【ごぶりん・あたっく】へんなのがでたっ!

■ショートシナリオ


担当:龍河流

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月26日〜08月02日

リプレイ公開日:2005年08月05日

●オープニング

 ドレスタットは、ノルマン王国の端っこのほうにある港町です。端っこだけど、とっても昔からあって、すごくたくさんのお船が行ったり来たりしています。
 遠くの国から珍しい荷物を積んだ大きな帆船、パリから人を乗せてやってくる中くらいの船、あちこちの漁船も、港の中で荷物を運ぶはしけも、毎日毎日、行ったり来たり。
 とっても大きな街なので、冒険者ギルドもあるのです。港に負けずに毎日毎晩、お仕事の依頼を受けたり、紹介したりしています。
 そんな冒険者ギルドで、係の人が言いました。
「これなら、冒険者になったばかりの駆け出しでも、油断しなければ大丈夫だろう」
 さて、どんな依頼なんでしょう?

 ドレスタットは港町です。
 でも島ではないから、港と反対側にはずーっと広い土地があります。たくさん建物があって、街を出ると今度は小麦や野菜、果物の畑や、織物にする糸を取るヒツジ、乳を搾るヤギやウシ、卵をもらうニワトリや、お肉になる動物いっぱいが飼われている牧場があったりするのです。
 なにしろドレスタットには人がたくさんいますから、食べるものを作る人たちも大忙し。
 ところが!

「あっ、うちのニワトリがいない!」
「うわぁ、変なのがヤギをさらっていったーっ」
「こらぁ、ウシを離せぇ!」

 ある日のことです。
 棒を持った『変なの』が何匹もやってきて、飼われていた動物達をさらっていってしまいました。牧場の人たちはびっくりして、でも鎌や鍬を持って追いかけたのです。
 そうしたら、大変。

「いてて、頭殴られたよぅ」
「錆びた剣を持ってたのがいたぞ」
「うーん、なんだか分からなくて気持ち悪いし、これ以上怪我人が出たら困る」

 棒で殴られたり、蹴られたり、古いけど剣を振り回す『変なの』も出てきて、牧場の人たちは追い返されてしまいました。
 だけど、ここで追い返されたままになったら、また『変なの』はやってくるに違いありません。
 それにニワトリもヤギもウシも、食べられちゃわないうちに取り返さなくては!

 そうして、牧場の人たちはみんなでお金を出し合って、冒険者ギルドに『変なの』退治をお願いしたのでした。
 ところで、『変なの』って?

「子供くらいの大きさで、ひょろひょろしてたな」
「でも口に大きな牙が、こう下から生えてるんだ。顔も土気色でさ」
「きっと、うんと強いモンスターに違いない」

 冒険者ギルドの人が言うには、『変なの』はきっと『ゴブリン』なんだそうですよ。

●今回の参加者

 eb0746 アルフォンス・ニカイドウ(29歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb2235 小 丹(40歳・♂・ファイター・パラ・華仙教大国)
 eb2449 アン・ケヒト(27歳・♀・クレリック・エルフ・ビザンチン帝国)
 eb3052 アブナンベル・フィリア(33歳・♀・ジプシー・人間・エジプト)

●リプレイ本文

 とっとこ歩いて、冒険者の皆さんは『変なの』がいるはずの森の近くまで来ました。
「この三人が仲間じゃ。言葉が余り通じん者と変わった姿をしておる者がおるが、仕事に支障はないので心配ないのじゃ」
 パラだけど付け髭が大好きな小丹(eb2235)さんが、他の三人を牧場の人たちに紹介します。小さんは、セブンリーグブーツという魔法の靴で、牧場に先回りしていたのでした。困っている人がいるのですから、急がなくてはいけません。
 本当はアルフォンス・ニカイドウ(eb0746)さんが最初に言ったように、全員で馬に乗っていければよかったのですけれど、馬も二頭しかいないし、人数は四人だし、アルフォンスさん以外は馬に乗れなかったので歩いてきたのでした。でも時間節約のために、昨日は途中からアルフォンスさんが馬で先に進んで、テントを張ったりしてくれていたから、予定よりけっこう早く着いたのです。
 だから、牧場の人たちは大喜びかって言うと‥‥
「怪我人がいれば私が診るが、どうかしたかね」
 アン・ケヒト(eb2449)さんが話しかけると、『女の人だ、髪短いけど』とひそひそ。
 アルフォンスさんのすごく変わった帽子というか被り物を見て、『あの人はどうしてあんな格好をしているんだろう』とぼそぼそ。
『なんだか、不思議そうに見られてますが』
 アブナンベル・フィリア(eb3052)さんが困ったように言うと、『何を言ってるのかわからねー』とびっくり。
 実は冒険者の人たちとお話しするのは初めての牧場の人たちと、依頼を受けるのが初めてだったり、片手の指で数えられるくらいの冒険者の皆さんは、ちょっとどきどきしながら相談を始めたのでした。でもアンさんは平気です。
「服装やこの口調で、よくどちらか尋ねられることがある。だが、どちらにせよ、きちんとゴブリンが倒せれば問題はないのだろう」
 『変なの』が出てきたのはあっち、森の途中にはこんな道があって、目印はこういう木で、だけど地図はないし、『変なの』がどこにいるのかわからない。後で牧場の人たちが怪我をしないようにしてくれれば、罠を仕掛けても構わない。
 アンさんがみんなが納得することを言ったので、相談はすぐにまとまりました。アブナンベルさんはみんなが何を言っているのか分からないけど、きちんと姿勢をよくして、真面目な顔でお話は聞いていたのです。
 さあ、ゴブリンを退治しに行きましょう!

