【ブラしふ団の挑戦!】フンドシを探せ!
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■ショートシナリオ
担当:谷口舞
対応レベル:2〜6lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 63 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月29日〜11月05日
リプレイ公開日:2005年11月07日
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●オープニング
それは、ハロウィンも近いある日、酒場で突如産声を上げた。
「我々は、一年間待ったのだ!」
「いまこそ、我らシフールの力を、奴らに思い知らせてやるのダ!」
何人かのシフールが集まって、そんな声を上げている。皆、腕に黒い腕章を付けていて、それには『BS』の文字が躍っている。
「とりあえず、どうすれば困ると思うのだ?」
「もうすぐハロゥインだから、衣装がなくなったら困ると思う」
「よし、それでいこう」
なにやら、悪巧みの相談をしているようだ。と、そこへギルドの受付嬢が、お昼を食べに来る。
「あのー、ここ座って良いですか?」
「うん、いいよー」
「どうぞどうぞ」
悪巧みをしている割には、ずいぶんフレンドリィである。にこやかにそう答えて、席を譲るシフール達。
「では、決行は数日後に!」
「おー!!」
盛り上がった彼らが、拳を突き上げたその時だった。
「わうっ」
「わぁぁぁ。お前はいいんだってば! きゃあああ」
一緒にご飯を食べていた、ペットのコリー犬が、『僕も仲間に入れてー☆』とばかりに吠え、辺りは大混乱。
こうして、なんだかとっても微笑ましい悪の秘密グループが発足するのだった。
秘密グループが結成された噂は、キャメロットのシフールの耳にも入っていた。
「よぉし、兄弟達が果敢に頑張る姿を唯見ているだけでよいのか!? 答えは否!」
「僕達の力も見せつけてやらないとね!」
だが、見せつけるといっても何が出来るだろう?
自分達が出来そうなことをあれこれ考えてみる‥‥が、そこは所詮お子様集団。つまるところ何をしていいか良く分からない。
「そうだ! 走れば良いんだ! 盗んだフンドシを旗にして広場を疾走するんだよ!」
「フンドシなんて高級品、どこから盗んでくるんだよぉ」
「ちっちっち。甘いなアケチ君。冒険者街の一角にあるフンドーシ倉庫を知らないなぁ?」
「フンドーシ倉庫?」
「そう、ジャパンとの取引をしてる商人のおっさんの趣味が満載した夢のような場所さ。そこにはありとあらゆるフンドーシが隠されているって噂だ!」
フンドシコレクターが世に居るのは彼らも知る所だが、まさかコレクション小屋が存在するとは‥‥
「厳しい監視を華麗にすり抜け、目的物を軽やかに盗み取る! くぅ〜‥‥格好良い」
「えーと、それは誰が取ってくるのー?」
「‥‥」
「‥‥」
シフール達はお互いに「お前がいけ」「いや、お前だよ」と視線を交わし合う。
硬直した時間が流れる中、伝言係の目印でもある大きな鞄を背負ったシフールが手をあげた。
「あのー。オイラなら冒険者ギルドに顔がきくから、頼んでこようか?」
「あ、いいね。それ名案」
「報酬はリーダー持ちってことで」
「えっ!? 皆で分けるんじゃないの?」
言われた額に、背中に冷たいものを感じつつ、そっと革袋を差し出す。
「むー。ちょっと少ないかもー‥‥ま、いっか。それじゃ、頼んでくるねー」
依頼内容を見て、ギルド員は頭を抱えた。
彼の目の前には子犬のようにキラキラと瞳を輝かせてお願いポーズを取るシフールが待機している。
「えー‥‥と‥‥」
その時。目的地の位置を確認していた彼は、はたりと手をとめた。
「ここは‥‥」
先日、別件で報告があった密輸集団の取引先のひとつだ。残念ながらその件では確かな証拠が見つからず、騎士団は家主である商人を捕まえることが出来なかったのだ。
シフール達には悪いが、利用させてもらうのも手か‥‥
どんなものでも良い。件の場所に、異国の品が見つかれば良いのだから。
大量にフンドシが見つかればシフール達も喜ぶだろうし、こちらとしても確かな証拠を騎士団に提示できる。
「分かりました。何人か紹介しましょう」
不敵な笑みをちらつかせ、ギルド員はそう告げた。
●リプレイ本文
●目的に向けて調査
「えっ? それじゃあ、本当の目的は密輸の証拠集めなんですか?」
声高らかにユーリユーラス・リグリット(ea3071)が言った。
その声の大きさに、腕に腕章を付けたシフールがちらりとユーリユーラスの方をみやる。
