ロードランナーを捕まえろ!
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■ショートシナリオ
担当:紅茶えす
対応レベル:1〜4lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 32 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月31日〜09月06日
リプレイ公開日:2004年09月02日
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●オープニング
ここは冒険者ギルド。
冒険者達が仕事の斡旋を求めて集う場所である。
「仕事の斡旋か? ちょっと急ぎの依頼があるんだが引き受けてくれないか?」
いつものように冒険者ギルドのおやっさんが依頼書のひとつを見せる。
『さる貴族の依頼で輸送していた『モア』に逃げられてしまいました。
元々は大人しい鳥なのですが、突然暴れ出して、檻を壊してしまったのです。
空は飛べないのですが、足が速く、蹴りの威力も絶大で我々の手に負えません。
この依頼は、その『モア』を捕まえていただく事です。
多少は手荒にしても構いませんが、殺してしまわないよう注意して下さいませ。
依頼期間は移動時間を含めて六日。期間中の食料などは当方で用意しますので、それ以内に捕まえて下さい。
宜しくお願いします。
行商人ターキー』
「モアってのは、3mくらいあるデカイ鳥だな。依頼書にもある通り、空は飛べないらしい」
おやっさんが依頼書の控えを渡してくれる。
「依頼人は現地で待ってるぜ。キャメロットからは一日くらいの場所だな。準備が出来次第、早速向かってくれ」
こうして、新たな依頼を受けた冒険者達であった。
無事、モアを捕まえることができるだろうか?
●リプレイ本文
依頼人の待つ地点へとやってきた冒険者達。
「冒険者の方々でっか? わざわざ御足労頂いてどうも。行商人のターキー言うモンですわ」
そう挨拶する依頼人のターキー。
「カークこと風の錬金術師。頑張るよ!」
やたら明るく名乗り返すウィザードのカーク・ウィリアム(ea1049)。
「わたくしはシルエリンと申します」
続いて、バードのシルエリン・フォウナ(ea5587)。
「名前‥‥美味しそう‥‥」
ぽそりと呟くウィザードのティアイエル・エルトファーム(ea0324)。
「えっと、モア食うのんは勘弁して下さいね?」
冷や汗を垂らすターキー。
「‥‥モアの事じゃないから」
クスクスと笑うティアイエル。ターキーの名前から何か連想していたようだ。
「元は大人しい鳥さんだそうですし、なだめる事ができれば良いのですけど」
バードのシャナ・ミルキーウェイ(ea0464)。
「‥‥何故急に暴れだしたのだろうな?」
ジプシーのハイエラ・ジベルニル(ea0705)に続いて、
「モア捕獲の参考のため、いろいろ訊きたいのだが」
レンジャーのゼファー・ハノーヴァー(ea0664)も尋ねる。
「そうですなぁ、ずっと輸送中も檻の中をそわそわウロウロ。たまにグルグル走り回ったりしてたんやけど、突然、檻の出入り口蹴破って、飛び出してってしもたんですわ」
念のため檻も調べてみる冒険者達。
馬車の荷台が丸ごと大きな檻になっている。出入り口は一度壊れたような痕跡があるが、今は補強されているようだ。
「連れ戻しても、また蹴破られたらシャレになりませんよって」
笑いながら、檻を叩いてみせるターキー。
「‥‥自由になりたいのかなぁモアは?」
首を傾げるティアイエル。
「どうなんやろ? なぜか遠くへは逃げんと、この辺りを走りまわっとるんですわ」
同じく首を傾げながら答えるターキー。
「どんな鳥なんだろ? 足が速いんだよね‥‥乗ってみたい気も〜」
呟くティアイエル。
何やら遠くから土煙を上げて接近してくる!
「クェ〜ッ!」
すぐ側を、3mはあろうかという鳥が猛スピードで駆け抜けていく。
「「今のが?」」
口々に尋ねる冒険者達。
「そう、アイツですわ」
苦笑するターキー。
他にもモアの事を尋ねる冒険者達。
「‥‥好物言うか、モア用のエサやったらありまっせ」
モア用のエサを出すターキー。
「使えるかもな」
とりあえず受け取っておくハイエラ。
「さて、罪の無い動物を痛めつけるのは気が進みませんが、無益な殺生をしなくてすむのは有難いことです」
浪人の世良北斗(ea2685)。
「それに早く保護してあげるのが、結局のところ、彼の為にもなることでしょう」
そう付け加える。
「くれぐれも殺さんよう、宜しゅう頼んますわ」
冒険者達はモアの様子を観察し、捕獲作戦を行う待ち伏せ場所を考えた。
足跡、糞などを頼りにモアを捜索するゼファー。
モアは、まだ巣作りなどはしていないようで、休む場所はまちまちのようだった。
「クェーッ!」
なぜか、何度もモアの方から近づいてきては猛スピードで走り去っていく、そんな事がありつつ。
捕獲を試みる冒険者達だったが、何の準備もできていない状態では捕獲することはできなかった。
待ち伏せ場所を決めると、隠密系のスキルを持つゼファーが落とし穴作りの指揮を執る。
「モアを完璧に誘導する事は困難だからな」
ある程度幅を持たせて、落とし穴を準備していく冒険者達。
「捕まえるのが可愛い女の子なら張り切っちゃうんだけど、まあそうも贅沢いってられないしね。皆頑張ろー!」
スコップを持ち、穴掘りを手伝うカーク。
「さっさと終わらせて美味しいお酒を飲みたいわ」
三度の飯より酒が好きという浪人の本多桂(ea5840)も手伝っている。
最後にゼファーが落とし穴をカモフラージュして目立たないようにする。
また、ハイエラは穴掘りの休憩時間に、毒草知識を活かして、致死性ではない毒草を探し、エサに混ぜて罠にしてみる。
「クェ?」
モアは興味を持ったようだが、毒が混ざっていると察知したのか、ぷいとそっぽを向くと走り去っていってしまった。
夜。数時間交代で行う冒険者達。
「罠にかからなかった時の保険にと思ったが‥‥意外に難しいな」
ゼファーはモア捕獲用に、ロープの両端に石を結びつけ、ボーラのような物を用意しようとしたが、実戦に使えるほどの物にはならなかった。
そして。
冒険者達は落とし穴を完成させ、ついに本格的に捕獲作戦に乗り出した。
「今回は、これの出番はありませんからね」
バックパックを降ろし、愛用の日本刀も置いていく北斗。
囮としてモアを罠に誘導する役を買って出たのはハイエラ。
「クェ〜!」
探し回るまでもなく、モアが顔を見せる。
「はいやーっ」
愛馬『冬疾風』に跨り、松明を手にモアを追いかける北斗。
「クェ? クェーッ!」
松明の火に驚き、猛スピードで逃走を始めるモア。
馬でも引き離される一方だ。
「‥‥ライトニングサンダーボルト!」
ティアイエルの放った雷撃が、モアの近くを横切る。
「クェーッ!」
驚いたモアが方向転換する。
「Ein KOrper ist ein KOrper―――!」
カークが淡い緑の光に包まれる。そして、その手から『ウインドスラッシュ』が放たれる!
