もりのおくのごぶりんども

■ショートシナリオ


担当:龍河流

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:5 G 64 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月04日〜11月16日

リプレイ公開日:2007年11月14日

●オープニング

 ウィルの街から歩くと三日ほど離れたある大きな村の近くには、これまた大きな森がありました。
 あんまり大きな森なので、奥のほうはほとんど人が入りません。うっそうとした森の見本みたいなところです。
 ところがある日のこと。
「その森に、ゴブリンが住み着いたんだぁ」
 村から慌てて馬に乗ってきた人は、言いました。普段は村の人が入らない、森の奥のほうにゴブリンが住み着いてしまったようなんだ、と。
 でも、それだけではありません。
「なんか大きいのもいるしよ、隣の息子が頭が牛や豚の化け物も見たって騒ぐし、猟師の頭領もでかい足跡を見付けてるし、これは油断ならねぇって話になってな」
 今はまだ、ゴブリンと他いっぱいの化け物は森の奥にいます。でも寒くなってきたら、食べ物を求めて村にやってくるかもしれません。獣だったら火で追い払うことも出来ますが、ゴブリン達にはきっと効かないでしょう。
 だからお願い。
「どんだけいるのかよう分からないんだが、退治してきちゃくれまいかね。うちのとこのお役人や騎士様達は、盗賊退治に出向いててしばらく忙しそうだしよ」
 冒険者の人、ゴブリン他いっぱいの化け物を倒してきてください。

●今回の参加者

 ea1704 ユラヴィカ・クドゥス(35歳・♂・ジプシー・シフール・エジプト)
 ea2179 アトス・ラフェール(29歳・♂・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea3486 オラース・カノーヴァ(31歳・♂・鎧騎士・人間・ノルマン王国)
 ea7463 ヴェガ・キュアノス(29歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国)
 ea8029 レオン・バーナード(25歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea8218 深螺 藤咲(34歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb0010 飛 天龍(26歳・♂・武道家・シフール・華仙教大国)
 eb4199 ルエラ・ファールヴァルト(29歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4324 キース・ファラン(37歳・♂・鎧騎士・パラ・アトランティス)
 eb4333 エリーシャ・メロウ(31歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)

●リプレイ本文

 ゴブリン退治を引き受けた冒険者さんは十人です。これだけいれば、きっとゴブリンよりうんと強いモンスターがいたって、倒してくれるでしょう。さあ、依頼を出した村に行きましょう。
 でも、ここで大問題が発生でした。なんと普通のお馬さんや足の短いお馬さんやかっこいいお馬様、それからわんこが色々となんかにょろにょろしたのと、にょろにょろに手足が生えたのと、どでっかい鳥さんとそれよりはかなり小さい鳥さんがいて、ついでに魔法の靴で移動する予定の人がいっぱいでしたが、レオン・バーナード(ea8029)さんは全然そういうのとご縁がなかったのです。
「だってよー、普段は船に乗ってるんだぜ」
 レオンさんは冒険していないときは漁師さんなので、お馬さんは要らないようです。でも、一人だけ置いていくのもひどいお話。
 そうしたら飛天龍(eb0010)さんが、自分の荷物をごそごそして、魔法の靴を取り出しました。シフールさんだし、お馬さんもいるから貸してくれるようです。助け合うのは大事ですね。
 では、お馬さんやお馬様や魔法の靴で出発しましょう。全員ご飯は持ったかな。寝袋や毛布はありますか。そろそろ寝袋がいい季節です。それから上着は羽織りましたか。
 くしょんっ。
 この季節に厚手の上着がないとオラース・カノーヴァ(ea3486)さんのように、くしゃみを連発してしまいます。聞いているほうも寒いのです。天龍さんとエリーシャ・メロウ(eb4333)さんもつられています。余分のマントがあったりしたら、また皆で助け合いです。なにしろ急ぐ旅路ですからね。
 でっかい鳥さんに引っ付いたユラヴィカ・クドゥス(ea1704)さんと、足の短いお馬さんのヴェガ・キュアノス(ea7463)さんが並んでいるとすごく変で目立つだなんて、
「あら、これならどこに行ってもいい目印になりますよ」
「それははっきり言いすぎだな」
 深螺藤咲(ea8218)さんとキース・ファラン(eb4324)さん、二人とも面白がってますが、ちょっと言ったらいけないことが入っていたような? 嘘ではないですが、嘘じゃなきゃいいってものではないのです。
 でもまあ言われた人達があんまり気にしないので、そろそろ出発いたしましょう。道々アトス・ラフェール(ea2179)さんに、オーガ族の解説をしてもらわなくてはいけません。
「このくらいならなんとかなるか」
 ルエラ・ファールヴァルト(eb4199)さんが出かける前にちょっと時間が掛かったのを気にしましたが、移動しているうちに取り戻せることでしょう。それでなくても、歩いていけば三日のところを、もっと早く着く予定なのですから。
 でも、早く進めないにょろにょろと手足が生えたのと足が短いわんこは、飼っている人が責任を持って抱えていきましょう。忘れたら悲しそうに鳴きます、わんこだけ。

