とりあえず、隠れんぼをする

■ショートシナリオ


担当:橘宗太郎

対応レベル:1〜4lv

難易度:易しい

成功報酬:1 G 20 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月11日〜01月16日

リプレイ公開日:2005年01月19日

●オープニング

●隠れんぼ
 冒険者ギルドの訪れたその老人は、人に興味があった。
 興味がある。
 何をするか、何をしたいか興味がある。
 今更ながら、他人に興味があるのだ。
 老齢になってから、その事にたいする執着が、押さえられないほど強くなった。
 しかし、人生そのものは、興味を持つには大きすぎる。
 エルフほど、長く生きられるわけでもない。ただの、人間だ。
「『隠れんぼ』をしてほしいんだ」
 依頼の内容がよくわからないので、詳しく聞いてみる事にする。
「人がどういう反応をするか見たいのさ。ちょくちょく移動しながら隠れてくれればいい‥‥ただそれだけだ。このルール通りにやってもらいたいんだ‥‥あくまで、遊びでね」
 人生は、『隠れんぼ』になり得るだろうか。
 ‥‥まあ、そういう思想なんかとは関係なく、とりあえずは『隠れんぼ』の依頼が来たわけである。
 そういうわけで、近くの家で『隠れんぼ』をする事になった。
 まるで、冗談の様だが‥‥とりあえず‥‥隠れろ!

●今回の参加者

 ea0800 レオン・スボウラス(16歳・♂・レンジャー・シフール・ビザンチン帝国)
 ea2632 レシオン・ラルドフォール(28歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2848 紅 茜(38歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea5283 カンター・フスク(25歳・♂・ファイター・エルフ・ロシア王国)
 ea6738 ヴィクトル・アルビレオ(38歳・♂・クレリック・エルフ・ロシア王国)
 ea6966 アンノウン・フーディス(30歳・♂・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 ea7504 ルーロ・ルロロ(63歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea8866 ルティエ・ヴァルデス(28歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 ea8898 ラファエル・クアルト(30歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb0262 ユノ・ジーン(35歳・♂・バード・人間・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

●隠れんぼ 〜はじまり〜
「ふがふが、どういう事になるかな」
 楽しげに微笑む依頼人のお爺さんの顔を見て、『オニ』役のカンター・フスク(ea5283)も笑みを見せる。
 『隠れんぼ』は、すでにはじまっていた。
「さぁ‥‥ゲームのはじまりだ」
 カンターが、空き家の敷地への第一歩を踏み出す。冒険者達の熱い戦いの火蓋(ひぶた)は、今ここに切って落とされたのである。
 カンターの後ろに、お爺さんも付いてくる。どうやら、オニの行動も見たいらしい。
 当のカンターは、スタッフを力強く握りしめている。自分のやった悪事をほとんど覚えていないという彼‥‥少なくとも男性に『手加減』などあるはずもない。

●隠れんぼ 〜井戸〜
 まさか‥‥井戸に入る人物などいるはずもない。
 誰もが、そう思うはずだ。なぜなら、この井戸は深く‥‥一度入るとなかなか出てこない‥‥。
「‥‥‥!」
 カンターは井戸を覗き込んだその瞬間、ビクッと肩を震わせた。
 お爺さんも、覗き込んで同じ様子を見せる。
 青白い顔が、井戸の奥に見えた。‥‥暗くてよく見えないので、怖い。
「‥‥これほど早く見つかるとは‥‥」
 ヴィクトル・アルビレオ(ea6738)が‥‥挟まっていた。
 百と五年生きていたヴィクトルだが、『隠れんぼ』はこれがはじめてらしく、まだ不慣れの様だ。
 ゆっくりとした動きで這い上がってくるヴィクトル。井戸の中は寒すぎて、動きが悪くなっている。
 その異様さに、オニ達は少し後ずさりしてしまったが‥‥。面白いわけではない。
「カンター君」
 お爺さんに言われて、スタッフでヴィクトルを殴りつけるカンター。‥‥なぜだか楽しそうだ。
 バキッ!
「‥‥く〜ッ!」
 ヴィクトルは、寒いのと痛いのとの相乗効果でよくわからない表情を見せる。
「隠れんぼとは、なかなか厳しいものだな‥‥」
 子供持ちのエルフのはじめての『隠れんぼ』の思い出は、良いものにはならなかった様だ。
 ただ、彼の容姿はホラーで使える事は証明された様だ。

