ゴミ山漁りは危険がいっぱい
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■ショートシナリオ担当：龍河流 対応レベル：2〜6ｌｖ 難易度：やや難 成功報酬：1 G 69 C 参加人数：8人 サポート参加人数：-人 冒険期間：12月28日〜01月02日 リプレイ公開日：2005年01月05日 |
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●オープニング
ドレスタットの街にその船が帰還したのは、２２日早朝だった。当初の予定より６日遅く、舳先に大きく抉られた傷跡があったのが目を引く。とはいえ、ドレスタット領主にして、ゼーラント辺境伯『赤毛のエイリーク』の帰還は、街の人々を安堵させると同時に、熱烈に歓迎された。
そのエイリークは、執務室で側近と称される面々に取り囲まれていた。職種は聖職者から女官まで、種族もほぼ通り揃っていて、人数は１０名を超える。半数は御座船から従ってきた者で、残りはドレスタットで留守を預かっていた者となる。
『赤毛の』と称されるだけあり、目立つ赤い髪を掻きあげ、エイリークはげんなりと目の前に詰まれた羊皮紙の束を眺めていた。そのほとんどが先般ドレスタット近隣を騒がせたドラゴンに関するものだ。
「これで全部か？」
「後は貴方様が海上で遭遇されたウィングドラゴンの報告書があれば。今お聞きした範囲では、ドレスタットから追い返されたドラゴンのようですな」
「人の船に傷付けやがって。こいつも『契約の宝を返せ』と言ったんだったか？」
「正確には『契約の品を、取り返す』でしたわ」
羊皮紙を指で弾いたエイリークの問いかけに、壮年の男性と妙齢の女性がそれぞれに答えた。前者は留守を守っていてドラゴンの騒動に対し、後者は御座船でウィングドラゴンそのものに相対している。
「そうか。じゃ、海戦騎士団全員召集。ドラゴンのお宝が海賊どもから取り上げた荷物に入ってるはずだから探し当てろ。‥‥なんだ？」
「海戦騎士団には、魔法の品を見分ける術をお持ちの方は少なかったと記憶しておりますが」
「それなら冒険者も募ってこい。金は海賊どもから取り上げたのがあるだろ」
あっさりと言われた言葉に対して、居並ぶ人々はまたかと思った。金と物は、あるところから取り上げて、景気良く使う。エイリークのいつものやり口だ。
だが、しかし。
「親分‥‥聖夜祭ですぜ？ 冒険者も集まりやすかね」
時期柄、人手が集まるかどうかと口にした者はいる。『親分』との呼びかけに、エイリーク以外の何人かが厳しい目を向けたが、エイリーク自身に身振りで構うなと示されて黙っていた。
「とにかく依頼は出してこい。金はケチるなよ。人も選んでる場合じゃねぇ。やる気がありゃ、なにかしら役に立つ。他国人だろうが、ハーフエルフだろうが使えるなら構わねぇ。宝探しの他にも、仕事は山ほどあるんだろ」
他国人、ハーフエルフと具体的に挙げられて、嫌な顔をした側近がいないでもないが、徹底した実力主義で知られるエイリークの意向に逆らうことはなかった。
そうして、午後には冒険者ギルドに幾つかの依頼があがることになった。
「更にだ、毎度のことながら側近女傑衆が『お声が掛かればいつでもよりを戻すのに』なんぞと口にしたらしくて、大将がかんかんでな。奥方もエイリーク様の土産を代理の奴が届けたら泣いて受け取らないし」
「おい‥‥その、他人には聞かせられんような噂話をしに、わざわざ冒険者ギルドに来たのか、ダカン」
もう深夜も深夜の、どこか訪ねるには非常識な時間帯。緊急事態に備えて開いている冒険者ギルドの受付には、ドワーフの親父がいた。深夜の受付はただでさえ酔っ払い遭遇率が高いのに、聖夜祭の煽りで外はまだ賑やかだ。港の辺りもさぞかし賑わっていることだろう。
日中は、御領主の御座船見たさに人が集っていたという。帰還が遅れた理由がドラゴンとの遭遇だから、なおさら興味を引かれた人々が多かったのだろう。