 すたこら進んだ冒険者の皆さんは、依頼人さんである村に辿り着きました。やれやれです。今夜は屋根があるところで、暖かくして眠れそうです。オラースさん、鼻水が垂れていました。なにしろ寒くなってきましたからね。
 でもだけど、村の皆さんに色々お話を聞かなくてはいけません。ゆっくりするのはその後です。それに皆さん、ゴブリンやその他諸々が住み着いてそれは心配していたでしょうから、励ましてあげないといけません。
「近隣にそれほどのゴブリンが住み着いたとなれば、騎士の常駐がない村では確かに心配でしょう。冬になって森の食料がなくなれば、村までやってくるのは必定」
 エリーシャさんがちょっと難しいことを言い始めました。村の皆さんは、うんうんと頷いています。まったくその通りだからです。
「エリーシャさんが言う通りに、俺達が全力で倒してやるから心配するな」
 キースさんが胸を張って言います。エリーシャさんも堂々と『民を守るのは騎士の務め』と村の皆さんに語り掛けましたが、キースさんのはもうちょっとざっくばらんです。自分とエリーシャさん、ルエラさんが鎧騎士で、残りの七人は天界人だと説明もしてくれました。ついでにとても心強い実力の持ち主なんだよとも、簡単説明。
 村の皆さんは、感謝感激です。これでこの冬も安心だと喜んでいます。そんな様子だから、レオンさんとユラヴィカさんが聞いて回った、ゴブリンその他の目撃情報もすんなり集まりました。
 いるもの。多分ゴブリン、ゴブリンのでっかいの、犬頭、豚頭、豚頭のちょっとでっかいの、猪頭に牛頭。
「ゴブリン、ホブゴブリン、コボルト、オーク、オーク戦士、バグベア、ミノタウロスでしょう。こう種族が違うものが一緒に行動しているのは珍しいのですが、先にあげたものほど臆病で、上位の者が倒されたら逃げ散る可能性が高くなります」
 アトスさん、説明がはきはきしています。考え込んだりしません。他の冒険者の人達も、ここに着くまでにちゃんと説明を聞いていたから、言われたらどんなのかはすぐに分かります。
 でもでもだけど、大変なのはどれが何匹いるのか分からないことです。ちゃんと調べてから倒さないと、逃げたのが村に飛び込んじゃったら大変も大変です。ゴブリン達を見た村の猟師さんも、数まではちゃんと数えていません。だってそんなのに見付かったら、食べられちゃいそうだからです。もちろんすたこらさっさと逃げましたとも。
 どこにいるのかも良く分からないので、それは明日になったらユラヴィカさんが魔法で確かめてくれることになりました。レオンさんは、猟師さんに森の中のことを尋ねていましたが、水の上ならともかく森の中の歩き方は良く分かりません。天龍さんが一緒に話を聞いてくれて、全部憶えてくれました。これできっと安心です。
 もちろん、言いません。天龍さんがオーガ族とはゴブリンとトロルしか戦ったことがないなと思っていたり、レオンさんは『まだ悪いことしていないのに倒されちゃうのも可哀想だけど、悪さしてからじゃ遅いし』と胸の中で考えていたり、キースさんは実はゴブリンと戦ったことがなかったり、ユラヴィカさんは宴会までしちゃったことがあったりするのは、絶対に内緒です。世の中、言わないほうがいいことはいっぱいあるのです。
 あと、オラースさんが『なんか背筋がぞくぞくするかも』とこっそり考えているのも、やっぱり内緒。村の人がいろんな意味で心配しちゃいます。
 そう、冒険者たるものエリーシャさんやルエラさん、藤咲さんのように堂々と、『皆安心しなさい』と胸を張っておくべきです。嘘はついたらいけないけれど、この十人でならよほどいっぱいゴブリンその他が出てこなければ、きっと勝てるはずです。
 だから今夜はゆっくり、オラースさんは風邪を引かないように暖かくして寝ないといけません。段々鼻声になってきました。わんことにょろにょろと一緒にぬくぬくしましょう、ぬくぬく。にょろにょろも寒いせいかじいっとしています。アトスさんのにょろにょろに手足が生えたのも、じいっと。
 ただ、寝る前に森の中の話を良く良く確かめていた藤咲さんとルエラさんはがっかりしていました。森の中、お馬様で入るのは厳しいようなのです。足元も大変ですが、なにより頭がつっかえるところがたくさんあるみたい。普段から村の人が入っている場所なら、お馬様でもでっかい鳥さんでも全然平気なのですが。
「じゃあ、荷物の整理はしておかないといけませんね。分担しないと、必要なものが運べないかも知れません」
「私は保存食に余裕があるが、テントは厳しいな」
 二人だけでなく、他の人達も加わって、誰が何を持っていこうかと相談しています。シフールのユラヴィカさんと、エルフでクレリックのヴェガさんの荷物を、分担しないといけないのですが‥‥
「ヴェガ、どこじゃ」
 ユラヴィカさんが探してみたら、ヴェガさんは足が短いお馬さんのことで、村の人と熱烈お話中でした。お馬さん好きの同志を発見したようです。ヴェガさんは、こういう村で飼っているような動物さんがたいていなんでも大好きなのでした。
 そんなヴェガさんを引っ張ってきて、荷物の整理をしたら、ようやくおやすみなさいです。

