メイと悪魔の影
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■ショートシナリオ
担当:立川司郎
対応レベル:6〜10lv
難易度:やや難
成功報酬:3 G 9 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:09月18日〜09月23日
リプレイ公開日:2005年09月27日
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●オープニング
窓をするり、と影が通り抜けた。
そこに木枠の窓があった事も、閉じられていた事も‥‥全く問題ではない。光さえ遮る壁をくぐると、影は室内に降り立った。
暖かなベッドの中で、小さくて柔らかいニンゲンが寝息を立てている。
「こいつか‥‥」
小さな黒い影は、ベッドの側に寄ると見上げた。
きい、と風に押されて窓が開く。さあっと光が差し込み、影を照らした。小さな、黒い猫。
猫はゆらりと体をくねらせて、伸びをした。
今まで小さな猫だったモノが、大きな黒豹へと変質していく。
「もしこいつが本当に巫女だとすると‥‥これで鍵の一つはフゥの手の内って訳か」
猫はにやりと笑うと、足音もたてずにベッドに足をかけた。
だが布団をはぎ取って中から飛び出したのは、少女ではなかった。銀色の毛並みに覆われた爪‥‥。爪は深く獣に食い込み、血を布団にまき散らした。
ヴェントは、まっすぐ獣を睨み返す。
「‥‥ここは‥‥通さない」
「貴様‥‥奴らの仲間かよ」
「俺はメイの契約者だ‥‥卿とは関係ない」
ヴェントは鋭い爪を獣に振りかざす。
素早く飛び退くと、獣は窓辺に降りた。漆黒の影が、光に消えていく。
風一つ残し、影は姿を消した。窓に近づき、ヴェントは外を眺める。
そこに誰もいない事を確認し、窓を閉めた。
「悪魔‥‥メイは渡さない」
伝承のようには‥‥と、ヴェントは呟いた。
「‥‥よくわかんないんだけど、どういう事?」
シェリーは、テーブルの上に腰掛けてヴェントを見上げた。
黒い獣の悪魔が襲ってきた翌日、シェリーとメイの両親は、事の次第をヴェントに問いつめていた。
あの悪魔は、また来るかもしれない。
何故、メイが襲われるのか。ヴェントは村人の前では話さなかった。だが、メイの親は知る権利がある。
メイのお父さんもお母さんも、ヴェントの返事を待っていた。
「俺達の祖先は、ずっと待っていた。いつか巫女の血統に危機が訪れた時、守る為に‥‥。皆でシャンティイ各地を旅して回りながら‥‥遙か長い間、そうして巫女を影で守ってきた。それが契約だから」
ずっとずっと昔、ヴェントの祖先は巫女の血統に恩を受けた。
それから、彼らは恩を返す為、巫女と契約を交わした。それから何が起こっても、彼の血を守り続けると。
「人間は‥‥カシェの伝承の聖女と言っている。聖女の血統だと」
「カシェ? ‥‥もしかして、あのおとぎ話の?」
メイの母が聞いた。
ヴェントがうなずく。
「巫女は、精霊や俺達人外のモノを惹き付ける力があると言われている。メイはおそらく、巫女の血を濃く継いだのだと思う。シャンティイで悪魔達の活動が活発化してから、俺達の一族は襲撃されてちりぢりになった。それから俺は一人で、巫女の血を引く者を探していた」
そうして、メイに会った。
「この話は、あんまり話して欲しくない。話したら、メイはここに居られなくなる」