そうして、先程もそのドラゴン関係の依頼が一つ、あがっていったばかりだ。ゴミ漁りという、領主からの依頼とはとても思えない内容だが。
ついでに受付の親父には、子供の頃から知っている目の前のダカンが、騎士団の船に乗っているのが未だに信じられない。しかし、今回に彼が依頼の窓口だ。それも、あの伯爵様からの。
「いや、依頼だ。これもゴミ漁りだな、ちょっと物が違うが。海戦騎士団が海賊から取り上げた武器防具の屑で、検分が済んでない物を頼む」
先程あがった依頼は、海賊から押収した品物のうち、日用品や贅沢品だったものを中心に、ドラゴンが求める『宝』がないかを探す内容だった。今回のものは、海賊から押収した武器防具の壊れたものから、その『宝』を探すものだ。
もちろん、そのどちらにもない可能性だってあるのだが。
「ドラゴンは金目のものを溜め込む習性もあるそうじゃないか。そんなガラクタに混じっているものか？」
「わかんねえぜ。なにしろ結構な戦闘だったと聞いてる。元は綺麗でも血を被ればぼろに見えるものもあるさ」
壊れてないといいけどなと、まるで人事のように言いながら、ダカンは書きあがった依頼書を覗き込んでいる。読み書きもほどほどにこなす彼は、依頼書の内容に満足の表情で、にやりと笑った。
「他にも幾つか依頼が来ると思うぜ。面倒掛けるけど、よろしく頼まあ」
「心配せんでも、これが仕事じゃ。だいたいエイリーク様の依頼ともなれば、わしらも気張るしかあるまいて」
ドラゴンがまた攻めてきたら大変だからと、やっぱり人事のように言うダカンの腰に拳を見舞って、親父は依頼書を掲示板に貼り付けた。
『壊れた武器防具の検品する者を求む。目標、ドラゴンの求める魔法物品の回収』
●今回の参加者
ea3776 サラフィル・ローズィット（24歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国）ea5225 レイ・ファラン（35歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国）
ea6137 御影 紗江香（33歳・♀・忍者・人間・ジャパン）
ea7211 レオニール・グリューネバーグ（30歳・♂・神聖騎士・人間・ロシア王国）
ea7256 ヘラクレイオス・ニケフォロス（40歳・♂・ナイト・ドワーフ・ビザンチン帝国）
ea7359 ギヨーム・ジル・マルシェ（53歳・♂・ウィザード・シフール・ノルマン王国）
ea7400 リセット・マーベリック（22歳・♀・レンジャー・エルフ・ロシア王国）
ea8935 李 美鳳（25歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国）
●リプレイ本文
●山をなすゴミ 拾う者なし人の家なら結構な広さの二階家くらいの大きさの倉庫の中は、混沌としていた。
「見るからにー、使えそうなモノはないですネー」
入り口を最初にくぐったシフールのギヨーム・ジル・マルシェ（ea7359）が、皆の背丈より上がって、首を巡らせての感想がこれだった。もう少し様子を分かり易く言うと。
「まあ、ゴミの山ですわね」
サラフィル・ローズィット（ea3776）の感想となる。これに深々と溜め息を吐いたヘラクレイオス・ニケフォロス（ea7256）の心中は、多くが他の冒険者と共通していた。
領主からの依頼だって聞いたのに、結構とんでもない話だったかも‥‥
しかも、問題なのは。
「なんだか分からないドラゴンの宝を、この中から探すのか」
レイ・ファラン（ea5225）が冷静に指摘した通り、捜し物がなんだか分からないことだ。挙げ句に、この中にあるという保障もない。
騎士団関係者のダカンも苦笑している中、御影紗江香（ea6137）だけは満面の笑みで借りた皮手袋を早速着けていた。『ドラゴンの宝』があるかも知れないなんて、考えただけでも心が弾む。早速にも、魔法で鑑定ができるギヨームに作業を始めようと言い出しそうな勢いだったが‥‥
