素敵?なお茶会への招待〜お茶会対決!
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■ショートシナリオ
担当:龍河流
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:5
参加人数:8人
サポート参加人数:4人
冒険期間:10月06日〜10月09日
リプレイ公開日:2005年10月16日
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●オープニング
「そうよ、おばちゃん。今度のお茶会はルイザお姉ちゃんと対決して、買ったほうがジョリオおじちゃんのお嫁さんなのよ!」
「絶対負けませんわーっ!」
冒険者ギルドの受付で、そんな叔母と姪の心暖まらない会話が繰り広げられたのには、もちろん理由がある。
最初は、憤懣やるかたないといった様子でやってきたアデラが、同僚にして見合い相手のジョリオの素行調査を言い出したのだ。素行調査も何も、職場でほぼ毎日顔を合わせるのだし、見合いは上司を介したものだから、よほどのことがなければ必要などないはずだが‥‥
「シルヴィが言うには、ルイザが相手でもいいって言ったんですって。そんな人なら家には二度と入れませんーっ」
実はジョリオの幼馴染である受付係が目を点にして立ち尽くしたところに、話題の人のジョリオがやってきた。女の子を一人背負って走ってきたらしい。
この背負われてきたのが、アデラの姪の一人、シルヴィである。四人姉妹の次女だ。
興奮状態でジョリオに『幼女趣味なんて最低』と騒ぎ散らしているアデラをさておき、受付係がシルヴィに事の次第を尋ねたところ、返答はこうだった。
「おばちゃんがジョリオおじちゃんと結婚しないなら、お姉ちゃんに結婚してって頼んだの。お姉ちゃん、やだって言ってたけど」
ジョリオに懐いたらしい彼女は、彼が自分の身内になってくれるのなら叔父でも義兄でも構わないと思い切ったらしい。それが変な風にアデラの耳に入って、素行調査依頼になったようだ。
ちなみに、アデラに責められているジョリオの発言を拾うと、彼も『十三の女の子が結婚相手になると思うか』とシルヴィの案には拒否を示していた。今年三十になった男が、十三の女の子と結婚したがったら、それはそれである意味問題である。
「やっぱり、おばちゃんじゃないとダメなのね」
「そりゃそうだ。だからそのおばちゃんをうんと言わせてきなさい」
こんな騒動になるから、二度と『お姉ちゃんと結婚して』は言わないように。と、幼女趣味と罵られた幼馴染の心情も慮って、受付係がシルヴィをたしなめたが、彼女は諦めない人だった。
「じゃあ、おばちゃんの好きなお茶会で、お姉ちゃんと競争して、勝った人がジョリオおじちゃんと結婚したらいいのよ。勝ち負け決めるのは冒険者の人に頼んで」
「「「それのどこがいいって」」」
大人三人分の反対意見を無視して、シルヴィはアデラに言った。もうアデラは今にも失神しそうに興奮している。
「おばちゃんが勝ったら、お姉ちゃんは結婚しなくていいのよ」
「‥‥そ、そうですわね。私が勝てば、ルイザがお嫁に取られないんですわ」
そして、心暖まらない会話に繋がる。
「シルヴィ、あれは話がおかしいだろう」
「おばちゃんが勝ったら、おじちゃんと結婚するのはおばちゃん。もしも負けちゃったら、おじちゃんがお姉ちゃんをお嫁にやるのがいやならおばちゃんが代わりに結婚しろって言えば、結婚するのはやっぱりおばちゃん。おじちゃんとあたしにはうれしいお話よ」
「アデラ、落ち着け。頼むから落ち着いてくれ」
「ルイザはお嫁にやりませんわよーっ!」
そんなわけで、今度のお茶会は叔母と姪のお茶会対決。
判定役を求む。
●リプレイ本文
●お茶会前日
この日、アデラは仕事で留守だった。アデラとお茶会で対決するルイザも仕事でやはり留守。家にいたのは今回の仕掛け人、シルヴィのみである。
「マーちゃんもミーちゃんも、おばちゃんの勝ちって言わなきゃ駄目なのよ」
「不味いお茶を入れたほうが勝ちにしたら、アデラ姉ちゃんの勝ちになるよ」
「勝負なのらから、たくさん倒したほうが勝ちなのらね〜」
明日のお茶会の準備は頭にないシルヴィが、マート・セレスティア(ea3852)とミーファ・リリム(ea1860)に焼いた栗をあげて買収中だ。相手が食欲の権化なので、焼き栗程度で納得してくれるかは不明だが。
