いーぐるはんたー

■ショートシナリオ


担当:橘宗太郎

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月11日〜09月16日

リプレイ公開日:2004年09月19日

●オープニング

「鷹を捕まえてほしいの」
 少女が冒険者ギルドに依頼を持ってきたのは、日も落ちかけた頃のことだった。
「とても元気の良い鷹がいいわ」
 聞いてみると、少女の父は鷹匠で、新しい鷹を探しているらしい。
 ギルドの親父さんは少女に聞いてみた。
「お父さんは忙しいのかい?」
 すると、少女は泣き出してしまった。
「‥‥お父さんは、鷹を捕まえようとして、反対にひどい目にあってしまったの」
 山に鷹がいると聞いた彼女の父は、鷹を探しに出かけた山で三匹の鷹に襲われてしまったらしい。まだ鷹の鋭いツメやクチバシで作られた傷が癒えず、自宅で療養しているとのこと。
 父親を不憫に思った少女は、家の金をちょろまかして依頼をしに来たのだ。
「お父さんは、元気の良いヤツが大好きなんだと言ってたから、鷹が暴れん坊なのは知っていたと思うわ。‥‥ちょっと運が悪かったのよ。三匹もいるとさすがに手に余ると思うけど、一匹なら平気」
 無邪気に笑う少女に、ギルドの親父さんもニッと笑い返した。

「鷹達にも何か事情があるかもしれないが、とにかく依頼は依頼だ。この依頼では、生意気にも人間様を突付いてくれた鷹達をギャフンと言わせる必要がある。‥‥人間が強いことを思い知らせないと、少女の父親が新しい傷を作る可能性があるからな」
 冒険者達にその言葉を言い終えたギルドの親父さんは、片眉を上げた。
 そして、小さいため息を吐く。
「少女が山への道案内をしてくれるんだが、どうも負けん気の強い子なので鷹を探す間も一緒に付いてくる気がする。気を使ってやってくれ」

●今回の参加者

 ea1286 月 朔耶(17歳・♂・ファイター・エルフ・華仙教大国)
 ea3115 リュミエール・ヴィラ(20歳・♀・レンジャー・シフール・モンゴル王国)
 ea6026 水城 紅牙(40歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea6072 ライラ・メイト(25歳・♀・ナイト・シフール・イギリス王国)
 ea6216 ミハイル・ベルベイン(22歳・♂・ナイト・エルフ・ロシア王国)
 ea6657 ルー・エレメンツ(29歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)

