【将来設計】結婚式して、お仕事をして

■ショートシナリオ


担当:龍河流

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月16日〜05月21日

リプレイ公開日:2008年05月27日

●オープニング

 ひと頃、冒険者ギルドに依頼を出していたハーグリー家なる家の兄弟姉妹がいる。兄弟姉妹と言っても、当の昔に全員が成人している五人のエルフだ。
 長女のヴィクトリアは語学の達人で、各国語をこなす上に大変な達筆であるらしい。商用関係の各国語書類を作成することでは、あちこちの商家に頼りにされているそうだ。
 次女のエリザベスは芸術系の才能に恵まれていて、西洋各国の文化・芸術について教えると共に、肖像画家としてもそれなりの実績を持っている。最近は愛馬など、飼っている動物と合わせての肖像画を描くことで人気が出たらしい。
 長男のリチャードは吟遊詩人でもあり、音楽とダンスを教えている。近頃幾人かの貴族からも気に入られ、宴会に招くときは一ヶ月前に予定を尋ねても厳しいのだとか。
 三女のジェーンは、大変に厳しい礼儀作法の教師である。これまでは成人か、それに近い年齢の人を相手にしていたが、最近ある坊ちゃんを短期で的確に教育したとかで、子供相手の仕事が増えている。
 次男のチャールズは、動物の教育を行なう。猟犬や乗馬用の馬をしつけたり、世話したりするのが仕事の中心だ。更に本人がジャイアントラットを二匹飼っていて、芸を仕込んだので気取らない宴会からの引き合いが増えている。
 この五人、色々と仕事を頼んでいた挙げ句に、最後はヴィクトリアが婚約者の甥から財産分与を阻止する目的で命を狙われた際に護衛を頼んで助けてもらっている。

 今回、そのヴィクトリアが婚約者と結婚することになり、エリザベスとチャールズが招待状を持参して、冒険者ギルドにやってきた。
「家を訊くのを忘れていたので、お暇なら寄ってくださいと伝言をお願いします」
「いや、ギルドはシフール便の真似事はしませんから。依頼として掲示板に張りますので」
「ペットがいる人優遇。そこんとこしっかり頼む」
「場所は大丈夫ですか? ペットと言っても大型の種類もいますよ」
「俺の後見の土地を借りたから、逃げ出さなければ走り回るくらいは大丈夫だろう」

 依頼内容は、結婚式披露宴の盛り上げ役だ。集まるのが、日頃様々な宴会で贅を尽くした演出に慣れている人達なので、普通に吟遊詩人に声を掛けたりするのではなく、冒険者として各地で様々な体験をしてきた人々にもてなしてもらおうとの趣向である。よって、吟遊詩人や踊り子などでなくてもかまわない。
 もちろん招待客に無礼を働けば、ジェーンやチャールズの厳しい教育が待っているし、依頼人のヴィクトリアの結婚式にも泥を塗ることになる。その程度の常識を持っている人物であることは重要だ。
 もう一つ、エリザベスの仕事の手伝いとして、結婚式の後にペットがいる冒険者にはそのペットを披露してほしいとのことだ。種別は問わないが、エリザベスが観察している間に彼女を襲うようでは困る。場所はキエフの郊外に用意したので、そこまでつれてきてくれればよい。
 本人の希望としては、出来るだけ大型の、街中ではあまり見られないペットがよいとのこと。

●今回の参加者

 ea1662 ウリエル・セグンド(31歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea2181 ディアルト・ヘレス(31歳・♂・テンプルナイト・人間・ノルマン王国)
 eb0744 カグラ・シンヨウ(23歳・♀・クレリック・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb2782 セシェラム・マーガッヅ(34歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 ec0700 アルトリーゼ・アルスター(22歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ec1051 ウォルター・ガーラント(34歳・♂・レンジャー・人間・ロシア王国)
 ec1983 コンスタンツェ・フォン・ヴィルケ(24歳・♀・クレリック・エルフ・フランク王国)