そんな『お子様達』の様子を横目に、手伝いの源真霧矢と野々宮美凪と買い物から戻ったサラフィル・ローズィット(ea3776)が、藍星花(ea4071)とリュヴィア・グラナート(ea9960)と一緒に材料の吟味と料理の内容を相談していた。栗はアデラの持っている郊外の畑で採れたもの、野菜はそこと庭の畑から、鶏肉は庭で飼っているものを結局ジョリオがさばいてくれたらしい。他に季節の様々な茸に、庭の林檎はまだ固いので市場で仕入れた林檎などの果物、塩漬け肉や干し魚などを並べて、パンケーキも焼く準備は万端。後は取り掛かるばかりのところである。
が、問題は。
「そこ、手を出さない」
「食べていいのは、このパンだけよ」
虎視眈々と林檎や葡萄を狙い、台所をうろうろとするパラとシフールと、その後ろをちょこまかと歩くこの家の住人だった。シルヴィがいなければ、気付かずに色々とおなかに収められていただろうが‥‥
「ねえねえ、チーズあげるから、明日はおばちゃんの勝ちって言うのよ?」
彼女はマーちゃんとミーちゃんの買収に忙しかった。
そして同じ頃、庭の畑や果樹、ついでに納屋の中を眺めて。
「これもあれもお茶の葉ですか? アデラさんのお茶では見たことがないような気がしますけど‥‥」
手伝いのバデル・ザラ―ムに畑の香草を説明されて、首を捻っているガイアス・タンベル(ea7780)がいた。そんなにいい香草があるなら、素直にそれでお茶を入れてくれればいいのにとは言わない、よく出来たナイトである。
ガイアスが友人に収穫時期を確認しつつ採った野菜が、明日の料理に化けるのももうすぐだ。一部、おなかをすかせた『子供達三人』の口に入ってしまったけれど。
●お茶会当日
この日、朝も早くから一波乱があった。
約束の時間に遅れずやってきたアニエス・グラン・クリュ(eb2949)とサーラ・カトレア(ea4078)が、家の前でジョリオと一緒になったのだ。それで三人揃って、アデラの家の戸を叩いたわけだが。
「「「「アニ―、ずるいー」」」」
アニエスが、アデラの姪のルイザにシルヴィ、マリアとアンヌの四人姉妹にいきなり文句を言われたのである。サーラが『すぐそこで会っただけ』と口添えしてくれたが、我先にジョリオにしがみついた四人の耳に入ったかどうか。当のアニエスは、突然のことに挨拶も忘れて目を丸くしている。
「別に子供嫌いではないようね。で、結婚するの?」
もう一人、目を丸くしているアデラの横で、星花がいきなり核心に突っ込んでいる。リュヴィアが『その辺は本人達の気持ちだから』なぞと取り成しつつ、ジョリオを見る目がなんとなく怖い。
ともかくも、お茶会の開始なのである。
今回のお茶会は、アデラとルイザの勝ったほうがジョリオと結婚するという、シルヴィ発案の当事者意向を見事に無視した内容だ。ガイアスなど、いつの間にやらのアデラの縁談にしばし呆然とした後、『女性の争いに男は口出ししない』と処世術を発揮して、サラが淹れてくれたお茶を飲んでいる。先ほど取り分けてもらった胡桃入りのパンを、横からマーちゃんに掻っ攫われてむせてしまったが。
そして、判定役だというのにリュヴィアは、
「わたしは葉を見ただけで優劣が分かる。味はジョリオ殿が確認すればいい」
と言い放ち、サーラは、
「見届け役です」
と飲む様子がなく、サラと星花は、
「そもそも判定基準が決まっていませんでしたね。わたくし達をより唸らせるお茶?」
「勝っても負けても結果が同じなら、正直に判定しちゃったら?」
と一番基本のところで意見が一致していないのを吐露している。
ルイザの手伝いをさせられているアニエスは審査員になりえないし、残る二人はそもそも食べることにしか興味がない。懸命にお茶を淹れているアデラとルイザ達に聞こえないように、ジョリオが女性四人に『判定役じゃないのか』と口にしたが。
速攻で言い返された。
「そもそもジョリオ殿が、自分で口説かずに上司を介して話を持っていくからこじれたのだ。職場が同じで、昔から知っているのなら、自力で口説け」
リュヴィアの、この用意してきたとしか思えない矢継ぎ早の言葉に、サラと星花とサーラも深く頷いた。言われたジョリオも頭を抱えたが。
「アデラが、結婚は職場の誰かが勧めてくれるもんだと思い込んでるから、仕方なくて上司に頼んだんだよ。三年かけても口説けなかったのは、確かに俺が悪いんだが」
