ダンシングアーマー
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■ショートシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:1〜3lv
難易度:普通
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月24日〜08月29日
リプレイ公開日:2004年08月26日
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●オープニング
とある貴族の屋敷にて。
夜も遅かったが気が昂ぶって眠れない一人娘の少女が、なんとなしに気を落ち付けようと月灯りだけを頼りに広く長い廊下を歩いていた。
暫く歩くと彼女は父親が自慢とする武具のコレクションが置かれた部屋の前にさしかかる。
と、その時だった。
ギ、ギギッ・・
扉は閉まっていたが、確かにその部屋の中から金属の擦れる音が彼女の耳に聞こえてきた。
彼女は『なんだろう?』と思い、興味半分恐怖半分でその部屋の扉を開ける。
闇しかなかったその部屋に月灯りが差し込むと、彼女の目にまず映ったのは身丈が自分の倍はあろうかと言う大きな鎧だった。
彼女がその鎧を見つめて暫し、不意にそれは両手を上げるとゆっくりと動き出すではないか!
そして動き出したそれに倣うかの様に、後ろに飾られていた鎧も同様に緩慢とした動きで彼女目指して動き始め・・。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!」
君達を前に依頼の解説をしていた受付のお姉さんが途端、大きな悲鳴を上げるとその場にいた冒険者はおろか、ギルド内にいる大部分の人間がびくぅ、っと体を震わせる。
「それは分かりましたが・・依頼の内容は一体なんですか?」
落ち付き払って尋ねる、数少ない冒険者の一人がそう尋ねると彼女は我に帰り
「ご、ごめんなさいね。こう言った怖い話ってどうも苦手で・・コホン、それで今回の依頼なんですが話で上がった貴族の屋敷に行って貰い、その動く鎧の調査と他にも変わった事象が屋敷内で起こっている様なので、併せて調査して原因を突き止め解決して下さい」
意外な一面を見せつつも、いつもの調子に戻っての彼女の解説を受けて頷く君達に
「まだまだそう言う季節で、結構こう言う話を聞くんですよねぇ・・早くこの手の依頼がなくならないかなぁ・・。」
素に戻るなり、彼女は震えて小さく呟くのだった。
●リプレイ本文
●道中にて、雑談
「しかしまぁ、少し時期遅れな気もするな」
「この手の話は時期に関係なく、いつでもあるものでしょう? 気にしていたらきりがないわ」
ジャパンで生まれ育った来生十四郎(ea5386)は怪談と言えば夏だ、と言わんばかりに呟くもブランカ・ボスロ(ea0245)にはそんなジャパンの文化が分かる訳もなくあっさりと返す。
「文化の違い、って奴か? その点、お前なら分かってくれるよな?」
苦笑いを浮かべ、今度は同郷で唯一ジャパン語しか通じない忍者の天草乱馬(ea6082)に話を振ってみたが
「‥‥あまり興味、ないかも」
またしてもつれない返事に来生は肩をガックリと落とすのだった。
「使いもしない武具を収集か。武具の美しさは戦場に在ってこそ、映えるモノだと言うのに‥道楽で名品を死蔵されてはな」
アッシュール・バニパル(ea5546)は思う事を口にして、途端頭を振る。
「勤めは全うしないとな」
「しかし物を壊すなとはこれまた大変な事を言われるものだ、普段なら問答無用で気にしないところだが‥」
そう呟く彼のイギリス語が通じない、クレリックとは思えない筋肉質な体格のセイレック・マロウス(ea1140)がゲルマン語で豪快な事を口にすると、それが分かったブランカは窘めようとするも
「被害を与えずに‥難しそうですけど、頑張りましょう」
