砦を襲う巨大甲虫
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■ショートシナリオ
担当:龍河流
対応レベル:11〜lv
難易度:やや難
成功報酬:12 G 26 C
参加人数:7人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月22日〜08月31日
リプレイ公開日:2008年08月31日
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●オープニング
ある夜のこと。
冒険者ギルドの執務に一段落つけて、しばらくどこかに行っていたギルドマスターのウルスラ・マクシモアは部下の呼び出しでもう一度ギルドに戻った。よくあることなので、当人は書類の確認が何かだろうと思っていたが。
「甲虫? ああ、最近になって街の近くでもよく見られるようになった大きな甲虫ね。時々角がある個体がいるのでしょう?」
「そちらはジャイアントビートルと名付けられています。ブリットビートルはご存知ですか?」
この世の冒険者ギルドの中の不幸を全部背負ったような苦い表情で、幹部の一人が羊皮紙の束を繰っていた。ウルスラが知らないと言えば、即座に資料が出てきそうだ。
幸いにして、ウルスラはブリットビートルのことも知っていた。彼女の親指の先程の大きさしかないのに、矢のように速く飛び、やわな獲物は貫いて止めを刺してしまう甲虫である。ジャイアントビートルはどうかウルスラは知らないが、ブリットビートルは松明などの明かりに向けて飛ぶ習性もある。夜行性だから、これが多数生息している地域では冒険者達が最初にランタンを潰され、暗闇の中で、手足を虫の身で撃ち抜かれて難渋したという事件もあった。
他にも聞いた話はなくもないが‥‥
「それで、何が起きたの?」
「大きさはジャイアントビートル、飛ぶ速度はブリットビートルに匹敵する虫が出たと情報が届きました。少々離れた地域ですが砦で見張りが五名ほど、手足をもがれる重傷だそうです」
「その砦は?」
「ラスプーチンが殲滅した蛮族が住んでいた地域での、奴に味方する連中の動向への警戒をしていました。元は冬季の蛮族の襲撃に備えていたものだそうです。その地域の山には洞窟があり、蛮族の一部はそれを使って移動していたようですな」
すでに王宮にも報告は行っていて、早急に何らかの手が打たれるだろう。けれども軍が動くには、準備期間が掛かる。そして、彼らが動くのは否が応でも目立つ。
山と森と洞窟がある中、その地域に慣れた敵がいることが明朗な場合、そんな軍の行軍は狙い撃ちしてくれと言うようなもの。だからこそ砦から打って出て、森の中のくまなく偵察するといった行動に踏み切れないでもいる。そういう地域で、おかしな虫が出たわけだ。たかが虫と言う者もいるかもしれないが。
わざわざ幹部がウルスラを探して連れ戻したのは、ある予想があったからだ。
「王宮からの使いの方が」
一年中休むことなく、昼夜分かたず働く人がいることでは、キエフの街でも五指に入るだろう施設の一つからの使いが来た。
「そこまでご承知なら話は早い。現地で効果的に行動が出来、この虫退治が行える人材を集めていただきたい」
依頼が来るだろうという予想は、外れることはなかった。
・現場地域
キエフから徒歩五日、高速馬車二日の山岳森林地域。
三つの山が連なる山裾が深い森になっており、以前は十前後の蛮族(エルフ)の集落が点在し、千五百人前後が暮らしていた。ラスプーチンが一時この地域に逃亡し、その際に蛮族の集落に支配下に入るよう強要したことは確認されている。
