髪は抜け落ち、肉は削げ、死してなお欲す者

■ショートシナリオ


担当:橘宗太郎

対応レベル:2〜6lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 69 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月21日〜05月26日

リプレイ公開日:2005年05月29日

●オープニング

●ズゥンビ村長
 冒険者ギルドに『ズゥンビ退治』の依頼が来たのは、昼すぎの事だった。
 あまりの『反射率』に、思わず息を飲む担当者。
 依頼人は、『ハゲ』‥‥もとい気品ある姿をなさった『パリ近くの村』の村長。‥‥残った髪の毛が、ソワソワと揺(ゆ)らめいている。
 とりあえず話を聞いてみると、どうやら村にズゥンビ達が襲ってきて、村人達はなんとか逃げたものの、そのまま居着いて困っているらしい。
「‥‥まあ、彼等が動きだした理由などはどうでもよいのでございますが‥‥出てきたズゥンビ達の数が多すぎて村に戻れないのです」
 そこで、コホン、と咳(せき)をする村長。
「ズゥンビ達が出てきた森は、昔罪人達が殺された場所だったとか言われているところでしてなあ‥‥バシバシやっちゃって構いません。とにかく、早く何とかしてください‥‥そうしないと‥‥」
 依頼そのものより‥‥『ハゲ具合』が気になる担当者。
「あの‥‥やっぱ‥‥その、村の事が気になって髪の毛が抜けるとかは‥‥?」
 と聞いてみる。
「ああ‥‥それはもうドバドバ」
 残りすくない髪をそっと撫でる依頼人。もとから痩せているのか気にしすぎて痩せたのか、骨と皮だけみたいにもなっているし、ある意味で、本人がズゥンビみたいである。
 はたして、冒険者達は髪‥‥ではなく村を救う事が出来るのか?

●今回の参加者

 ea0130 オリバー・マクラーン(44歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea5634 ソニア・バネルジー(40歳・♀・僧侶・エルフ・インドゥーラ国)
 ea7841 八純 祐(29歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea9248 アルジャスラード・フォーディガール(35歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・インドゥーラ国)
 eb0031 ルシファー・パニッシュメント(32歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb0420 キュイス・デズィール(54歳・♂・クレリック・人間・ノルマン王国)
 eb1966 玖珂 鷹明(35歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb2204 江見氏 喬次(31歳・♂・陰陽師・パラ・ジャパン)

●リプレイ本文

●陣形
 この依頼を受けた冒険者の中に『ハゲ』がいないのを村長は大変に残念がったが、とにかく冒険者達は、村に近付いていた。
「オバケの相手ってのは、ぞっとしない話だねぇ」
 と苦笑いしたのは、玖珂鷹明(eb1966)。
 彼は、接近戦を得意とする変わった陰陽師である。‥‥もっとも、ノルマンには本業のイメージとはかけ離れた職業の人物が多いが。
「でも、村長さんの髪の毛を守るためにも頑張らないとにゃー」
 江見氏喬次(eb2204)は、一行の中で少数派である『村長のハゲに気遣った人』の一人である。後に、その言葉を聞いて村長は涙した事だろう。
 ちょっと変わった喋りなのは、生まれの方言だろうか。
 フードを深くかぶり、耳を隠しているのはハーフエルフのアルジャスラード・フォーディガール(ea9248)。彼は、両手に龍叱爪と呼ばれる小手型武器を装備している。
 龍叱爪自体に優れた能力があるわけではないが、卓越した身体能力を持っているだけに、その威力は侮れない。ちなみに、
(「依頼が終わったら、村長に髪に効く料理でも持っていってやるか」)
 彼も『村長のハゲ』を心配する一人であった。
 キュイス・デズィール(eb0420)は、異色の人物である。‥‥というより、『マッチョガイ』だ。
「俺がやれるコトっつったら、怪我を治すぐれぇだしよ」
 と言っていた彼。どう考えても回復役には見えないし、
(「俺好みのオトコがいねぇじゃねえか!」)
 ‥‥とか思っているキュイスであった。
(「村人の生活を守るのが、騎士として冒険者として、あるべき姿か‥‥」)
 村を思って、考え込む様子を見せていたのは、オリバー・マクラーン(ea0130)。
 生真面目なのか、移動中もほとんど喋らない彼。
 ズゥンビ相手ながら、気を抜く様子は微塵も見せない。
 その隣にいるルシファー・パニッシュメント(eb0031)は、
(「ズゥンビどもめ、ゴミ屑の様に破壊してやる」)
 と気合いを入れていた。
 皆のペースを合わせずドンドン先に行ってしまうのは、彼の性格ゆえ。
(「気絶しない奴等ってのは苦手なんだけど、まあ‥‥気楽にいくか」)
 ナックルの着け具合を確かめながら、マイペースな事を思っていたのは、八純祐(ea7841)。
 アンデットは気絶攻撃が通用しないので、得意のスタンアタックが出せないのが、ちょっと残念らしい。
「そろそろ村ですね」
 ソニア・バネルジー(ea5634)が、周囲の様子を見ながら、皆に歩を緩めるように促(うなが)す。
「やれるだけ‥‥頑張りましょう」
 と彼女に微笑まれ、コクリと頷(うなず)く一行。‥‥ルシファーとキュイスは、しぶしぶとした様子だったが。
「では、打ち合わせの通り、ルシファーさん、八純さんが前側。オリバーさんは左側。玖珂さんは、右側。アルジャスラードさんは、後側の守りをお願いします。私を含めた残りの人達は、その中心で戦いましょう」
 冒険者達は『陣形』を作り、村へと進んでいった。