責められたのとは違う方向性で、ぼやき始めてしまった。アデラの思い込みが激しい性質は知っている女性陣が、『そういうことか』と笑いを噛み殺しながら黙り込む。口を開いたら、笑ってしまいそう。笑ってもいいのだが、ルイザが淹れたお茶を運んできたので、驚かせてはいけないと思ったのだ。
そして、お茶は畑の雑草ではありえない香りと色合いで、アデラがいつも淹れるものより明らかにおいしそうだった。茶葉はこれだと見せてもくれたので、リュヴィアが先ほどの台詞はなかったように飲み始めた。
「あ、このお茶はおいしいのら〜」
「おかわり〜っ」
まったく難しいことは考えず、ものも言わずに食べることに邁進していたミーちゃんとマーちゃんが、かなり熱いはずのお茶を飲み干して器をルイザに戻した。ガイアスも釣られて飲もうとして舌を出し、その隙にマーちゃんとミーちゃんにまた料理を掻っ攫われている。
「昨日見たときには、毒草はありませんでしたけれど‥‥相変わらず変な草がたくさんでしたのに、ルイザちゃんが選り分けたのでしょうか」
ちょうどお茶を運ぶ手伝いでアニエスが来たのを幸いに、感嘆の表情をしたサラが問いかけると、返ってきたのは首を捻るような言葉だった。アニエスも、なんとも言いがたい顔をしている。
「いつも飲んでいる香草茶がこれなんだそうです。台所のこの棚に入ってるって」
指で台所の見取り図を描いて、こことアニエスが指したのは茶器がしまってある戸棚だ。ちなみにシルヴィがせっせと用意した雑草は、ルイザが『これ違う』と一目で捨ててしまったらしい。見れば、確かにシルヴィはお湯を沸かしながらぷーっと膨れている。
その横では、アデラが茶葉を真剣な顔付きで吟味していた。今まで、あれをされてろくな目にあったことがない参加者一同だが、それでもまたやってくる人々だから様子を見守ることにしたようだ。ルイザがまともなお茶を淹れたので、アデラの出来によって判定基準も変わってくるのだし。
「今聞いたんですけど、シルヴィのお母様が香草茶が好きだったそうなんです」
ルイザ達の両親と祖父母も、何人かいた叔父もすでに亡くなっているので、アデラと住んでいると言っていた。自分も父親がいないとアニエスは、食べるのに夢中な三人をさておいて、他の四人にそう話してから、ぽつりと呟いた。
「そうすると、アデラ様は未婚の母?」
「そ、それは違いますわ」
「他所でそんなことを言ってはいけませんよ」
サラとサーラの二人がコラコラとたしなめるが、星花とリュヴィアは苦笑している。ジョリオはどこでそんな言葉を覚えたんだと、いささか呆れ顔だ。
ところでこの間、ガイアスとマーちゃんとミーちゃんは他の人々が食べるのにそれほど熱心ではないのをいいことに、あれもこれもと食べていた。マーちゃん、ミーちゃんはそもそも食べ放題をするために来ているのだし、ガイアスも処世術を駆使したのと野菜は自分で収穫したのとで食欲旺盛だ。シフールとパラなので、時々卓上に乗っかる勢いで伸び上がり、実際に乗ったりして料理の奪い合いをしていたのだが‥‥やはり飲み物が欲しい。先ほどルイザが淹れてくれた香草茶は飲んでしまったので、もう一杯欲しいなと示し合わせたように三人でお湯を沸かしているシルヴィを見やったところ。
「今回は頑張りましたのよ。はい、どうぞ」
アデラがお茶を配ってくれた。ふーふーと申し訳程度に吹いて、かなり熱いのを一気に飲み干したのがミーちゃんとマーちゃんだ。どういう口の中をしているのかは不明。挙げ句に一言の感想もなく、また鶏肉と野菜の煮込みを奪い合っている。
ガイアスはもう少し冷まして、それから一口慎重に飲んだ後、普通に喉を潤した。
「今日のお茶はおいしいですね。綺麗な色ですし」
思わず正直に『今までのお茶はおいしくなかった』を含んだ感想を漏らしつつ、ガイアスは半分残ったお茶を置いて、卵料理を食べ始めたのだが‥‥
「あーっ」
マーちゃんに、残ったお茶を飲まれて無作法な声を上げてしまった。その隙に、卵料理の皿はミーちゃんが自分のほうに寄せていっている。
彼らの争いは、お茶会対決とはまったく関係のないところで続いていた。
戻って、アデラのお茶はというと。
「アデラ様、素晴らしいですわ。これからはずっとこの調子で参りましょうね」
「茶葉の分量も、お湯の温度も申し分なし。でも仏頂面は良くないわね」
