【収穫祭】うちの虎豹熊、知りませんか?
 |
■ショートシナリオ&プロモート
担当:たかおかとしや
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:0 G 81 C
参加人数:3人
サポート参加人数:1人
冒険期間:11月03日〜11月06日
リプレイ公開日:2008年11月12日
|
●オープニング
神聖暦1003年。
例年通り開催されたキエフでの収穫祭は、盛況のうちにその幕を閉じようとしていた。
臨時に立てられた市に立ち並ぶ無数の露天も、そろそろ店終い。路上のあちこちで見られた大道芸人達の華やかなパフォーマンスも、今はない。見せ物小屋は片付けられ、広場の櫓も解体が始まった。
キエフを訪れていた幾つかのサーカス団も、公演の日程は全て終了している。気の早い、比較的小規模なサーカス団は既に街を立ち、その他のサーカス団も、十一月の初めには馬車の隊列を組んですっかりキエフを離れていくだろう。
収穫祭は、無事に終わった。
いや、終わろうとしていたのだ。その問題が、発生してしまうまでは。
―――あるサーカス団の団員が、猛獣用の檻の幾つかが空っぽになっている事に気が付いたのは、収穫祭最後の公演を終えた、その翌日のことであった。
●
調教師達の責任者だと名乗るその男は「何、大した問題ではないのだが」と言った。
飼育係を名乗るもう一人の男は「大変な事態が起こってしまった!」と言った。
迎え撃つ、ギルドの受付嬢はプロだった。
押し合いへし合い、口々に己の主観的な事情を告げようと揉み合う二人の依頼人に対して、まーまーと仲裁に入りつつも、その脳細胞の裏では、再構成された情報を元にした依頼書の草稿がすらすらと書き上がっていく。
●
「何、大した問題ではないのだが」
と、派手な身なりの男は言った。
「サーカスの撤収準備のごたごたで、団の動物たちが三匹ほど、逃げ出してしまったようなのだ。ああ、勘違いしないで欲しい。動物と言っても、三匹ともまだほんの子供なのだ。人に危害を加えるようなこともないだろう。
逃げたなら逃げたで、いっそ放っておこうとも思ったのだが、一応、あれらも団の財産ではあるし、今まで食べさせた餌の代金程にもまだ働いて貰っておらん。あまり大騒ぎをしたくないので内密に頼みたいのだが、出来れば我らが出立する前に、逃げた動物たちを捕まえて欲しい。よろしいか?」
●
「大変な事態が起こってしまった!」
と、薄汚れて獣臭い男が言った。
「団の動物たちが、三匹も逃げ出してしまったのです! 犬や猫なんかじゃありません、どれも猛獣。虎と豹と熊が三匹なんです! 三匹ともまだ幼さの残る若獣ですが、その分好奇心も強く、サーカス育ちなので人も恐れません。本人達はじゃれついているつもりでも、一般の人たちから見れば襲われたのと変わりないでしょう!