このラスプーチンの誘いに大きな四つの集落が応じ、残りの中小規模集落六つは拒否した。このために六つの集落はデビルも含むラスプーチンの手勢の襲撃を受け、ほとんど壊滅状態にまで追い込まれた。一部住民は王国側に保護され、古くからこの地域にあった砦で傭兵として働いたりしながら、ラスプーチンの行方を追っている。
砦の先は徒歩半日の範囲はひたすらに森。南東方向に山がある。この山の頂近くは雪はないものの、険しいので蛮族もほとんど登らない。山裾から少し上がった地域に何本もの洞窟が存在し、山向こうに繋がるものもある。蛮族達の山間部の移動は、もっぱらこの洞窟に頼っていた。
●リプレイ本文
もはや冒険者は自由気ままとはいえない職業である。
移動の際にハロルド・ブックマン(ec3272)が筆記した一文は、合っていて、間違っているようだ。
「私が尋ねるのは差し障りがあろう。誰か頼んだぞ」
キエフを出発して三日目。前日夜に到着し、早朝から砦で情報収集をするにあたり、デュラン・ハイアット(ea0042)が皆に、『偉そうに』言ってのけた。彼の性格と態度を知っていれば、『自覚があったのか』などと思うかもしれないが指摘はしない。
それどころではない。すでに怪我人が二桁近く、うち半数は腕や指先が千切れる深手を負っていた。重傷者は治療が出来る施設がある街まで送られているが、軽傷者は砦で引き続き警戒に当たっているから、聞くべき話はたくさんある。
更に砦の周りの地勢や地形も確認しておかねばならない。砦の者達がほぼ把握しているとはいえ、違う目で見れば何か気付くことがあるかもしれないので、周辺地形は森に詳しいラザフォード・サークレット(eb0655)に、誘き出しの計画も立てられる馬若飛(ec3237)が付き添い、砦の者の案内を願って確かめることになった。
情報収集は、五十人近くも人がいると聞いたのでディアルト・ヘレス(ea2181)、エルンスト・ヴェディゲン(ea8785)、セシリア・ティレット(eb4721)の三人が手分けすることになった。ハロルドは極度に無口の上、発声もやや困難なので、聞き取った話をまとめて筆記している。デュランはあちこち巡りながら、時折口を挟む程度だ。
話はエルンストがいささかとっつきにくい印象を与えたようだが、的確に相手に尋ねたいことを説明するから、返答は滑らかに得られていた。ディアルトとセシリアは白の使徒だけあり、相手が蟲の被害に憤ったり、心配したり、負傷者のことを口にしたりするのにも耳を傾け、根気よく話を聞く。
それらを纏めた記録に目を通したデュランは自らの知識と経験から、ジャイアントビートルではないだろうと結論付けた。
「念のため、根拠を聞こう」
エルンストの問い掛けには、『速度が違う』と即答が返る。
「その速度では、あっという間に間合いを詰められますね」
飛ぶ相手に夜間の相手は危険だと考えていたセシリアも、ブリットビートルがディアルトのペガサスの三倍は早いと聞いて表情を曇らせた。
「誘き出すにも場所とこちらの布陣をよく検討しないといけないだろうな」
ディアルトも言って、ハロルドが要点を記している。
森の探索に向かったラザフォードと馬は、おおむね順調に仕事をこなしていた。洞窟がある場所を明るいうちに確かめ、地図に書き足す。
「ノルマンのは巣があって、大量発生したんだろ。近くまで行ったら、何か聞こえるかもな」
「確かめてみるか」
馬が木々の間から見える洞窟の入口を眺めつつ、『でかい虫なんて』とぼやいたのに対して、ラザフォードが捜索開始にあたりおもむろに身につけた兎耳のヘアバンドを揺らしながら返した。勘が鋭くなるらしいので馬は気にしないが、砦の兵士は邪魔なのにと思っているようだ。