●リプレイ本文

 依頼初日の早朝、セシェラム・マーガッヅ(eb2782)はヴィクトリアの披露宴の準備で慌しい料理人の中に紛れていた。
「さすがに大食いは無理か」
 余興としても、せっかくのご馳走を勢いだけで食べられたら嫌だと料理人にはもっともな理由で大食い大会は却下された。けれど、セシェラムが作りたい世界各地の料理は招待客が喜ぶだろうと材料などを融通してくれることになったのだ。本人も色々と持ち込んでいたので、先方も喜んでいたが。
 なお、荷物持ちとしてなのか、大食い大会の動向を確かめたかったか、それとも宴会料理が気になったのか、ウリエル・セグンド(ea1662)とアルトリーゼ・アルスター(ec0700)も台所の片隅にいた。ちなみに彼と彼女の目は、ご馳走に釘付けだ。
「お二人とも、いいお話がありますよ」
 本日の主役の弟妹に挨拶に出向いていたウォルター・ガーラント(ec1051)がもたらしたのは、一応『お仕事』である。

 ところで、ジーザス教白の聖職者であるディアルト・ヘレス(ea2181)、カグラ・シンヨウ(eb0744)、コンスタンツェ・フォン・ヴィルケ(ec1983)の三人は、結婚式の教会が白派か黒派か確認しに、ハーグリー家の長女以外のところを訪ねていた。集まった七人の中でも、ロシア王国だから黒派だろうと考えたり、イギリス出身だから白ではないかと意見が分かれたので、念のためにだ。
 その結果、ハーグリー家の兄弟姉妹は黒の信徒と判明した。上の三人はちょっと困ったような笑い方をしたので、改宗者かも知れない。
「大いなる父の司祭様は、婚礼でどのようなお話をなさるものなのでしょうね」
 自分達が黒派の教会に入っていいものかとなどとは迷わず、コンスタンツェがうっとりと結婚式の様子を想像している。
「聖なる母の祝福と言っても困るだろうし‥‥でも我々が大いなる父と言うのも」
 カグラは、お祝いの言葉で悩んでいる。
「お祝い事の祝福は、おめでとうでよろしいのでは」
 まずは気持ちが大事だし、今回は祝い事の雰囲気を盛り上げてくれるように頼まれているのだから、出過ぎないようにするのも大事と、ディアルトが助言している。礼節を忘れなければ、門出を祝うのを邪魔する者はいないだろう。
 後はそれぞれ、何を宴会で披露するのか、念のために打ち合わせておく。

 なお、台所のセシェラムにはカグラが協力して、これが一番の贈り物だとばかりに働いているが、アルトリーゼとウリエルはウォルターに引率されるようにして、残る二人と合流しようとしていた。足取りが遅いのは、もちろん理由がある。
「‥‥俺は故郷と‥‥‥ノルマンの‥‥料理なら‥詳しい」
「イギリスとロシアの料理は任せてください。かなり食べましたから」
 ウォルター以外の二人が、熱っぽく語り合っているからだ。厳密には、それぞれ言いたいことを口にしているだけで、会話をする気があるのかはいささか不明。ウォルターが相槌を打ってくれるので、二人とも楽しそうに語っている。
 この二人、今回の宴会料理にはセシェラムが考えた以外にも他国の料理を参考にしたものがたくさん並ぶので、詳しいのなら招待客に勧めながら、解説もして欲しいと『お仕事』が回ってきたのである。見慣れない料理だからと手を出さない人がいないようにとの配慮だが、適材適所なのか、それとも暴挙なのか、ウォルターも少し悩んでいるかもしれない。なにしろ二人の態度が、熱に浮かされた人のようだ。
「楽しそうですね」
 ウォルターの一言に、力強く頷く食欲の虜が二人。
 台所では、セシェラムが味の他に手早さと見た目と食べやすさが大事な屋台料理の経験を活かして、大量の一口で食べられる料理を作り出している。