お願いです、動物たちの捜索に力を貸して下さい! 私達だけでは手が足りず、残念ながら街の土地勘もありません。何か起こってしまえば、人が怪我をすることは勿論、動物たちも殺されてしまうでしょう。そうなる前に、何とか‥‥」
●
言いたいことを言い終えた二人の依頼人が帰ったところで、受付嬢は慣れた手つきでサラサラと依頼書を書き付ける。
何やら色々言ってはいたが、なんて事はない。
要するに、迷子の張り紙を作るのと一緒である。簡単なものだ。
『依頼内容:サーカスから逃げ出した、動物の捜索&捕獲。制限時間はサーカスが出立するまでの間』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『逃げた動物たちの特徴(三匹分)』
●名前:ルーク
若い虎。オス、体長0.8m
黄色地に黒の縦縞のある毛皮。なりはデカイが、中身は子供。
好奇心旺盛で人懐っこい(が、力の加減は苦手)。干し肉が大好物。
●名前:ベッキー
若い熊。メス、体長1.2m
茶色の毛皮。臆病で、人見知りが激しい。
魚が好物。中でも、何故かウナギが大好き。
●名前:ユーリー
幼い豹。オス、体長0.4m
黄褐色地に黒の斑点。動物に詳しくない者だと一見猫に見えるが、猛獣の子供。
特にこれと言った好物はなく、何でも食べる。
可愛らしい外見の割に喧嘩っ早く、あまり人に懐かない。
●リプレイ本文
冬の足音の迫るキエフ。
街外れに建っていたサーカス団のテントは現在、団員達の手によって大車輪で解体作業が進められていた。
既に中心の大テントは八割方撤去が進み、団員達の居住用テントを含む周辺の小さなテント群も、数日後には全て解体され、馬車に積み込まれる予定である。
そんな、慌ただしく団員達の立ち働く、その一角。
主に芸に使う動物達の檻と、飼育員、調教師達の住まうテントが立ち並ぶその場所で、冒険者達は依頼人の二人から逃げた三匹の動物達に関する情報を聞き出していた。
二人から、と言っても、主に喋っているのは飼育員の男だけである。もう一人の依頼人であるパモンという調教師の責任者は、動物そのものに関する知識は豊富なようだが、どうも個々の動物達の性格や癖などといったモノにはとんと興味も、心当たりもないらしい。反対に、ライマーと言うその飼育員の男は、難しい知識はなくとも、まるで娘や息子のことのように、個々の動物達の性格を把握していた。
「‥‥熊のベッキーは、なりは随分大きいんですが、臆病で、ぼんやりした女の子です。檻から出たとしても、おそらく、それ程遠くには行ってないと思うんですが‥‥あの、こんな話でお役に立ちますか?」
「寧ろ、そう言うお話こそ、目下の状況では役に立つ。御協力、感謝致し候」
百鬼白蓮(ec4859)が聞き役となって、ライマーから動物達の特徴を丹念に聞き出していく。
臆病な熊のベッキー。
力が強くなった今も、遊び癖の抜けない虎のルーク。
孤高でプライドの高い、豹のユーリー。
子供であるが、どれも肉食の猛獣だ。
「人のためにも動物のためにも、早く、無事にサーカスに戻してやりたいものだな‥‥」
「普段から多くの動物を飼ってる者として、この依頼には個人的に多少の想いもある。早急な事態の解決をお約束しよう」
ヴィタリー・チャイカ(ec5023)、そしてエルンスト・ヴェディゲン(ea8785)の言葉に、ライマーはお願いしますと、深く頭を下げる。
●
それからしばらくして、サーカス広場の近くの酒場に、ヴィタリーとライマーの二人が訪れていた。
ライマーから動物達に関する情報を詳しく聞き出した後、ヴィタリーの周辺住民への聞き込みがてら、虎のルークの好物であるという干し肉を仕入れに来たというワケである。
冒険者酒場「スィリブロー」程ではないが、ここの酒場も冒険者や旅の商人などからは人気の店だ。肉料理が売りの大衆酒場であり、客の出入りも多い。干し肉と逃げた動物達の情報を仕入れるには、最適の場所と言えるだろう。