別にそれに頼ったわけではないが、ある洞窟の入口にばらばらと何かが零れ落ちているのが二人とも見て取り、詳しく調べることにした。耳についてはラザフォードが自信があるので、内部の音を聞き取る間は馬が周辺の警戒を受け持つ。
幾らか時間を掛けて洞窟に近付いたところ、ラザフォードが『もういい』と身振りで示した。とはいえ、洞窟の入口に散らばるものの確認はまだなので、馬が拾いに行く。持ってきたものは、細長く節くれだった黒い代物。細い先端には固めの毛のようなものが付いてる。
「角はないか。大きさだけなら、ジャイアントビートルなのだろうが」
落ちていたのは、甲虫の外骨格と思われる部品が幾つか。角は見付からなかった。
ラザフォードが聞き取ったのは、数体分の蟲の羽音だ。ただの甲虫ならかなり近くないと聞こえないものが届くのだから、元の音の大きさは相当のものだろう。
そうした品物と情報を、砦で被害の発生状況などと突合せた結果、分かったことは色々ある。
蟲の襲撃時間は夜間。
場所、砦の周辺。砦には見張り台があり、そこに集中している。
被害者は砦に詰めている兵士と傭兵だ。
状況は、突然異音がして、そちらを振り返ると同時に松明を持っていた腕を引きちぎられたのが最初。以下、ほぼ同様の状況下で襲撃されている。
これまでの蟲の襲撃は、一度に三匹が確認されたのが最高で、ほとんどは一匹のみ。
蟲の大きさは、目撃証言からすると一メートル前後。一匹も捕らえられてはいないが、馬が持ち帰った足の大きさから推定してもそのくらいのものと推測された。
また羽音は甲虫のそれで、大きさが段違い。見た目は甲虫そのもので、硬い羽の下に、薄い羽があるところまで同じ。
今のところ、蟲が何者かに操られている気配はない。問題を挙げるとしたら、今まで現われた場所が砦の上階であり、誘き出しには向かないことだ。
冒険者の意見として多勢を占めたのが、まずは巨大蟲をおびき寄せ、来る方向を正しく見極めてから、巣を特定する。それが一つでも複数でも、全て探して殲滅することだ。
更にはそれを操る存在がいれば、それも合わせて滅ぼす。
「森の中ですから、延焼のないように備えておくべきですね」
プットアウトのスクロールを持参したセシリアが、地図を見ながら広さを推し量っている。砦の見張り台ならともかく、その外に火を熾すなら場所の選別は重要だ。
今回はすでに確認した洞窟以外に巣があるのか、それも確かめねばならない。
「場所なら、このあたりが良さそうだぜ」
「あのあたりの木は油分が少ないからな。最近の天候も聞いたが、乾燥でいきなり燃え上がるということもあるまい」
馬とラザフォードが実際に見た中で、火を熾しても良さそうな場所を上げた。砦の目の前だが、木を切り倒すには時間もないので、場所はそこに決まる。
問題は、その誘き出しが夜間になるということ。ただしこれにはエルンストが策を講じていて、砦の傭兵達に小さな筒と染料を用意してもらっていた。
「足の様子からして甲虫の仲間に間違いがないようだから、植物染料をこれに詰めてもらった。蟲の体に細い紐で引っ掛けられれば、夜に追いかける必要はないが‥‥問題は、これを出来る腕前が誰かいるだろうか?」
地方により、そうした方法で蜂の巣を見つけるのだと説明しつつ、エルンストが仲間の冒険者より話し合いに参加している砦の代表に尋ねた。冒険者達では馬以外は投擲、射撃の腕は心許ないので、砦の兵士達に頼ることになる。
「私はブレスセンサーで警戒しておこうか。方向は分かるし、数秒でも早く来るのが分かるに越したことはないからな」
どうしても彼が言うと『してやる』と言う風に聞こえるが、デュランが言うことももっともだ。ここまで大きければ、ブレスセンサーにも反応があるだろう。