如何せん、倉庫の中はそのための場所の確保もできない状態だったのである。
「そもそもそういう依頼とは言え、最初にもっときちんと片付けておけばいいものを」
レオニール・グリューネバーグ（ea7211）が思わずといった感じで口にした通り、倉庫の内部はあまりに雑然としすぎていた。わざわざ人の手を頼んで、捜し物をせねばならないだけのことはある。
その惨状に、李美鳳（ea8935）が手慣れた様子で、布を頭に巻いて髪の毛を覆った。それに全員が倣って、最後にリセット・マーベリック（ea7400）がダカンに手を振る。
「後で竜騎亭に行きますからぁ」
竜騎亭とはダカンの妻がやっている酒場のこと。以前に別の依頼でリセットとギヨームは店に関わったことがあるのだ。
ついでに今回、サラの事前交渉のおかげで、ドレスタットに家のない者は泊めてもらえることになった。食事を竜騎亭でとることが条件だが、宿代を考えればありがたい話である。
そうして彼らは、まず山のような破損武器の数々を壁際に寄せることから始めた。作業が出来るだけの広さを手に入れるまでに、結構な時間がかかっている。
●さて、最初にどうしよう
魔法を使う場所と、確認した物品を当たり外れに分けておく場所を手に入れた一行は、ここでいきなり作戦会議に入った。
やることは山となったゴミから、目的のものを見付け出す。その方法はギヨームのミラーオブトルースと決まっているのだが、それ以前の対応が意見の一致を見なかったのだ。確認方法でも、こまごましたところが食い違っているが、それはギヨームのやりやすい方法が一番だろう。
ここで意見が分かれたのは‥‥
「洗わなくてもよろしいんですの？」
「汚れていても鑑定は出来ますし、後でも」
サラとリセットの会話に代表される、『事前に物品を洗うかどうか』だった。結局時間の都合もあり、まずは鑑定を急ごうとなったのだが、その前にやらねばならないことはある。重いものと軽いものに仕分け。
その際に、ギヨームとヘラクレイオスから銘やドラゴンに関わりそうな紋章でも刻んでいないかは確認するように指示があった。
そうして、結果は人によって全然違う。更にそれだけで二日目も昼になってしまった。
やたらと綺麗に汚れが拭ってある物もあれば、ざっとはたいただけの物もある。それでもとりあえず種類と大きさ、重さで分けて、見る影もないほど大破したものは望み薄として別にした。この時点で、残念ながら銘などの手掛かりがあるものは見当たらなかった。
この間に紗江香が床に印を付けて、ギヨームの魔法範囲と、彼の視界に一目で入るところの確認を済ませている。レオニールとレイは、重い武器防具をさっと持ち上げられるかまで試していた。
そこまでやったところで、ようやくギヨームの魔法の出番である。軽いものは片手に一つずつ、重いものは一人が一つ、男性陣が重いもの、女性陣が軽いもの担当で、一度に鑑定できる数は十一個から十四個。
鑑定初日になった二日目。鑑定した道具は軽く百を超えるが‥‥
「せっかく用意したけど、いらないかも」
ギヨームが『本日閉店デス』と言って終わった鑑定の後を見ながら、美鳳が呟いた。彼女の手には羊皮紙の束があるが、魔法物品でなければ、壊れたものなどわざわざ記録をとる必要はない。
最初はそれでも記録しておこうかと思っていたのだが、そのまま使えそうなものはほとんどなかったので止めたのだ。
恐らくはこの調子で、三日目以降も延々と作業は続くのだろう。
「この中に‥‥あるといいな」
「せめて、魔法の道具の一つくらいな」
レイとレオニールの会話は、皆の心境を代弁していた。
●だけどご飯はおいしい
騎士団関係者ダカンの愛妻ディアヌのやっている酒場竜騎亭は、皆の働いている倉庫からたいして遠くないところにあった。今回、リセットの生命線である。
なぜなら彼女は、決定的にお金がなかったからだ。自分の寝床ついでに、安い食事も交渉してくれたサラには、感謝してしすぎることはない。
ただ、問題なのは‥‥
「ご、ご飯が食べたいです」
「頼んでおいたから、それまで飲め」