キエフでの生活が長いヴィタリーは、ライマーを伴い、慣れた様子で店内へ入ってカウンターにいる親父に干し肉を幾つか注文する。
店内を見渡すと、昼食には若干早い時間帯なこともあって、客も今のところはそう多くないようだ。
酒場の親父から話を聞くには丁度いい。ヴィタリーはカウンター越しに、干し肉を切り分けている親父に向かって声を掛けた。
「なあ、親父。この辺に最近、変な動物がウロウロしてたりしなかったかい?」
「なんですかい、藪から棒に。変なってな、例えばどんな動物で?」
親父の言葉に一瞬、ヴィタリーは言い淀むが、根が正直な彼は、思わず本当の事を言ってしまう。
「―――熊‥‥とか?」
「ははは! お客さん、バカ言っちゃいけねぇや。ま、猫なら裏で残飯漁りに来ますけどね。幾らキエフだからって、流石に熊はないでしょう、熊は」
「あ、そうだよな♪ 熊はないよな、はっはっは♪」
笑い飛ばす親父に合わせて、ヴィタリーも思わず愛想笑いなどを一つ。
笑いながら親父から干し肉を受け取り、あまりおかしな藪蛇をつつく前にと、ヴィタリーとライマーの二人はさっさと酒場を退散しようと背を向ける。
‥‥その、二人の背中に向けて、親父はアゴに手を当てながらこう言った。
「ああ、そういや昨日、虎を見たとか言って騒いでた酔っぱらいがいましたぜ。黄色に黒縞の、でかい猫みたいな奴がサーカス広場の通りを歩いてたって‥‥」
「そ、それです! ヴィタリーさん、ルークですよ! すいません、その虎、どこに行きましたか?!」
店を出ようとしていたライマーだが、その親父の言葉に、カウンターへ猛ダッシュで引き返す。
親父の手を取り、食い付かんばかりに必死の形相のライマーに戸惑いつつも、親父は何とか昨夜の酔っぱらいの体験談を思い出そうと記憶を手繰った。
「まぁまぁ、お客さん。ちょっと待って下せぇよ。‥‥えーっと、あれは確か‥‥‥‥」
●
「全く。この忙しい時に、芸も出来ぬ子供ばかり手間をかけさせおって。そこのお前達も、そんな事をやっとる暇があったら、さっさと探しにいかんか!」
「無闇にただ街を走り回ったところで、成果など上がらぬ事はお前にだって判るだろう? 今、犬達に逃げた動物の匂いを辿らせているところだ。慌てなくとも、結果はすぐに出る」
いらいらと空っぽの檻の前をうろつくパモンに対して、エルンストはにべもない。
空の檻の中では今、百鬼とエルンストの三匹の犬達が、盛んに匂いを嗅ぎ回っているところであった。
ややあって、エルンストの愛犬であるゼロが、匂いの道筋を見つけたらしい。檻から外に出たゼロは、主人のエルンストにワンワンと吠えかけて注意を引く。
「どうやら、うちの犬が何かを見つけたらしいな。虎か熊か‥‥。百鬼、こちらは俺が行こう。後を頼む」
「心得た」
主人のエルンストがついてくるのを確認したゼロは、ふんふんと匂いを嗅いで歩き出す。ゼロの後を、同じくエルンストの飼い犬であるフレンダーが続いた。匂いを嗅ぎながら、犬達は興奮を隠さない。どうやら相手はそれ程遠くにはいないらしい。
犬達の様子を見たエルンストは、パモンを呼ぶ。
「おい、お前。ここでウロウロしていても仕方ないだろう? どうも相手は近いようだ。お前もついてこい。
さあ行くぞ! 走れ、ゼロ、フレンダー!」
「なに? おい、まて、うわ!」
主人の叱咤に、早足で駆け出す二匹の犬達。
二匹の後ろを、パモンの腕を掴んだエルンストが続く。
●
―――犬達が足を止めたのは、それから十数分後の事だった。
随分駆けずり回った様でいて、実際にはサーカスのある街区からは殆ど離れてはいない。
その、足を止めた犬達の先。数十メートル向こうの通りで、茶色のモコモコした毛皮がノコノコと歩いていた。エルンストは犬達をそこにとどまらせ、パモンと共に茶色いモコモコに近づき、名前を呼ぶ。
「ベッキー?」
熊が、エルンストを振り返った。
何で私の名前を知ってるの? とでも言いたげな顔をして。