隣の椅子では、相変わらずほとんど口を開かないハロルドが、『多数来た場合は、アイスブリザードで対応可能』と書き記していた。デュラン、ラザフォード、エルンストと精霊魔法が使える者は、揃って広範囲の魔法が使えるので誘き出しで予想以上の数が現われてもなんとか出来そうだ。
「そこまで対応できれば、私も地上で待機したほうが良さそうだ。ブリットビートルは熱源が複数あった場合、温度が高いものから襲うわけではないのだろう?」
ディアルトは蟲の戻る方角を間違いなく確かめるために、同伴したペガサスで空中待機も考慮していた。けれども持ち帰った足が甲虫のもので、速度はブリットビートル並み。いかにホーリーフィールドで身を守れても、無理はしないことにしたらしい。よって続く話は、決めた場所でどう焚き火と人を配置するかになった。
セシリアから、直線に焚き火を置くことで蟲の動きを誘導出来ないかと意見が出て、やがて決まったのは、計五箇所、直線で高さを変えた篝火を設置することだ。人の配置はもう少し詰める必要があるが、もっとも警戒する方向は探索で怪しい羽音が聞こえた洞窟がある向きである。他の洞窟も近い方向にあるので、飛び去る方向を少しでも見極められるようにと、人と道具の準備が進められた。
その晩は用意が整いきらず、翌日夜間に焚き火の用意がされた。
「足に絡ませられればいいが、羽では弾かれるか。さて、どうするか」
「いっそ、死なない程度に腹を切ったらどうだ? 虫を潰すと体液が出るだろう」
「その程度を間違えて息の根を止めたらどうする」
帰る先を確かめるための染料が入った筒を手に、エルンストとデュラン、ラザフォードが相談している。ハロルドは、『個別攻撃は出来ても、裂傷を作るのは無理』と相変わらず筆談で会話に参加していた。使用魔法の都合から、彼にはアイスコフィンで一体捕らえる役目が回ったようだ。
実際はどれだけ集まるかで臨機応変に対応を変えなくてはならないので、筒のついた紐がどうしても蟲に絡まなかったら攻撃とすることにして、日があるうちに準備を行う。馬は長いこと筒を投げる練習をしていたが、念のために小さめの筒を結んだ矢も用意した。
「当てるなら腹だよなぁ。飛んでいるところに当たる連中かよ」
愚痴っても仕方ないが、準備は怠りなく、セシリアとディアルトは巨大蟲が地上に降りた際の前衛として待機する。ペガサスには、ディアルトの合図でホーリーフィールドを張ってくれるように重々依頼済みだ。
そこまでして、日が暮れてからしばらく後に、篝火を焚く。派手に炎を上げるように幾らか油も注いで、高い位置のものが目立つように細工しておいた。
待ち構える側は、それらから離れて、少人数ずつ固まっている。大抵伏せているから、ただ待っているのはなかなか辛いことだが、巨大蟲が来たのは真夜中近くなってから。
来たという合図の笛が鳴って、十数える間もないうちに、篝火を支えていた支柱を崩す勢いで巨大な影が突っ込んできた。それによって自身が火のついた薪の下敷きになって暴れていたが、火の粉を振り落とすと周辺を窺う仕草を見せる。
この間にあと四匹ほどやってきて、時折羽を広げてぶうんと唸らせつつ、周辺を徘徊し始めた。
この時誰が合図したわけでもないが、ローリンググラビティーが蟲を襲った。不意に宙に投げ上げられるようになった蟲が地面に叩きつけられると、次々と筒が投げつけられる。二匹の足に絡んだが、残る三匹はそれより先に体を起こしたところで、一匹が氷漬けに。もう二匹はアイスブリザードを食らわされて、逃げの体勢をとったところで尻の部分に矢が食い込んだ。
その痛みでか、転げて数名が隠れていた場所に突っ込んだ一匹は、ホーリーフィールドとストリュームフィールドの二つに行く手を阻まれ、しばらくもがいてからようやく逃げて行った。そうした騒ぎで五つあった篝火が派手に崩されたので、羽音が離れたのを確かめると同時に、プットアウトや用意の水桶で消火活動が行われる。
