都会のカラス
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■ショートシナリオ
担当:紅茶えす
対応レベル:1〜4lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 0 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月06日〜09月11日
リプレイ公開日:2004年09月08日
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●オープニング
そこはキャメロットのとある道。
やけにしまりのない、にやけ顔の若者がいた。
「給料はたいて買っちまったぜ‥‥」
ポケットから小さな箱を取り出すと、中身を眺めて、またにやける。
それは、さほど高価ではない、質素な指輪だった。
夕日を浴びて、キラリと輝く。
ふと羽音がして影が差した。
「カァ〜!」
カラスだ!
ヤツは、指輪を爪に引っかけると一目散に飛び去っていく。
「うわっ! ま、待て! 待ってくれ! それは大切な‥‥」
走って追いかけるが、空を飛ぶカラスに追いつけるはずもなかった。
ここは冒険者ギルド。
冒険者達が仕事の斡旋を求めて集う場所である。
「仕事の斡旋か? ちょっと急ぎの依頼があるんだが引き受けてくれないか?」
いつものように冒険者ギルドのおやっさんが依頼書のひとつを見せる。
『最近、ウチの町内にカラスが住み着いてしまったのです。
そのカラスどもが悪さばかりして困っていたのですが、特に困るのは、住民から光り物を盗むのです。町内会にも多くの被害届けが集まっておりまして。
そのカラスどもの駆除と、盗難品の回収を依頼します。
近く、結婚式を控えた若者がいるのですが、彼が結婚式に送る指輪をカラスに盗まれたと泣きついて来ました。
結婚式に間に合うよう期間は五日間とさせていただきます。
期間中は、町内にある宿屋を無料で提供しますので、何卒宜しくお願いします。
追伸。住民の噂なのですが、何やら1mほどもある大きなカラスがいるらしいので、お気を付け下さい。
キャメロット町内会』
「なぜだかカラスってのは光り物を集める習性があるらしいな。1mもあるカラスってのは、もしかするとジャイアントクロウかもしれねぇな。普通、人里じゃあ見かけないんだがなぁ」
そう言いながら、おやっさんが依頼書の控えを渡してくれる。
「期間中、宿屋にタダで泊めてくれるらしいが、タダだからってハメ外すんじゃねぇぞ? 冒険者のモラルってのを大事にしてくれよな」
こうして、新たな依頼を受けた冒険者達であった。
無事、カラスを退治し、盗難品を取り戻すことができるだろうか?
●リプレイ本文
指定の宿屋に行き、方針を相談する冒険者達。
「風の錬金術師、久し振りのとーじょー! カラス共、待っていやがれ!」
元気なウィザードのカーク・ウィリアム(ea1049)。
「ジャイアントクロウですか‥‥そのような生物を街中で放置しておくわけにはいきませんね。‥‥何より結婚式を台無しにするわけには行きませんね」
期限より早めに指輪を取り戻し、新郎新婦を安心させたいと考えているナイトのソルティナ・スッラ(ea0368)。
「結婚指輪‥‥か。なんとしてもそれだけは取り戻してあげたいな‥‥」
神聖騎士アルテス・リアレイ(ea5898)が呟く。
「鴉の習性とは言え、指輪泥棒はおいたが過ぎるわね」
動物知識を持つファイターのレテ・ルーヴェンス(ea5838)。
「カラス害ねえ。ま、そんだけなら俺が行くまでもねえが、ジャイアントクロウがいるとあっちゃ、ほっとくわけにもいかねえな」
同じくファイターのオーム・ローカーハ(ea3911)。
「1mのカラスか。1mの蜘蛛なら見たことあるんだがな‥‥」
ファイターのイグニス・ヴァリアント(ea4202)。
「さてさて、都会のカラスはどこに物を隠すだろうか?」
レンジャーのカルナック・イクス(ea0144)。彼も動物知識を持つ。
「盗難品は鴉が集まって夜を過ごす『ねぐら』にある可能性が高いわね」
レテが答える。
「カラスさんのねぐらはどこにあるんだろうね〜?」
ウィザードのチカ・ニシムラ(ea1128)。彼女も動物知識を持っている。
「樹木や建物の影などに集まり易いらしいわ。多分周辺は、糞や早朝の鳴き声騒音の被害があると思うの」
そう続けるレテ。
「駆除というのはどこまでやればいいんだろうか? 正直、カラスを町中から完全に根絶するのは無理だと思うのだが」
確かにイグニスの言うとおりである。
今回の所は根絶とは行かないまでも、噂の大鴉の退治と盗難品の回収ができれば依頼成功と考えて良さそうである。
冒険者達は早速、手分けして情報収集に当たる。
「こういう街中でも意外と隠す場所には事欠かないのも確かだ。人の目の届かない屋根の上とか‥‥」
カルナックは町内会で梯子を借りると、屋根の上を調べて回る。
同じく、高いところに登って、カラスを観察するアルテス。
カーク、チカは『ステインエアーワード』や『ブレスセンサー』と言った探知系魔法でカラスの足取りを追う。
残りのメンバーは住民に町内会から依頼を受けた冒険者として聞き込みをする。
「夕刻から夜間にかけての間にカラスが集まっている場所というのは見たことないか?」
そう聞き込むイグニス。
「ウチの近くでも五月蠅いんだけど、そうねぇ‥‥買い物帰りに広場とかでよく見かけるかしら?」
