素敵?なお茶会への招待〜六泊七日の旅

■ショートシナリオ


担当:龍河流

対応レベル:フリーlv

難易度:難しい

成功報酬:0 G 93 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:04月05日〜04月12日

リプレイ公開日:2007年04月15日

●オープニング

 依頼内容は簡単だ。
 案内人とともに歩いて二日ほどの村にある薬草園で、五日ばかり働いてくればよい。
 畑仕事なので力は必要だろうが、道具は先方に用意されている。往復はともかく、向こうにいる間は食事も宿泊先も面倒を見てくれるそうだ。
 一つ問題があるとすれば、その薬草園がこの冬に土砂崩れの被害を受けていて、土質が少し変わってしまったので肥料のやり方を検討する必要があることだが、それとて案内人が采配してくれるから言われたとおりにすればよい。
 依頼内容は簡単だ。

 となれば、問題は案内人にある。


「まてこら亭主。貴様、女房だけ送り出して、自分はのうのうと家にいるつもりか」
「何を言うか。俺は俺で、別の場所に派遣されるんだ。くじ引きなんだから仕方ないだろ」
 この依頼、正式な依頼人は月道管理塔の責任者殿だが、案内人がアデラという。これまた月道に勤めるウィザードだ。
 そんな彼女が何故に薬草園かと言えば、ノストラダムスの預言書とかで何かと騒ぎが多い昨今、王城からの指示で関係各所が働かされていることに始まる。月道も通常の仕事の他に、人をやりくりしてあちこちに派遣しているのだ。
 行き先の薬草園は、王城や騎士団に回復薬やら解毒剤、その他諸々の必要薬草、薬剤を納めている中の一つだが、増産を命じられても土砂崩れのせいで人手が足りないと言ってきたので、月道から植物に通じた人を集めて派遣することになった。
 それだけではまだ手が足りないので、冒険者ギルドでも人を募ることにしたのである。
 その案内人がアデラだが、彼女は効能不確かな雑草茶を他人に飲ませることで、狭い範囲で有名な困ったさんだった。そんな人と一緒に、一週間も依頼旅行。下手をすると命に関わるかもしれない。
 さらに。
「ちょっと待て。依頼の期間が七日で、往復が四日で、働くのが五日って計算が合わないだろうが」
「最近の冒険者は馬もいいのを持ってるだろ。ゆっくり歩いて二日だから、馬だったら早朝に出れば夕方到着するから」
「移動手段の用意もしてないのに、そういう計算をするなっ」
 ふざけんなよという話もあったが、移動手段は依頼人側がとりあえず何とかするとして、畑仕事をしてくれる人を大募集である。

●今回の参加者

 ea0926 紅 天華(20歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 ea1641 ラテリカ・ラートベル(16歳・♀・バード・エルフ・ノルマン王国)
 ea3776 サラフィル・ローズィット(24歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国)
 ea3852 マート・セレスティア(46歳・♂・レンジャー・パラ・ノルマン王国)
 ea7256 ヘラクレイオス・ニケフォロス(40歳・♂・ナイト・ドワーフ・ビザンチン帝国)
 ea9960 リュヴィア・グラナート(22歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 eb0116 アーデリカ・レイヨン(29歳・♀・レンジャー・エルフ・イスパニア王国)
 eb3537 セレスト・グラン・クリュ(45歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国)