●リプレイ本文

 朝方、冒険者達は少女に連れられ、三匹の鷹がいる山へと入っていた。
「はい、どうぞ。こんなものでいいでしょうか?」
 ライラ・メイト(ea6072)は愛馬オーキスの背から漁師セットを取り出し、その中の網を水城紅牙(ea6026)に手渡した。
「ありがたいでござる。ライラ殿は何も用意しなくてよいのでござるか?」
 紅牙の質問に答えるため、ライラはあるものを見せた。
「私は、これがありますから」
 ロープの両端に石をつけたボーラと呼ばれるものだ。手作りをしたらしい。
 リュミエール・ヴィラ(ea3115)は、少女の肩に乗って談笑をしていた。その途中で、彼女は、鷹の繁殖時期について聞いてみた。
「もしかして、この季節って鷹の繁殖時期なのかな?」
「うーん。繁殖するのは、もうちょっと前の季節ね。たくさん種類があるから、よくわからないけれど」
 少女は自信なさげに答えた。彼女は
(「雛から育てないのは何でか聞いているのかな?」)
 と思ったので、その事について説明をしてくれた。
「雛から育てるのは巣掛っていって獲物をとるようになるまで時間がかかるの。狩りの仕方を教えなきゃいけないしね。野生の鷹を捕まえるのは網掛っていうの。野生に生きている鷹を飼いならすから、狩りが上手なわけ。‥‥簡単に逃げちゃったりするけど」
 少女は肩をすくめた。
「お父さん、面倒くさがり屋だから」
 冒険者達の先頭には、変わった格好をした女性が歩いていた。ルー・エレメンツ(ea6657)だ。彼女は、なぜか全身に肉を巻き付けていた。肉を狙わせて自らを囮にするようだ。
「肉に囲まれるのって、あんまり気分がいいものではないわね」
 ミハイル・ベルベイン(ea6216)は彼女の姿を見て言った。
「意外と似合っている」
 皆もコクリとうなずくので、ルーは妙な顔を返した。
 月朔耶(ea1286)は辺りを警戒していた。幾つもの鳥の声がするが、鷹の声かどうかはわからない。
(「あれは!」)
 彼の目には、上空を飛ぶ一匹の鷹の姿が見えた。
「空に鷹がいた!」
 朔耶の言葉を聞いた皆は警戒態勢をとった。
 鷹は旋回をしているだけで、降りてはこなかった。その内、他の二匹も現れた。
 そして、突然襲い掛かってきた。囮になるため一人で前に出ていたルーに攻撃が集中した。鷹(一)が鋭いツメ立てながら、彼女に向かって急降下する。‥‥肉が食いたくて襲ってきたわけでもないが。
「この程度ッ!」
 彼女は鷹(一)のツメの一撃をくらったが、物怖じはしなかった。彼女はパーティーの中で最も耐久力があり、カスリ傷にも思わなかった。続く鷹(二)の攻撃を何とか避けた彼女は名乗り声をあげて、鷹(一)にダガーを振るった。ただし、加減をするために鞘に収めたままだ。
「白銀の迅雷、ルー・エレメンツ、この剣を以て迅雷の所以をお教えしよう」
 彼女はスマッシュを使い、その重い一撃は鷹(一)をとらえた。ゴッという鈍い音が響き渡る。鷹(一)は動きを鈍くしたが、まだ戦う気力が残っているようだった。
 残る一匹はどうなったかというと、リュミエールが投げた手裏剣に牽制されていた。
「てやッ!」
 リュミエールの手から放たれた手裏剣が鷹(三)の翼をかすめ、羽が散らばる。
 更に、ミハイルが鷹(三)に縄ひょうを投げつけた。
「くらえッ!」
 彼は出来れば縄ひょうで鷹を捕まえたいと思っていたが、捕まえるという部分では『ただの縄』を投げているに近かったので、鷹を縄で縛る事は出来なかった。しかし、彼の一撃は鷹(三)を捉え、空から血が降った。
「これでも騎士の端くれ。臆したりはしません!」
 後方にひかえていた騎士ライラは、用意しておいたボーラを鷹(三)に投げつけた。
(「やった!」)
 命中!
「‥‥あれ?」
 見事命中させたライラであったが、石と縄がバラけて逃げられてしまった。作りが甘かったようだ。しかし、石をあてられて少なからず怯んだ鷹(三)は逃げ出しはじめた。
 そのライラに網を借りた紅牙は、逃げようとする鷹(三)に向かって網を投げた。
「大猟でござる〜!」
 なぜか決め台詞は最初から『大量』だ。
 網がバッとひろがり、彼の投げた網は見事に逃げる鷹(三)の上に覆いかぶさった。鷹(三)は暴れながらも地面に落ちた。
 朔耶は縄にかかった鷹(三)の近くに寄り、
「大人しくしやがれ! てめぇ焼いて食うぞ!!」
 というよくわからない脅し文句を吐きながら鷹(三)を動きを止めようとしていた。彼の両手が鷹(三)のクチバシを押さえたが、まだ暴れていた。
 その間も戦いは続いている。
 ルーは、二匹の鷹に囲まれたままだった。鷹(二)の攻撃は避けれたが、鷹(一)の反撃を受けて彼女の頬に赤い筋が走った。
「しつこいのよッ!」
 再度、ルーに鞘のついたダガーでゴツンと殴られた鷹(一)は、さすがにたまりかねて上昇をはじめた。
「これなら!」
 ライラの手から何かが放たれ、鷹(二)は空中で叫び声をあげた。オーラショットだ。
 更に、紅牙の刃が鷹(二)を襲う。
「隙ありでござる!」
 血が横に走り、その一撃で鷹(二)も戦闘意欲を失った。そして、ルーを襲っていた二匹の鷹は飛び上がって逃げ去っていった。
 さて、網につかまった鷹(三)はどうなったか。
 朔耶は、まだ鷹を捕まえられずにいた。リュミエールが近くに降りて、助けに入る。
 朔耶は妙な声をあげた。
「え? あ、おい、ちょっと」
 リュミエールが着物の帯を外したからだ。本人は気にした様子もないが、シフールとはいえ見ている側としてはやはり戸惑う。彼女の服が少しだけ乱れた。
「キミ、ちゃんと捕まえててね」
 朔耶が鷹(三)を押さえている間に、リュミエールは帯で片方の翼を結んでしまった。これで飛べない。リュミエールは気にした様子もなく、予備の帯を取り出して結びなおした。見かけと違い、豪気な人である。
 呆然と冒険者達の戦闘を見ていた少女は、鷹を捕まえたのを見ると、喜んで飛び跳ねた。
「やったー!」
 しかし、ルーを見るとそうも言ってられなかった。
「その血‥‥大丈夫?」
 ルーが頬をおさえていた。指の間から血が出ている。ルーは気にしないように言ったが、血は止まらなかった。
「大丈夫ですか?」
 ライラが駆け寄って応急手当をする。越後屋手拭いが役にたった。
「なんとかね。無茶をするもんじゃないわ‥‥イテテ」
 何時も無茶をする彼女は、これからも生傷がたえないのであろう。そこが『らしさ』なのかもしれないが。
「傷痕は残らないですから、安心してくださいね」
 大して止血がうまくもなかったが、しばらく時間をかけると血が止まった。
「とりあえず眠りたい。早起きって結構苦手なのよね。徹夜は平気なんだけど‥‥」
 ルーの呟きは、皆をクスリと笑わせた。
「はいよ、これがお目当てのものだ」
 朔耶は縛られた鷹を少女に差し出した。彼は何とか鷹を治療してみようとしていたが、知識だけでは治療が出来なかった。怪我をしたままだったが、少女は気にした様子はなかった。
「ありがとう。これで、お父さんも元気を出すわ。鷹と一緒に怪我を治すなんて、鷹匠冥利につきるわね」
 楽天的な少女は、朔耶から鷹を受け取ると、彼に向かってペコリと頭を下げた。
 少女はハッと気付いてリュミエールの方を向いた。
「この帯、あとできちんと返すね」
「うん。よろしくね」
 リュミエールは来たときと同じ様に少女の肩に乗ると、にっこりと微笑んだ。
「これにて一件落着でござるな?」
 紅牙の言葉に、ミハイルは答えた。
「ギルドの親父さんも、鷹を痛めつけろって言ってたし、確かにこれでいいはずだ」
 良心の上では疑問は残ったが、この依頼はこれで『成功』らしい。

 その後、捕まえた鷹は少女によって家に持ち帰られ、鷹匠と一緒に治療を受けているらしい。鷹匠との仲も悪くはないようだ。反抗的な態度をとらなくなったのは、きっと冒険者達のキツいお仕置きのおかげであろう。
 ちなみに、当初の餌はルーがつけていた肉だったらしい。