【墓荒らし】討伐編
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■ショートシナリオ
担当:谷口舞
対応レベル:1〜3lv
難易度:難しい
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:02月09日〜02月14日
リプレイ公開日:2005年02月17日
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●オープニング
「それでは、後日改めてまいる。よろしく頼むぞ」
礼儀正しく一礼し、老年の騎士は踵を返した。
「何の依頼だったんですか?」
新人らしき受付のひとりが先輩に声をかけてきた。彼はああ、と小さく答えると、依頼のメモに視線を移しながら言葉を紡ぎはじめた。
「最近、教会の裏手にある墓が荒らされているらしいんだ。その犯人を捕まえるために騎士団が警備にあたってたんだが‥‥彼らがいる時に限って、現れないそうだ。そこで、冒険者に代わりに警備‥‥いや、討伐の協力を依頼しにきた、というわけだ」
「墓荒らしですか‥‥それはまた‥‥」
新人は、怪訝な表情で眉をひそめる。これ位はまだ初歩的な依頼だぞ、と先輩格の彼は苦笑いを浮かべた。
「討伐するにも、相手の裏調査が必要だな。一応資料はあるようだが‥‥これじゃモンスターではない、と位しか分からないぞ」
敵は複数。足跡や目撃報告から、一般より体格のよい人間だろうとされていた。武器を持っているかまでは分からないが、少なくとも掘る道具を持っているだろうから、全くの丸腰でないことは確かだ。
「これ以上被害が広がらないよう、早めに解決したい事件だな」
安らかな眠りは何人たりとて侵してはならぬものだ。険しい表情をさせながら、彼はそう呟いた。
後日。
調査の途中で、ある調査依頼と繋がりがあることに彼は気付いた。
その依頼の受付担当に話をしたところ、犯人像とよく重なる人物「ドイル・エバンス」が、対象人物だと判明した。
「確かに‥‥外見の特徴は一致しますね。でも、彼が犯人の1人だと断定するのは軽卒ではありませんか?」
まだ、決定的瞬間に遭遇したわけでもない。安易な思い込みは、危険である。
「そうだな‥‥こちらでも、もう一度敵の正体を洗ってみよう。単なる勘違い、ということもあるからな」
とは言うものの、不審な夜の行動といい、外見の特徴といい、彼が犯人の一員であると判断して間違いないだろう。
問題は共犯者だが、彼の動向を調査していけば、自然に判明すると思われる。
「しかし、依頼人には切り捨ててもいい、と言われたが‥‥同じ『人』を斬るのはためらう奴もいそうだな。まあ、犯罪者に生きる道は残されていないのかもな。俺達が言えた義理じゃないが‥‥」
誰にいうでもなく。
彼は苦笑いを浮かべながら告げた。
●リプレイ本文
●朝の勤め
「おはようございます。神父様」
庭の清掃をしていたロゼッタ・メイリー(eb0835)は、通りかかった神父に一礼した。
「おはようございます。しっかりと働いてるようですね」
満足げに神父は言う。霧がかった早朝の中に佇みながら微笑むその姿は、かすんで消える幻影のような錯覚を感じられた。
「確か、お仲間が到着するのは今日でしたね。作業服は僧侶達の古着しかありませんでしたが、良かったでしょうか?」
冒険者の方は背の高い方が多いですからねぇ、と彼は苦笑いを浮かべる。
日頃から訓練をしている冒険者達は、総じて一般人より体格が良い。ゆったりとしたローブとは言え、教会にある衣服を着ては身動きが取りづらいだろうに。と、要らぬ心配をしているようだ。
「騎士団の方々のように、警備しやすい衣服にされた方が良いのではないでしょうか」
‥‥警備しやすい、つまり常時戦闘スタイルでいろ、ということだろうか。
金属鎧をつけた人間がうろついては、確かに誰も寄りつこうとは思わないだろう。
だがそれでは、捕獲するのが目的の今回には、単なる足かせにしかならない。
「大丈夫です。どんな時でも対応出来るよう、訓練しております」
「そうですか、ロゼッタさんがそう言われるのであれば、安心ですね」
服は休憩所の机に置いておくとのこと。
自由に使っていいが、汚れたらキレイに元通りにしておくことと、持って帰るのは禁ずると固く注意された。どうやらまだまだ使い回しするようだ。
ふと、街の方をみると、霧の向こうにぼんやりと人影が見えた。
「あ。来たようです」
そう言って、ロゼッタは入り口の門へと駆けて行った。
