天使様が僕に勇気をくれた(あぁそうかい)

■ショートシナリオ


担当:龍河流

対応レベル:フリーlv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 39 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:03月24日〜03月27日

リプレイ公開日:2007年04月03日

●オープニング

 ここ最近、ロシア王国内ではきな臭い事柄が続いている。
 例えば。

 北の女狐がいつまでもキエフ近くに留まっているとか。
 血色が悪い親父が冒険者を雇って、つまらぬ陰謀劇を演じてみせたとか。
 キエフ内で貴族の館が襲われる事件が幾つかあって、それぞれの現場でものの見事に別の公国の紋章が出てきたとか。
 それを耳にした自称重鎮が、国王の耳にあれこれ吹き込み始めたとか。

 そういう事柄で、一部貴族は日々身の振り方で頭が痛いところだというのに、その中の一つのアルドスキー家では、別の問題も持ち上がっていた。
 仕方がないので、手っ取り早く一時的だが厄介払いする。
「ユーリー、おまえに休暇をやるから、冒険者ギルドで遊び相手を見つけたらどうだ」
 アルドスキー家の代官見習いユーリーは、ここ二年ほど一度も正式な休みを貰っていないので、言われるままに出掛けていった。
 よって、今回の依頼が始まる。


「うんぎゃらぴれぽぽほげるぴれーっ」
 なんだかよく分からない悲鳴に、受付にいたハーフエルフが身軽に飛び退いた。両手に大事そうに抱えているのは、
「それを持ち込むなーっ!」
 通称『ノモロイの悪魔』。
 ノモロイ村の善良な人々が、どういう経緯でか作り始めた焼き物で、その姿は見るからに気持ちが悪く、心底寒くするような、目に嬉しくないものになっている。だが世の中には物好きがいて、これを『ノモロイの悪魔』と呼んで、珍重しているらしい。多分魔よけの置物代わりだろう。
 しかし、作っている人々はこれを『なんとも心やすらぐ、素晴らしい天使の姿を模したもの』と言ってはばからず、現在までに一人だけこの考えに賛同している謎の人物がいた。
 それが、アルドスキー家の代官見習い、ユーリーである。
 先日までの彼は、極端に人見知りをし、他人との会話が困難で、代官見習いとして身を立てるのは困難ではないかと思われるような性格と態度をしていた。服装もいつだって厚手のマントに、フードをすっぽりと被り、背筋を丸めて歩いていたが、今は違う。さすがに厚手のマントは必需品ながら、しっかりと顔を上げて、にこにこと受付係に微笑みかけているのだ。
 受付係は、半ば泣いているような、怒っているような、なんとも言い難い面妖な顔付きになっているのだが。この受付係は、『ノモロイの悪魔』が心底嫌いである。
「ああ、天使様を見たら、お仕事を忘れて教会に行きたくなりますよね」
 確かに行きたくなるかもしれない。身の不運を払ってくださいとお祈りをしに。
「僕は天使様に勇気を貰ったんです」
 大抵の人は、寒気を貰う。
「そしてこの間、見てしまいました。冒険者の方々が、小さな人形を作って、寸劇を演じている姿を」
 冒険者の一部に、それは『ちま』と呼ばれている。
「僕も‥‥あれに混ざってみたいんです。お人形はほら、ここにありますから」
 出てきたのは、携帯用に軽量小型化された『悪魔』。聖夜祭仕様で赤く塗られている姿が、村人いわく『素晴らしく可愛らしい』だが、それ以外の人いわく『血まみれみたいで怖い』と一部で大評判だったいわくつきの品物。
 そんなものを持って、ちま人形集団に混ざりたいとは言語道断な振る舞いだが‥‥ひきつけを起こしそうで奥に連れ込まれた同僚に代わって話を聞いていた女性は思った。
 まともな人形を見たら、この『悪魔』を『天使』と呼ぶような所業は改まるんではないかしら。
 ユーリーの顔立ちがかなり女性的ながら、決して悪くはなかったことと、依頼が受け付けられたのとはけして無関係ではないだろう。