サラが感涙に咽び、星花がお茶以外に厳しい採点をつけているが、飲まないといったリュヴィアも口をつけたのだから、出来は相当だ。今までのお茶はなんだったんだと思わせるくらいのいい具合。アニエスもお茶を飲みながら、ようやく焼き菓子でも摘まもうとしたのだが、シルヴィがやってきた。
「お茶飲んだから、勝ち負け決めてもらわないといけないの!」
「そういえばアデラ様、ルイザちゃんが結婚するのはわたくしも反対ですけれど、買ったらお約束は守っていただかないといけませんのよ?」
シルヴィの宣言に、サラがアデラに駄目押しをした。アデラは相変わらず、自分が買ったときの条件は忘れ去っているらしい。こくこくと頷いた。
しかし。
「では‥‥互角ですね」
このお茶の優劣をつけるのは、味だけなのか、作法も含めてか、どうする? と、こっそり相談し始めていた人々の中で、サーラがふいと声を上げた。他の全員から注視されて、もう一度言い直す。
「だって、お二人とも予想以上の出来でしたでしょう? ですから、これは引き分けです」
「やったのら〜、もう一回やるのらね〜」
嬉しそうに手を叩いたミーちゃんの皿から、川魚の揚げたのに刻み野菜のソースをかけた料理が消えた。シフールの小さな手で口を引っ張られても、マーちゃんが一度口にしたものを返すはずはないし、返されても大迷惑だ。ガイアスはルイザからお代わりをもらって、もぐもぐと果物に取り掛かっている。
そうして、『じゃあ、もう一回』の方向に流れている一同を恨めしげに見やったジョリオが、それはそれは低い声で言った。
「楽しんでないか」
「前途多難ね」
「自分でアデラ殿を口説き落としてから言え」
「つくづくご苦労なさいますけれど、アデラ様と結婚なさりたいお気持ちに変わりはありませんのよね? 聖なる母の祝福があなたにありますように」
星花、リュヴィア、サラと畳み掛けられ、ぐうの音も出ないジョリオを、アニエスが気の毒そうに見守っていた。見守っていただけだが。
そうして、『もう一回皆でお茶会』に落ち着いた一同は、それからものんびりとお茶の時間を楽しんだのだった。
●お茶会翌日
「だって、私がお嫁に行ったら、この子達の結婚式の親代わりが全然違う名前になってしまうでしょう? それって変だと思って」
「おばちゃんなんだから、名前が違ってもいいじゃないのっ。おじちゃんが子供嫌いでなかったら、結婚相手にいいかもって言ったくせにー!」
この日、アニエスはお土産のお茶を片手にアデラの家を訪れていた。お菓子片手の星花もいた。ガイアスは朝から畑仕事の手伝いに寄っていて、マーちゃんは毎度のごとく残り物を食べに来ていた。他にも次々と皆が顔を出している中で、シルヴィがアニエス持参のお茶淹れての時間に、叔母と姪はこんな言い争いを始めたのだ。
切っ掛けは、アニエスがシルヴィに、『おじさんが欲しい』と言われたアデラが『自分は実の母じゃないから頼りないのでは』と思っていたら大変と吹き込んで、見合いに乗り気ではない理由を尋ねてみようと二人で気合を入れた返事があれだったからだ。予想通りに思い詰められていたらそれはそれで大変だったが、名前が変わるのが嫌って、理由はそれだけかと誰もが思った。
挙げ句に、食べるのに夢中の人を除いて、一同が耳を疑ったのは。
「ジョリオさんが子供嫌いでないなら、亡くなった次兄の親友ですし、お仕事も出来ますし、素敵な縁談相手だと思いますわよ」
あなた、ギルドでジョリオを『幼女趣味なんて最低』と罵ったのはなに? と思わせる発言を、アデラはかましてくれた。
「婿に来てもらえば? 跡取りではなかったわよね?」
あきれ果てたと言いたげに、でも『ちょっと面白いんじゃない』という様子も見え隠れする発言をした星花は、シルヴィに胡桃と干し葡萄と干し林檎入りの焼き菓子を差し出された。彼女が持参したものだが。
そして、皆の注目を集めたアデラが何か言うより先に、マーちゃんがパンの塊を抱えながら宣言する。
「じゃ、つぎはジョリオ兄ちゃんがアデラ姉ちゃんとホントに結婚したいか確認するお茶会だね。いつやる?」
昨日も、最後の最後に『兄ちゃん、大変だね。あははははは』と大口を開けて笑った挙げ句に、身長の都合でジョリオの腰をバンバン叩いていたマーちゃんは、やっぱりにこやかだった。大口を開けないのは、食べ物が口に入っているからだ。
アデラのお茶会対決、次は相手を変えて、近日開催予定‥‥らしい。