●サポート参加者

ガイアス・タンベル(ea7780)/ イツキ・ロードナイト(ea9679)/ バデル・ザラーム(ea9933

●リプレイ本文

 ヘラクレイオス・ニケフォロス(ea7256)は、この依頼を受けようとした際に受付の係員からアデラが特異な要注意人物であることを具体的かつ詳細に説明された。が。
「うむ、アデラ殿の茶会には今回で二度目じゃ」
 そう言った途端に『なぁんだ』と突き放されている。他に七人ばかり同行する仲間がいるのだが、そちらは顔を見ただけで何の説明もされることはなかった。大半が常連、久し振りのラテリカ・ラートベル(ea1641)も、以前に参加していたことを覚えられていたらしい。
 この扱いに不安になるような御仁はいないので、アデラと一緒に目的地に出発である。ただその前に。
「おいらの荷物、ちょっとばかり預かっておくれよ。アデラ姉ちゃんがわがままだから」
 マート・セレスティア(ea3852)が荷物運びの余力がある面々に頼んだのは、彼のババ・ヤガーの空飛ぶ木臼にアデラが乗りたいと騒いだからだ。テント、ポーション、食料を積み替えて、改めて出発。
 他人の手をいきなり煩わせることには厳しいサラフィル・ローズィット(ea3776)、リュヴィア・グラナート(ea9960)、アーデリカ・レイヨン(eb0116)の三人がそれを黙認したのはひとえに。
「あれに乗せておけば、アデラ殿が道端で怪しいものを摘むことも」
「マートが何か味見させろと騒ぐこともないだろうな」
 なるほどと紅天華(ea0926)とセレスト・グラン・クリュ(eb3537)が納得した理由からだった。ヘラクレイオスとラテリカはなんとも言い難い表情で、頭上にいる二人を見遣ったが、格別意見はないようだ。
 馬、セブンリーグブーツ、空飛ぶ木臼で進む一行は、昼過ぎには目的地までの道のりを六割がた踏破していた。一番道草を食う二人が地上にいないと、気持ちよく道行きがはかどるものだ。とはいえ、ずっと何かしら食べていたのに、『お昼、お昼』とマーちゃんが騒ぐし、足を休めるのによさそうな草地に出たので、一行はそこで昼食とすることにした。移動中の食事でも、サラと天華とアーデリカとセレストがいる限り、間に合わせに保存食を齧るなんてことにはなりえない。ついでにマーちゃんがそんなのは納得しない。
 ヘラクレイオスが手早くかまどを組んで、家事の得意な四人がさっさと持ってきた食料で十人強の食事を作っていく。人数より多いのは、ドワーフのヘラクレイオスとマーちゃんの分だ。主に後者。パンだけは生地をこねるところから始めると手間が掛かるので、アデラが抱えてきたものを分けることにした。
 この間にラテリカとリュヴィアはアデラと一緒に焚き付けにする枝を拾っていたが、もちろん二人とも気付いている。
「アデラさん、それはお茶にしてもおいしくないと思うですよー?」
 手当たり次第にアデラが雑草をむしっていることに。ラテリカがやんわりと止めているが、リュヴィアは直接的に取り上げて、駄目なものはその場で捨てさせている。ラテリカもリュヴィアほどではないが、植物には通じている。残ったものに多少の不安がないでもなかったが‥‥毒ではないので見逃してしまった。
 毒ではないから見逃してしまう辺りで、色々と問題があるのだが‥‥アデラと付き合っているとその程度はたいしたことに思えなくなるのだろう。
 彼女達が戻ってみると、天華がアーデリカと共にマーちゃんのつまみ食い阻止に勤しんでいるところだった。本人の保存食から抜いたパンに蜂蜜を塗って、他のものに手を出させない作戦らしい。
「いただきますは、全員が揃ってからだと言っておろうが」
「‥‥言って聞いてくださるなら、こんなことに慣れることもないのでしょうが」
 アーデリカの発言は、ある意味『それだけは言っちゃいけない』類のものだ。二人とも、気分は動物使いあたりだろう。
「どう見ても、一人子供が混じってる感じだわね」
 こんなことで、目的地で仕事を甘く考えているとか思われたらどうしようかと、セレストがありえなくもないことをぼやいている。
 だが幸いにして、目的地までは何事もなく、また目的地でも一日目の晩はたいした問題も起きなかった。アデラが、滅茶苦茶濃い雑草茶を煮出して、マーちゃんに、
「旅先で飲むとアデラ姉ちゃんのお茶ももっと不味く感じるね」
 そう評されたくらいのことだ。それはあまりに事実だったので、誰もが深く頷いていた。茶にしないこともない葉を使って、よくもここまでと皆に見詰められたアデラは『おうちの台所と違うから、間違えましたのよ』と遠い目をしていた。
 でもこの程度、この面子の中では問題にはならない。なにしろいつものことだから。ヘラクレイオスさえもがなんだか納得していたのだから、よいのである。

