●リプレイ本文
冒険者ギルドで依頼を受けた冒険者達は、おやっさんに言われたとおり、まず食料の準備をする。
「酒もほしいとこだが‥‥仕事が済むまで我慢しとくか」
四日分の保存食を購入するファイターのオーム・ローカーハ(ea3911)。
神聖騎士ヤングヴラド・ツェペシュ(ea1274)もそれに倣う。
「‥‥おや、ウィザードは私だけのようですね〜。そういう事であれば、皆さんが存分に腕を揮えるよう、しっかり後衛からサポートさせていただくとしましょうか」
仲間を見渡し、そう言うと、にっこり微笑むウィザードのユリアル・カートライト(ea1249)。
「しっかし、どうにもムサい状況だねぇ」
ぼやくオーム。
「これだけ集まって女っ気が一人とは‥‥」
そう続ける浪人の羽紗司(ea5301)。
この依頼を受けた冒険者達の中に女性はただ一人。
忍者の狂闇沙耶(ea0734)だけだ。彼女はまだイギリス語を修得していないため、ナイトのシュナイアス・ハーミル(ea1131)か、司の通訳を必要としていた。
店を出る所で『わざと』つまずいて、沙耶の胸に飛び込むヴラド。
「む! この感じ‥‥細身ながらボリュームがあり、マシュマロのような感触はマッタリとしてコクがあって‥‥う〜む、これはいいモノだ」
すりすり顔を埋めながら宣うヴラド。
「ぶらど殿は可愛いのぅ♪」
頭を撫でる沙耶。
「こんなのまで律儀に通訳する俺って‥‥」
苦笑する司。シュナイアスは無視している。
さしたる障害もなく村に到着。
村長に挨拶を済ませた冒険者達は、了解を得て対オーガの罠を作成する。罠作りに必要な道具も借り受けられた。
「罠作りを始めるから司殿達はわしと一緒に来てくれ」
仲間達に呼びかけ、罠作りの指示をする沙耶。
「わかった。あんまり、時間がないから素早く手際よくだな。今ここにオーガが来られちゃたまらないしな」
そう答えながら作業を始める司。
切り倒した木を何本か積み重ね、障害物を作る。
地面を少し掘り返し、大量の水を撒いてぬかるみを作る。
無愛想で無口なナイトのレーヴェ・フェァリーレン(ea3519)も黙々と作業に従事している。
全員協力体制で望み、罠が完成する。
「オーガを捜して来る」
木の枝から枝へと移動し、オーガ捜索に向かう沙耶。
神聖騎士エヴィン・アグリッド(ea3647)、レーヴェ、ヴラドも続く。
「‥‥バイブレーションセンサー」
魔法発動の瞬間、ユリアルが茶色の淡い光に包まれる。
地面に伝わる振動で広範囲の探知が可能な魔法である。
しばらくしてオーガを発見した捜索組。
「ワラキア公子ヴラド・ツェペシュは怪人である。秘密結社グランドクロスに改造された彼は信仰による世界征服の為、日夜戦っているのだ!」
グランドクロスの旗に身を隠し、語る声。
そして、その旗を翻し、仁王立ちするヴラド!
「ふはははは! この結社怪人ヴラドが、不埒なうぬを成敗しに来たぞ! いざ尋常に勝負!」
マタドールのようにオーガを挑発する。
「オーラショット!」
オーラ発動の瞬間、レーヴェが淡いピンクの光に包まれ、放たれた闘気弾と、
「人に危害さえ加えなければもう少し長生きできるだろうに‥‥ブラックホーリー!」
魔法発動の瞬間、エヴィンが黒く淡い光に包まれると、聖なる力がオーガに炸裂する!
そして、自分の頭を指差すジェスチャー。
「ちゃんと状況を理解できているんだろうな! その頭で!」
親指を下に向けるエヴィン。
「そこの木偶の坊! 悔しかったら、わしを捕まえてみろ!」
同じく挑発する沙耶。
「GAaaaaaッ!!」
怒ったオーガがヴラドに襲いかかるが、なんとか回避し、旗でいなす。
そのまま突き抜けて、次はエヴィンを攻撃!