 やがて、結婚式が始まったが‥‥
「ヴィクトリアさんはお綺麗ですし、新郎の方はご立派ですわ。お二人の間に満ちている愛が見えるようですわねぇ」
「見えるようですって‥‥その前に二人が見えないよ」
「我々の背丈では、この人の波は越えられませんっ」
「出遅れてしまいましたが、なに、そのうちに出ていらっしゃれば思う存分見られますよ」
「‥‥ロシアの‥‥婚礼は、賑やか‥‥だな」
「いや、多分この婚礼が格別賑やかなだけだろう。私も人にお披露目はしていないから、あまり詳しくないが」
 セシェラムを待っていて、うっかりと式の始まる直前に教会に駆けつけることになった七人は、中に入れなかった。新郎新婦の一族に仕事の関係者、近所の住人のみならず、一族の仕事の関係者までが付き合いや顔繋ぎの目的もあったろうがやってきて、教会から溢れていたのだ。
 こんなに盛大に祝われるとは素晴らしいと感激している白の信徒達の傍らで、今度結婚予定らしきウリエルが始めてみるロシアの結婚式の華やかさに圧倒され、先輩のセシェラムにこれは例外だと一般的な結婚式を伝授されていた。
 でも、宴会前にはまた早めに移動しなくてはならないので、せっかくの花嫁衣裳をじっくり眺めるのは、まだしばらくお預けである。