 ノモロイの悪魔とちま人形、この合同技を乗り越えられる冒険者を募集中。

●今回の参加者

 ea8539 セフィナ・プランティエ(27歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea9740 イリーナ・リピンスキー(29歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb0744 カグラ・シンヨウ(23歳・♀・クレリック・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb3308 レイズ・ニヴァルージュ(16歳・♂・クレリック・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb5286 ケリー・レッドフォレスト(32歳・♂・ウィザード・シフール・イギリス王国)
 eb5612 キリル・ファミーリヤ(32歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5617 レドゥーク・ライヴェン(25歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5669 アナスタシア・オリヴァーレス(39歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)

●サポート参加者

以心 伝助(ea4744)/ カーシャ・ライヴェン(eb5662)/ 黒之森 烏丸(eb7196

●リプレイ本文

 この依頼、始まる前に色々とあった。
 レドゥーク・ライヴェン(eb5617)は必死に止める妻を泣く泣く置いて、出掛けて来たらしい。それは妻だって止めたくなるだろう。彼の顔は真っ青だ。
 ケリー・レッドフォレスト(eb5286)は、教会で懺悔してきたらしい。今も視線が宙を泳いでいる。
 似たような状態なのがセフィナ・プランティエ(ea8539)で、彼女は先程『これはお墓に埋めるものだったような気が‥‥』と呟いていた。
 こちらも視線がうろうろしているカグラ・シンヨウ(eb0744)は、白クレリック故に思ったことを表にはしないが、先の三人と微妙に通じていた。彼女の手助けについてきた伝助と烏丸の二人もだんまり。
 キリル・ファミーリヤ(eb5612)も初見の『それ』に対して、色々と思ったようだが、やはり賢明に沈黙を守っていた。もはや何も言いたくないといった風情にも見える。
「よって、これらは一定の能力、容貌を期待して作られたものではない。一見グロテスクだが、それも魅力‥‥かもしれない」
 以前の依頼で『ノモロイ販売委員長』という名誉役職を村から贈られたイリーナ・リピンスキー(ea9740)が立場上か、なにやら言っていたのだが、今ひとつ歯切れが悪い。
 なのに。
「そうですね、多分味があるのだと思います。僕にはまだよく呑み込めませんが」
「あら、変わっているけど、案外可愛いわよ。ね?」
「はい! 可愛らしいし、神々しいし、素敵だし、本当に素晴らしいです!」
 レイズ・ニヴァルージュ(eb3308)とアナスタシア・オリヴァーレス(eb5669)とユーリーの三人は、『ノロモイの天使』を前に、歓談していた。周囲の人々からしたら、そこだけが異世界のようだ。
 味があるのか? 案外可愛いのか? ゲルマン語の正しい意味を、この三人はちゃんと理解しているのだろうか?
 ちなみにレイズはノルマン、アンナとユーリーはロシアの出身で、ゲルマン語が母国語だ。多分正しい意味は理解しているだろう。
 感性が、明らかにずれているだけだ。