●隠れんぼ 〜草の中〜
 紅茜(ea2848)は、草の中で『ほふく前進』をしていた。
(「う〜ん、あのパン‥‥気になるなあ」)
 パン焼き職人をしている茜は台所で見かけたパンが気になる様子。そんな事を思っていると‥‥
「見つけた」
 オニのカンターが、後ろに立っていた。
「うぅわ! まだ見つかってないもん」
 高速で『ほふく前進』をはじめる茜。
 茜の服の端を引っ張るカンター。
 バタバタ。
 ガサガサ。
「‥‥うぅ〜。ご、ごめんなさい。み、見つかったよねぇ?」
 ‥‥あきらめた。
「ホホッ、面白いお嬢ちゃんだ‥‥」
 お爺さんの一言。
 気合いを入れたのに、すぐ見つかってしまい、凹んでいる茜にカンターが声をかける。スタッフを持って殴りつけるのかと思いきや‥‥
「やあ‥‥何時も幼馴染みと仲良くしてくれて有り難う」
 と、何時ものお礼を言われる。
(「殴られなくて、よかったぁ〜‥‥」)
 きょとんとした様子の後、茜もニッコリ。
「あ、ありがと〜」
 お爺さんが、景品なのか林檎をくれた。
「うぅわ〜!」
 ‥‥とても酸っぱかった。

●隠れんぼ 〜台所〜
 ユノ・ジーン(eb0262)は、台所の中で、置いてあったパンを食べていた。
(「結構美味しいじゃない、これ」)
 と思ったのか、台所に隠れるのはこれで二度めだ。
 座りながらパンをモシャモシャ食べていると、何かの影が彼を覆った。
 ‥‥振り返ると、カンターとお爺さんが立っている。
「いやぁん。見つかっちゃった?」
 コクリと首を縦に振るカンター。
「じゃ、一つ歌でも‥‥」
 ユノは、歌い出した。とにかく、歌い出した。
「さがしものはこれですか? 見つけにくいこれですか? 台所の隅もベッドの下も? 探したらホラ池の中にいた〜♪」
 ‥‥ふふっふ〜♪ との小気味の良いテンポ。そもそも、池の中にいないのが気になる。それはともかくとして‥‥。
「‥‥あれ?」
(「シーンとしてる‥‥?」)
 ‥‥ゲシッ!
「いやぁ〜! やめてぇ〜!」
 ドカッ!
 バキッ!
 カンターの逆鱗に触れたユノの絶叫が、家の中に響き渡った。
(「いや、面白かった‥‥歌は心だな」)
 お爺さんは、彼の様子を見ながらウンウンとうなずいた。
 オニが二人になると、許されるのはなかなか難しいようである。

●隠れんぼ 〜居間〜
 レシオン・ラルドフォール(ea2632)は、居間に隠れていた。
 突然、開かれるドア。
 レシオンは椅子の影に隠れていたが‥‥
(「‥‥駄目か」)
 カンターに声をかけられ、出てくる。
「む、無念‥‥なんでココが?」
 見つかるとは思っていなかった様だ。
「それはともかく‥‥」
 カンターは、彼に対して一つ気にかかる事があった。
「ところで‥‥僕の幼馴染みとはどう思っているのかな‥‥? 本音をぜひ‥‥」
 お爺さんの意見を聞くまでもなく、スタッフを握りしめニコニコ。
 しばらくそういう状態が続いていたが‥‥。
「あの、カンター君‥‥あまり時間をかけてもだな」
 というわけで、急いで他の人を探しに行く事に。
 答えが聞けたのか。どういう答えが返ってきたのか‥‥それはまた後日談ということで。
 とりあえず、返答がどうあれレシオンが殴られるわけで‥‥。
「くっ‥‥まさか本気で殴られるとは‥‥」
 レシオンは頭をなでながら、しばらくうずくまっていた。