「でも、現に悪魔はメイを狙っているわ。またあいつが襲ってきたら、どうやって守るの? ‥‥ギルドに人を頼んだら、村の人間はみんな怪しむわよ」
シェリーが言うと、ヴェントは口を閉ざした。
ついこの間、パリの騒ぎに便乗してきた悪魔の騒ぎでメイに疑惑の目が向いたばかりなのに、またメイが襲われたと知ったら村人達は、メイをここに置いておかないかもしれない。
良くて、レイモンド卿に知らせて‥‥メイは、お城で一生過ごさなければならなくなる。悪くすると、まとめて村から放り出されてそれっきりだ。
それは、メイの親だってシェリーだって嫌だし、メイも望んでいないだろう。
シェリーは腕組みをして考え込み、首をかしげた。シェリーは精霊だから考えるのは苦手だし、メイの両親だって名案など無い。
「よくわかんないんだけど‥‥あたしも精霊達も銀ちゃん達も、出来る事があったら何かするからさ‥‥とりあえずギルドに連絡したらどう?」
それしか‥‥無いだろう。
ヴェントはメイの両親と視線を合わせた。
●リプレイ本文
「半月ぶりですね。あれから、村の様子はどうですか?」
アフラム・ワーティー(ea9711)は仲間をふり返ると、村長に落ち着いた様子で話しだした。半月前アフラムは、この森を襲撃したインプ退治の為にギルドから派遣されて来ている。
あれから村はかわりないか聞くアフラムに、村長は不安そうに問い返した。
「また‥‥何かあったんでしょうか」
「いえ、そうではありませんよ。パリでの騒ぎが収まったものですから、それをお伝えしておこうと思いまして。この近辺の依頼があったものですから、丁度、ね」
長らく会っていないレーヴェ・ツァーン(ea1807)とリア・アースグリム(ea3062)はともかくとして、デュクス・ディエクエス(ea4823)の顔はよく覚えていたようだ。ショウゴ・クレナイ(ea8247)は見た事がない。リアはレーヴェとデュクスから離れ、一人歩き始めた。
あたりを見まわし、すう、と目を細めて十字架のネックレスを握りしめる。
「シャンティイでの騒ぎも収まりつつあるようですが、念のために見回っておこうと思いますが‥‥よろしいですか?」
「ええ、それはもう。‥‥ああ‥‥いえ、何でもありません」
村長は何か言いかけたが、口を閉ざした。おそらくメイの事であろう。アフラムは気づかなかった振りをして、仲間の方へと引き返した。
リアが視線をかえし、足を止める。
「今の所、この村に悪魔が潜んでいる気配は無いようです」
「村長は何と言っていた?」
レーヴェは、閉じられた村長の家の扉をちらりと見て聞いた。アフラムは肩をすくめる。
「やはり、メイ嬢の事は気になるようですね。悪魔が近づかないうちに、連れ出した方がいいでしょう」
アフラムがそう言って歩き出すと、リアは十字架をふと見下ろし、祈りを捧げた。
村から少し離れた森の中、残った三人はようやくテントを張り終えて一息ついていた。ショウゴが持ってきていた四人テントを張るのが一番大変だったが(しかも本人は居ない)。
さっそく酒を飲んでいる本多桂(ea5840)を、ガブリエル・プリメーラ(ea1671)はため息まじりに見やる。
「そんな暢気にしていられないんじゃないの? ここ、精霊が森に住み着いているのよ。村の人だけじゃなくて、精霊にも話をしておいた方が良くないかしら」
この森の精霊が争いを好まない事は、ガブリエルも報告書や人づてで聞いている。