 ユーリーは当初貸間を用意しておくと言っていたが、実際は小さいながら借家を借り受けていた。いささか古いし、台所と食堂、居間を兼ねた一室にもう一部屋あるだけだが、五日間借りても掃除をして返せば銀貨二枚の破格のお値段だったらしい。当人はほくほくしているが。
「掃除のし甲斐があるかな」
「困ったね、僕、ちまを作りたいけど」
 カグラとケリーが言う通り、室内はうっすらと埃が積もっている。持ち主が掃除がするのが嫌いなのか、手が回らないのか、体よく押し付けられた風情だ。
「埃を払うくらいなら出来ますから、皆さんはどうぞ作業してください」
 とりあえずはすでにちま好事家として分身を所有しているキリルと手伝いの二人が、掃除を受け持ってくれることになった。実際はセフィナやイリーナなどが我慢できずにうずうずしていたのだが、彼女達には重要な任務がある。
 そう。ユーリーの代わりに『ちまノロモイの天使』その他諸々を作成しなくてはならないのだ。セフィナの場合、助けを要する初心者達にも目を配ってやらねばならない。
「本来はちまを一日掛けて作って、その過程を楽しむものですが‥‥」
 『ノモロイの悪魔』は壊れたら大変だからと、ユーリーに贈り物とする予定の『ノロモイちま』を作っているセフィナが呟くが、当のユーリーは聞いていない。彼は『天使様がいますから』とちまを作るつもりがないのだ。もとより依頼する時からそう言っていた。時々皆が作業するのを眺めて、自分の『天使様』をなでなでしている。
「‥‥‥‥っ」
 その様子に声もなく、溜息まみれのレッドは、実はかの『悪魔』と浅からぬ因縁がある。ユーリーもちゃんと知っていたが、聖夜祭使用の『赤い悪魔』は彼の発案だ。ユーリーはいたく感激したようで、『僕も赤が好きになりました』とレッドに訴えていたが‥‥『ほら、可愛らしい』と『悪魔』を突きつけられた当人は立ったまま意識が遠くなりかけたらしい。まだ衝撃から完璧に立ち直れず、ちま作成に加われないでいた。
 イリーナも、ユーリーに『悪魔』を贈った事があるのだが、伝言を頼んだ村人が要らぬ事も大量に加えて伝えていたのを確かめてしまい、針を持つ手が震えている。
 そんなイリーナと、セフィナが『ちま天使様』と『悪魔』に着せる可愛い上着を用意している間に、アンナとケリー、カグラにレイズはちくちくと自分の分身を縫っている。ケリーも懸命に頑張っている。
 ちくちくちく。ぶすっ。
「猫耳がうまくいかないっ。これじゃ花輪が作れないかも」
 ちくちくちく。うんしょ。
「うーん、結構大きいから作るの大変かも?」
 ちくちくちく。ぎゅむ。
「こうやって自分で作ってみると、余計に愛着が湧くのかな」
 ちくちくちく。にぱっ。
「僕、男だからこういうのは似合わないかなと思いましたけど、そんなことないですね」
 ちくちくちくちくちくちく。ぽんぽんぽん。
「あく‥‥天使様が三体出来ました。これで足りるようなら、他のものを作りますが」
 ちくちくちくちくちくちく。ばさり。
「マントはこれ、服は被る形しか無理だ。背景なども必要なのか?」
 ざかざかざか。ぽいぽい。
「とりあえず埃は払って、次は拭いたほうがいいのでしょうかね」
 ぼーーーーーーー。
「‥‥オーラエリベイションがありましたね」
 ちま作成絶好調。一部を除く。
 ユーリーはこの間、皆のペットの『あれ食べられる』と『あれに喰われる』と本能に根ざした緊迫状態を打破すべく、非常に無駄な動きを繰り返していた。狐と兎、ドラゴンと犬をそれぞれ同じ方向に追いやっても、事態は解決しない。猫はとっくに外。
 ユーリー、この間も『悪魔』を複数抱えていた。ペット達も逃げ惑う理由になったかもしれない。
 それでもなんとか必要なちまと道具が揃ったので、続きは明日。

 始まる前に、『ちまノロモイ』役を担当するレッドとイリーナが、ユーリーほどでなくとも特異な嗜好を披露したレイズとアンナ以外の四人にものすごい同情の視線で見詰められていた。ユーリーに、『この二体がとても可愛らしいんです』と目の前に突き出された二人は、しばし動きが止まっている。
 イリーナとレッドがほぐれたところで、ちまが活動開始だ。