●隠れんぼ 〜屋根裏〜
(「ワシが見つかるわけはない」)
 そう信じて疑わないルーロ・ルロロ(ea7504)。
 なぜなら、彼の本業は泥棒だから。皆には内緒だが、老いても今だ現役・・・・命がけのオニごっこを信じられないぐらい長い期間し続けてきた。
 隠れんぼなど、お手のもの‥‥のはず。
 今は屋根裏の荷物の裏に隠れている。
 その横にいるのは、レオン・スボウラス(ea0800)だ。三つ子の長男で、パリには弟とルーロに会いに来たとの事。
 二人は、友人である。
 しかし、レオンはなんだかルーロに話しかけにくそうだ。
(「なんだか今日のルーロお爺さん怖いですね‥‥」)
「あ、あの‥‥遊びじゃないんですか?」
 と質問してみると、ルーロは大真面目に
「遊び? 何を言っておる。ワシにとっては真剣勝負じゃ!」
(「う〜、もうちょっとお話ししたかったんですけど‥‥ちょっと無理そうですね」)
 あまりの気合いの入りっぷりに、レオンも言葉につまる。
 しかし、運命とは皮肉なものである。
 しばらく後‥‥。
「そこにいるのわかっている」
 屋根裏の中で、カンターの残酷すぎる一言が。
 変な仮面(グレイトマスカレイド)とブラックローブを着た、いかにも怪しい老人は、どうしても負けたくなかった。これだけ目立つ格好で来たのである。
(「‥‥着替えてしまえば、わかるまいて」)
 ごそごそ。
 とりあえず仮面を外し、ローブを刺繍入りに変更。
「どなたかお探しで」
 と言って爽やかに出てくる。
 しかし、この老人‥‥どう見てもバレる特徴がある。
「キミは、髭が特徴的すぎるな」
 カンターも、どこかの将軍ばりに立派な髭を忘れるわけもない。
「ええいッ! わしが見つかるなどあってはならんのじゃ!」
 窓を背に、逃げようとするルーロ。
 それを見たカンターが、ちょんとルーロを押す。
「さぁ、耐えてみせろよ?」
 笑顔で押されたルーロは、ゆっくりと後ろに倒れて‥‥
「ワ、ワシはぁ〜‥‥」
 その後の効果音は、以下。
 ゴロゴロ。
 ドテッ!
「ワシは、見つかっておらん‥‥絶対に」
 草の上で大の字になりながらも、泥棒根性を見せるだだっ子爺さんルーロ。
 さて、今日最後の犠牲者はレオンの様である。
「えへへ‥‥見つかっちゃいました。レンジャーなので隠れるのは自信があったのですが‥‥残念です」
 というわけで。
 カンターがスタッフを構える。
「うわっ! な、なんですか〜!? ぼ、僕、何かしましたか?」
 と言って、窓から脱出するレオン。ルーロと違って、シフールなので落ちはしない。
「カンター君、ワシに任せなさい」
 と言って、お爺さんが林檎をレオンにぶん投げる。
 ヒューンッ。
 パコッ。
「あぁ〜ッ!?」
(「お爺さんがそんなすごい人だなんて‥‥は、反則です‥‥」)
 ドテッ。
 ルーロの近くに落ちたレオン。
 カンターは二人が寝転がる姿を見て、満足げに微笑む。
「爺さん‥‥やっぱ隠れんぼって良いもんだな‥‥」
「そうじゃのお‥‥」
 しみじみとする『オニ』二人であった。
「そういえば、後の三人、どこにいったのかな」

●隠れる人 〜アンノウン編〜
 さて、見つかったのは六人。
 後の三人は、見事逃げおおせたわけである。
 これ以降は、彼等の動向を書いてみたいと思う。
 アンノウン・フーディス(ea6966)も、その一人だ。
「‥‥もう終わりか」
 まるで、隠しおおせたのが当然の様に『隠れんぼ』を終えたのが彼。
 作戦としては、
(「出来るだけ、家の中にいる」)
 というものだった。
(「あ、パンなんかあるんだ」)
 台所では茜を見かけたが、彼女はパンの事に夢中で彼には気付いてなかった。
(「うん‥‥美味い」)
 とりあえず、台所に来てみたので冷静な心持ちでパンを食べてみた。
 後半、木の上から全体見てみると、カンターがスタッフを振り上げていた。‥‥笑顔で。
 ユノの絶叫が響いたのは、その後だった。
 それを見たアンノウンは、少し前にユノに会っていたこともあって、
(「もう見つかったか‥‥。気をつけないと」)
 と思ったわけである。
 とはいっても、彼の冷静さは最後まで変わる事はなかったが。
 また、彼は途中の屋根でユノの他にレシオン、他二人と会っている。他二人というのは、実は隠しおおせた他の二人を指し、彼等の共通の行動がここに見てとれる。
 中盤で、屋根に上がっているのだ。もっとも、これはユノ、レシオンが混じっている事から有利に働いたかどうか疑問であるが。
「このまま日向ぼっこをしているのも、いいかもな」
 アンノウンのそんな言葉に、皆もうなずき、のんびりとした時間を送っていたわけである。
 もっとも、彼自身も屋根から草の中に飛び込もうとして、あまりの高さに面食らって結局は屋根裏を通ったりしていたが。
 しかしながら、彼は運の強さを発揮した‥‥隠れんぼの『勝者』の一人である。
 ちなみに、彼は最後に池の中に入っていたので、その後少し風邪気味だったらしい。
「‥‥クシュンッ!」
 勝ったというのに、風が‥‥とてつもなく冷たかった。