●ズゥンビ退治
 村が見えると同時に、ズゥンビ達が向かってくるのが見えた。十体ほどがワラワラとやって来る。
 動きが速いわけでもないので、まだ時間はある‥‥術者達は、魔法の詠唱をはじめた。
 戦端が開かれると同時に魔法が発動される。
(「アンデット相手なら」)
 ルシファーのサイズに触れ、オーラパワーをかけるオリバー。装備が重すぎて、魔法が間に合わないので、装備を置いている。
「余計な事を!」
 と言うルシファーに、
「それは失礼」
 と言ってオリバーも返す。慣れた仲なのかもしれない。
(「あなたの世界に帰りなさい」)
「ピュアリファイ!」
 ソニア・バネルジー(ea5634)は、ピュアリファイを発動した。通常、水などを清めるために使われる魔法だが、アンデットに対しては大きい効果を持った攻撃魔法である。
 ‥‥しかし、ズゥンビもタフである。動きにさほどの変化はない。
(「俺は、敵の動きを止める事に集中すればいいかにゃ」
「シャドウバインディング!」
 江見氏がズゥンビの動きを止めた。
 敵の数が多い以上、行動不能に陥(おとしい)れ、敵の数を減らすのは重要である。特に、雑魚相手にこの戦術は有効であったので、彼の作戦は間違っていない。
(「意外に数が多いなぁ‥‥囲まれないといいけど」)
 八純が急所を突く攻撃、ストライクを叩き込む。が、ダメージが通っていない。
 ‥‥このままでは役立たずになってしまうので、使うまいと思っていたストライクEXに。
(「当たるか‥‥?」)
 ‥‥これが当たるのである。
 肉片を飛び散らしていくズゥンビ。
 玖珂は、ノーマルソードとライトシールドを使った戦い方をしていた。実は、
(「楽したいし、こっちに来るまでにカタがつけばよいけど」)
 と思っていた彼。敵の数が多くて、ちょっと無理があった。
 さて、彼の剣術。‥‥これが上手いのである。
 ズゥンビ相手だから当たるか当たらないかの判断では腕前は分からないが、太刀筋が良く、ズゥンビの腐った肉体を切り刻んでいった。
「‥‥いくぜッ!」
 ルシファーがサイズを振るった。
 オリバーのオーラパワーを受けたサイズ‥‥それでスマッシュEXを叩き込む!
 身体を半壊させながら、後方に大きく肉片を散らすズゥンビに、更にもう一撃ッ!
 ズゥンビの身体を両断し、ズゥンビは地面に倒れた。‥‥まだ動いてはいるが、もはや戦闘能力はない。
「たかがズゥンビといえど油断するじゃねぇぞ!」
 皆を叱咤するキュイス。
 もちろん、回復の準備はしている。
「右からも来た! 数は‥‥六匹だ!」
 来る方向のせいか、見にくくなっていたズゥンビをアルジャスラードが発見する。
(「これでは、押さえきれないな‥‥」)
 右側を担当していた玖珂が戦闘状態に入っていた事もあって、アルジャスラードは同じく右側に立った。
 敵の反撃も来る。現在戦線に立っているのは、15匹だが、江見氏が一匹押えていたので、14匹だ。
「オリバー、早くしろ!」
 ルシファーは、詠唱をしているオリバーの向かう敵を押えていたが、集中するズゥンビの攻撃を避けきれず、
(「これでは、攻撃に回れない」)
 受けに入り、攻撃機会を失った。
「くっ‥‥」
(「ズゥンビめ、結構やるじゃないか」)
 八純も前衛に回っていた事もあって、集中攻撃を受け、受けきれずに脇腹に軽傷を負った。
 玖珂は、盾で何とかズゥンビの攻撃を受け止めたが、数が増えただけに分が悪そうだ。
「俺が前に出る」
 右側は、回避能力に優れるアルジャスラードが前に出て、敵の攻撃を集中して押えていた。
「ああ、お任せするよ」
 とは怠(なま)け者の玖珂の言葉。
(「ズゥンビとはいえ、数がいると避けるのもキツイか‥‥」)
 しかしながら、やはり右からの六体が加わっているだけに数が多く、注意力が散漫になって被弾し、頬のあたりから出血した。
 さて、また冒険者側の攻撃。
(「‥‥今、一番攻撃力があるのはアルジャスラード殿か」)
 オリバーは、今度はアルジャスラードの龍叱爪にオーラパワーをかけた。