 そこは変わったお花畑。上を見上げると天井があったりしますが、気にしてはいけません。足元はちゃんと緑の草原です。時々しわが寄っていて、草原のはずがまっ平らなのは目の錯覚。
 ほら、ちまたちが楽しそうにお花とたわむれているではありませんか。
「すみませーん、地面が絡まってほどけないんですぅ」
 れいず君は足がもつれて、地面のお花の中に埋もれています。まるで泳いでいるようです。
「あらま、この布、花柄は綺麗だけど厚地だから解きにくいわね」
 あんなさんがなにやら言っていますが、それは謎の言葉。ちまには聞こえても分かりません。
「はいはい、持ち上げるよー。暴れないでねー」
 けりー君がれいず君を持ち上げて、救出しました。やれやれ、これで一安心。
「歩き方はこうです。そう上手ですね」
「なるほど。気をつけて歩かないと。何が起きるか分からないしね」
 せふぃなさんにかぐらさんが上手なちま歩きの仕方を習っています。れいず君とあんなさんも一緒に練習です。けりー君は飛べばいいので、練習はちょっとだけ。
 すると、行く手を偵察していたきりる君が言いました。声が緊迫しています。
「向こうから、何かがやってきています」
 一体何がやってくるのでしょう。みんな、どきどきしながら『それ』を待ち構え‥‥
「こんにちわー」
「「「「「「ぎゃーっ」」」」」」
 草原の向こうから来るはずが、足元からぴょこんと飛び出したのは悪魔のような巨大な生き物。いえ、生き物なのか分かりません。なんだかかぐらさんのお友達『はにーくん』のお仲間のようにも見えます。顔が怖いけど、姿も気持ちが悪いけど。
 逃げ惑うちまたち。草原から飛び出して逃げるのは、お約束違反です。はい、頑張って戻りましょう。強いちま仲間の陰に隠れるのもどうかな。
「驚かせてしまってすみません。ノロモイと申します」
 怖い怖い大きなものは、お話しする言葉は丁寧です。自分がどこから来たのか、一生懸命お話してくれます。
 悪い巨大謎生き物ではないみたいだけど、やっぱり怖いのでちまたちは逃げ回ります。するとノロモイ君も追いかけてくるのです。そうっと、そうっと動きながら。
「あ、あれはもしかして、お花を踏まないようにしているのでは?」
「そうかもしれません」
 冒険暦が豊富なちまのせふぃなさんときりる君が、気付きました。大きいノロモイ君はお花畑を乱さないようにしているようです。
「でも、あんなに大きかったら気をつけても花が潰れるのでは?」
「僕みたいに飛べないしねー」
「敵だったら大変よ。私の雷も効果があるかどうか」
 ちまたち、相談中。きりる君とあんなさんは武器や魔法の準備もしているのですが、ノロモイ君はみんなのお話が終わるのを待っています。姿は怖いけど、ほんとはそんなに怖くないかも?
「おんなじくらいの大きさになったら、お話しやすいのですけど」
 れいず君があんまり大きなノロモイ君を見上げて、困っています。すると。
「大丈夫です。小さい姿もありますからっ」
 ノロモイ君、さあっと白いものに包まれて、次に現れたときには小さいちまのろもい君になっていました。しかも三体もいます。
「はにーくんに似てる?」
 ちょっとだけ似てます。小さくなったらふかふかになって、さっきの怖さが嘘のよう。
「これでいかがでしょう?」
「私達も仲間に入れてもらえますか?」
「服の色も変えてみたのだが」
 赤と青と緑のマントを羽織ったちまのろもい君たちは、仲良く首を傾げています。よく見ると、背中に羽まであるではありませんか。それも白くてふわふわの羽。
「もしかして‥‥天使様?」
「「「「ええっ、天使様?」」」」
「そうだよ、天使様だね!」
 れいず君がどきどきしながら、十字架片手に質問すると、他のちまたちがびっくり仰天。
 一部、声に納得したくない気持ちがこもっていたとしても、それは驚きのあまりの一時的なものなのです。だって、背中に白い羽根があったら、それはもう天使様以外にどなたがいるというのでしょうか。
「あくま‥‥」
 心にもないことは、言ってはいけません。ちまのもろいのあか君が、なあにって近付いてきてしまいます。あお君とみどり君は、困ったようにゆらゆらしています。
「天使様でもちま仲間です。一緒に楽しく遊びましょう。僕の仲間のマーチを紹介しま」
 ふみっ。
「あぁ、きりるさんがっ」
 きりる君、仲間の巨大兎マーチに踏まれてしまいました。不幸な事故発生。
「僕のことはいいから、早く逃げて」
 他のちまたちまで踏まれてしまっては大変です。きりる君がマーチの前足の下から逃げてと言うのですが‥‥そんなことが出来ましょうか。いいえ出来ません。
 だって、ちま仲間ですから!
「僕が気をそらしている間に、キミらできりるを助けてあげて」
 けりー君が素早くマーチの顔の前に飛び上がりました。でも、その時に今度はけりー君を襲う影が!
「アッピウスー、駄目だよーっ!」
『だよー』
 あんなさんのお友達、アッピウスがけりー君に抱きつきました。けりー君、苦しい。きりる君も踏まれたままです。
「プリュイ、いけません。そこまでっ」
 なんということでしょう。せふぃなさんのお友達の巨大猫プリュイも、草原の端から虎視眈々とちまたちを狙っているではありませんか。舌なめずりなんかしています。ちまたちはきっと美味しくないはずなのですが、もしやこれは、絶体絶命?
 巨大兎、巨大フェアリー、巨大猫。緑の草原とお花畑は、いつの間にか巨大生物の楽園になってしまったのでしょうか。危うし、ちま。
「お話すれば、きっと判ってくれると思います。アッピウス君は」
「いいえ、こんなときには天使様にお願いするのが一番よ。多分ね」
 十字架を握り締めたれいず君とかぐらさんが、はにーくんの後ろで相談しています。他のちまたちは踏まれたり、抱きつかれたり、お友達の暴走を止めたりで大忙し。
「「天使様、お願いっ」」
「じゃあ、もう一回大きいのに戻って」
「えっ、戻るのか」
「聞いてませんよ、それはっ」
 やり直し。
「「天使様、お願いっ」」
「分かりました!」
 ちまのろもい君からノロモイ君に戻った天使様を見て、巨大な兎もフェアリーも猫も、草原の彼方に消えていきました。それはもう、あっという間に。
 まずけりー君ときりる君を助けてあげましょう。二人とも、あちこちほつれて、いやいや怪我をして大変です。
「ちまリカバーです」
 でもちまクレリックの魔法で痛くはありません。きりる君もけりー君もすぐに元気になって、ちまのろもい君たちにありがとうを言っています。助けてもらったら、お礼を言うのは当然です。
「お花をあげようね」
 ちまのろもい君たちに、あんなさんが花輪を掛けてあげました。他の人にも花飾りです。花の数が足りないので、全員分の花輪は出来なかったのでした。助けてもらったのだから、ちまのろもい君たちが優先でしょう。
「さっきは驚いてごめんね。一緒に遊ぼうか」
「僕が鬼になるので、鬼ごっこはどうです?」
「探検でもいいかな」
「疲れたらひなたぼっこしながらお昼寝でしょう」
「ダンスも楽しいですよ、きっと」
 もちろん全部やるのです。最後はみんなで輪になってダンス。ちまたちは、ちまのろもい君たちと手を繋いで、くるくる、くるくる踊ります。
 時々、いえやたらめったらとみんなが転ぶのは、遊びすぎて疲れたからに違いありません。
「またねー」
 おうちに帰ったら、ゆっくり眠らなくっちゃ。
 今日の冒険はなんだかとっても疲れたのでした。

