グレグレブラザーズ♪

■ショートシナリオ


担当:紅茶えす

対応レベル:1〜4lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 44 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月29日〜09月05日

リプレイ公開日:2004年08月31日

●オープニング

 とある村。
 畑仕事をしていた農夫のクワの先が突然すっぽ抜けて、飛んでいく。
「うわっ」
「あひゃ、アヒャヒャヒャッ♪」
 驚く農夫。どこからともなく下品な笑い声が聞こえてくる。

 夕食時。
 スープをテーブルに並べていた母親の手が勝手に動き出す。
 べちゃっ
「あちちちっ! 何をするんだ!」
 それは旦那の顔に見事に命中していた。
「手が勝手に‥‥」
 不思議そうに自分の手を見つめる。
「あひゃ、アヒャヒャヒャッ♪」
 また、どこからともなく下品な笑い声が聞こえる。

 村に一軒しかない宿屋の倉庫。
 不気味な影が二つ。
「あひゃ、ビールがあるぜ、ブラザー♪」
「あひゃ、飲むしか無いな、ブラザー♪」
 みるみるビアダルの中身が減っていく。
「「ぶはー、このために生きてるってカンジだよな。ぎゃはははっ」」
 下品な笑い声が木霊する。

 ここは冒険者ギルド。
 冒険者達が仕事の斡旋を求めて集う場所である。
「仕事の斡旋か? キミ達ならば、これなんかどうだい?」
 いつものように冒険者ギルドのおやっさんが依頼書のひとつを見せる。

『最近、村でおかしな出来事が頻発しています。
 何か、姿の見えない何かが居るようで、おかしな事が起こった現場では、いつも下品な笑い声が聞こえてくるのです。
 唯一、宿屋の女将だけが、夜中、倉庫で不気味な影を見たと言っております。
 原因の究明と解決を依頼します』

「姿の見えない何か、か。もしかするとデビルの仕業かもしれねぇな。それほど凶悪な事件を起こしているわけでもないし、キミ達で対処できるだろう」
 おやっさんが依頼書の控えを渡してくれる。
「村までは片道二日、往復四日の距離だ。食料の準備を忘れるなよ。滞在中は村の宿屋で面倒みてくれるそうだ。頑張ってな」
 こうして、新たな依頼を受けた冒険者達であった。

●今回の参加者

 ea0263 神薙 理雄(28歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea0673 ルシフェル・クライム(32歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea0923 ロット・グレナム(30歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea2634 クロノ・ストール(32歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3590 チェルシー・カイウェル(27歳・♀・バード・人間・イギリス王国)
 ea4688 フレィム・ドラーディン(20歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea5021 サーシャ・クライン(29歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea6033 緲 殺(25歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)

●リプレイ本文

 依頼を受け、村へとやってきた冒険者達を窺う不気味な影。
「あひゃ、面白そうなオモチャが来たぜ‥‥ブラザー♪」
 そんな事はつゆ知らず。
「まだまだ駆け出しだから、みんなの足を引っ張らないように注意しないと‥‥」
 一人呟く、ウィザードのサーシャ・クライン(ea5021)。
 突然、何かに足を引っかけられて派手に転ぶサーシャ。
「いった〜い‥‥」
 膝をさすりながら辺りを見回す。が、何もいない。
「大丈夫か?‥‥もしかして、出たのか!?」
 手を貸して助け起こす神聖騎士のルシフェル・クライム(ea0673)。
「アヒャヒャヒャヒャ♪」
 下品な笑い声が聞こえる。
 冒険者達は慌てて探知系の魔法を唱えたが発見することはできなかった。

 お世話になる宿の女将に挨拶をし、不気味な影を見た時の話を聞く。
「姿を消せるデビルか‥‥それにしてもやってる事が低レベルって言うか、能力の無駄遣いって言うか‥‥」
 呆れたようにウィザードのロット・グレナム(ea0923)。
 女将の話を参考に冒険者達は、決戦の場を宿の倉庫に決めた。
「極力倉庫への被害を抑えるよう努めます。ご理解ください」
 頭を下げるナイトのクロノ・ストール(ea2634)。
 そして、宿の倉庫から酒類以外を運び出す冒険者達。
「力仕事は趣味じゃない‥‥なんて言ってる場合じゃないか」
 非力なバードのチェルシー・カイウェル(ea3590)も、しっかり手伝っている。
 全員で協力して、作業に取り組んだ。