●屋根から見えるもの
常駐している騎士団への挨拶と、警備の引き継ぎを行った冒険者達は、早速教会付近を重点に、情報収集と調査を始めた。
ゼザ・ウィンシード(ea6640)とロゼッタのペアが巡回の間、エスリン・マッカレル(ea9669)とライラ・エアリューテ(eb0865)は教会の屋根裏から周囲を調べていた。
「どう? 何か見える?」
「ふむ‥‥裏手が墓場か‥‥。街からだと、教会に隠れて見えなくなるな」
今の季節は日中を問わず曇り空が多く、自然光は期待できない。
辺りは完全に暗闇と化すだろう。
「ふーん‥‥『仕事するには好都合な位置』ってわけね。‥‥少し位派手にやっても、近所迷惑にはならなさそうね」
「程々にしておいた方がよいぞ。墓場は死者を弔い、祈りを捧げる場所だ」
「分かってるわよ。でも、一発ぐらい、思いきり派手なのをやっても平気でしょ?」
「‥‥1人のうかつな行為が、任務をしくじる要因になることを忘れるなよ」
エスリンはじろりとライラを睨みつける。
素知らぬふりをしながら、ライラはふと窓から外を見下ろした。
丁度、ゼザとロゼッタが街から戻ってくる姿が見える。そろそろ交代の時間かな、とライラは羽織っていた服の裾に付いていた埃を払い落とした。
「軽く見て回ったら、あとは仮眠しておくんだっけ?」
「ああ、万事に備えてな」
言いながら、エスリンは部屋に置かれていた毛布を手に取った。
それぞれ自前で防寒着を用意しておいたが、教会の好意で仮眠用に貸してもらえることとなったのだ。
「久しぶりに暖かく眠れるな」
「乾燥と寝不足は女の敵だもの、眠れる時にたっぷり寝ておきましょ」
●闇取引
朝方の仮眠から目覚めたセレス・ハイゼンベルク(ea5884)は、巡回に出ている仲間達と交代しようと、裏庭に向かっていた。
ふと、人の話し声に気付き、セレスは足を止める。
扉を挟んだ向こう側で、神父が大柄の男と話をしていた。
「‥‥あれは‥‥」
相手の風貌にセレスは顔を険しくさせる。
神父と話していた男は、風貌からしてドイルに違いない。
ドイルは何やらこそこそと神父と話をした後、懐に入れていた袋を手渡し、辺りを気にしながら外へと走り去っていった。
丁度、彼と話をしたいと思っていたセレスは、すかさずその後を追った。
教会の角を曲がったのを確認し、追いかけようとした瞬間、セレスは鈴木久遠(ea9267)と鉢合わせした。
「っと‥‥! そんなに慌ててどうしたんだ?」
「今、そっちに誰かいなかったか?」
「いや‥‥? 誰もいないぜ。探し人か?」
「‥‥あいつ、意外に足が速いようだな」
セレスは悔しそうに舌打ちをする。追跡に関しては、相手方の方が一枚上手だったようだ。
神父に駆け寄ってドイルと話がしたいと申し出ても、普段、彼が何をしているのか特に聞いているわけではないため、伝言位しか出来ないと返されてしまった。
「ところで、先程‥‥彼と何か話をしていたようですが‥‥」
「えっ、ええ。ちょ、ちょっと彼にお使いを頼んでおいたのですよ」
神父の表情の変化をセレスは見逃さなかった。
妙に空々しくとぼける彼に、礼儀正しく挨拶を返し、振り返りざまちらりと握られている革袋に視線を走らせた。
――大きさからして、銀貨数枚ってところか‥‥
庶民には結構な額である。目的は恐らく、今夜の仕事に関してなのだろう。
先に休憩所へ戻ってきていた仲間達に、セレスは小さく頷きながら言った。
「今夜来るぜ。それと‥‥俺達の読みは当たってたようだ」
「やれやれ、周りは敵ばかりってことかよ」
大きく息を吐き出す久遠。
しかし、本当に目的は単なる金目当てなのだろうか。教会の手が回っているのなら、埋葬時に処理することも可能なはずだ。
「憶測の域を超えぬものはとりあえず考えずにおこう。それより‥‥ロゼッタ殿が気を悪くなさらなければよいが‥‥」
同じように神に仕える者が悪事に手を染めている。彼女の心境はいかほどのものだろうか。
「そういえば、2人がそろそろ戻って来る頃か。次の担当はライラとエスリンだったかな」
「ええ。門限も近いし、そんなに遠出はするつもりはないわ」
早くも外には夕闇が広がっていた。少しばかり日没は遅くなってきているが、まだまだ、昼の時間は短かい。日中に出来る事は自然と限られてしまう。
「騎士団の連中にも注意しておこう。手が回っていないとは言い難いからな」
そう言いながら、エスリンは机に置いてあったランプの火を自らのランタンに移した。
じゅう、と焦げた匂いが部屋中に広がった。
●闇に紛れた敵を追え!