雷鱗麒(ea6115)があわてての口を塞ぎ、不審な眼差しで見てくるシフールに愛想笑いを返した。
「む、むずかしーことは俺も良くわからないけど、ギルドからそう聞いたんだよ。でも、こいつはブラしふ団には秘密だぞ。依頼主を怒らせたらどうなるか位は分かるだろ?」
「‥‥報酬が出なくなりますね‥‥」
鱗麒は大きく頷き、その通りだとこたえる。
「俺達の任務は蔵の中からフンドシを探し出してくることだ。そいつに全力を尽くして頑張るのがお仕事なんだ。というわけで早速調査に行こうぜ!」
思い立ったら即行動と言わんばかりに鱗麒は飛び立とうとした。
が、背中から首根っこを捕まれ、窓枠から寸でのところで引き戻された。
「はーいはい、すとーっぷ。作戦会議はまだ終わってないわよ。独りで勝手な行動をとるのは無謀なだけでなく、皆に迷惑がかかるんだから」
鱗麒の背中を摘み上げながら、フィーネイア・ダナール(eb2509)はじろりと睨みつけた。
逃げ出そうと思えば、容易に振り払うことは出来たが、とりあえず一言文句だけは言っておこうと、鱗麒はフィーネイアの顔を見上げて大声で告げる。
「勝手な行動とは失礼だなー。昼の明るいうちに見張りの位置と建物を調べてこようっていう、立派な目的があって行くんだぞっ」
「それなら私も同行致しましょう。一緒に行った方がもっと何か見つけやすいかもしれませんからね」
モニカ・ベイリー(ea6917)がふわりとフィーネイアの肩に舞い降りた。
モニカが一緒ならば‥‥とフィーネイアは掴んでいた手を緩めた。
ようやく開放された鱗麒に、ユーリユーラスが黒い布きれ‥‥もとい、ブラしふ団の腕章を差し出した。
「はいっ! 折角だからキミの分も作ってきましたの」
「‥‥ありがと‥‥」
「布の端にある紐を一度ぐるりと回して、内側で結んであげるとぶらぶらしないですよ」
そう言いながら、そそくさと鱗麒の右腕に縛りつけ始めた。
楽しそうに結ぶユーリユーラスの腕にもブラしふ団の腕章がつけられている。
よく見ると、ロゴの下の方に何やら小さな刺繍が縫い込まれているようだ。が、腕章自体、作りはいい加減なものだし、刺繍も慣れない手作業だっただめか、判読は不可能の領域に近い。
いくら手先が器用とはいえ、所詮は手習いのない者の腕前では出来栄えは期待しない方がよいというものだ。
何だかすぐに壊れそうだよなー‥‥と心配しつつも、鱗麒は取り合えず礼を述べる。
「‥‥帰ってくるまで保ちますかね?」
「‥‥暴れなければ、大丈夫だろ」
これで偵察のついでに探検は出来なくなったなぁ。そんなことを思う鱗麒だった。
彼らの会話を影に隠れてこっそりとクリスタル・ヤヴァ(ea0017)が聞いていた。
腕につけられた黒い腕章があるのを確認し、内に怒りを込めた口調で呟いた。
「ブラしふ団‥‥見れば見るほどあやしー集団ね‥‥! よぉし、正統派しふしふ団の名にかけて、こらしめてあげるんだからっ」
飛び立つ鱗麒とモニカの行き先を確認し、クリスタルもその後を追った。
●しふしふ団、ブラしふ団を裁く!?
霧の夜の街をシフールと少女が駆け抜けていく。
今日はいつも以上に霧が濃く、身を隠すには最適である。少し肌寒かったが、その辺は気合いと厚着でカバーだ。
「昼間見に行った限りだと、入り口に男が2人いるだけだったな。でも部屋の中にも罠か何かあるみたいだ、そんなこと確か言ってた‥‥ような気がする」
「おっけー。それじゃ、最初の作戦通りに行くわよ。鱗麒君、準備はいい?」
「適当に掛け声かければいいんだろ? いつでも準備万端だぜ!」
びしりとポーズをつける鱗麒。
目的地である小屋の手前にある曲がり角に仲間達を待機させ、フィーネイアは出来る限りこっそりと近づいていった。
「‥‥何?」
小屋の前に、男が2人寝転がっている。いや‥‥意識を失っているといった方が正しいだろうか。
争った形跡は特に見当たらないことから、背後もしくは見えない場所から攻撃をくらったのだろう。
「どうしたんだ?」
「わっ、ちょっと‥‥! 向こうで待っててっていったでしょ?」
いつの間にか来ていたブラしふ団達が、ぺちぺちと気絶している男達を突いている。
静かにしなさいと彼らを摘み上げようとしたその時、一同の頭上から高らかな声が聞こえてきた。
「そこまでよ、ブラしふ団! 残念だけど、探し物はここにはないわ!」
闇夜にぼんやりと佇む影。
仁王立ちのポーズをとり一同を見下ろしているのはクリスタルであった。
もう少し霧が濃ければ見逃したであろうその姿を、何とか目をこらして見上げる一同の姿に、クリスタルは驚いているものだと勘違いをして、満足げな笑みを浮かべた。
「目的は済んだでしょ。さあ、とっととお家にお帰りなさい!」