リセットの状況に同情したヘラクレイオスが色々と奢ってくれるのだが、その大半が酒だということだ。ドワーフの彼に付き合って飲めるほどリセットは体力に恵まれていない。
他の面子はダカンを囲んで、あれこれと質問をぶつけていた。領主のエイリークの噂、海戦騎士団のこと、海賊討伐の状況、御座船へのドラゴン襲撃の様子など、聞きたいことはたくさんある。
「あー、側近のバード殿がドラゴンと話をしたはずだが‥‥そこでも『宝を返せ』って話にしかならなかったらしいぞ」
バードが側近と聞いて、身を乗り出したのは美鳳だった。海戦騎士団にはナイト以外も含まれていると昨日聞いた彼女は、本日はハーフエルフにも望みがあるか尋ねたかったのだ。今はちょうどいい機会である。
なにしろよくある話とはいえ、ヘラクレイオスは相当のハーフエルフ嫌いで、そのことを昨日の晩に気付いてからは美鳳と会話はしない。見兼ねたレオニールが意見してくれたが、それで改善はされなかったのだ。レオニールはロシア出身の上、当人なりに思うところもあるようで、これに不機嫌一歩手前だ。
他の面子はまったく構わないか、仕事をきちんとしていれば問題ないといった様子で、ダカンはまさに『仕事すればいい』との態度だった。エイリークも実力主義だと噂に聞いていたから、やはり確認してみたい。
「噂でハ、美人で若イ奥サンがいるそうデスからー、きっと拘わりマセンよー」
それとこれとは話が違うと言いつつも、ダカンは『全然拘わらない人だ』と苦笑した。ただし。
「側近衆にはハーフエルフ嫌いと他国人嫌いで有名なお人もいるけど」
こんな港町で他国人嫌いってどうなんだと、冒険者にも多数いるノルマン出身者以外は思った。だいたい紗江香や美鳳のような月道以外での行き来はないような国の者でも、一目でそうと判ぜられないこともあるのだが。
「なんとも変わった方がおいでですのね」
「嫌いなら嫌いと、はっきり言うのもある意味正直でいい。下手に隠されるよりましだ」
紗江香がため息交じりに口にした台詞に、レイが冷徹に言い返した。裏があるような奴より、いっそ付き合いやすいとは誰を指して言ったものか。
そうだろうかと紗江香と美鳳が考えを巡らせている間に、別の卓にいたギヨームとレオニールは大変なことになっていた。
「あらぁあ、へぇんねぇ」
一度会ったらなかなか忘れられない、特徴的な話し方のディアヌが酒の容れ物を片手に首を傾げている。傾げついでに、中身の残っている容れ物はヘラクレイオスに押しつけていた。
「この方はお酒は強くありませんって、昨夜も言いましたでしょう」
「飲みぃやぁすくぅ、しぃたのぉうよぉ」
勧められたら断れないところもあるレオニールと、一日魔法を使って疲れているギヨームの二人を酔い潰してしまったディアヌにサラが一応文句を言っているのだが、この二人ではまったくそうは見えなかった。
まあ、酔い潰れた人達は店の奥の部屋に入れて‥‥毎晩、そんなことを繰り返している。
●結局見付かったものは
毎日一人くらいは酔い潰れているように思っても、冒険者たるもの体力自慢も多い。よって日中の作業になんら問題はないのだが、四日目の昼過ぎまで、収穫はまったくなかった。
初日に床に書いた『魔法の品』の場所はどんどん狭まって、もはやそうではない品物に埋め尽くされる寸前だ。いまだ一つも発見されないので、場所など必要になってから仕切り直せばいいのだが‥‥延々と武器、防具、更に多少細かな分類を繰り返して、物品を積み上げていくのは結果が出ないだけにつまらない作業だった。
ただ、基本的に自制心に富んでいたり、後始末が性分だったり、義理に厚かったり、面倒見が良かったり、責任感が強かったりする面子が揃っていたので、誰も文句は言わなかった。一番明るいのは紗江香で、きっと何かが見付かるに違いないと本日も信じている。
とはいえ、魔法はギヨームしか使えないわけで、彼の負担は非常に重い。
「飲み物、何があリますカー」
