●リプレイ本文
ゴブリンに襲われそうな村に駆けつけた冒険者さんは六人いました。
メイの国の鎧騎士のレイモンド・カーティスさん(ec0316)と、天界人のクリシュナ・パラハさん(ea1850)、メイ・ラーンさん(ea6254)、カメリア・リードさん(ec2307)、村雨紫狼さん(ec5159)、レラさん(ec5649)です。天界人の人達はうまれた世界や国が皆さん違うのですが、村の人達は説明されてもよく分かりません。とにかく助けてくれる人が来たので、大喜びです。
でも、冒険者ギルドにあった依頼書だと、村のこともゴブリンがやってくる方向も分からなかったんですけど‥‥
「ゴブリンがたくさんいたのを見た方はどなたですかな?」
「このあたりの様子も教えてくださいな」
レイモンドさんとカメリアさんが、さっそく村の人達にお話を聞き始めました。
ゴブリンがいた方向は?
「あっち」
西の方角のようです。村に来たのは何匹くらい?
「二匹だったねえ」
じゃあ、大きさはどのくらい?
「このくらいだよ」
「でも俺が見た中には、もっと大きいのもいたよ」
ゴブリンの大きさとホブゴブリンの大きさのがいたようです。
何か武器は持っていたかな?
「棒」
「鎌」
「斧」
数えてはないけど、行列になって歩いていたなら何メートルくらい?
「あ〜、十メートルくらいごちゃごちゃ歩いてたから‥‥二十匹はいたのかな?」
聞けたお話はこんな感じ。
「ゴブリンは臆病な性質と聞きますし、二十匹くらいで村を狙うとしたら、単独行動の輩は考慮せずともよさそうですな」
レイモンドさんがうんうんと納得している脇では、メイさんが村の人達にゴブリンのことを説明しています。
「最初に来たゴブリンは、村を調べに来たんだろうね。家畜とかがどれだけいるか調べて、奪うつもりなんだよ」
ここの村は、羊がいっぱいいるのです。牛や山羊もいます。鶏もいっぱい。だからゴブリンも村を襲おうと思ったのでしょう。
もちろん村の人達も羊も牛もヤギも鶏も小屋に入れていましたけれど、何日も入れっぱなしはいけません。だから早くなんとかしてもらわなくっちゃ。
「ごぶりんたいじ、がんばるですよ〜!」
カメリアさんがあんまり勇ましくない掛け声を上げたら、村の人達は大喜びです。
さあさあ、皆で退治しに行かなくては。
村の周りは畑があります。その先は牧草の原っぱです。更に向こう側に行くと、林になっているのです。
そしてゴブリンがやってきている西側の林には、村の一番端のおうちからせっせと歩いて二時間くらい掛かります。誰も計ったことはないけれど、多分十キロくらい。
「放牧場には入れないで欲しいなぁ」
と、村の人は言っていました。
「村の近くで戦うほうが、場所が広くてやりやすいんだけどな」
紫狼さんがぼやいていますが、村の人達は最初っから『村から離れたところでよろしく』と言っていたのです。そりゃもう、聞く耳なんか持ってません。ついでに紫狼さんが精霊さんを自分の嫁だと言い張るので、『なんか罰当たりじゃない?』と思っているようです。精霊さんは大事にしないといけないのに、扱き使っていると思ったみたい?