 馴れない力仕事に疲れたのか、宿の一室で仮眠を取っていた志士の神薙理雄(ea0263)。
 夕刻。そろそろ起きて、作戦に備えなければならないのだが。
「ん〜〜もうちょっと寝かせてくださいですの〜〜」
 寝返りを打つ理雄。
「あひゃひゃ、随分べっぴんになったよなぁ♪」
「アヒャヒャヒャヒャッ♪」
 暫くして。
 寝ぼけ眼で宿の階段を降りてきた理雄。
「ぷはっ、どうしたの!?」
 思わず吹き出す冒険者達。
 首を傾げる理雄。宿の女将さんが鏡を見せてくれる。
 その顔にはラクガキの嵐が吹き荒れていた。
「‥‥!? いや〜〜んですの〜〜〜っ!」
 一瞬の間をおいて、彼女の絶叫が響きわたった。

 夜。宿の倉庫。
 息を潜めて倉庫を見張っている冒険者達。
 何やら準備しているウィザードのフレィム・ドラーディン(ea4688)。
「俗に言う秘密兵器、というモノです」
 仲間に尋ねられ、にこにこと答える。
「罠・策略‥‥なんて甘美な響き♪」
(「さあ、悪魔さん、罠の中に飛び込んでいらっしゃい‥‥!」)
 恍惚とした表情のチェルシー。
 そして。
「あひゃ、今日も楽しかったなぁ、ブラザー♪」
「あひゃ、また酒があるぜ、ブラザー♪」
 下品な笑い声が聞こえてくる。
 いつの間に倉庫に侵入されたのかは分からない。
「村の人たちの為にも頑張りましょうね、そして僕達の明日の御飯のためにも(にこにこ)」
 『インフラビジョン』を唱えるフレィム。
「不死なる者よ、その生命無き姿を示せ‥‥デティクトアンデッド」
「ま、見えないからって確かに存在してるんだ。見つける手段なら幾らでもあるってことだな‥‥ブレスセンサー」
 続いて魔法を発動させるルシフェルとロット。
「間違いない。中に二体居る‥‥」
 戦闘準備を始める冒険者達。
「絶対に許さないですの‥‥!」
 『ライトニングソード』と『ライトニングアーマー』を発動させ、全身に雷を纏う理雄。内なる怒りを現すかのようである。
「我が魂の輝きを剣に!」
 『オーラパワー』を発動させるクロノ。

 準備完了!
 冒険者達は突入組と待機組に別れると、小麦粉の袋を倉庫の中にぶちまける!
「げほっげほっ、なんだこりゃあ!?」
 咳き込む二つの影。
 靄が収まると真っ白けになった二匹のモンスターがハッキリと見える。
「やはりグレムリンのようだな。詳しくは知らないが、戦闘経験はある」
 クルスソード&シールドを構えつつ、ルシフェル。
「げほげほ、何しやがんだ、せっかくの酒が台無し!」
「げほげほ、痛い目に合わせなきゃ気が済まねぇな、ブラザー!」
 冒険者達を睨み付けるグレムリン達。
「私は蒼空の騎士クロノ・ストール! 如何なる敵が立ち塞がろうと我が魂の輝き宿し剣の閃光に触れ、散り逝かぬ者無し!」
 雄々しく、気高く、威風堂々。『オーラエリベイション』を発動させる!
「‥‥できればあまり殺生はしたくないけれど‥‥仕方ないよね」
 構える武道家の緲殺(ea6033)。そのナックルにはすでに『オーラパワー』が込められている。
「『雷光の志士・理雄、いざ参らんっ!』なんて名乗ってみたいですけど、今の実力じゃあ名前負けしてしまいますのね」
 とぼけた事を言いつつも、魔法の詠唱を始める理雄。
 その手から『ウインドスラッシュ』が放たれる!
「痛ェな、チキショウ!」
「仲間を襲え♪‥‥フォースコマンド!」
 グレムリンの魔法も完成する!
「‥‥」
 何が起こったのか分からないまま、隣にいたクロノに拳を振り上げる殺!
「あひゃひゃ、オマエら勝手に殺し合え♪」
 下品に笑うグレムリン。
「そうは‥‥行かないよ!」
 自らの腕を傷つけ、『フォースコマンド』の命令に抵抗する!
「‥‥キミもボクを死なせてはくれないみたいだね‥‥」
 失望したように冷たい目を向ける殺。過去の罪を背負い、死に場所を求めているかのようである‥‥。