 冒険者の皆さんは、今回ギルドで顔を合わせたときに色々相談をして来ていました。もちろんゴブリンを退治する方法をです。ギルドには通訳のシフールさんがいるから、アブナンベルさんも作戦はちゃんと分かっています。
 まず大事なのは、連れ去られたニワトリやウシを助けることです。それとゴブリンも退治しなくてはいけません。それで冒険者の皆さんは考えました。
 まず、ゴブリンが待ち伏せしていたところを聞いたので、そこまでそうっと進んでみます。うまい具合にゴブリンがいなかったので、今度はここに罠を仕掛けることにしました。
「アブナンベル嬢ちゃん、これじゃこれ」
 小さんがスコップを荷物から取り出すと、アブナンベルさんとアンさんも同じものを出しました。他にロープもあります。アンさんはあまり力がないので、スコップはアルフォンスさんに貸してあげ、ロープを持ってあたりを歩き始めました。木の間に張って、ゴブリンを転ばせる作戦です。目のいいアンさんが見えにくい場所に仕掛けるのですから、きっとゴブリンも派手に転んでくれるでしょう。
 その間に、小さんが決めた場所に、アルフォンスさんとアブナンベルさんが落とし穴を掘ります。深さは人間のアブナンベルさんの膝くらい。あんまり深いのを掘っていて、ゴブリンに見付かったら困るからです。落とし穴も、ゴブリンがずぼって落ちることでしょう。
 きっとそのはず、多分、そうだったらいいな‥‥

 ところで、落とし穴を掘り終わったのは夕方でした。
 本当はこの後にアンさんが囮になって、ゴブリン達を罠まで連れてくる作戦だったのですが、暗くなってからは危険です。アンさんが代わりに落とし穴に落ちてはいけません。
 だから冒険者の皆さんは、この日は森の入り口近くでこっそり寝ることにしました。アルフォンスさんも朝になったらニワトリが鳴いて、ゴブリンのいる場所が分かるんじゃないかなって考えています。
「テントは使えないので、下にも毛布を敷いて寝なさい。わかったか?」
『蒸し暑いから一枚でいいです〜』
「嬢ちゃん、下に敷くのじゃ、下に」
 月が嫌いだというアルフォンスさんは、一番に毛布を被ってしまいました。横にはなっていないので、寝ているのかは分かりません。その間にアンさんと小さんは、アブナンベルさんに予備の毛布を渡して、ここで野宿だと説明していました。言葉が通じないのは、やっぱり大変です。
 ちなみに毛布は、準備のよいアンさんが人数分持って来ていたものなのでした。アンさんは寝袋だって、毛皮の敷物だって持っていて、準備万端です。使うのは毛布なんですが。明日のために、牧場の人にお料理もお願いしておきました。
 もちろん夜中も交代で、ゴブリンが出てこないか見張っていたのですけれど、なんにもなくて朝になりました。
 だけど‥‥ニワトリの鳴き声はしなかったのです。もしかして、もう食べられちゃったんでしょうか。
 どきどきしながら、とうとう囮作戦開始なのです。

 アンさんが、牧場の人が作ってくれたとってもいい匂いのするごはんを持って、森の奥のほうに行きます。ゴブリンをおびき出して、他の三人が待っているところに連れて行くのです。危ないから、あんまり奥には入りません。でもゴブリンが気がつかないといけないから、アンさんはわざとうるさく歩きます。
 森の奥で、何かがさがさいいました。
 そのとき、アルフォンスさんは仕込み杖を持って大きな木の陰に、小さんは右手に日本刀、左手に十手を持って茂みの向こう、アブナンベルさんはナイフを握って別の茂みに隠れています。
 アンさんが、向こうから足早に戻ってきました。後ろのほうでは、やっぱり何かががさがさ言っています。
 やがて、ひょこんと顔を出したのはゴブリンです。手には棒、一匹だけ古くてあちこち欠けた剣を持っています。これが牧場を襲ってゴブリンに間違いありません。
 さあ、やっつけましょう!