 さて、次の朝から十人の冒険者さんは歩いて森の中に入っていきました。村の猟師さんが途中までは案内してくれます。途中でユラヴィカさんが太陽さんに、ゴブリンその他の居場所を聞きました。西の方だそうです。ユラヴィカさんと天龍さん、レオンさんに藤咲さんの目がいい人四人がそちらを見ましたが、木がいっぱいで何がなにやらさっぱりです。
 とりあえず、行ってみることにしましょう!

 行ってみました。そこから三日ほど。
 ゴブリンとホブゴブリンとコボルトとオークとオーク戦士とバグベア、ミノタウロスです。まあ、いっぱい。でもバグベアは二匹しかいませんし、ミノタウロスは一匹です。頑張ればなんとか‥‥いけそう? ゴブリンとホブゴブリンとコボルトが、合わせて二十匹くらいいるのが一瞬でどうにかなって、オークとオーク戦士が見てるだけだったら楽勝です。
 もちろん、そんなはずなんかありゃしませんけれども。
 でもでもだけど、十人の冒険者さん達は当然のように偵察をしたのです。魔法で顔も確認しましたし、数も数えました。迷彩服を着て、こっそり覗きにも行きました。足跡で何がいるのかも考えましたし、途中で見付けたゴブリン達が切ってしまった木から刃物の種類も悩んだりしたのです。そりゃあもう、事前準備はばっちりです。多分。
 ただちょっと失敗したのが、ユラヴィカさんがアトスさんに見てもらおうと思って『けーたいでんわ』の『かめらきのー』を使ったら、なんか変な音がしたのです。こっそり帰ろうとしたけれど、途中まで追いかけられてしまいました。
 これで冒険者さん達の近くまでゴブリンが来たので、ここはわんこ達にはじっと我慢してもらって、どこに帰るのかをついていこうとしたら‥‥くしゃみをしたのが誰かなんて、言わぬが華。
 ゴブリンがすたこら逃げていくので、皆ですたこら追いかけました。重い荷物は後で取りに行きましょう。
「魔法使いは中程に、背後を取られるのは避けてっ」
「心配ない。今ホーリーフィールド、いや防壁を張ったのでな。‥‥あの様子では、立ち退きなど考えてもおらぬのう」
 エリーシャさんがすぐ後ろのヴェガさんの台詞を聞いて、向かってくるゴブリンに槍を突き込んでいます。もう振り返りません。オーガと話し合いなんて、ヴェガさんは何を考えているのかと思っていることでしょう。
 だけど、ヴェガさんとユラヴィカさんからものすごく遠いところには行かないで、ちゃんと近くにいてくれます。これで安心。
 ユラヴィカさんはホーリーフィールドの中から、時々サンレーザーで他の人達を手伝っています。身のこなしは軽いほうだと思っていますが、間違って怪我をさせられたら大変です。他の人に助けてもらう時間分、皆が苦労することになるので、後ろから。
「おかしいのう、ちゃんと音が鳴らないようにしておいたはずじゃが」
 ウィルの街に帰ったら、誰か地球の天界人にもう一度教えてもらいましょう。
 同じように後方から攻撃に参加しているのは、キースさんです。弓が結構得意なので、ゴブリンやコボルトが数に任せて押し寄せてこないようにばしばし打っています。村の猟師さんが幾らか譲ってくれたので、矢はたくさんあります。貰ったからにはよりいっそう頑張らなくちゃ。
「しかし、とんでもない人が集まったよな」
 ぽろっと何か言いましたが、キースさんだって剣も出来るのです。ただ他の人達が、とっても出来すぎるだけ。