「警戒してもらう事は出来るけど、精霊ってそれほど戦う力がある訳じゃないのよ。あんまり期待しないでね。デュクスが頼んで来たから、一応銀ちゃんも呼んだけど‥‥」
シェリーがガブリエルにそう話すと、どこかから狼の遠吠えが聞こえた。
ふ、と滋藤柾鷹(ea0858)が顔を上げてテントの外を見る。
「獣の群が近づいている」
刀に手をやろうとした滋藤の服を、シェリーがぎゅっと掴む。
「あ、ダメ。あれ、銀ちゃんだから大丈夫なの!」
銀ちゃんはメイの友達の、狼のボスだ。銀ちゃんには“真っ白”とメイが呼ぶ妻の狼が居て、以前メイ達の依頼でその狼を救った事があるのだ。
真っ白が産んだ子供達は、すっかり大きくなって、今や銀ちゃんとほとんど体格がかわらない程である。
リアに手をしっかり握られたメイは、テントに向かいながら銀ちゃんの鳴き声を森の中で聞いていた。レーヴェ達は両親に来てもらうかどうかと話をしたが、結局両親が居てはかえって邪魔になるかもしれない、と彼らの方から断ってきた。
何かに気づいたのか、アフラムが両親の様子を見て頷き、メイを預かっていくと答えた。レーヴェやリア、ショウゴは気づかなかったようだが、デュクスは何となく分かったようだ。
デュクスはメイの側に付いて、じっとその様子を目を離さず見守っている。
レーヴェとアフラムは視線を合わせると、少し下がって声を抑えた。
「連れて来なくて良かったのか?」
「‥‥ええ。気づきませんでした? メイ嬢のお母さん、ご懐妊されているんですよ」
「え? ご、ご懐妊って‥‥えっと‥‥そ、それはおめでたい‥‥ですね」
アフラムとレーヴェは、怪訝そうにショウゴを見る。そんな驚くような話だっただろうか、とアフラムは首をかしげ、話を続ける。
メイにはまだ内緒にしているようだから、アフラムとデュクスも黙っていたが。
そうであれば、危険が待っている森に連れてゆくわけにいかない。リアは立ち止まり、ふり返った。道のずっと向こう、村の方を睨むように見据える。
「アフラムさん‥‥やっぱり私は、あのご両親を‥‥」
「リア、今は悪魔を退治する事に専念した方がいい。お主には、悪魔を感知してもらわねばならん」
レーヴェに説得され、リアはやむなく歩き出した。
事情を知らないメイは、純粋にみんなとキャンプが出来る事を喜んでいた。リアは初めてメイと出会った時の依頼を思いかえし、その時シェリーからもらったワインを披露していた。デュクスは、彼女とメイが話しているのを黙って聞いている。
真っ白の話を聞くリアに、メイが必死に話しているのをじいっとデュクスが見ている。
夜目の利く滋藤とガブリエルは、周囲を警戒するようにちらちらと見ていた。一晩明かす事になるかもしない為、交代で仮眠を取りながら見張る事にしている。
シェリーは‥‥すやすやと寝ている。桂はつん、と指で突いた。
「真っ先に寝ちゃうとはねぇ。悪魔が近づいているかもしれないのにさ」
「‥‥あ。思い出した」
寝ていた、と思ったショウゴがぱちりと目を開けて、体を起こした。
「レーヴェさん、確か対悪魔用の武器は持って居ないですよね。僕のバックパックからレイピア持っていってください。木剣はアフラムさんに貸す事になっているから‥‥それじゃあ」
毛布に潜り込んだショウゴを桂とレーヴェが見つめる。
「どうでもいいけど、あんた対悪魔武器持たずにどうする気だったの?」
「‥‥ああ、すまん」