分からない言葉でもなんとなく察してか、アルテス・リアレイ(ea5898)が屈託のない笑顔を浮かべて言うと緲殺(ea6033)もそれに頷いた。
「では、参りましょうか」
その時、アルアルア・マイセン(ea3073)が皆に聞こえる様に言葉を紡ぐ、それは屋敷が既に一同の目の前にまで来ていたからだった。
●屋敷にて、昼の調査
「原因が何かは分かりませんが、相手が悪戯を好む類のモンスターである可能性は決して低くは無く、そういった相手に対し必要以上に驚いたり騒いだりする行為は却って相手を喜ばせるだけでなので、必要以上に反応しない様お願いします」
「あ、あぁ‥分かった。や、屋敷内にいる者にもそう伝えてお‥置こう」
一同を迎える屋敷の主であるゼステル・バルフェンドはそのしっかりした体格に似合わず、アルアルアの言葉に弱々しく頷く。
彼もどうやらギルドの受付嬢と同じく、この手の話が苦手な事が見て取れた。
そんな彼から屋敷内外を自由に調査をしていいとの許可を貰うと、一同はすぐさま行動を開始するのだった。
この様な依頼において、まず重要とされるのは情報の確保である。
面子の半分が今回初めての依頼ではあったため、専らこの役目は多少なりとも場数を踏んだ面子が頑張っている。
「怪現象が起こっているのはその鎧がある武具庫だけなんでしょうか?」
「最近、何か新しいコレクションとか増やしてないか?」
「‥それが起こる前、出所の怪しい品や購入した覚えのない物は?」
ゼステルを取り囲む様に、矢継ぎ早に質問をするブランカに来生とアッシュールに困惑した表情を浮かべながらも、彼は遠くを見やりながら回答を紡ぐ。
「そう‥だな、話を聞く限りでは場所はそこに限定されているようだ。それと買っている武具に関しては出所も確かで、信用出来る商人からしか買ってないからそう言う点ではないだろう‥‥が、最近はあそこに行くのも怖くてね。見覚えのない武具はもしかしたら在るかも知れないな」
彼の話に頷くと三人は
「じゃあ武具庫がやっぱり怪しい、って事になるな」
「それじゃ屋敷を見回りしている人にその話、伝えてきますよ。ついでに私も見てきますね」
来生の言葉にブランカはそう答えると、先に屋敷へ入った仲間を追う様に小走りで駆け出した。
その後姿を追う事無く、アッシュールは冷静に主に再び質問を投げ掛ける。
「怪異の原因が鎧や武具庫にある収集品を利用してきた場合、傷付ける事は構わないだろうか?」
彼の言葉にゼステルは腕を組んで唸るも
「‥努力だけは、して下さい」
そう答えるのが一杯と言った、複雑な表情を浮かべるゼステルに
(「‥細かい傷でぐだぐだ抜かすな、武具は飾る物では無い」)
内心そう思いながらもそれを口にする事なく、アッシュールは頷いた。
ブランカ達が得た情報を聞くより早く、アルアルアとセイレックは武具庫へと足を運んでいた。
装備の重さ故か、多少時間が掛かりながらもオーラソードを展開するや件の、大きさはジャイアントが装備するのにぴったりな程の大きな鎧、それ目掛けて剣を振るうアルアルアと有事に備えて身構える、いかついクレリック。
しかし闘気の剣は何も切り裂く事無く、鎧をすり抜ける。
それから、部屋中にある物を切りつけるも特に何かが起こる事はなかった。
「今はまだ居ませんか‥」
「まぁ話では夜を待った方がいいかも知れませんな」
セイレックの言葉に頷くアルアルアは武具庫の窓から外を見やり
「まだ日は長いですね」
その頃、ブランカからの情報を聞きつつもバタバタと、アルテスは屋敷中を駆け巡って怪しい所がないかを探す。
「何処か、モンスターが潜んでいそうな所は‥」
屋敷のとある一室の部屋の蒲団を引っぺがす彼、そこにはいないと思うが万が一と言う事もない‥かも知れない。
だが初めての依頼で、勝手が分からないながらも直向きなその姿を見て、ブランカは頷きつつその場を後にする。
そしてそんな彼とは裏腹に、屋敷の間取りをしっかりと覚える為に使用人から話を聞きつつゆっくりと屋敷を見て回っているのは緲だった。