翌日は犬に臭いを追ってもらい、蟲が戻った先を確かめる。やはり行き先は最初に見つけた洞窟だけだった。けれども羽音が増えていると報告がある。
「‥‥以上の状況から、戦力を地図に示した地点に待機させ、日中に火攻めにするのが一番と考えます。洞窟の出入り口は二つ、こちらと反対側に出るための道もあるので、時間を定めて同時に行動するのが、撃ち漏らしを減らすのに有効でしょう」
軍との交渉は、そうした話し合いに慣れたディアルトが行った。通路に使われていた洞窟なので、出入り口が二箇所あるのが難点だが、挟み撃ちにすればよい。移動直後だが機動力が高い装備で森に慣れた軍が反対側に回ることになった。
デビルが関係している可能性はデュランや馬から指摘されたが、これだけ各所でデビルが出ていれば軍側も警戒は強めていたようだ。装備に不足はないので、調整で無駄な時間を費やすこともなかった。
ノルマンでの騒ぎも情報として把握していた軍が運んできた大量の油が、全員の荷物に追加された。薪は砦の備蓄が空になる勢いで運び出される。
「延焼はこちらで防ぐので、周りの被害は心配しないでください」
セシリアが森を気にするエルフ達に話し掛けつつ、背負ってきた荷物からポーションを分ける。プットアウトに魔力を取られる分、治療薬も必要と他の荷物は置いて担いできたものだ。ディアルトも治療魔法は使えるが、人数も多いのでいつ必要になるかわからない。
火攻めの指揮は、ラザフォードと馬が砦の指揮官と相談しながら取る。デュランとエルンストは、それぞれが使う魔法の効果で、人が巻き込まれやすいものを説明していた。
今のところ、デビルの気配はない。
やがて、反対側に回った軍も準備を完了しているはずの時間になり、薄い煙が洞窟の中から流れてきた。さっそく火攻めに入ったものらしい。遅れることなく、こちら側でも火のついた薪が、油の壷と一緒に投げ込まれていく。
「数えている余裕はないが、三十くらいはいると思え」
デュランの魔法感知で嬉しくない助言を貰い、皆が身構えたところで、炎の壁を破って巨大蟲が飛び出してくる。後ろ足に火がついた状態のそれは、更に数匹続いたが、次々と魔法を浴びせられた遠くには逃げられなかった。地上に落ちれば、今度は刃が待っている。ただしその硬さに、仕留めるまでには時間が掛かった。
飛び出してくるものは次々と、仕留めるのには時間を要し、逃がさないために魔法が幾つも放たれる。その様子に、洞窟内の火を絶やさないように油を投げ込む役を引き受けて兵士達が加勢しようとして、今まで聞いたことがない声に制止された。
「幼虫がいるかもしれません。離れないで」
ハロルドの声だと理解するより先に、その内容から兵士はもとの位置に戻った。冒険者達も、それぞれの役割を果たす。
蟲が飛び出してきたのは、最初の三十分程度。それを倒しきるのに一時間余り要して、それでも洞窟内の火はしばらく落とさず‥‥ようやく鎮火させたのは午後も半分過ぎた頃合だった。
「こういう洞窟は崩落の危険がある。以後は使えないぞ」
エルンストが砦の人々に教えている間に、馬と数名がまだ熱い中に入って、
「たくさんあったぜ、蛹の焼け跡。あれが全部出てくる前でよかったよ」
幼虫や蛹が、倒した成虫の数倍はいたことを報告した。この報告を受けて、結局他の洞窟も内部まで確かめられたが、そちらは幸いにして異常はなし。
「で、デビルはどうしたかな? 他所でまた育てているのかもしれんぞ」
デュランの言葉通り、デビルの気配はないままだが、依頼は終了したのだった。
パリでは軍と冒険者ギルドが相当数を派遣した騒ぎにまで発展したのだと、また筆談に戻ったハロルドの言葉が、皆の記憶に嫌でも刻まれつつ。