何のことはない、ここはサーカス広場に通じる裏通りの一本である。ベッキーはどうやら、街区をぐるっと一周してきただけのようだった。
自分の名前を呼ぶ見知らぬハーフエルフにベッキーは警戒するが、腹が減っていたのだろう。エルンストがマスの切り身を差し出すと、すぐに嬉しそうにあぐあぐと魚を囓り始める。
「餌無しで街を散歩していたのだ。腹も減るだろう。‥‥おまえ、この熊はベッキーで間違いはないか?」
「ああ、そうだ。確かにうちの熊だな。全く、なんと人騒がせな。散々人を走らせておいて、結局ここはサーカス広場の裏ではないか! おい、ベッキー! お仕置きは覚悟しているんだろうな?!」
肩を怒らせ、パモンがずかずかとベッキーに近寄ると、ベッキーは大きな体を縮込ませてエルンストの背後に隠れようとする。
「ベッキー!!」
「‥‥怒鳴るばかりが、調教師の芸というわけではあるまい」
声を荒げるパモンを前に、エルンストは辛辣だ。
ベッキーに魚を与えつつ、エルンストはパモンを振り返る。
「案外、動物達が逃げた原因の一つは、おまえのそのような態度にあるかもしれんぞ? ‥‥さあ、ベッキー、帰ろう。散歩の時間はおしまいだ」
エルンストは、ベッキーを連れてサーカスのテントへと向かう。
パモンは足下の小石を大きく蹴り飛ばして、エルンスト達の後を追った。
「私の態度? 大きなお世話だ、全く!」
●
「さて、確かにこちらの方向で間違いはなさそうなのだが‥‥」
ひょっと体を宙に躍らし、褐色の肌の女忍者は枝から枝へ。
大きな街路樹の枝に降り立った百鬼は、樹上からキエフの街を見下ろしていた。
彼女の愛犬、十六夜がエルンストの追った匂いとは別の匂いを見つけたのは、あれから数分後の事。
ただ、十六夜と共に直ぐにその匂いを追って街に出たまではいいが、どうやらテキは随分と気紛れな性質であるらしい。道を進んだかと思うと、塀を越え、木に登り、細かな路地を行ったり来たり。
流石の十六夜も、こうもウロウロされてはお手上げだ(‥‥もっとも、犬に手はないのだが)。
随分追いついたはずなのだが、後一歩というところで標的を見失ってしまったのだ。
「む? あれはチャイカ殿にライマー殿か」
眼下の通りを、見知った二人の男が、何やらきょろきょろと歩いている。
どうやら、目的は百鬼と同じようだ。彼女が木の枝から降り立つと、ヴィタリーの方から声を掛けてきた。
「ああ、白蓮。そっちはどうだ? こっちは酒場で、昨晩この辺りに虎が出たという話を聞いてきたんだが」
「自分も十六夜と共に、檻からここまで匂いを辿ってきたのだ。どうやら、狙いは外れておらぬ様子‥‥‥‥」
‥‥言葉の途中で、百鬼が周囲の気配を伺う。
気配と言っても、ここはキエフの街中である。周囲には人家が建ち並び、適当な人通りもある。
だが‥‥
「ん? どうしたんだ、白蓮?」
「しっ!」
ヴィタリーは何も気付いていない。
しかし、百鬼に続き、十六夜までもが落ち着かなげにぐるぐると周囲を警戒し始めた。
何者かの視線を感じる。
だが、一体どこから?
―――出し抜けに、大きな何者かにヴィタリーが頭上から飛びかかられたのは、次の瞬間であった!
堪らず転倒したヴィタリーに、それは背中からのし掛かり、バックパックをがりがりと引っ掻く。
「おまえ、ルークじゃないか! こら、何してる、降りろ、降りろったら!」
成る程、黄色地に黒の縦縞模様。
多少なりは小さいが、正しくそれは虎だった。
ライマーが何とかルークをヴィタリーの背中から降ろそうとするものの、虎はヴィタリーのバックパックを引っ掻くのを辞めようとしない。
「チャイカ殿、もしや背中の袋に、肉か何かを入れているのでは?」
入れている。
さっきの酒場で買った、干し肉がどっさりだ。
ルークの爪が、ヴィタリーのバックパックを引き裂くと、彼のポーションや幾つかのレミエラ、ロープや投網の束に混じって、干し肉の束がまろび出る。
干し肉にありついた時の、ルークの喜びようといったら!