これもまた、モアには直接当てず、威嚇目的である。
大きな音や大声を出して、罠の方へ追い込もうとする桂。
「クェーッ!」
何を思ったのか、モアが桂の方に向かって走り出す!
「あたしとヤル気かい?‥‥くっ」
腹を蹴られたお返しに鞘つきの刀で『カウンターアタック』する桂。
「グェッ!」
慌てて、また方向転換するモア。
ようやく囮役のハイエラの方へと走り始めるモア。
「ふむ、確かに速い。だが、それだけでは私には当たらん」
モアの鋭い蹴りを見切るハイエラ。
彼女が回避に専念すれば、モアの蹴りを見切り続ける事もできそうだ。だが、一撃でも当たると厳しい。一瞬たりとも気を抜く事は出来ない。
「クェーッ!」
ハイエラに翻弄されつつ、少しずつ、罠の方へと誘導されていくモア。
「もしかしたら寂しかったのかもしれません‥‥」
シャナは魔法を使うため。身軽な格好になると、
「‥‥ファンタズム♪」
落とし穴の上に、モアの幻影を作り出す。
サイズ的に実物大のモアは再現できないが、モアの子供には見えるかもしれない。
そこへ誘導されてきたモア。
「クェ?」
先ほどまで躍起になっていたハイエラへの攻撃をやめ、小さなモアの幻影に近づいていく。
「クェックェッ?」
何か話しかけているのだろうか?
しかし、幻影が答えることはない。
首を傾げながらも近づくモア。
ずぼっ。
見事に落とし穴にハマる。
「「やった!」」
冒険者達が駆け寄る。
穴の中でもがいていたモアが体勢を整え、飛び跳ねようとした瞬間!
「‥‥スリープ♪」
シャナの魔法が完成する!
次の瞬間、くたりとモアが動かなくなる。
「Zzz‥‥」
眠ってしまったモアをロープで縛ろうとする冒険者達。
「案外あっけないものですね」
モアが眠ったのを見て、詠唱を中断するシルエリン。
「クェ? クェーッ!」
しかし、敏感なモアは目を覚ましてしまう!
「ク‥‥少し大人しくしろ! 何が気に喰わないと言うのだ!?」
何とか抑えつけようとするハイエラ。
北斗も協力するが、振り解かれそうだ。
「実無くして影無く影無くして実無し、故に我汝が影を縛して汝を縛するものなり‥‥シャドウバインディング!」
シルエリンの魔法が発動し、再び動きを止めるモア。
動けなくなったモアをロープで縛り付け、何度か『スリープ』と『シャドウバインディング』を掛け直しながら、一番腕力のある北斗を中心に何とか檻へ入れることに成功する。
「さっすが冒険者の皆さんやわぁ」
檻に鍵を掛けるターキー。
モアに蹴られた腹を押さえている桂に、
「結構痛そうやなぁ。ここは奮発して特別ボーナスや! このリカバーポーション使うて下さい」
リカバーポーションを差し出すターキー。
「そう? 有り難く頂くとするわ」
蓋を開けてポーションを飲み干す。なんだか飲みっぷりがいい。
「お酒風味のポーションとかあったら売れそやなぁ」
「それいいね!」
そう笑うターキーと桂であった。
暫くすると、またモアが目を覚まし、そわそわウロウロと檻の中を歩き回り始める。
「ここはひとつ、落ち着かせる為にも、笛を吹いてみようかな?」
横笛を吹いて聴かせるティアイエル。
「〜♪」
シャナのオカリナ、シルエリンの竪琴がその音色に加わる。
音楽に合わせて踊りを披露するハイエラ。
「クェ〜クェッ♪」
どうやらモアの機嫌も良くなったようである。
「冒険者ゆうんも、案外芸達者でんなぁ」
感心するターキー。
そして、キャメロットへと出発する。
無事、依頼期間内にキャメロットへと帰還。
「キャメロット到着ー!」
初仕事の成功を喜ぶカーク。
「達者でな。また会うこともあるだろう」
片手を上げ、背を向けるゼファー。
「いずれ、また」
新たな冒険を求め旅立っていく。
「ホンマ、助かりましたわぁ。また何かあったら宜しゅう頼んますわ」
冒険者達に礼を言って見送るターキー。
彼らがいずれ英雄と呼ばれる日が来る事を願って。