「おじゃましまーす」
見張りがいなくなったことで、ブラしふ団は正々堂々と正面から中に入っていった。
扉には鍵がかけてあったため扉の下にあるすき間へと潜り込んでいく。
「あっ、ちょっと! 人の話を聞きなさいってばー!」
「クリスタルちゃん、ちょっといいかしら」
手招きをするフィーネイアの元へ、クリスタルは何の用だろうと小首を傾げて近づいていく。
フィーネイアは傍にいる者達に聞こえないよう、声をひそめて囁いた。
「実はこの依頼ね‥‥前に取り逃がしたわるーい商人を捕まえるための証拠探しも兼ねているのよ」
「‥‥そうだっけ?」
「うん。だから中に入って調査をしないことには始まらないのよ」
「何、こそこそ話してるの?」
右腕にブラしふ団の腕章をつけたユーリユーラスがひょいと2人の間に割って入った。
「うん、この転がってる男達をどうしようかねーって話してたのよ」
「あー。どうしようかこれ。そろそろ起きてきちゃうだろうしね‥‥」
そう話していた矢先、男の1人がふらりと身を起こした。
「‥‥はっ、いけない! 装着っ!」
ユーリユーラスは素早く背に持っていた白い布を頭から被った。
「ん‥‥なんだったんだ‥‥って、うわぁあああっ!」
突如目の前に現れた白い影に、男は思わず腰を抜かしてしまう。
よろよろと飛びながらも近づいてくるシーツの固まりを彼はただただ見つめるしか出来ないでいる。
「とりっく、あ、とりーとー‥‥」
「‥‥へっ‥‥?」
「いたずらされるのが怖ければ、お菓子をわたしなさーい」
「はいぃいいっ」
彼は腰の袋にこっそりしまい込んでいた食べ物を袋ごとシーツに押し付けた。
そのまま、一目散に逃げ出す彼の背を少女達は笑いながら見つめていた。
●発掘
「どうですか、何か見つけましたか?」
「うーん、何だか変なガラクタばかりで、肝心のフンドシなんて影すら無いぜ」
こっそり小屋の中へ潜入したシフール達は部屋の中に散乱している箱をひたすら覗き込んでいた。
しばらく捜査を続けていると、ふと鱗麒が妙な叫び声をあげた。
「うひゃぁあっ、いま何かぐにゃってしたぞー!?」
「どうしました?」
「この壺の中、何か変な生き物がいるぜ!」
中を覗いて見ると、状のゲル状の物体が蠢いているのが見えた。
「‥‥これは見なかったことにしましょう」
モニカはぱこりと壺に蓋をする。不用意に触らなければ大丈夫だ、きっと。
だが、それは甘かった。蠢く生き物はじゅるじゅると壺からはい出し、一同に襲いかかってきたのだ!
「せ、聖なる母よ! 卑しき者に光の裁きを!」
モニカはとっさに十字架のペンダントを生き物に向けて掲げた。淡く白い輝きが解き放たれる。
「とどめだー!」
鱗麒がえいやっと持っていた壺をたたき付けた。カシャンという衝撃と共に、生き物はじゅるりとその場に広がり動きを見せなくなった。
「‥‥うげ‥‥変な臭い」
「い、いそいで目的物を見つけて出ましょう‥‥」
「うん‥‥」
あれこれ探しているうちに、モニカは部屋の一番隅に細長い木箱が隠されているのに気がついた。
‥‥もしかして‥‥
皆に手伝ってもらい、蓋を開けると‥‥その中には真紅の布地の中に虎の絵が描かれている布が入れられていた。
肌触りがよい艶やかな布地とに丈夫な紐が結びつかれている。ジャパンの知識が乏しい面々ではあったが、これが彼の有名なフンドシであるだろうと推測した。
「ギルドが言ってた密輸品ってこいつじゃないのか?」
「‥‥うーん。こんな怪しい代物、輸入されるとは思えませんしねぇ‥‥」
「よし、じゃあこれがきっとそのギルドに隠していた怪しいモノだな!」
早速連絡だ、と一同はふんどしの入った木箱を協力して運びあげ、速やかに部屋を抜け出していった。
●物的証拠
「じゃじゃーん! そしてこれがそのフンドシ様だ!」
シフールの少年は仲間達に見せびらかすよう、赤い布地を眼前に広げた。
意外にも反応が薄いため、不満顔で文句を告げる。
「おいおい、折角探してきてもらったのにテンション低いぞー」
「だって、それ‥‥エチゴヤのおっさんが描かれてるよ‥‥?」
「ん?」
改めて布地を見直すと、確かに違う。フンドシがエチゴヤ店主の似顔絵付きの手ぬぐいにすり替わっていた。
「‥‥なんで?!」
一方、冒険者ギルド内。
新人君が先輩の机の上に高そうな木箱が置かれているのを見つけ、中身は何かと問いかけた。
「ん? この間の闇取引の物的証拠だよ」
「へー、みつかったんですか」
「まあな。それより、俺はちょっとこれから用事があるんだ。今日はもう戻らないから、後は頼んだよ」
何処へ行くのか問いかける新人の声を無視して、帰り支度を整える。
ブラしふ団員が文句を言いに来たのは、それから半刻程後のことであった。