「やっぱ分かっている以上の事は得られないかなぁ」
そう思いながら、原因がモンスターである場合を考え中庭までの誘導を円滑に行う為、彼女はまた歩き出した。
情報を一同に流し終えた後、ブランカは屋敷に何かが侵入して騒動を起こしている可能性を踏まえ、何処かから出入り出来る所はないかと武具庫を中心に探す。
「何かないかな‥‥ってあれ?」
天井を見るや声を上げる、それもそのはずでよくよく見ると穴が一つ。
それなりにカモフラージュされてはいるが、それも目を凝らせばばれる程度に開いていた。
「どうやらここから入った様ね。思ってたより単純みたいで助かるけど」
そう言いながらも、何処かつまらなそうな響きを含ませて彼女はその天井を一人眺める。
そんな中、乱馬は静かに屋敷の中に異常がないか一人様子を伺っていた。
「日が‥‥落ちる」
彼が呟く中、一同の準備は整い後は夜を待つばかりとなった。
●闇と敵と、夜の闘い
がたん
まだ夜もそう遅くない時間、武具庫にささやかな音が響き渡ると天井に出来た穴から黒い塊が四つ入って来る。
それが鎧に近付いた時、立ちはだかるのは別な影。
「これ以上はやらせないよっ」
「動く鎧の正体‥見せてもらいました」
緲とアルテスの言葉にその影、インプはニィといやらしい笑みを浮かべ手近に飾ってある剣を投げつける。
直進してくるそれを、闇に潜んでいた乱馬は彼女の前に飛び出て見事にキャッチするとインプ達は辺りにある武具を手当たり次第に投げつけようとした。
が、それより早く緲はインプ達に飛び掛り事前にアルアルアから付与されたオーラパワーの宿る拳で頭部目掛けて打ち下ろす。
鈍い音が部屋に響き一匹のインプを昏倒させると、それを見て動きを止めたインプ達は彼女とすれ違う様に部屋を飛び出した事に慌てて彼女もその後を追いかける。
だが先に部屋を出た一匹が呪文の詠唱を耳にし、踵を返そうとしたがその時には既に遅く不可視の力で拘束された。
「残念でしたな」
不敵な笑みを浮かべるセイレックのコアギュレイトに束縛され暴れるインプだったが直後、部屋から飛び出してきたアルアルアの携える半透明の剣で貫かれた。
「逃がしはしません」
華麗な女騎士は残る二匹に剣を突き付けて厳かな口調で告げるとインプに向かって駆け出す。
インプ達は彼女から逃げる様に通路の反対側へ飛翔し、開いていた窓から外へと飛び出るも
「誘導ご苦労さん、っと」
予めその窓の下に潜んでいた来生とアッシュールは日中の内に準備していた網を投げつけると一匹はそれに絡め取られ地へと落され、残った一匹はそれを掻い潜ると夜空へと飛翔を続ける。
「だから、逃がしませんわ。夜をも貫く雷撃の鏃よ、かの者を貫けっ!」
部屋でアルアルア達と一緒に潜んでいたが、下手に魔法を使う訳にも行かず様子を伺っていたブランカはインプが外に出ると手近な窓を開け放ち、逃げる一匹目掛け雷撃を放つ。
それはインプの片翼を焼き払い、墜落させる事に成功する。
「人をからかって遊ぶ事の、何が悪いんだよぅー!」
地に落ちた最後のインプは叫ぶと逃げる事を諦めて襲い掛かってきたが、アステルの闘気が付与されたクルスソードが狙い過たずその胸を貫く。
「甘い考えかも知れないけど、反省さえしてくれればこんな事は‥」
彼の呟きに最後の一匹は崩れ落ち、戦いの幕は落ちた。
●エピローグ
「原因は断ちました。どう言った理由でこの屋敷を選んだかは分かりませんが、人をからかえるのであればどこでも良かったのかも知れません」
翌朝、ゼステルに怪異の原因を駆逐した事を伝えると彼は安堵した表情を浮かべて早速、武具庫へと向かおうとした時
「今回の一件が解決したのも、彼ら冒険者の力と神のお力添えがあればこそです。神への感謝の気持ちも捧げる事を忘れてはなりませんぞ」
セイレックの言葉にピタと足を止めると
「‥‥あ、あぁそうかもな‥‥私の信仰心が足りなかったのかも知れん、今後配慮する事にするよ」
迷信深いらしい彼はそう言うと、屈強なクレリックはにっと笑った。