桂は酒をあおると、刀を抱えて座っている滋藤と、ヴェント達を見た。
「猫の悪魔だって言ったっけ。黒豹に化けるんでしょう?」
「ああ。気配もなく入ってきた」
ヴェントが答えると、桂はふ、と笑った。
「なるほど‥‥じゃ、もしかすると同じヤツかもしれないね。あたしが見たヤツと、ね」
「グリマルキンなる悪魔が、そのように黒猫の姿をとると聞いた事はあるが。たしか、透明化の力は無かったと思うが、猫の姿には気を付けた方がよかろう」
滋藤が言うと、桂が首を振った。
「黒豹の方が本体だと思うね。それにヤツは何にでも化ける‥‥蠅にでも。ブレスセンサーにもかからない」
そのせいで、あのグリマルキンを逃がしてしまったのである。
今度こそ逃がすまいと桂はデビルスレイヤーを持って、一人燃えていた。
しかし、悪魔が蠅にでも化けるという事を知っていたのは桂だけであり、その悪魔を感知する術もリア一人に頼りきり。それ以外に何一つ悪魔の接近を知る方法は、無かった。
何かわからないものを警戒しようとしても、近づいたそれを悪魔だと感知出来るものではない。
静かに、小さな虫がそろりそろりと樹上に止まって‥‥。
小さな虫は巨大な影となって、舞い降りた。メイの横に居たヴェントを押し倒すと、そのままデュクスに牙を向ける。
剣を抜いていないデュクスは受ける事も出来ず、肩に牙を受ける羽目となった。
「ゾロゾロと人間を集めたって、無駄だぜ」
しわがれた声が、黒豹から漏れる。メイはきょとんとした顔で、黒豹を見ていた。
肩を押さえ、残った手で剣を抜きながらデュクスがメイをふり返る。
「ヴェント、滋藤兄様‥‥メイを頼む」
「メイ殿、下がって居られよ」
滋藤がメイの腕を掴んで、後ろに庇う。メイは滋藤を見返した。
「あの黒豹さんは悪い子なの? ‥‥メイ、レイモンド様のおうちに行った時、みんながやっつけてるの見たよ」
「あ‥‥ああ、そうでござるな。悪い子だ」
メイの冷静なテンポに、滋藤はややうろたえて答えた。ぐい、とヴェントがメイを引き寄せる。
「メイ、あの悪魔に近づいてはダメだ。‥‥悪魔は敵だ」
敵‥‥。敵って何、と答える間もなく、滋藤はヴェントと目配せをしてお互いの位置を確認しながら、黒豹に向かって斬りかかった。
リアが詠唱を終えてホーリーを放つが、その光は悪魔の体を焼く事なく消える。リアは目を見開き、声をあげた。
「な‥‥どうして‥‥っ」
「今度こそ、塵にしてやるわよ!」
桂が剣を振りかざす。鞘から抜きざまの一撃を、黒豹は皮一枚で避ける。
「ちっ‥‥よく動くヤツね!」
黒豹は立て続けに放たれたガブリエルのシャドウバインディングも、跳ね返す。先ほどのホーリーと続けて、黒豹には魔法が利いている様子がない。
「どうして‥‥どうなってんの?」
「レジストマジック‥‥黒派の神聖魔法ですよ」
ショウゴがガブリエルに言うと、桂はため息をついた。
「数も数えられないのに、神聖魔法使うなんて‥‥」
「煩いわ!」
怒鳴った黒豹に、デュクスが聖剣で斬りかかる。渾身の一撃を、黒豹はまたしてもひらりと避け、ショウゴの剣も当たらない。
「速い‥‥当たらない!」
「このまま逃がす訳にいかぬ」
双刀を突きつけた滋藤の刀の一本が、黒豹を捕らえた。悲鳴を上げ、黒豹がふわりと後ろに飛び退く。
「逃がすかっっ!」
飛び出した桂に続き、レーヴェとアフラムが後を追う。黒豹は速度を生かして距離を取りながら、アフラムにディストロイを放った。
魔法を放った‥‥?!