「近くで見ると、やはりオーグラとは違いましたね」
「体は小さくとも、図体だけで功夫を積んでいないモノに負けはしない」
「頭が牛やら豚なら、食うのも葉っぱにしてりゃ良かったのに」
「くしょんっ」
「雑魚は任せてくださいっ」
「私が動くことで隙を作ります、そこを狙ってください!」
 そんな素敵な腕前のルエラさんや天龍さん、レオンさんにオラースさんとエリーシャさん、キースさんと同じくらいの藤咲さんとアトスさん達は、ゴブリンその他と大乱戦!
 剣に刀、槍でゴブリンその他をずんばらりん、ざくっ、どしゅっ。
 拳で殴っているように見えても、しっかり何かが手に着いていたり。がしゅがしゅ。
 更には魔法が掛けられていて火がぼうぼうとか、魔法で足止めとか、なによりも、
 コンバットオプションの嵐。
 コンバットオプションのあらしっ。
 こんばっとおぷしょんのあーらーしーっ!
 わんこもまけずにがんばってまーす。
 ソードボンバーとか、スマッシュとか、ポイントアタックとか、カウンターアタックとか、バーストアタックとか、カウンターとか、デッドorライブとか、バーストアタックとか、ストライクとか、珍しいところで龍飛翔とか、避けるときにはオフシフトとか‥‥
 これだけ使ってくれたら、コンバットオプションもきっと嬉しいでしょう。そのくらいに次々と、コンバットオプションが! 一番多いのはスマッシュでした。
 ゴブリンその他の中では一番頑張ったミノタウロスの、首と胴体がさよならしてしまったのはすたこら追いかけ始めてから二時間くらい後のことでした。
 これでお仕事はおしまいのはずです。二日と半分くらい歩かないと、村には帰れませんが帰る予定の日までまだありますからゆっくり休んでも大丈夫。
 だけど、ルエラさんが心配そうに言いました。
「これをこのままにしておいて、カオスの魔物と化しては村の危険が増してしまうので、弔うべきだろうか?」
 これというのは、『これ』です。首と胴体がさよならしていたり、裂けたおなかから長いものが飛び出していたり、色々している『これ』。
 『これ』をちゃんと人のようにお弔いするのはちょっといやんなのですが、ルエラさんの心配ももっともです。皆さんで考えて、決まったのが、
「ばらして、燃やそう」
 これでした。細かいことは、想像したらいけないのです。ざくざくってして、油びしゃびしゃって掛けて、火種をえいっ。
 周りの木に燃え広がらないように、もちろん気を付けましょう。それから火が消えたら、穴を掘って埋めましょう。
 これで今度こそ、お仕事おしまい。
 あ、村に戻って仕事の具合をお話して、ご領主様にも報告書が届くように手配して、この後のことも注意してもらうことにいたしましょう。こんなにいっぱいのオーガ族が出てくるなんてことが、またあったら大変ですからね。
「楽しみじゃのう。あの村にはいい牛と豚がおってな。人懐こそうだから愛でていきたいものじゃ」
 ヴェガさん、行きには出来なかった楽しみを見出して‥‥
「先程までいたのは、憎たらしい感じでしたからね」
 さっきまでの真面目さはどこへやらの藤咲さんと、にっこりと笑い交わしています。
 ‥‥ともかく。
 村の人達を安心させてあげて、子供達に面白おかしく冒険の話をしてあげましょう。
 そのためにも、一休みしたら早く帰らなくっちゃ。