おまけに、エルンストから分けて貰っていたマタタビまでもが一緒に入っていたから堪らない。
がつがつ、ごろにゃん。涎、だー。‥‥と、もう見てらんない有様だ。
「‥‥自分はもう少し、虎とは厳めしいモノかと思っていたのだが。これでは大きいだけの、ただの猫だな。ふむ、これはこれで愛嬌があってよい」
「まこと、お恥ずかしい限りで‥‥」
百鬼の正直な感想に、ライマーは赤面の至り。
いつのまにか増えたギャラリーが周囲で見守る中で、ルークはお腹いっぱい干し肉を平らげてご満悦である。
満足したのだろう。その後、大人しくライマーに付き従い、軽い足取りでテントの檻まで戻っていった。
●
その日の夜。
所は再び、例のサーカス広場近くの酒場の中。冒険者三名、雁首揃えての作戦会議が開かれていた。
「やはり、ユーリーは難物だな」
「小さな姿故、目撃したという人自体、殆どいないようだ」
「明日以降、罠を仕掛けるのはどうだろう。ルークにもマタタビの効果は随分あった。ユーリーにもきっと効くと思うんだが‥‥」
名物の肉料理をつつきつつ、三名は額を寄せる。
ベッキー、ルークは捕らえた迄はよかったが、問題は残る一頭。豹のユーリーであった。
何しろ、見た目は殆ど猫なのだ。大きな虎や熊とは別の意味で難物であることは、当初から冒険者達には予想されている。
議論も進み、明日以降の作戦がある程度の形を見たところで、ヴィタリーは追加の注文をする為に席を立った。
親父に昼の挨拶がてら、注文を‥‥と思ったのだが、どうにも親父が見当たらない。
(カウンターの裏にいるのか?)
なんとなくカウンターから厨房の奥を覗いてみると、勝手口の向こうで、親父が猫に餌をやっているのが見えた。そう言えば、猫が残飯を漁りに来ると、言っていたような‥‥
いや。
とゆーか、ユーリーがいた。
ヴィタリーは思わず目を擦るが、見間違いでも、安いクワスの飲み過ぎでもない。
ユーリーを刺激しないように、ヴィタリーはカウンターを越えて、勝手口の方へとゆっくり近付いていく。
「ああ、昼のお客さん! 虎は見付かったかね? 生憎、ここには猫しかいないぞ、はっはっは!」
「えーっと、親父さん、ちょっとその猫、俺も触っていいかな?」
「お、お客さんも好きだね。でも気をつけな、ちっこい割に気性の荒さは一人前だぞ」
どうやら、親父はユーリーを猫と信じて疑っていないらしい。
親父の言葉を聞きながら、ドキドキしながらユーリーに近付くヴィタリー。そんなヴィタリーを、ユーリーは露骨に警戒して唸り声を上げる。
「‥‥ほら、怖くない」
がぶ。
痛い。
差し出した指を、ユーリーに思いっきり噛まれてしまった。
涙目になりつつも、そこは我慢。
ギリギリとユーリーが顎に力を込めると、ヴィタリーの体に付けているレミエラ、そして守護の指輪が明るく輝き出す。
「おいおい、お客さん! 体がすげー光ってるが、大丈夫かい? あまり無理はせん方が‥‥」
「なぁーに、可愛いじゃないか! ほら、よしよし‥‥!」
長かった。
ヴィタリーは全身のレミエラを光り輝かせて耐え続けた。
ユーリーがようやく口を弛め、ヴィタリーの指先をぺろぺろと舐め始めたのは、それから数分も経ってからの事である。
いつの間にか厨房から覗いていたエルンストと百鬼の二人が、もぐもぐと肉料理を頬張りながら、ヴィタリーに労いの言葉を投げかける。
「えらく遅いと思ったが、流石、もう捕まえていたか」
「投げ網はいらぬようだな、チャイカ殿」
●
「ありがとうございました! こんなに早く見つけて頂けるなんて。お陰様で、無事にキエフを旅立てそうです」
「ふん、まあ手際は悪くなかったな。団の撤収に間に合ったようで何よりだ」
ライマーとパモン。
そして虎豹熊、三頭の動物達。
冒険者達は、無事にキエフを離れていくサーカス団を見送った。
お騒がせな動物達も、来年の今頃にはいっぱしの芸達者となって帰ってくる事だろう。
来年の収穫祭が、今から楽しみである。
何はともかく、めでたしめでたし。