「そんな鈍い攻撃があたると思っているのか‥‥?」
ギリギリで回避したエヴィンが、さらに挑発しつつ罠の方へと逃げる。
「無茶はするでないぞ‥‥」
苦笑しつつ、オーガを誘き寄せる沙耶。
「来ました!」
仲間にそう伝えるユリアル。
戦闘体勢をとる冒険者達。オーラエリベイションを発動させるシュナイアス。
「GAaaaaaッ!!」
捜索組を追って猛るオーガが出現!
バキィッ!!
障害物として配置した木を一気に叩き割る!
「流石に力は桁外れだな。‥‥だがそれだけで勝てるほど勝負は甘くない!」
ジャイアントソードを構えるシュナイアス。
見事にぬかるみにはまるオーガ。
「狙い通りの展開かな‥‥ブラックホーリー!」
再び魔法を放つエヴィン
「そこじゃ!」
ダーツを投擲する沙耶。
「さて、鬼さんこちらだ」
『ストライク』の蹴りでオーガを攻撃し、素手受けで攻撃を受け流す司。
「囲んでボコるってのはなんだが、こっちも仕事なんだ、悪く思うなよ!」
『ブレイクアウト』から攻撃を組み立てるオーム。
「オーラショット!」
レーヴェが淡いピンクの光に包まれ、放たれた闘気弾がオーガに命中する。
「‥‥グラビティーキャノン!」
魔法発動の瞬間、ユリアルが茶色の淡い光に包まれると、重力波がオーガを襲い、ぬかるみに転倒させる。
「隙あり!」
「一発で効いてくれよ!」
蹴りで『スタンアタック』を仕掛ける沙耶と司。
意識の朦朧としたオーガに、冒険者達の連携攻撃!
「ふははははは〜〜、これが人間様の知恵というものである! 真剣勝負に卑怯も待ったもヘッタクレもないのである!」
ハルバードで追い打ちをかけるヴラド。
「ハッ!」
気合いと共にノーマルソードを振り下ろすレーヴェ。
「トドメだ!」
ジャイアントソードの重量を活かした『スマッシュ』を叩き込むシュナイアス。
戦闘結果。全員無傷!
多少は泥まみれになったものの見事な作戦勝ちである。
「ここまで、出てこなければ。死なずに済んだのにな。‥‥運の悪い奴だ」
少しだけ同情する司。
「終わりだ‥‥もう一度生まれ変われるように祈ろう‥‥」
黙祷するエヴィン。
そして、オーガ退治の報告を村長に済ませ、借りていた道具を返し、依頼達成である。
「有り難う御座いました。これで村への被害を未然に防ぐことができました」
深々と頭を下げる村長。
「ここはこれより我ら結社の領土となった! ふはははは! 予言の未来の成就に、また一歩近づいたわ!」
グランドクロスの旗を掲げ、領土化を宣言するヴラド。
それを呆然と見ている村人達‥‥。
「これはいったい‥‥?」
恐る恐る尋ねる村長。
「よくぞ訊いてくれた!」
野望を語り始めるヴラド。
いったいどうなることやら。
「なあ、沙耶の嬢ちゃん。仕事も終わったし、一緒に飲みにでも行かないか?」
ナンパを始めるオーム。しかし。
「あ、しまった。言葉が通じないんだったな‥‥」
「仕方がない付き合ってやろうか? オームのオゴリでな!」
笑いながら通訳し、図々しいことを言う司。
「なるほど、おーむ殿の奢りとな。付き合うのもやぶさかではないぞ」
微笑む沙耶。
「さてさて、どこに行きましょうかね〜」
いつの間にか混ざっているユリアル。
「わかったわかった。オゴりゃあいいんだろ?」
受け取った報酬を確認しながらオーム。
「俺は用事があるのでな。失礼する」
エヴィンは帰りに薬草や毒草を探す予定のようだ。
「ではまたな」
シュナイアスとレーヴェは真っ直ぐキャメロットへ帰るようだ。
それぞれの帰路につく冒険者達。彼らが英雄と呼ばれる日は来るのだろうか‥‥。