 披露宴は結婚式に比べると大分こじんまりしていた。いずれも親族か同様の付き合いがある、いわゆる内輪の人々なのだそうだ。だから、見慣れぬ七人は目立つわけだが。
「君はリチャード君の知己かね?」
 友人ではなく知己と尋ねるあたり、教養がある雰囲気だなと思いつつ、セシェラムはあいまいに頷いた。あまり細かいところまで語ると、依頼内容まで話す必要が出てくる。屋台でのやり取りならともかく、こうした場では会話も気を使うものだと思っているから、セシェラムは饒舌になり過ぎない程度に本日の自信作料理などを勧めていたりする。
 だが、礼服の上からまるごともーもーを着た姿は、どう見たところで芸人の類。吟遊詩人のリチャードの知り合いと思われても、何の不思議もなかった。次第に新郎の親族の子供達が、子供相手も得意なセシェラムにまとわり付いている。
「これはジャパンの食べ物で、ロシアのクワスと同じ材料蕎麦を使うのです。食べ方は幾つかありまして‥‥」
「それは‥‥菓子。‥‥こちらは、ノルマンで‥‥‥とても人気の」
 そんな彼が作った料理は、アルトリーゼとウリエルが詳しい解説を担当していた。二人ともしっかりとどの料理も一口以上は『味見』してから、どこの名産で、作り方がどうこう、材料が珍しいのと、詳しく語る。ウリエルは訥々と、時間を掛けて話すからいささか分かりにくいこともあったようだが、見た目はきちんと整えていて、ノルマンから来たばかりだと口にしていたので、慣れないロシアでの祝い事に緊張しているものと受け止められていた。おかげで祝杯だからと次々酒盃が回ってきて、それはそれで苦労したようだ。
 なにしろ酒を飲みすぎて、せっかくのご馳走が堪能できなかったら、彼には一大事である。今回は強力なライバルもいることだし。
 そのライバル、アルトリーゼは、実は色々と困っていた。彼女にしてみれば、ご馳走を食べながら、美味しいものを人にも進める『お仕事』は願ったり叶ったりのもののはずだった。けれども実際にご馳走が目の前に並ぶと、人に解説する前に自分が満足するまで食べたくなるのだ。
 食べたい、でも『お仕事』が。なまじおいしそうなものが並んでしまい、それら全て料理人達が手間暇掛けて、丁寧に作ったものだから、嬉しくなってしまう。でも食べ放題は出来ない、悩ましい。
 今、食欲に色が付いて目に見えるものならば、この二人だけで会場の半分くらいは埋められただろう。
 かたや、食べることにはそれほど熱心ではない人もいる。
 コンスタンツェは会場の端で、いつもよりは少し華やかな姿をして、にこにこと祝い事に浮かれる人々を眺めていた。一見して聖職者と分かる服装ではあったから、酒やご馳走を強いて勧める人は皆無だが、女性一人で壁の花はいただけないと気を回す者はいる。特に新郎の親族は、来客に対する気遣いで話しかけたりするのだが。
「新郎様が堂々としておいでで、ヴィクトリア様もお幸せそうで、もうわたくし、こんなに喜ばしいことはありませんわ。ささやかなご縁のわたくしがこうですから、他の皆様のお気持ちはいかばかりかと」
 怒涛の『こんなに感激しました』説明にさらされて、呆然としている。見た目とは裏腹に、日々の祈りで鍛えた声量と声を紡ぎ続ける体力とは只者ではないのだ。
 かと思えば、依頼として請けた通りに、場を盛り上げるべく様々な話に打ち興じている者もいる。ディアルトは相手が黒の信徒でも、祝い事を祝う気持ちに変わりはないと、進んで場に溶け込むように振る舞っていた。貴族の作法が身についているから、招待客からも丁寧に扱われている。
 更に彼が一目置かれるような雰囲気になったのは、テンプルナイトとしての試練を語ってみせたからだ。ただ神聖ローマはロシアとは考え方が極端に異なるので、場所についてはぼかす心遣いは忘れない。
「吟遊詩人のようには語れないが‥‥ドラゴンというものは、話で聞いていたのとはまるで異なっていて」
 大きさも色も、はてはそのうろこで覆われた肌の凹凸の様子まで、会場にある品物と比べての説明が、吟遊詩人の語る英雄譚とは異なる感慨を聞く人に与えたらしい。ディアルトの周りには、始終人が寄っては離れ、また別の人が寄るようになっていた。
 でも中には、ドラゴンの話も悪くはないが、もう少し砕けた話がいいと思う人もいるわけで、そうした人にはウォルターのオーク退治が楽しまれていた。少しばかり砕けすぎたところもなくはないが、ウォルターがふざけすぎることもなく、以前にリチャードに話した時の会話を思い起こして言葉も選ぶから、皆くすくすと笑いながら聞いている。
 それでも話に飽きてきたり、なんとなく話題が尽きて無言になってしまったときにも、ウォルターは休まない。今度は手品を始めて、老若男女が楽しめるようにしていた。
「これより大掛かりなものは準備もしていませんし、なにより本職ではないもので‥‥リチャード殿にお願いしたほうが間違いがございませんよ」
 挙げ句、一度宴席に来てみないかとの誘いには、相手の機嫌を損なわないようにしながら、本職の人々への気遣いも忘れていない。そもそも当人も言う通りに本職ではないので、何時間も絶え間なく他人を楽しませることは難しい。
 ゆえに、彼は周囲の様子にも気を配り、絶妙の間で『あちらに』と皆の目を向けた。

 お祝いは、自分で頑張って作った素焼きの埴輪用の新郎新婦の礼服を着せて、二体揃えて贈ろうとしたら、素焼きの埴輪はあまりドレスが似合わなかった。それで慌ててちま人形埴輪までこさえて、そちらにドレスを着せて贈る。ジェーンが物欲しそうに眺めていたのは、時間がないので見なかったふり。
 後は、お祝いの気持ちを表すなら踊りしかないと準備していたところ、リチャードがやってきて、その様子を目に留めた。
「演奏も、自分で出来るように準備したけど‥‥」
 笛を奏でてでは、長い時間は踊れないだろうと言われれば確かにその通り。リチャードも『馴染みの人ばかりで、手の内が知れているから』といつもと違う演出がしたいのだと主張して‥‥
 音楽は東洋とも西洋とも付かない、先程カグラが演奏して聞かせたばかりのもの。リチャードの記憶力も結構なものだが、かなり即興のところも入る。
 それに合わせて、でも躊躇うことも止まることもなく、裾の長い装束に薄物をはためかせて、堂々と踊るカグラの姿がこの日の宴によりいっそうの彩りを添えていた。全員が一度に楽しめて、何度目だか分からない祝杯を上げるためのいい切っ掛けにもなった。
 これだけ色々楽しめた宴は久し振りだと、そう言い置いて帰ったお客は少なくない。

