●リプレイ本文
野を越え山を越え、地図を頼りにダンジョンを目指す一行。
「さて、何か面白そうな事は‥‥」
旅の途中の食料を釣りで補っているウィザードのロット・グレナム(ea0923)とザキ・キルキリング(ea3130)。
「今日もいい天気ですねぇ」
ウィザードのクリフ・バーンスレイ(ea0418)は空を見上げ、
「初めての冒険ですし、それなりに気合を入れつつ力を抜いて行きましょうか」
「トレジャーハンターとして、何かしら持ち帰りたいよね」
レンジャーのアリシア・シャーウッド(ea2194)と共に猟師スキルを活かして、食料調達。
「ケチなんで保存食は置いておきたいんですよ」
まだ駆け出しの彼らに、贅沢は許されないのだ。
クレリックのサラ・ディアーナ(ea0285)も植物知識を活かして薬草や食料の調達に協力している。
レンジャーのルカ・レッドロウ(ea0127)も猟師と漁師のスキルを活かして食料調達に協力。彼は通訳を必要としているが、現代語全般を修得しているウィザードのアルヴィス・スヴィバル(ea2804)とロットによって言葉は通じている。
今のところ、少々無愛想な忍者の風霧健武(ea0403)だけは黙々と保存食をかじったりしていた訳だが、協力すべき所はしっかり協力している。
野営では、各々マントや毛布などで寝床を確保し、交代で見張りだ。
「コイツだけは我慢できねェんだよ」
ルカは川で冷やした酒をやりつつ、本を読みふけっていたアルヴィスに話しかける。
「早くこちらの言葉を覚えた方がいいね。あ、一杯貰えるかな?」
なかなかのチームワークを見せつつ、無事ダンジョンに到着。
中は暗い。明かりを灯してみると、なるほど、確かに構造がおかしい。
天井に固定された棚、床の中央には奇妙な金具。元はシャンデリアか何かが付いていたのだろうか。
「おやおや、逆さまダンジョンとはね。中々面白そうだ」
中を覗き込むアルヴィス。
入り口から、その床までは数メートル。そして、奥に見える扉も天井付近にあり、噂通り、よじ登らなければ次の部屋に進むこともできないようだった。
「ダンジョン内を探検して、お宝をゲットですね♪」
楽しそうにクリフ。
前衛はルカと風霧。中衛はクレリックのサラを囲むように前ロット、左ザキ、右アルヴィス、後クリフで固める。後衛のアリシアが背後を警戒することで、前後どちらから、何があっても対応できる隊列である。
罠を警戒しつつ、ルカと風霧が交代で扉へよじ登って安全を確認しては、ロープなどを使って全員を引き上げる。
マッピング担当はザキである。
「二階に下りて、一階に上がる。生者が死に絶え、死者が彷徨う。死から始まり、生へと閉じる‥‥か。ふふ、作った人に是非とも会って見たいものだね」
アルヴィスが呟く。
調査済みとはいえ、警戒は怠ることなく進む。
探索は順調で、残っていた罠などに引っかかることもなかった。
しかし、やはり実入りになりそうな物も発見できなかったわけだが。
ザキが予備の地図に呪文を唱える。
「バーニングマップ」
発動の瞬間、ザキが赤く淡い光に包まれ、地図が燃えると灰の中に道筋が浮かび上がる。
「こっちですね」
灰を回収し、道を示すザキ。
そして、ついに一際豪華な扉を発見する。
これが噂の開かずの扉だろうか?
扉のプレートには文字らしきものが刻まれている。
見たことのある文字だと思ったら、上下逆だった。
『エカリホヤリボテアタトアマサカスラニアディ』
冒険者ギルドのおやっさんの言っていたヤツだ。
扉はビクともしない。
道中、意見を出し合って暗号の答えを考えていたが、ここへ来て確信していた。
合い言葉を唱える前に、まず魔法の準備だ。
「アッシュエージェンシー」
ザキが一瞬、赤い淡い光に包まれると、灰から分身が出来上がる。
「ブレスセンサー」
ロットとクリフが一瞬、緑の淡い光に包まれる。
「小柄なのが数匹、中に居るみたいだな」
「そのようです」
「何かしら罠があるようだな。解除する方法は無さそうだ」
風霧の言葉に、扉から距離をとり適当な物に掴まってトラップを警戒する。
「偉大なる逆さまを称え、扉よ開け!」
音もなく、扉が開き始める。
すると、
ふわり‥‥
突然、天地逆転するかのような重力が部屋中に働く。
何かに掴まっていなかったら、天井に叩きつけられる所である。
足場にしていた手裏剣を掴んで反転し、音もなく着地した風霧。
「しかしこれが暗号とはね。もう少し捻るべきだと思うよ」
体勢を整えて着地するアルヴィス。
「さて、開かずの扉の先に在る秘密の花園はどんな所かな?」
扉の向こうには、
「KiKeyッ」
背中にコウモリの羽、矢尻のような形をした長い尻尾を持つ醜い小悪魔‥‥インプだ!
