給は未だ安定していますのでこちらにある分をお分けする事は可能です」
「それでは〜」
 すぐに我に返りロディ、答えを求める主へ的確にそう答えるとのんびりとした表情に加え、嬉しさから更に瞳を輝かせてはセルアンへぐいと顔を寄せる響に
「えぇ、お分けしましょう‥‥ロディ、彼女達が言う分だけ持って来て。値段はそれなりで良いわ。フォレクシー家にはそれなりにお世話になっているから」
 なぜか溜息だけ漏らしながら、それでも素早くセルアンが商談を纏めれば急いでいるらしい彼女らへ早々にそれを託す。
「ありがとうございました〜!」
「‥‥千客万来、と言いたい所だけどどうして女性ばかりなのかしらね」
「さぁ、偶然じゃないですか?」
 そして礼だけは忘れず、響が粘土を抱えつつ大きな声を響かせ慌しく去れば、その客達の背中を見送りながら、心底残念そうな表情を浮かべるセルアンが呟けば
「それにしたって‥‥詰まらないわ。しょうがない、ロディで我慢するか」
「我慢しなくていいです」
「折角ジャパンからいい服が届いたんだけど」
「それは我慢します」
 やがて場が静まり、憂さ晴らしの代わりかロディとあべこべな会話を愉しむセルアンは、やがて自身の脇に転がっている小さな木箱から白と赤で彩られた服を取り出すと、彼へ見せ付ける様にひらひらと舞わせるのだった。


 そして時間はあっと言う間に過ぎ去り、最終日。
「自身が思っていた材料を全て、集める事が出来ず残念ですが‥‥」
「本当にごめん‥‥」
「そう気になさらずとも大丈夫ですよ、お二人の気持ちにお話はアシュドさんへちゃんと伝えておきますから」
 皆が集めてきた材料を馬車に積み込む傍ら、僅かにしか集める事が出来なかった材料から肩を落とすピノとハーヴェイへルルイエが微笑み諭したその時、余りにも大き過ぎる袋を引き摺って来たリオーレ。
「ルルイエ様、これ‥‥ゴーレムとして使えるでしょうか? あ、使えなくてもそのまま貰って下さい」
 そう言って微笑み彼女より託されたそれを何かと口を開いて覗いてみれば、視界に飛び込む巨大な熊へ一瞬怯む。
「これは‥‥人形ですか」
「はい、友達から押し付け‥‥託されたものです」
 だがそれも一瞬、作り物の熊と理解し安堵する彼女へ贈り物の詳細を自身の軽くなった懐を押さえつつ、それでも咳払いの中で恭しく一礼しながら説明すれば
「それとこれ、イギリスでは褌を珍重すると聞くし私が持っていてもしょうがないからな‥‥どうだ?」
「どうだ、と言われても‥‥一先ず預かっておきますね」
(「預かるんだ‥‥!」)
 舞もルルイエへ、イギリスらしい贈り物(?)を送ると今度は躊躇いながら‥‥それでもそれも受け取ると一行は内心で呻くが
「プディンちゃんしかゴーレム知らないから‥‥動くの楽しみだね。いい報告、待ってるよ。アシュドさんにも宜しく伝えてね」
「頼んだよー」
 一人だけ、その光景を意に介さずチョコが笑顔でアシュドの成功を祈り、右手に握る木彫りの人形をも介して言えば次いで、左手に持つ形状の違う木彫りの人形をルルイエに渡すと、彼女は
「皆さんに集めて頂いた材料とアイデア、大事に使わせて頂きますね。今回は本当にありがとうございました」
 形式的な挨拶ではあったものの、一礼の後に皆へ見せたその表情は皆の気持ちに感謝してだろう、彼女にしては珍しく満面の笑みが広がっていた。