 ゴブリンがアンさんの飛び越えた落とし穴にはまると、小さんが日本刀で斬りつけました。
 ざくっ。ざくざくっ。
 別のゴブリンがロープの罠に引っかかって転ぶと、アルフォンスさんが仕込み杖で叩きます。
 ぼこっ。ぼこぼこっ。
 一番深い落とし穴にはまったゴブリンは、アブナンベルさんがナイフでえいやと刺しています。
 ぶすっ。
 アンさんは、誰も怪我をしないので、残っていたゴブリンに拾った石をえいと投げつけました。
 すかっ。
 斬られたり、殴られたり、刺されたりしているゴブリンは、穴に落ちたり転んだりしているので痛くてもすぐには逃げられません。でも石を投げられたゴブリンは、慌てて逃げ出しました。あんまり慌てていたので、途中で転んでいます。
 このときに、アブナンベルさんが魔法の呪文を唱えました。慣れていないから、二度目で成功したみたいです。なにしろ姿が見えなくなったので。
 冒険者の皆さんの作戦は、ゴブリンをおびき出して、もちろん退治をするのです。でも連れて行かれた動物を助けなくてはいけないので、一匹だけは退治しないで追い返し、巣までついていくことにしていました。ただ着いていったら危ないから、アブナンベルさんが魔法で姿を消していくことも決まっています。
 ただ、他の三人は知らなかったのです。
 アブナンベルさんは、もちろんこっそりゴブリンの後を追いかけて、巣のあるところを確認しました。よく見たら、ニワトリもヤギもヒツジもいます。ただ洞窟の狭いところにぎゅうぎゅう押し込められていて、とっても弱っているようです。
 なんてひどいと思ったアブナンベルさんは、もちろんすぐに他の人たちのところに戻って、一緒にゴブリンを倒すつもりでした。でも。
 アブナンベルさんは、とんでもない方向音痴だったのです。

 おかしいのです。
 ゴブリンを倒した冒険者の三人は、アブナンベルさんが戻ってくるのを待っていました。もちろん分かるところまでは追いかけて、そこからあっちを見たり、こっちら耳を済ませたりしていたのです。だけどアブナンベルさんはなかなか戻ってきません。
「無理はするなといったのに」
 アンさんが心配のあまり怒っていますが、言葉が通じないのだからアブナンベルさんがちゃんと分かっていたのかやっぱり心配です。だいたい他の人たちと違って、アブナンベルさんは今回が初めての冒険なのでした。
「追いかけるかのう。ところどころ、下草を靴先で抉ったりしておるようじゃ。もう少し先までは、それで何とか追えるじゃろう」
 小さんが付け髭をいじりながら言いました。なんだか力を入れすぎて、付け髭が取れかかっています。でも心配すぎて、よく気が付いていないみたい。
「よし、行こう」
 アルフォンスさんは、さっと決めて歩き出しました。もしもアブナンベルさんがゴブリンに気付かれて、襲われちゃったりしていたら大変です。怪我をしていたら速く治してあげないと、とっても痛いではすまないかもしれません。
『あれ、またです。どうしましょう』
 そうして三人がアブナンベルさんを探しに歩き始めた頃、アブナンベルさんはゴブリンの巣の前に三回目の到着をしていました。ぎゅうぎゅうの動物達も、アブナンベルさんを見ています。
 可哀想だし、ゴブリンは洞窟の中で逃げる用意をしているみたいで、外にはいません。
 せっかくだから、早く助けてあげたいかもしれません。ロープでぐるぐるのヤギさんなんか、じーっとアブナンベルさんを見ています。
 助けてあげましょう。

 アブナンベルさんを探していた小さんとアルフォンスさんとアンさんは、動物達がきゃあわあ騒いでいる鳴き声に気がつきました。慌ててそちらに走っていってみると、アブナンベルさんがニワトリを抱えて走っています。
 でも、他の人たちがいたのとは全然違う方向に。
「アブナンベル嬢ちゃんっ」
『あ、遅くなってすみません』
 慌てて呼んだら、アブナンベルさんは方向転換して走ってきました。一緒に走っていた動物たちも、うろうろしながら何とか付いてきています。ちょっと離れて追いかけてくるのは、もしかするとゴブリンが二匹?
 アルフォンスさんとアンさんと小さんは思いました。アブナンベルさんはゴブリンに追いかけられて、なかなか戻ってこれなかったのかなって。単なる方向音痴だったんですけれど‥‥
 でもお仕事ですし、ゴブリンは退治しなくてはいけません。
 四人で頑張って、退治しましょう。

 そうして四人は、残念ながらニワトリとヒツジが一匹ずつ減ってましたが、動物たちを取り戻して、牧場に返すことが出来たのでした。牧場の皆さんもちょっとだけ残念そうでしたけれど、ゴブリンがいなくなってとっても安心したのです。
 四人は牧場でおいしい牛乳を飲ませてもらったり、卵料理や採りたて野菜をご馳走になって、ゆっくりお休みさせてもらってからドレスタットに戻ったのでした。
「ゲルマン語は早く覚えたほうがいいな」
「他の人と離れるのは避けるようにの」
「お互い、これからも頑張ろう」
 初めての冒険を終えたアブナンベルさんは、三人に色々と話してもらったのですが‥‥
『はい、頑張ります』
 相変わらず、言葉は通じなくて不自由なのでした。

 でも次の冒険のときには、きっともっと大活躍できるのです。
 色々頑張ったら。