ここで『嫁だから一緒に風呂に入ってるし、一緒に寝てる!』なんて言っていたら、きっと『わー、変な人だ』と指差されたでしょうけど、そんなこと言っている時間はありません。とっとと歩いていって、ゴブリンが近付いていないか確かめなくちゃいけないのです。
「一足お先に行かせてもらいますよ」
方向が分かったなら、ファイヤーバードで飛んでいって様子を見てくると、クリシュナさんが魔法を唱えました。それですごい勢いで飛んでいきましたが、とっても目立ってます。ゴブリンが上を見ていたら、『変なのが飛んでる』って悩むかもしれません。
カメリアさんは連れてきた鷹さんに偵察をお願いしています。でも言葉が通じるわけではないので、ちゃんと言うことを聞いてくれるかは分かりません。とりあえず西の方角に向かっていきましたけど‥‥
その間に、
「キムンカムイさんがやる気だから、一緒に偵察に行ってみるね〜」
レラさんが、やっぱり連れてきたキムンカムイさんにくわえられて、林の方向に引き摺っていかれています。見たところ、子供が熊にさらわれているようです。空を飛ぶ熊さんは、普通はいませんけれどね。
まあ、キムンカムイさんとレラさんが一緒に偵察に行ってくれれば、他の皆さんも助かるのですが‥‥キムンカムイさんは林の入口でレラさんと別れて戻ってきています。
「これって、大変なことだよね」
メイさんが言いました。そう大変なことなのです。
なぜなら、レラさんが一人で歩くと変な方向に歩いていって、帰って来られない人だってことは、この村に来るまでの間によく分かっているからでした。だからキムンカムイさんが一緒だから、偵察お願いしてもいいかなって、皆は思ったのに!
レイモンドさんもカメリアさんも紫狼さんもメイさんも、慌てて走っていって、ゴブリンより先にレラさんを探します。林の中を迷走して、端っこに戻ってきてくれていたからよかったですけどね。
そんなことをしている間に、ファイヤーバードで何回か見回っていたクリシュナさんが戻ってきて、言いました。
「こっから三キロくらい先で、休憩してるみたいでしたよ。数は二十六か七か、そんなとこですね」
冒険者さんは六人なので、一人で四匹か五匹倒せば、全部退治できます。でもその中にはホブゴブリンがいたので、そいつらはちょっと強いかも。
でもでもだけど、
「今までもっとすごい相手と戦ってきたんでしょ? じゃ、平気だよね」
「わたくしは、今回は正真正銘最初に受けた依頼ですが、他の方々は心配ありますまい」
レイモンドさんが『あっはっはっ』と笑っていますが、何が相手でも油断してはいけません。こちらも攻撃しやすい場所で待っていたいのですが、林からあんまり出ると村の人達が嫌がるし、今からゴブリンのところに行くとどこでぶち当たるかわかりません。
じゃあどうしようかってお話になって、林の入口で退治することにしました。だって木がいっぱいあると、向こう側が見えなかったり、武器が引っかかったりして面倒ですからね。
ゴブリンが近付いて来たら分かるように、鳴子を作ろうかって意見もありましたけど、ロープはたくさんありません。それに鳴子を作っている時間もなさそう。
「おいらが木の上から見張ってるのはどう?」
レラさんの案は悪くはなさそうです。木の上から動かないでいてくれれば、道に迷うこともありません。それにゴブリンが木登りが得意だって、誰も聞いたことはないですし。
まずはレラさんがゴブリンがやってこないか見張れる木を見付けて、よじ登っていきます。下のほうではレイモンドさんが、ゴブリンの集団が通れそうな場所を探していました。村の人達が使っている道もありますけど、それ以外の場所を通ってくるかもしれないからです。
更にクリシュナさんがブレスセンサーの魔法を使って、だいたい待ち伏せは完成です。
でも、ゴブリンが近付いてくるまでは、林の外のところの枯れ草を結んで、足が引っかかるようにしておくのです。枯れてるからすぐにぷちってなりそうですけど、いっぺんに走って出て来られたら大変ですからね。
さあ、後はゴブリンが来るまで待つのです!
