紅茶を取り戻せ!
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■ショートシナリオ
担当:橘宗太郎
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:04月13日〜04月20日
リプレイ公開日:2005年04月20日
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●オープニング
●紅茶泥棒
行商人が強盗に出会ったのは、パリへ向かう途中の、ある山の中だった。
突然、四人の男達に取り囲まれ、荷物を奪われたのである。
その内の一人が、荷物の中から『袋』を見つけると、行商人が慌てた様子を見せた。
ナイフを行商人の喉(のど)にあて、
「高いものか?」
と聞いた。すると、行商人は頷(うなず)き、
「紅茶」
だと答えた。正確には、『紅茶の葉』である。
ノルマン人にとって、紅茶はなかなかお目にかかれない『高級品』なのだ。
「紅茶か! こりゃあ、いいや」
男達は、行商人の金と荷物、そして紅茶の葉を奪い、森の奥へと消えていった。
●依頼のお礼は、紅茶
冒険者ギルドに、『紅茶奪還』の依頼が来たのは、行商人が紅茶を奪われてから二日後の事だった。
「あれほど上質な紅茶の葉は、なかなか手に入りません。あれを売り捌(さば)く事が出来れば、私は金持ちになれたのです。元手もかなりかかっているので、もし戻ってこなければ‥‥私の人生は終わりです」
行商人は、本当に『困った』という顔をしていた。実際に、そうなのだろう。
「山の近くの町の人達に聞いてみたところ、強盗達は、元は町のチンピラなのだそうで‥‥山の中にある洞窟を拠点に、イタズラ感覚で悪さを働いているらしいのです。どうやら、悪い商人達とも取り引きがあるらしいので、その商人達に荷物が渡らない内に、取り戻してもらいたいのです」
行商人は、商売仲間から貸してもらった金を報酬として用意している。彼は、その金を置き、
「もし取り戻してくれたら、紅茶の一杯でもご馳走させていただきます。どうか、よろしくお願いします」
と言って、頭を下げた。
この依頼、‥‥どうやら紅茶も楽しめそうである。
●リプレイ本文
●山道
あたたかく、天気の良い朝。
カイ・シャオシャーレン(eb0651)とエイジ・シドリ(eb1875)の二人は、盗賊が出たという山の中に到着していた。
カイは、メモを見ながら辺りの様子を探っている。
「依頼人や町人の話によれば、この付近に出没するとの事なのですがねぇ‥‥」
カイは周囲を見渡しながら、チラッと足下を見た。
(「この依頼を達成すれば、紅茶をご馳走してもらえる事ですし、お茶愛好家としては頑張らなければなりませんね。‥‥この葉っぱなんか、お茶に出来そうですが‥‥」
ジーッと下を見ているカイの肩をエイジが叩く。
「よし、ここからは道を外れて奥に進もう。油断するなよ」
「はい」
カイは、少し残念そうに、葉から目をそらした。
「日が落ちるまでに敵の根城が見つかると良いのだが‥‥」
草をかきわけ、奥へと進んでいくエイジ。クールに見えるが、その内に秘めた思いを聞いたら、おそらく幻滅するであろう。
(「さすがに、こんな山の中に美少女はいないか」)
実は、『美少女』に深いコダワリを持っている彼。たくさんの美少女(冒険者含む)がいるパリと比べて、少し残念に思った‥‥かもしれない。
「近くの町人の話だと、山の中腹の辺りに幾つか洞窟があるらしい」
木陰の隙間に、日の光が差し込んでいる。
「それにしても、紅茶を盗まれるなんて、ツイてないですねぇ〜。かなり質の良いものだと聞いてますから、楽しみですけれど」
「ああ、そういえば紅茶が飲めるんだったな‥‥」
カイは色々と紅茶の味を思い浮かべているようであったが、エイジの方は上の空であった。エイジは、実のところ紅茶にはあまり興味がないらしい。
●山奥
どれぐらい歩いただろうか、何時の間にか、日がだいぶ昇っていた。
必至に草をかき分ける二人。
カイは、汗を片手でぬぐいながら、空を見た。‥‥まだ時間に余裕がある。
「本当は、近道があるらしいんですけど、どうもソコを使って盗賊達がやって来るらしいので」
エイジもそれに頷(うなず)く。人数も少ないし、奇襲をかけたかった。
「なに、まだ時間はあるし、なんとかなるさ‥‥一休みするか?」
「はい、そうしましょう。そういえば、お腹も空きましたし」
草を踏んで、座る場所を作ると、二人は草のカーペットに腰を降ろし、食事をとりはじめた。
「干し肉も、たまにはいいんですけど‥‥むぐぐぅ」
カイは干し肉を食べるのに苦労しているようだった。グィーっと噛みしめ、ブチッと千切れる。‥‥モグモグ。
「まあ‥‥保存食だしな。食べられるだけマシだ」
エイジもチーズを食べながら、口をモグモグと忙しく動かす。
「なあ、葉を集めているみたいだけど、なんなんだ?」
エイジの質問に、カイは膝の上に置いた何種類かの葉を触りながら、なんだか楽しそうに答えた。
「ああ、これはお茶に出来るかなと思って取ってあるんです。後で、じっくり調べたいと思います」
「雑草って、苦そうだけどな‥‥」
「いや、それが良いんですよ。それに雑草といっても色々あるんですから〜」
手短に昼食を済ませた一行は、更に歩みを進めると、山肌が見える箇所に突き当たった。草木に紛れながら歩いていくと、山肌にポッカリと穴が空いているのが、見えた。
突然、カイが
「しっ!」
と言って、エイジの頭を抑えつけた。草と頬が擦れる感覚に感じながらも、
「どうした?」
と冷静に質問するエイジ。
「どうやら‥‥強盗達のあじとに着いたようですよ」
カイの目に、見張り役の『足先』が見えていた。
●どうする?