 さて、二日目からは畑仕事が待っている。すでに到着して働いていたアデラの同僚達もいるのだが、ウィザードやバードが多いのであまり体力に恵まれていないようだ。
「何事もそれに向いた者がやるのが一番じゃ。力仕事は任せておれ。ご婦人方の細腕にこんな重荷を任せては騎士の恥じゃからな」
 土砂が崩れた現場は、以前に植わっていた大木が落雷で枯れてしまった後の若木が虫に食われた結果、起きている。新しく苗木を植えて、周辺の土止め柵を月道の人々は作っていたのだが、ほとんどがヘラクレイオス言うところの『向いた者』ではない。柵のための板を数枚、軽々と担いだ彼に多忙を極める薬草園の人々と共に安堵の表情を見せた。いずれにせよ、男性陣は土留めの柵を作らなくてはならないのだが。
 しかし、この男性陣にはマーちゃんも含まれている。何人もがすでに逃亡しているのではないかと心配したが‥‥彼はきちんと働いていた。なぜなら。
「サラねーちゃん、おいらちゃんと働くからね。おやつとかご飯とか一杯くれなきゃ駄目だよ。わかった? ねえ、聞こえてる?」
 今回の参加者で、もっとも調理に長けたサラに対して、叫ぶ叫ぶ。どうやら『仕事をサボったら食事抜きかもしれない』くらいの判断力はあったものらしい。それで自分の仕事振りをひけらかすのだが、叫ばれたほうはたまったものではなかった。マーちゃんはパラ、遠目には子供のようにも見える。
「実際、子供のような方ではありますが‥‥」
 サラの声が深く沈んでいたとしても、誰も不思議には思わない。サラは別に厳しい人でもないのに、なにやら誤解されかねない勢いだった。
 でもそんなマーちゃんも、ヘラクレイオスにくっついて主張するだけの働きはしていた。どちらも器用だし、印象を裏切ってこういう事柄はまーちゃんのほうが詳しいのだ。道具の扱いは、大抵ヘラクレイオスが上手だが。
 そして叫ばれたサラは、午前中はアーデリカと共にまず食事の支度と、皆の仕事着の洗濯や借りた宿泊場所の掃除などを行なっている。アーデリカは農業全般に、サラは植物にとても慣れた人達なのだが、それ以上に家事も得手としていて、美味しい食事とふかふかの寝台や洗い立ての衣類の効果も良く知っていた。気分が良いと、人は元気に働ける。
 だが、そんな彼女達は借りている台所で。
「マートさんがいない台所が、こんなに作業がしやすいとは思いもしませんでした」
「アデラ様もちゃんとしていらっしゃいますし、今度から裏庭の畑でお仕事をしてもらいましょうか」
 普段のお茶会での不遇を思い起こしていたりする。ちゃんと動いて、次々と用事は済まされていくのだが、それらはすべて『あの二人』がいないことに起因するのだ。一人はお茶会主催者、もう一人は筋金入りの常連。それが一番の邪魔者だとは、この二人にはなんとも嘆かわしいことである。
 そんなことを言いつつ作った料理が、まずは昼に初めて食べた人々に大絶賛され、夕食の下ごしらえもほぼ終わっていることで仰天もされるのだが‥‥
「いただいた分では足りませんので、保存食の提供をお願いいたします」
「おかしいですわねぇ。人数の三割増しで料理が減っていますよ」
 あんまり美味しい料理の唯一の弊害、食べ過ぎがこの日から炸裂し、ちょっとばかり色々と大変ではある。
 ところで家事が得意な者は他にもいる。そのうちに交代することもあろうが、まずは頼まれた仕事から手をつけようかとセレストと天華が取り組んでいるのは、肥料作りだ。セレストは土留め作りに加わっても良かったのだが、そちらは人手も足りているようだし、ヘラクレイオスの宣言に花を持たせてやる意味で、もう一つの力仕事に入っている。天華は腕力のいることは苦手だが、植物にはかなり詳しいので細かい作業担当だ。
 ただし、どちらにしても地味な仕事である。ほかの仕事が派手ということは、今回に限りまずないが、セレストが運んだ様々な肥料の素を、天華が様子を確認して、二人で育てる植物ごとに適した配合で混ぜ合わせていくのだ。
「セレスト殿は、アデラ殿のように畑をお持ちか? 慣れていないという割に、こういうものが平気なようだが」
「馬の世話は全部じゃなくてもするのだし、いい薬草が取れる条件は覚えておきたいものね。そうは言っても、すでに混乱してきたけど」
 肥料の材料には、家畜の糞も入っていたりする。昨年から積まれていた堆肥も、あまりいい匂いとは言えない。季節がら、虫が飛び出してくることもあった。虫はともかく、セレストがまったく動じないので、天華は畑でも所有しているのだと考えたのだが、セレストの目的は違うようだ。
 赤子を取り上げる仕事柄、薬草を扱うことも多々あるのでこの機会に色々詳しくなっておこうと言うところだが、次々と作業しながら逐一頭に新しい情報を叩き込んでいくのは大変らしい。
 そうして天華は、相手のそんな苦労を察して気配りするには、のほほんとしすぎたところがあった。