(「囲まれ気味ですが‥‥陣形を組んでおいたおかげで、何とかなりそうですね」)
「リカバーッ!」
 ソニアがリカバーでアルジャスラードを治療する。
 安全を確保しているだけあって、回復役に余裕があった。
「かけた方だけ使ってください」
 とオリバーから言われたアルジャスラードは、
(「‥‥普段は両手を使っているからか、片手だけでやるのも変な感じだ」)
 やや使いにくそうに片手で拳の連打を叩き込んだ。
 ストライクEXで、ズゥンビの顎が上げさせ、
「これで終わりだ!」
 もう一撃を思いっきり振り抜く。
 ゴキャッ‥‥という嫌な音がして、ズゥンビはヨロヨロと倒れた。
 更に、近くにいたズゥンビにもう一撃!
(「もう敵は来なそうだにゃ‥‥」)
 シャドウバインディングで右側に来たズゥンビの内の一匹を止める江見氏。
「影縫いで全員止めてやるぜぃ」
 と気分が乗ってきた感じの江見氏。
 さりげに、彼が一番ズゥンビ達を『行動不能』にしている。
 キュイスは八純に触れて、
「リカバーッ! ほら、しっかりしねぇか」
 リカバーをかけてあげた。彼も、キチンと回復役としての役割を果たしている。
 八純の『マッチョ具合』を感じて、
(「趣味じゃねぇなぁ」)
 とか思ってたりしていたかどうかは分からない。
 ルシファーが傷を負ったのを見たオリバーは、その横に立ち、ロングソードを構えたが、ルシファーには
「邪魔だ」
 と言われた。しかし、
「しかたあるまいよ、ここは共闘と行こう」
 と言って、そのまま横に立つオリバー。意外に、二人は仲良しなのかもしれない。
 八純も反撃に出る。
(「ガンガンに殴ってやる」)
「くらえ!」
 ストライクEXで連打で、ズゥンビの身体を散らしていく。倒せてはいないものの、かなりのダメージをあたえたはずだ。
 玖珂もアルジャの横からズゥンビに斬りかかる。
「そろそろ‥‥倒れろ、お化け!」
 右斜め、そして、左斜め。
 十字に斬りつけると、ゆっくりと後ろに倒れるズゥンビ。
「ふぅ〜‥‥まだまだ、いっぱいいるねぇ」
 ため息を吐いているのは、お化けが苦手だからしい。
 残りは、11匹。
 今度は、反撃で傷を負ったのは、やはり多数に囲まれて奮戦するアルジャスラード一人だ。というよりも、彼以外回避に優れる人物がいなかったから、前に出るしかなかったのだが。
 しかし、現状『負け様がない』のは事実である。陣形を構築し、回復役と足止め役がいたのが何より有効だった。
「リカバーッ‥‥ご苦労をおかけします」
 アルジャスラードを気遣うソニア。
「ああ‥‥気にするな」
 と言って、またも敵を屠(ほふ)るアルジャスラード。
「俺の獲物だ!」
「‥‥目の前にあったもので」
 あいかわらずのルシファーとオリバー。
「後で、たたられないといいけど」
 と、相変わらずお化けを気にしている玖珂。
「これぞ、虚影貞弘流だにゃ」
 江見氏は、またもシャドウバインディングで敵を止め、さりげなく強さを発揮していた。
(「次は、人間と戦いたいもんだね」)
 八純も度重なる攻撃でズゥンビを打ち倒し、勝利を彩った。
 そして、なんだかんだで最後の一匹‥‥。
 なんだか、耐えきれなくなった人がいる。
「この依頼に俺好みのオトコがいないのは、おまえのせいだ!」
 と言って殴りかかるキュイス。
 ポカポカ殴られるズゥンビ。
 江見氏に動きを止められているので、動けないズゥンビ。
 キュイスのフラストレーション解消のため、長い時間殴られ続けたらしい。
 その後で、ソニアのピュアリファイで浄化されたズゥンビ達は、冒険者数名の祈りの言葉と共にこの世から去った。‥‥もっとも、一部『戦闘狂』がバラバラにしていたのも、多かったが。

●その結果
 依頼の成果は、ズゥンビ全滅‥‥大成功であった。
 村人も無事村に帰還出来たそうだ。
「フサフサになるそうだから」
 アルジャスラードから海藻の料理をもらったハゲ村長の表情は、実に清々しく、光りまくっていた。