問題は、二人でいかにして戦い抜くかという事である。否、勝利するという事だ。
とりあえず、強盗達が強くないのはわかっているが‥‥相手の数は、四人だと聞いている。
「よし‥‥俺が銀の礫(つぶて)を投げて、敵を誘い出す。カイは、その間に魔法を唱えてくれ」
エイジは、スリングをブンブンと振り回しはじめた。
「はい、きっと上手くいきますよ」
やけに軽い調子で小さく呟くカイ。
ビュンッ!
コンッ!
‥‥コン、コン。
銀の礫が、洞窟の入口に転がった。
見張りの姿が見える。詠唱しようとするカイを制止し、
「待て、全員出てきてからだ‥‥」
待つように言うエイジ。
「どうした?」
「いや、石コロが落っこちてきたらしくて‥‥」
「なんだ、こりゃ‥‥銀じゃないか?」
「もしかしたら、この上に銀が埋まってるんじゃないか?」
ゾロゾロと出てきて、上を覗(のぞ)く『お馬鹿四人組』。
「よし!」
エイジの小さいかけ声と共に、詠唱をはじめるカイ。エイジもスリングを振り回して奇襲をかける。
(「強盗どもめ、石でもくらえッ!」)
ゴツッ!
という音が鳴り、後頭部を押さえる強盗一人。
一人は後頭部を押さえる仲間を気遣(づか)っていたが、後の二人は、さすがに気付いたのか、エイジとカイのいる側に駆け寄ってキョロキョロし、一人がエイジに気付いて襲いかかってきた。
「強盗ごときに‥‥やられてたまるか」
ナイフの切っ先を、バックステップを踏んで避けたエイジは、
「カイ、頼んだ。‥‥失敗なんてしないでくれよ」
カイの隣に来ると、魔法を発動するように言った。
(「怯んでくれるとよいのですがねぇ‥‥まあ、なんとかなるでしょ〜」)
「アイスブリザードッ!」
差し出した手から、吹雪が扇状にひろがってゆく。
「な、なんだー!?」
痛いやら寒いやら、元々チンピラだった強盗達がこれ以上の抵抗を続けるはずもなく、吹雪に追いやられ、スタコラと逃げていったのである。
カイは、彼等の後ろ姿を見て、
「強盗なんてヤクザな稼業は止めて、全うな定職に付きなさい」
と声をかけたが、もちろん返事が返ってくるはずもない。しかし、彼は気にした様子もなく、
(「そうは言ったものの、冒険者もヤクザな稼業といえばそうかもしれませんねぇ‥‥」)
と思っていた。
「カイ、やるじゃないか。むっ‥‥節約、節約っと」
エイジは、強盗達が落としていった銀の礫と、同じく地面に転がった石の礫を回収していた。なかなか『貧乏性』である。
「よし、それじゃ、中のものを覗いてみるか‥‥」
エイジは、たいまつを点けて辺りを見回した。
たくさんの荷物が置いてある。
「紅茶の葉は、ありましたか?」
「待ってろ‥‥ああ、あった。あった。この袋だな‥‥。それにしても、他の荷物がたくさんある」
「ん〜、どうしましょ?」
「冒険者ギルドに渡して、処理してもらおう。それまでは町の人に預けておくのがいいと思う。強盗達も、しばらくは戻ってくる気はしないだろうしな」
エイジは『紅茶の袋』を背負うと、洞窟から顔を出した。
夕焼けが空を覆っているのが見える。
「早く紅茶をご馳走になりたいですねぇ」
カイの呟きを聞いて、
(「たまには、茶を楽しむのもいいか」)
と思うエイジであった。
●その結果
依頼を見事達成したので、行商人が紅茶を入れてくれる事になった。
「それでは、お約束通りに‥‥」
場所がなかったので、冒険者ギルドの近くで、一杯だけ楽しむ。
「ん〜‥‥この香り‥‥やはり上物は違いますねぇ〜」
しばらく口をつけず、匂いを楽しむ『お茶ダイスキ』のカイ。
エイジは、紅茶を喉に流し込みながら、横目で、道を歩く何人かの『美少女冒険者達』を見ていた。
(「‥‥パリは、良い町だ‥‥」)
と、声に出したら怪しい人に間違われそうな事を思うエイジであった。
ズズズ‥‥。
カイは口に拡がる苦みと甘みを噛みしめながら、ふぅ〜っと幸せそうな溜め息を吐いた。その隣にいるエイジも、なんだか幸せそうだった。
こうして、紅茶泥棒をやっつけた冒険者達は、『一時の幸せ』を噛みしめたのである。
その後、行商人も無事に紅茶の葉を売り捌く事が出来、彼も『金持ち』の一員になれたらしい。