街が寝静まる深夜。
薄い霧が再び辺りを覆い隠し始めた頃だ。
何か動くものに気付き、ゼザはその歩みを止めた。
「ロゼッタ。皆を呼んでくれ‥‥」
こくりと頷き、ロゼッタは神に捧げる祈りを始めた。
優しい白い輝きが、淡く彼女を覆いつつむ。ロゼッタの手がゼザに触れると、それはすぐに消えうせたが、注意深く警戒している冒険者なら、輝きに気付くだろう。
「気をつけて‥‥」
すぐに仲間が来るはずだが、油断は禁物だ。
さくさくと土を掘る音が聞こえてくる。できる限り慎重に、ゼザは彼らとの間を狭めていった。
と。土を掘る音が突如止んだ。
「ちっ、ばれたか!」
強く地を蹴り、ゼザは駆け出した。ちらりと右手に視線をやると、こちらに向かってくる人の気配を確認出来た。
仲間であることを信じながら、懐に携帯していた短刀を握りしめる。
敵に迫りよろうとしたその瞬間、ざわりと背筋に走る物を感じ、冒険者達はその足を止めた。
辺りの空気が張りつめられる。
一瞬の間を置いて、彼らの眼前が白い輝きに包まれた。光と同時に、耳をつんざく轟音がその場にいた全員に襲いかかる。
「ぐあぁああっ!」
焼ける肌の匂いが辺りに漂う。全身に打ち付けられた衝撃と痛みに耐えきれず、男はその場に倒れ込んだ。
「おや、直撃したみたいね」
「ライラ殿! 殺すつもりか!」
「あの程度なら、一撃で死にはしないわよ。多分」
ライラはけろりとした口調で言う。
頭を抱えながらも、エスリンは牽制のために威嚇射撃を放つ。
畳みかけるようにゼザ、久遠、セレスが三方から彼らに襲いかかった。
戦士達から繰り出される攻撃をかわし切れず、男達は次々と地に倒れていった。
騒ぎを駆けつけたのか、騎士団達が墓場に駆け寄ってきた。
揺れるランタンの光と、こすれ合い鳴り響く鎧の音に、久遠は失笑する。
「やれやれ、もう少し静かに出てこれないもんかな」
●仕事を終えて
「よくやった。君達の働きは団長も喜ぶことだろう。しかし、君達は運が良かったな‥‥まさか雷が落ちるとは、我々も予測しなかったよ。きっと、大いなる父の裁きが、彼らの頭上に下されたのだろうな‥‥」
感慨深く語る騎士の話を聞きながら、冒険者達はちらりとライラの方を見やる。
本人は悪びた様子も無く、騎士に笑顔を向けていた。
「彼らの身柄は我々に任せてもらう。君達に用は無い、荷物をまとめて帰りなさい」
「ですが、まだ完全に捕らえたわけでは‥‥」
「なに、拘束した奴らを絞り上げれば仲間の居所を白状するさ」
自信たっぷりに騎士は言う。
少々釈然としないところもあったが、自分達の仕事はあくまでも犯人の捕獲並びに討伐。事件の全容を知る必要はないのだ。
「そういえばロゼッタがいないわよ」
「ああ、彼女なら墓の修復の手伝いに行ってるぜ。やっぱ‥‥気にしてたみたいだよ」
「そう‥‥」
空は昨日と変わらず、どんよりとした雲が一面覆っていた。
「今夜辺り一雨来そうだな」
空を見上げながら、ぽつりとエスリンが言った。