ショウゴがそれを見て、声を上げた。
「レジストマジックが解けた!」
「了解、魔法がきくって事ね」
立て続けに、黒豹がディストロイをレーヴェと桂に放つ。
息を切らせ、レーヴェが上空を見上げた。黒豹は、遙か頭上の樹の上に居る。
「このままでは‥‥遊ばれる一方だ」
「‥‥デュクス、メイ殿を頼むぞ」
見かねて、滋藤も駆けつける。
ヴェントは、静かにデュクスをふり返った。
「メイを頼む。‥‥あいつは俺が引きずり降ろす」
ヴェントは獣の姿を取ると、地を駆けた。
そのまま勢いをつけて、黒豹の居る木に飛び上がっていく。しなやかなジャンプで枝を飛び、ヴェントの牙が黒豹を捕らえた。
二体はもつれ合うようにして、地面に落ちてくる。
地に落ちる瞬間、黒豹はふいと姿を消した。ヴェントはそのまま着地する。
ぎゅ、とデュクスはメイを抱きしめた。不安そうに、メイはデュクスを見上げている。
「変化したわ! 気を付けてっ」
桂が叫ぶ。そうっと目を閉じ、リアが呪を口にする。
悪魔の姿を、リアが捕らえる。リアの指は、一方を指した。
「そこです!」
「ここか‥‥!」
滋藤は、左手に持った槍を突いた。小さな蠅の姿を取ったままの黒豹は、暗闇の中を逃げまどう。
「もう逃がさないわよ!」
ガブリエルは視線を、小さな虫に向けた。
虫の下に落ちた影が、その姿を捕らえる。ぴたり、と虫の動きが止まって地に落ちた。
じい、と見下ろす影が‥‥。
「おやおや、どうしたの?」
桂がにやりと笑う。刀を納めた滋藤が、そっと目を閉じた。
「さて‥‥どうしたものか」
「誰に頼まれて来たのか、聞いておきたいですね」
にっこり笑ってショウゴが言う。腕組みをして、レーヴェがメイ達をふり返った。
「巫女を捜していたからには‥‥フゥの樹と関連があるのだろう」
「神父の悪魔の指示‥‥と考えられます。ここで逃がせば、メイだけではなく、ご両親も危険にさらされるでしょう」
リアが言うと、ガブリエルが頷いた。
「じゃあ決まりね」
「‥‥すみませんね」
アフラムはデュクスをふり返る。デュクスが、メイを見た。
相変わらず、メイはきょとんとしている。
桂が剣を地面に突き立てると、ぷちっという音が聞こえた。
フゥの樹が狙う、巫女‥‥。
デュクスは、ヴェントの方へと鋭い視線を向ける。
「巫女‥‥伝承と、何か関係があるのか‥‥ヴェント、聞かせてくれ」
伝承の話を知る者は、この中には意外に少ない。ショウゴは、デュクスとヴェントをちらりと見て、少し首をかしげた。
「その伝承の話というのは、どんなものなんですか? フゥの樹とどう関わっているのか、教えて頂けますか」
「私もあんまり詳しく無いのよ。報告書を読んだ方が早いわね」
ガブリエルは、仲間達から聞いた話や、報告書で知ってはいるが、それほど詳しい訳ではない。レーヴェは現在、クレルモンの依頼に関わっているが、伝承の事は調べていなかった。
デュクスは、兄達がシャンティイの依頼に関わっている。
「兄様達から聞いた話だと‥‥悪魔と戦う話だって‥‥聞いた。悪魔に魂を奪われた僧侶から‥‥七人の使徒が現れて、悪魔と戦う‥‥とか」
それについて書かれたといわれる本‥‥カシェ正本と呼ばれるものと、七つに分かたれた写本があるとされる。現在確認されているのは、レイモンド卿の所持していたクーロン写本、ルー“狼”が保管するべき五番目の写本、閉ざしたる目の聖女ラスカが所持する写本(ガスパーが、ユダの写本と呼んでいた)。
「メイは、その僧侶の血統だ」
ヴェントが、デュクスに答えた。
「カシェと‥‥どう関わる」
「俺もよく分からない。ただ、伝承の中で使徒と巫女は切り離せない関係だから」
デュクス‥‥そして皆がメイを見た。
メイが皆を見上げる。
「‥‥どうしたの?」
きょろきょろとメイが周囲を見た。ふ、とガブリエルとレーヴェが周囲に、鋭く視線を向ける。
いつの間にか、爛々と輝く目がいくつも、囲んでいた。
それとともに、人ではない‥‥獣でもない気配。
役目を終えたかのように、彼らは静かに森の中へと引き返していった。
(担当:立川司郎)