「あぁ、楽しかった‥‥」
 うっとりと口にしたユーリーの背後で、彼以外の人々が妙に疲れ果てていたのは気のせいではない。特にレッドとイリーナは、顔色が悪いようだ。二人とも、疲れたなんて一言も言いはしなかったけれど。

 三日目。
 片付けと、巨大生物の来襲で怪我をしたちまの治療、ついでに一日目で作り切れなかった道具を作り足したりしていた一同は、ユーリーの発言にひっくり返りそうになった。
「じゃあ、今度はギルドの皆さんにも見に来ていただきましょう!」
 イリーナが最初はその位するのかと思ったと口にしたので、すっかりやる気らしい。藍色のキラキラした瞳でイリーナを見詰めている。見詰められた方は硬直しているようだ。
「人に見せるものではないと」
 レッドの言い分に誰もが頷いたが‥‥今回増えたちま仲間達は、それぞれ自分のちまと大事な道具類を荷物にしまいこんでいる。
 全部他人に作ってもらったユーリーが、一番最初にそれをしていたから、いろんな小道具が希望者の下に渡ったのだった。
 ユーリーが分けてもいいといった、ちまのろもい以外。

●ピンナップ

レドゥーク・ライヴェン(eb5617


PCシングルピンナップ
Illusted by 烏鷺山ぷうのすけ