 その翌日から、七人はキエフ郊外でエリザベスに付き合うことになっていたが、出発はちょっとゆっくりだった。宴会の酒が過ぎたわけではなく、アルトリーゼがセシェラムに弁当をねだったからだ。それも、豪勢なものを。
 その豪勢な弁当に誰も反対しなかったので、郊外ではエリザベス付きの小間使いが敷物を広げてくれた中、チャールズも参加しての観察会がのんびりと行われている。
 宴で馬の障害レースを語り、男性陣と意気投合していたウリエルは、しっかりと毛並みを磨きたてた愛馬のナリスに、鷹のセロを連れている。エリザベスはセロの羽を広げた姿に魅入っているが、飼い主はミキとミニを眺めて感心している。どちらも触っていいものかどうか、一日目は悩んでいたようだ。
 ディアルトはペガサスのアテナと、一見ただの猫のマタを同行していた。アテナはリチャードはもちろん、小間使いなどの視線も釘付けである。冒険者は見掛けることが多くとも、やはり珍しい上に、天の使いだ。
 でも、マタがミニとミキを見て、突然後ろ足だけで立って、彼らの引き綱が届かない範囲まで走って行った時には‥‥皆、声を失っていた。最近、羽帽子を被ってお洒落をするなどと語るディアルトまで、なんともいえない目で見られている。
 セシェラムは以前もお披露目した妖しい輝き、ほるうた・おうみに、こちらは普通の猫のあんずを連れてきたが、もっぱら見る側である。給仕する側、とも言う。あんずとミニ、ミキが一時睨み合っていたが、それはそれで楽し気に眺めている。
 ウォルターはストーンゴーレムと二本足で歩くトカゲを連れてきて、当人の予想通りにリチャードと丁々発止の駆け引きを繰り広げていた。けれどもジェーンがゴーレムを連れ帰りたいと言い出したときには、さすがに予想外でしばし黙ってしまっている。
 ウォルターは言わないが、『変わった趣味の姉弟だ』と誰かが口にしたような。
 コンスタンツェはロバのヨナと駿馬のデボラを、『珍しくはありませんが』とつれてきた。アルトリーゼも弁当を積むのに、馬を一頭だけ。二人ともに、今回の観察には役に立たなくてと言いながら、いつもの調子で、
「ヨナの名前は聖書のヨナ書にあります予言者の」
 語り始めた。
 今回の聞き手は小間使い。主人の客だからと、笑顔を崩さないその態度は、皆の賞賛の眼差しを一身に集めていた。
 かたや、玉乗りを披露して、餌を貰って上機嫌のミキとミニを見ながら、アルトリーゼが言うには。
「しばらく見ない内に丸々と太って」
 誉めているのか、狙っているのか分からない発言を繰り出し、続きを危険視した仲間の有志に『弁当を広げよう』と勧められている。これがなければ、多分味について言及していただろうとは、彼女を知る人々に共通する考えだ。
 でも、弁当は美味しいし、天気も悪くなく、エリザベスも大満足。さらにヴィクトリアが差し入れもくれ、ペット達も運動を満喫し、皆は楽しい四日間を過ごしたのだった。
「あら、まだデボラの話が」
「お弁当ともお別れ」
 一部、満喫し切れなかった人々がいたかもしれないけれど。