●隠れる人 〜ラファエル編〜
 ラファエル・クアルト(ea8898)は、本来の『隠れる』という目的とはまた違った目的で動いていた。
 何かというと、『掃除』である。
 彼をそうさせたのは、ベットの下のあまりの汚さだった。
 ゴホッ。
 ゴホゴホッ。
 偶然一緒に隠れていたルーロと共に、咳を堪える彼。
 もはや、我慢も限界だ。
「信じられない! どんだけ掃除してないのかしら?」
 チリの多さが許せなかったらしい。
「ああ〜! もう! 私が掃除してやるわ!」
 と言って、行くところ行くところで掃除をしていたのだ。
 まさに、『こだわりの掃除人』。
 しかも、台所で雑巾代わりの布切れを用意してくる念の入れ様である。
「もぉ〜! 何なのよ! このシミ! 何年掃除してないのよ!」
 ところどころで、彼の絶叫が響いていた。
 彼にとって、最大の敵はオニではなく『よごれ』だった。
 行動としては、前に述べた通り。家の中が中心で、後半になると外に出る。
 屋根にいた皆とは、掃除が一段落すんでから会っている。
 特にユノとは気が合うのか、一緒に、
「まったくよねぇ〜」
 と談笑していた。しかし、彼もユノも実際はその気はないのだそうだ(誤解されがちだが、実際のところは異性が好きらしい)。ある意味で、女性にとってフェイントである。
 ラファエルとしては、
(「見つかってもいいかなあ‥‥」)
 と思っていたのだが、結果は違った。
 最後に、レオンとルーロが窓から落ちるのを目撃していた。
「たっは〜、痛そうねぇ‥‥」
 その時点で、彼の勝ちは決まっていたわけで‥‥そのまま見つからずに終わってしまったわけである。
(「家を綺麗にしていただけなのに、なぜかしら‥‥?」)
 勝ちにこだわらない者が勝って、勝ちにこだわった者が負ける。
 『隠れんぼ』の奥深さは、まだまだ未解明のようだ。
「まったく、大掃除をしないと駄目ねぇ」
 台所の片付けをしながら、そんな事を言うラファエルであった。

●隠れる人 〜ルティエ編〜
 ルティエ・ヴァルデス(ea8866)は、多大なる賭けをしている。
 アンノウンも『屋根』にいる時間が長かったが、彼はそれに加えて『屋根裏』にいる時間も長かった。
 まさか‥‥そんなに長くいるとは思わないはずである。
 時間の半分は、屋根もしくは屋根裏にいるのである。
 屋根に入れば袋小路、屋根裏から屋根に入られれば退路がない。
 その『度胸』は、貴族の余裕というやつだろうか。
 ハーフエルフの彼が貴族というのが少し気にかかるが、少し紐解いてみるとよく分かる。
 彼は、ロシア貴族の流れを組むヴァルデス家に養子に出された身らしい。
 ロシアの感覚なら、ハーフエルフが悪く扱われることもないわけである。
 世間での評判を気にしてか彼は耳を隠しているので、普段はハーフエルフと見られないし、人間として生活しているのだそうだ。
 ルティエもアンノウンと一緒にユノの悲鳴を聞いていた。が、彼は犬小屋にいるレオンを見ていた。
 犬小屋には、実は犬の親子がいて、その中に入ったレオンはとても温かそうだった。
(「確かに、今日は寒いからね」)
 彼の唯一のミスは、終了寸前に誰もいない井戸に飛び込んだ事だろうか。
 ‥‥寒い。
 ‥‥寒すぎる。
 いると思ったヴィクトルは、とっくに見つかっているので土台もなかった。
 そのままドボンである。
「ところで、何時助けがくるのかな?」
 しばらく後で、皆が気付いて駆けつけてきたが‥‥。
「‥‥遅すぎる」
 ガクガク。
 ブルブル。
 当然、彼は井戸の中で凍えていた。
「まったく、さんざんな目にあったよ」
 その後、皆はお爺さん特製のシチューをもらい、フーフー言いながら、あったまった。
 まあまあ美味しかった。

●隠れんぼ 〜その結果〜
 約束通り見つからなかった人にはボーナスが、見つかった人には罰金があったらしい。
 お爺さんは、
「予想外の結果じゃったわい。まさか‥‥皆がこうまで‥‥わけがわからない行動をするとは。面白いという問題を超えておるわい」
 と言って悩んでいた。
 冒険者の行動は、彼の悩みをより深刻化させてしまったらしい。