●リプレイ本文
ギルドで依頼を受けた冒険者達は、目的の村へと向かう。
「あ、食料用意するの忘れちゃった‥‥」
道中、それに気付く神聖騎士ヒンメル・ブラウ(ea1644)。
実は彼女、お化けの類が大の苦手で、この依頼を受けたことを途轍もなく後悔していた。このミスもそのためだろうか。
「余分に持ってきているのでどうぞ」
準備の良い神聖騎士クウェル・グッドウェザー(ea0447)が保存食を差し出す。
菓子職人を生業とする彼は、簡単なお菓子なども作ってきていた。
「ありがとー☆」
また、イギリス語を修得していないヒンメルだが、今回のパーティでは通訳できる者も多く、それほど不自由はしていない。
それほど危険は無かったが、冒険者達は交代で夜間の見張りをすることも怠らなかった。
そして無事、村に到着する。
村長に挨拶を済ませると、準備開始だ。
「今回は墓場で骸骨退治か‥‥イマイチ風情に欠けるよな。いや、依頼の選り好みが出来る立場じゃないのは分かってるけど」
ぼやくウィザードのロット・グレナム(ea0923)に、
「ホンマ、お化けが剣で人殺しとは風情のない話やねえ‥‥」
相槌を打つファイターのクィー・メイフィールド(ea0385)。
「アンデッドとは死なない死体ではなく死ぬことが出来ない死体、‥‥安らかに眠らせてあげましょう」
そう窘めるクウェル。
「これ以上、犠牲が出ないうちに解決したいですね」
そしてバードのケンイチ・ヤマモト(ea0760)。
冒険者達は共同墓地付近の開けた場所を待ち伏せ地点に決めると、落とし穴を作って夜に備える。
作業を終えた後、ヒンメルはパーティから離れ、村長が貸してくれた部屋で一人きりになる。
服を脱ぐと体中に聖紋と聖句を描く。
礼装に着替え、聖書と十字架のペンダントをしっかり握る。
彼女なりにお化け退治への心構えを固めていたのだろう。
「‥‥!」
ヒンメルの単独行動を心配し、こっそり様子を見ていたクウェル。
見てしまった。ちょっとした役得か。
夜。
いよいよ作戦開始。
「さて、まずは派手にいってみるか‥‥ライトニングサンダーボルト!」
魔法発動の瞬間、ロットが緑の淡い光に包まれると、真上に向かって稲妻が走る。
更に、墓に当てないように注意しつつ、墓地の方にも稲妻を放つ。
スカルウォリアーを墓地から誘い出す算段だ。
しかし。
静まり返った墓地には何の気配もない。
「‥‥早々うまくいきませんか」
暫く待ってから神聖騎士エリス・ローエル(ea3468)が口を開く。
「‥‥デティクトアンデッド」
魔法発動の瞬間、神聖騎士ルシフェル・クライム(ea0673)が白く淡い光に包まれ、アンデッド探知を可能にする。
「こちらから出向くしか無いようだな」
そして、盾を左手に装備する。
「‥‥ホーリーライト」
魔法発動の瞬間、エリスが白く淡い光に包まれると、聖なる光が灯る。
「スカルウォーリアーは強敵ですから出来るだけの事はしないと‥‥バーニングソード」
魔法発動の瞬間、ウィザードのフォーリス・スタング(ea0333)が赤く淡い光に包まれると、仲間の武器に炎の魔力が付与されていく。
「油断しないで行きましょう‥‥テレパシー」
魔法発動の瞬間、ケンイチが銀の淡い光に包まれると、一定距離内での思念による会話を可能にする。戦闘になった時の連携の向上のためである。
「お化けを探して墓地を行く‥‥まさしく肝試しや」
生唾を呑み込むクィー。
エリス、ルシフェル、クィーの三名が偵察隊として墓地内部に入る。
薄気味悪い夜の共同墓地を行く偵察隊。
「いるぞ‥‥近い!」
デティクトアンデッドの効果で、いち早く察知するルシフェル。
聖なる光に照らされるギリギリの所に影が浮かび上がる‥‥それは血まみれの剣を持った骸骨の戦士!
カチカチと歯が鳴り、骨が軋む音がする。
薄暗い位置に居る骸骨は、余計に不気味さを醸し出す‥‥。
「いましたね、魂の輪から外れた者が」
「死して尚、現世を彷徨うか」
呟くエリスとルシフェル。
「鬼さんこちら、手のなる方へ。ってヤツやな」
手を叩きながら、スカルウォーリアーを誘導するクィー。
冒険者達は、寂しいくらいに冷静であった。
待機組。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ、御霊の訪れ給わんことを。いと高きところにある慈愛にて満たしたまえ‥‥」
歯をガチガチ鳴らしながら、左手に聖書をしっかり抱え、右手には十字架、聖歌を歌い続けるヒンメル。
暫くすると、聖なる光に照らされた仲間達が戻ってくるのが見える。
その後ろには、血まみれの剣を振りかざし追いかけてくる不気味な骸骨の姿が朧気に浮かび上がる!