 殺と交代で前に立つ理雄。
「ウチが寝てる間に‥‥お返しですの!」
「しびシビれレるル〜」
 全身に雷を纏った理雄に感電しているグレムリン。
 操られまいと自らを傷つける殺に『リカバー』を掛けつつ、中衛として臨機応変に動いていたルシフェル。
「呪・従、縛・暴、自由を奪い去れ‥‥コアギュレイト!」
 隙をついて魔法を掛ける!
「あひゃ‥‥?」
 ピタリとグレムリンAの動きが止まる。
「‥‥十二形意拳・辰が奥義、龍飛翔だよっ!」
 グレムリンAの顎に、殺はオーラを帯びたナックルを飛び上がるように叩き込む!
「ほげえええぇぇぇぇっ!」
 天井までブッ飛ぶグレムリンA。
「ブラザー!?‥‥イイヤツだったのによぉ‥‥チキショウ!」
 涙を流すグレムリンB。
「ま、まだ‥‥死んで‥‥ない」
 ぽとりと落ちてきたグレムリンAが痙攣しながら手を伸ばす。
「ブラザーの死は無駄にしないぞぉぉぉっ!」
 そう言いつつ、脱兎の如く逃げ出すグレムリンB!
「だから死んでねぇぇぇぇっ!」
 グレムリンAの魂の叫びは‥‥完全に無視された。
 見捨てられたグレムリンAがどうなったかは言うまでもない。

 慌てて飛び出してきたグレムリンにフレィムが歩み寄り、
「おや‥‥このエールが欲しいのですか? どうぞ、お飲み下さい(にこにこ)」
 そう言って、ジョッキを差し出す。
 ついつい受け取ってしまうグレムリン。
「あひゃ、気が利くナァ♪ ちょうどノドが渇いてたのさ」
 さっきの慌てっぷりはどこへやら、好物を前にあっさり気がゆるむ。
 グレムリンが大口を開けた所で、隠し持っていた『丸めた布』を放り込むフレィム。
「んが、なんか臭ェぞ‥‥?」
 グレムリンがボケてる隙に『クリエイトファイヤー』を掛けるフレィム。
「うわちちちっ!?」
 口の中で燃えさかる布。どうやら油を染み込ませていたようだ。
「美味しいですか? 炎の味は‥‥ファイヤーコントロール」
 にこにこ笑いながら、その炎を操るフレィム。
「あぎゃーーーっ! 悪魔カヨ! オマエ!」
「悪魔に悪魔と言われたくないです(にこにこ)」
 ひとしきり漫才をすると、そそくさと道をあけるフレィム。
 待ちかねたように、倉庫の外で待機していた魔法使い達の詠唱が完成する!
「この月の矢からは、誰も逃げられないよっ!‥‥ムーンアロー♪」
「だいたい、笑い方からして品性が感じられないんだよ。『邪笑クラブ』のメンバーとして放置できないな‥‥ライトニングサンダーボルト!」
「村の人たちに迷惑をかけた罪は、あの世で後悔しなさいよ!‥‥ウインドスラッシュ!」
 チェルシーの放った光の矢が、ロットの雷撃が、サーシャの真空刃がグレムリンに炸裂する!
「邪悪なる者よ、この地上から滅せよっ!」
 追ってきたクロノが攻撃魔法を浴びたグレムリンの隙を見逃さず、トドメの突きを放つ!
「あぎゃーーーーーーっ!!」
 グレムリンの断末魔が響きわたるのだった。

 冒険者達は翌日、倉庫を綺麗に掃除し、荷物を整理し直した。
「掃除までしてもらって、すまないねぇ。まだ期日には余裕があるし、もう一晩、泊まって行きな」
 女将さんの言葉に甘えて、もう一晩泊めてもらってから帰還する事にした。
 見送られ、帰路に着く冒険者達。
「ああ、これをどうぞ」
 行き同様、帰路でも女性陣へテントを貸し出すルシフェル。紳士である。
 見事に依頼を達成し、キャメロットへと帰還した冒険者達。
 彼らの次なる冒険は如何なるものだろうか。
 彼らがいずれ英雄と呼ばれる日が来ることを願っている。