「後で色々教えてちょうだい」
「それは構わぬが、これが全部始末できたらだ」
 二人の前には、大量の肥料の素がまだ積み上げられている。日が暮れるまで働いて、ようやく片付けられるかどうか。もちろんそれが終われば、次は畑に施す作業が待っている。
 畝を作り、肥料をこれから施す畑があれば、すでに栽培が始まっているところもある。リュヴィアとラテリカはアデラを引っぱって、そちらで苗の間引きを任されていた。
 リュヴィアは薬草園の人々が『パリから偉い学者さんが来てくれた』と勘違いするくらいに、植物全般に通じている。畑仕事には慣れていないが、どの薬草がどういう風に育って、いつ何をすればいいのかは知っている。間引かなくてはならないものも、任せて安心だ。当然ラテリカはこまごまと教えてもらいながら、アデラは自分が分かる範囲の植物を担当している。
 ただ、この三人の問題は。
「ふむ。瑞々しいし、張りもある。いい具合に育っているな。美味い」
「はわぁ、小さいときはこういう味がするですね。発見です」
 間引いた苗のうち、他所に植え替えないものを食べてしまうのだ。ラテリカは勧められるままに口にしたのだが、アデラはどうやら自分の畑で常日頃からやっているらしく、誰に断ることもなくもぐもぐやっていた。リュヴィアはつられた形だが、当然三人揃って他の人々から『夕飯のおかずになるのに』とか『自分達ばっかり』と怒られることになる。
 新鮮な葉野菜など、パリではなかなか食べられるものではないので致し方ない。と反省した三人は、後日仕事の合間を縫って野草摘みに出掛け、大方の予想通りに『こんなの食べられるか』という雑草を大量に摘んで来たアデラからそれを取り上げるのに苦労していた。その横でラテリカは、リュヴィアや天華から食べられる野草について講釈を受けている。
 幾つかそうした困ったことはあったが、なにしろヘラクレイオスが力仕事は一手に引き受け、夕方になれば使った農機具を一式きちんと手入れ、修繕してくれる。
 アーデリカも昼間は皆が驚くほど手馴れた様子で畝を作り、寝る寸前まで破れた衣類の繕いを率先してやってくれた。
 サラは自ら仕入れた食材に、皆から回収した保存食を加え、提供された新鮮素材も入れて、日々の食卓を仕切りつつ、日中は畑で植え付けもしている。
 天華は畑が毎年酷使されているのではないかと心配していたが、三年おきとはいえ休ませているのを確認して、そちらにも後々のために手を入れることまで考えている。
 セレストは仕事の合間に薬草の扱いについてあらゆる人と言っても良いくらいに尋ねて回り、間引いた苗で姿かたちも確認してから、それを酢などで美味しく和えていた。
 ラテリカはこれまた皆に意外に思われたが、馬の扱いに長けていて、自分の愛馬はもちろん、居合わせた馬の調子をこまめに観察して、世話も自ら買って出た。
 リュヴィアは、土砂崩れで被害を受けた畑の土質がどの程度変わってしまったものかわかるかと尋ねられ、グリーンワードで直接植物に尋ねる荒業を披露していた。
「今のところ不足は感じていないようだ。心配あるまい」
 この返答には、短期とはいえ畑仕事に携わる他の冒険者も一安心だったが、例外が一名。
「こぉらっ、この悪がきがっ!」
 畑のあぜで伸びてきた草を結んで足を引っ掛けるいたずらをして、マーちゃんは薬草園のおじさんに追い掛け回されている。これはセレストの『謝らないとご飯抜き』とアーデリカの『次にやったらパンだけです』攻撃に加え、食事中に彼にしてはうっかりと天華に捕まってしまい、じっくりたっぷりと『いただきますは全員揃ってから』再教育を施されていた。
 この日はお茶会久し振りのヘラクレイオスとラテリカ以外、珍しく『これくらい言えば、今回は完璧』と満足した夜だったらしい。後刻のセレストとヘラクレイオスの酒盛りは、有志を加えて賑やかに盛り上がっていたのである。
 かたやラテリカは家事得意組に美味しかった料理の作り方を教えてもらい、
「旦那様に作ってもらうですよ」
 と口にして、いなかったわけではないエルフ男性陣を絶句させていた。
 そうして、明日はパリに戻ろうかと言う日になって、アデラにセブンリーグブーツを貸してやる約束をしたリュヴィアが、当たり前のように次回のお茶会を話題とした。畑仕事の合間もお茶会をしていた彼女のこと、このくらいは当然である。
「次回は緑まぶしい季節でもあるし、服や食器を白で統一するようなものはどうかな」
「あらまあ、それはいいかもしれませんわ」
 アデラは乗り気だし、他の皆にもこれといって異論はないが‥‥
 今現在アデラがよそ見をしながら淹れている、濁った深緑色のお茶だけは飲みたくないと、誰もが考えていた。
 せっかくいい香草を分けてもらったのに、やはりアデラはアデラであったようだ。