「いやーッ!‥‥ホーリー!」
悲鳴を上げながらも神に祈り、魔法を詠唱するヒンメル。
「対象、目前のスカルウォーリアー!‥‥我が敵を、射殺せムーンアロー!」
魔法発動の瞬間、ケンイチが銀の淡い光に包まれると、スカルウォーリアーに光の矢が襲いかかる!
「痺れたくなかったら退いてろよ!」
偵察隊に呼びかけるロット。
スカルウォーリアーから距離を取って射線を確保する偵察隊。
「大いなる空の怒りよ、我が敵を貫け!‥‥ライトニングサンダーボルト!」
魔法発動の瞬間、ロットが緑の淡い光に包まれると、スカルウォーリアー目掛けて稲妻が走る!
「死んだ人は現世に留まるべきではないんです。死後の世界なんてものがあるかは分かりませんが、少なくとも此処はあなたのいるべき場所ではないんです!‥‥ファイヤーボム!」
さらにフォーリスが爆炎をお見舞いする!
魔法の連打を浴びても尚、動きを止めないスカルウォーリアー。
偵察隊と待機組が合流し、ホーリーライトで後衛を守る。
「我が曾祖父 聖ロクウェルに誓って」
壁役として防御姿勢を取るクウェル。見事に盾でスカルウォーリアーの剣を受ける。
「くっ、相手の方が一枚上手か‥‥」
ルシフェルの炎を纏ったクルスソードの斬撃を盾で受け止めるスカルウォーリアー。
「うわぁ〜ん! 僕の馬鹿馬鹿馬鹿! 耳に聖句書くの忘れたぁ!」
涙を流しながら、炎のクルスダガーで斬りかかるヒンメル。
どこかで聞いたような話だが、耳を取られたりはしないようだ。
「悪いけど俺は現実主義なんだ。アンデッドだろうが目に見えてる以上は、幽霊なんかじゃなく、ただのモンスターでしかない」
そして、さらに魔法の詠唱を始めるロット。
魔法で確実にダメージを与えているが、巧みな剣捌きと盾受けをするスカルウォーリアーに前衛は苦戦気味だ。
前衛の苦戦を援護しようとエリスが詠唱をし、白く淡い光に包まれる!
「‥‥コアギュレイト!」
しかし、スカルウォーリアーの動きは止まらない!
「ならば、もう一度‥‥いや」
今度は負傷した仲間のためにリカバーの詠唱を始めるエリスであった。
苦戦してはいたが、前衛達は連携して、ある事を狙っていた。
カクカクと不気味に笑っていたスカルウォーリアーが突如グラリと傾く。
落とし穴にハマったのだ!
「今やッ!」
火炎ロングソードを上段から大きく振りかぶり、落とし穴から上に出ている部分をスマッシュで粉砕するクィー!
「冥府へ逝くがいい!」
更にルシフェルの火炎クルスソードの追撃!
「‥‥ピュリファイ!」
すかさず、浄化の魔法を掛けるクウェル!
ついに動きを止め、浄化されていくスカルウォーリアー。
「アンデットは嫌いや。‥‥もしかしたら死んだ人が生き返るかもと、思ってまう」
まだ警戒は解かないクィー。消えていく骸骨を見て、誰かを思い出しているのだろうか。
「霊の世界の高貴な一人が、悪より救われました。この人には天上からの愛が加わったのですから、至高の幸いに住む天上の群れは、心から喜んでこの人を迎えるのです」
気丈に言いつつも、まだ少し震えているヒンメル。少しずつ心を落ち着かせ、供養の聖歌を歌い始める。
「歌はいいですね」
聖歌に合わせて竪琴を伴奏するケンイチ。
スカルウォーリアーとなった者の冥福を改めて祈るフォーリス。
骸骨は消えてしまったが、ボロボロの剣と盾を拾って墓地に葬るクウェル。
「‥‥リカバー」
負傷した前衛に回復魔法を掛けるエリス。
「死者は再び立ち上がっちゃいかんねん。絶対にな‥‥」
そう言って目を閉じるクィー。
共同墓地に静寂が戻っていた。
村長にスカルウォーリアーを無事退治した事を報告し、一夜の宿を借りる冒険者達。
そして翌朝。
「誠に有り難う御座いました」
報酬を受け取った冒険者達は、村長に見送られ、帰路に着く。
「世の中わからんことがいっぱいやなー」
昨夜の出来事を思い出しながら呟くクィー。
そして冒険者達は、また新たな冒険を求めていくことだろう。
彼らがいつか、英雄と呼ばれる日が来ること願っている。