四日目ともなると凝視し続ける目が痛いようで、皆にいたわられながら作業をしているところだった。休むと言えば、リセットが敷物を出してくれ、サラがお茶をいれてくれ、片付けは美鳳がやってくれ、紗江香が持ち込んだ料理を出してくれると至れり尽くせりだ。
彼女達も、それなりに疲れているから仕事以外に熱が入るのだろうとは、同様に遇してもらった他の男性陣の観察だ。相変わらず、ヘラクレイオスとレオニールは同じ話題で自分の言い分を譲らないのだが。
「食い物がまずくなるから、よそに行くか黙るかしてくれ」
レイが言い放って、この時は二人とも黙り込んだ。これさえなければ、どちらも気のいい仕事熱心な奴だがと、レイが思ったのは内緒だ。
そんな時間も加えて、相変わらず毎回十一個から十四個の物品を確認していたところ、ようやくギヨームが笑みを浮かべた物品が出た。見た目は単なる汚れたナイフだが、見れば特に壊れたところはない。手違いでこちらに振り分けられたもののようだ。
この日は他に、鏃が一つと柄の折れた槍が一本、ギヨームの魔法で見出された。大喜びで紗江香が洗い、美鳳が記録を取ろうとして綴りがわからず、サラに教えてもらっている。
なお、全部の物品確認には依頼の最終日まで掛かったが、魔法物品はその三つだけだった。この中に『当たり』があるかどうかは、誰にも分からない。
「これ、どうやってドラゴンの宝かを確かめるのか、誰かご存じですかしら？」
紗江香に尋ねられた七人のうち、返答できる者は一人もいなかった。ダカンとは毎日顔を合わせるが、必ず長時間話が出来るとは限らず、そこまでは誰も聞いていなかったのだ。
引き渡しの際にでも尋ねてみればいいじゃないかとなって、余った時間はもう少し倉庫の中を整理することになった。鍛冶の腕も持っているヘラクレイオスは、打ち直しが簡単そうな品物を見繕っている。
その横で、リセットとレイは目利きの仕方など習い、レオニールは紋章が入っていた幾つかの武具を眺めて、記憶を辿っていた。壊れていても、元の持ち主が分かればなにかしらの参考になるかも知れないからだ。
そんなことをしているうちに、冬の日はあっという間に暮れていった。
●報酬には厳しい
依頼の成果を見届けに来たダカンは、三つも魔法物品があったと聞いて、素直に驚いていた。どうやら何も見付からないだろうと思っていたらしい。もう一つの同様の依頼では、格別何も見付からなかったそうだ。
それが三つも見付かったからか、今夜はダカンが竜騎亭でご馳走してくれると言うので、八人は揃って出向いていた。倉庫から直接来たので、ばらける暇もなかっただけなのだが。
ここで紗江香が気になっていたことを尋ねてみた。見付かったものがドラゴンの探す宝かどうかを確認する方法だ。が‥‥
「さあねぇ」
一斉に、竜騎亭の常連客まで付き合ってくれた『えーっ』という不満の声も、ダカンには効果がなかったらしい。
ついでにヘラクレイオスの、武器の幾らかを譲ってほしいとの願いもあっさりと却下された。報酬は支払っているので、追加は認めないのだそうだ。
「代わりに、飲んでいいから」
「ふん、ではしこたま飲ませてもらうぞ」
そっちのほうが高くつくよと、残る七人は思った。でも料理も頼んでいいと言われたので、とりあえず口にはしない。
ただ、よけいなことを言ったのが、エイリークの噂をしていた時のギヨームだった。あの方は忙しいよと言われて。
「マ、領主の仕事には後継者云々もありまスしネ」
と、さらりと言い放ったのだ。それだけならいいが、周囲の酔っ払いがその話に便乗して、女性陣に『決まった相手がいないなら幾らでも紹介するぞー』と騒ぎ出して‥‥
「まったく、料理がまずくなるだろ」
「今はその気持ちがよくわかった」
レイとレオニールに文字通りに蹴散らされた。一部、リセットに鳥の骨を投げられた輩もいるらしい。
「賑やかですわねぇ」
「それ、ちょっと違うわよ」
そんな様子ににこやかなサラを見て、美鳳は思わず口走っていた。
結局、大事なところはダカンにごまかされたままに、依頼は終わってしまったのだった。報酬はきちんと支払われたけれど。