やがて、ゴブリンがやって来ました。
レラさんが見付けて、合図をしたので、四郎さんとレイモンドさんとメイさんが武器を構えます。カメリアさんとクリシュナさんは魔法の準備です。
カメリアさんのわんこはやる気満々ですが、レラさんのキムンカムイはどてっと座っています。
そうして、戦いが始まったのでした。
なんだか薔薇の花びらが見えた気がします。
「ここまで来て、ばらばらになるのは許せませんな」
レイモンドさんが麗しの薔薇を使って、ゴブリンに幻を見せているのです。びっくりしたついでに、自分のことを追いかけてきたらいいなあと思ったのですが‥‥一応武器を持っていますから、ゴブリンは別の方向から村に向かうことにしたみたいです。
ワーキャー言いながら、どたどたやかましく移動していきます。
「うっわーっ!」
木の上から降りてきたレラさんが見付かってしまいました。もちろんゴブリンは、見た目が弱そうなレラさんに向かっていきます。もちろんレラさんは必死に逃げますとも。
そうするとレイモンドさんが駆けつけて、頑張ります。なにしろおうちで待っている娘さんに、かっこよい話をしてあげなくてはいけませんから。
ぶんっ、どばっ、びしゅっ、どさっ。
棒を持っているゴブリンなら、ずんばらりんと退治です。
さくさくさくっ、ぴゅーっ、とっとことー。
目の前のごぶりんをさっくりして、レラさんも慌てて遠くに離れていきます。
別のところではメイさんも頑張っていました。なにしろ後ろのほうに魔法使いさんの女の人達がいますから、ゴブリンを打ち漏らしてはいけないのです。そんなことをしたらかっこ悪いから、すんごく頑張りますとも。
「魔法が飛んできたら、耐えるしかないかな」
巻き込まないようにしてくれるはずですけど、戦っていると簡単には避けられないのです。ゴブリン、いっぱいいるし。
どしゅっ、どてっ、ざしゅっ、こけっ。
さっき、草を結んでおいて良かったって、メイさんは思っています。
でもだけど、魔法使いさんだって待っているばかりではないのです。クリシュナさんもカメリアさんも、もにょもにょ何か唱えています。魔法の呪文は一瞬で唱える方法もありますが、ちゃんともにょもにょ唱えたほうが掛かりやすいのです。敵にも魔法使いさんがいたらのんびりしてはいれませんが、今回はゴブリンなのでもにょもにょと。
その前にはもちろん、
「魔法を打ちまーす」
とカメリアさんが叫んでいました。なにしろ雷の魔法で、他の人に当たったら大変なのでちゃんとお断りしておかなくてはいけません。
ばりばりばりばりばりばり〜〜〜〜〜っ!
雷の魔法が当たったゴブリンは体がしびれてもう大変。動けないので逃げられません。当たらなかったゴブリンには、びっくりして逃げ出そうとしているのがいます。
「逃がすのはよくないと思うのですよ」
派手に魔法は使っていないクリシュナさんは、魔法でゴブリンの動きを次々遅くしています。
よろよろ〜、よろよろ〜。
逃げようったって、そうは行かないのです。
そうして、紫狼さんもレラさんより小さい女の子の姿の精霊さんでお嫁さんの二人と、ゴブリンを退治していました。
「ふーかたんもよーこたんも、汚れないようにしておけよー」
キャーとかワーとか言っている女の子達の声だけだと、とっても楽しそうです。紫狼さんの言うことは、どっちかというとお父さんみたい。
ざくざくざくっ、ごばびしゅっ、べしょしょっ。
やっていることはゴブリンずんばらりんなので、見た目はちょっとこわいのですが、お仕事だから仕方ありません。
そんなこんなで二時間くらいすると、ゴブリンはしっかりと退治されたのでした。
と、クリシュナさんが村の人達にお知らせしたら‥‥
「埋めてもらえる?」
とお願いされたのでした。だってほら、でんでろでんになっちゃったら、臭いますからね。
「そういうことなら、穴は掘るよ。掘りやすいところはどこかな」
「このあたりが根っこがなくて良さそうですよ」
メイさんが穴を掘るというので、クリシュナさんが掘りやすい場所を探しました。まずはレイモンドさんと紫狼さんも一緒になって、穴を掘ります。
それから、埋めなきゃいけないんですけど‥‥でんでろでんじゃなくても、ずんばらりんされたのは結構怖いのです。ええ、汚れたりしたら嫌ですし。
でも頑張らなきゃいけません。
頑張りました。
頑張りましたとも!
やがて。
「いやあ、よかった。ありがとう。今夜は美味しいものを食べて行っておくれね」
村の人達にとっても感謝されながら、まずはお湯をいっぱい沸かしてもらったのでした。体を洗って、髪の毛もようく洗って、綺麗に乾かすのです。精霊さんは汚れてないので、今回はお風呂なし。
それから美味しいご飯を食べて、夜はぐっすり寝たのでした。
帰り道には、ゴブリン退治をレイモンドさんのおうちの人達が楽しめるようなお話にしてあげなくてはいけないようです。