鉛色の皮膚、耳まで口が裂け、鋭い牙が並んでいる。
「全力で戦いましょう! 私も頑張りますね」
インプの殺気を察知したサラがいち早く注意を促す。
バックパックを置き、身軽な体勢になる冒険者達。
「扉のところで奇声を上げろ」
ザキの命令でアッシュエージェンシーが奇声を上げ、囮になる。
群がるインプ。
「そこっ!」
アリシアのショートボウから放たれた矢がインプに命中する。
そして、ウィザード達の魔法が一斉に完成する!
「ウインドスラッシュ!」
クリフが一瞬、緑の淡い光に包まれると、手から真空の刃を放つ!
「ライトニングサンダーボルト!」
ロットが一瞬、緑の淡い光に包まれると、手から雷光を放つ!
「ウォーターボム!」
アルヴィスが一瞬、青く淡い光に包まれると、手から水の固まりを放つ!
「フッ‥‥マグナブロー!」
ザキが一瞬、赤く淡い光に包まれると、マグマの柱が吹き上がる!
囮になっていたアッシュエージェンシーごと丸焼きである。
「PiGYAッ!」
ダメージを受けるインプ達だが、簡単には倒れてくれないようだ。
「俺の名は『風斬り』の健武‥‥推して参る」
前に出て回避専念し、インプを後衛に近づかせない風霧。
「オラオラッ!」
ナックル連打による接近戦に持ち込むルカ。
冒険者達も無傷というわけにはいかなかった。しかし、
「リカバーします☆」
サラが一瞬、白く淡い光に包まれると、白くやさしい光がつつみ、自然回復同様に傷口がふさがっていく。
混戦になり、味方の前衛に魔法があたる危険が出てくると、味方の魔法詠唱を邪魔されないようにカバーに入るロット。
冷静に状況を見つつ皆のサポートに徹するアルヴィス。
「行かせるか!」
後衛に飛びかかろうとするインプにナイフを投擲するルカ。
アリシアがダガーに持ち替えて応戦する。
そうした連係プレーにより、状況を有利に、そして確実にインプを倒していく。
「運命はなァ、勇気ある者に味方するんだよ」
全てのインプを倒したことを確認し、そう呟くルカ。
死者重傷者無し。大勝利である。
部屋は研究室のようになっていた。
クリフがクレバスセンサーで調べてみたが、目の前にある宝箱以外には、特に仕掛けは無さそうだ。
「これはまだ使えそうね」
放った矢からまだ使えそうなのを回収しているアリシア。ビンボーな間は仕方がない。
「ふふ、是非逆様の創設者の考えが知りたいね」
罠が無いことを確認し、書棚にあった手記らしき物を手に取るアルヴィス。
「いよいよだな」
ルカ、風霧、アリシアの三人掛かりで宝箱を調べ、無事罠を解除することに成功した。
固唾を呑んで、宝箱を開けるのを見守る。
中には‥‥
「よくわからない物ばかりだけど、売れるかな?」
とりあえず、中身を回収する一行。
「フッ‥‥到達記念です」
グランドクロスの旗を宝箱に立てるザキ。
「‥‥どうやら、天地を逆転することで、天に近づこうとしてたようだね」
手記を読んでいたアルヴィスが呟く。
宝箱の中身は大半ガラクタだったが、そういった物を欲しがる人というのも居るもので、結果的に一人一枚ずつの金貨が行き渡った。駆け出しにしては大成功の報酬と言えるだろう。
いずれ、彼らが英雄と呼ばれる日が来ることを願って。