カラスに受けた被害の話が多い中、役に立つ情報を取捨選択していく。
そうして一日目の日が暮れ、夜には全員で情報交換をする。
そして、翌日に備えて就寝。
「あ〜‥‥棲家のベッドなんかより全然寝心地がいいな‥‥Zzz」
割と質素な部屋とベッドだったが、ぐっすりと眠りにつくイグニスであった。
翌日も情報収集を続ける冒険者達。
「空飛んでるのを相手にしようとしても無駄だわな」
飛んでいるカラスは無視しつつ、地道に聞き込みをするオーム。
「カラスなんかより、俺は姉さんと遊んでたいんだけどな?」
などと、レテを口説き始める。
「仕事が先でしょう?」
あくまでクールかつドライなレテ。
「よう、酒でも飲みにいかねえか? 俺気の強い女って好みなんだよなー」
「はいはい、今度、気が向いたらね」
つれないレテ。しかし、めげることなく口説き続けるオームだった。
金貨をかざしてカラスを誘うソルティナ。
回収できなかった場合は赤字覚悟である。
屋根の上のカルナックと協力して、逃げていく方向などを調べる。
この時期のカラスは集団で『ねぐら』を形成する。
冒険者達は情報を統合し、樹木が多い町内の広場に目星をつけた。
そして、冒険者達は町内会の了承を得て、広場に網を使った罠を張る。
「こういうのあまり得意じゃないですが‥‥簡単な事なら手伝えますから」
罠を張る手伝いをするアルテス。
工作や隠密のスキルを持つオームやカルナックを中心に全員で事に当たった。
『ねぐら』には必要以上に近づいていないが、ジャイアントクロウの姿も確認してある。
そして夜を待って襲撃を敢行する。
カラスは勿論鳥目のため、夜間の活動が困難なのを見越してのことである。
明かりは冒険者達の持つわずかな物だけ。
「カアッ! カアッ!」
突然の襲撃にカラス達が騒ぎ出す!
夜中に騒がしい事この上ないが、付近の住民には町内会からお知らせしてもらってある。
仕掛けておいた罠で、騒ぐカラスどもを拘束する。
しかし、それだけですべてを捕らえられはしないのは承知の上だ。
「たった一人の女のための大切な指輪、盗んだ奴は馬に蹴られて三途の川だ!」
そうカラスどもに向かって叫ぶカーク。
「うふふ〜♪ お兄ちゃんに守られながらの戦闘♪ いいね〜♪」
アルテスの後ろに隠れつつ、嬉しそうなチカ。
「と、そんなこと考えてる場合じゃないね、今は」
魔法の詠唱を始め、緑の淡い光に包まれるチカ。
「チカさん。精一杯守らせていただきます」
微笑み、クルスソードを構えるアルテス。
剣と盾を置き『オーラエリベイション』を発動させるソルティナ。
再び構え直し、カラスを迎え撃つ!
「カアーッ!」
ジャイアントクロウだけでなく、普通のカラスも『ねぐら』を守ろうと冒険者達に襲いかかってくる。
「そこよ!」
明かりを頼りに死角から飛来するジャイアントクロウを『バックアタック』で見切り、ショートソードとダガーで切り返すレテ。
「闇に潜むのは私の方が得意みたいね?」
そう言って艶笑する。
「Ein KOrper ist ein KOrper―――!」
「風よ‥‥我が声に従い、目の前の敵を撃て!‥‥ウインドスラッシュ!」
カークとチカの詠唱が完成し、真空の刃がジャイアントクロウに炸裂する!
「少々君はこの都会じゃ厄介な存在なので、悪いが倒させてもらうよ」
さらにカルナックがショートボウで狙い撃つ!
「──双撃の刃、その身に刻め!」
『ダブルアタック』と『ソニックブーム』のコンボでジャイアントクロウを追撃するイグニス。
「雷よ、我が前の敵を焼き払え!‥‥ライトニングサンダーボルト!」
チカの放った雷撃がカラス達を撃ち落とす。
「カアーッ!」
それでも果敢に襲ってくるジャイアントクロウに、今度はオームが『ブレイクアウト』からの斬撃を見舞う!
「フン、紅月旅団のオームの手を煩わせるほどでもなかったな」
ジャイアントクロウが墜落したのを確認し、剣を納めるオーム。
ほどなくして、数体の死骸と罠に掛かったカラスを残して、カラスどもは何処かへと飛び去っていった。
「アルテスお兄ちゃんアリガト〜♪ あたしが見込んだだけはあるね♪」
そう言って抱きつくチカ。彼女が無傷で魔法に集中できたのは、アルテスが近づくカラスをすべて叩き落としていたからに他ならない。
「当然のことをしただけだよ」
そう言って照れている。
「網に絡まった鴉は‥‥どうしましょ?」
苦笑するレテ。
可哀想だが駆除するしかないだろう。
こうしてジャイアントクロウを退治し、翌朝には『ねぐら』から盗難品の回収に成功した冒険者達。
オトリに使った金貨も無事回収できた。
「もう絶対、手離すなよ? これも女房もね」
指輪を手渡すカーク。
「有り難う! 本当に有り難う!」
若者は何度も礼を言うと、良かったら結婚式に参列して欲しいと言い残して去っていった。
「アイツにとっては、それが命を賭けられるものになるんだろうな‥‥」
見送りながら呟くイグニス。
「また鴉が住み着かないよう、餌場にならないような注意も必要なんじゃない?」
「町内の生ゴミを減らしたり、容易に生ゴミを漁れないようにして、カラスが簡単に餌を得ることが出来ないと認識させて都会に住まわせないようにするのが得策だ」
町内会長に進言するレテとカルナック。
「その方が後々また駆除する人を雇う金も浮くし、鳥類による糞公害等の衛生面も改善されてお得ですよ」
そう続けるカルナック。
「なるほど、そうですな。町内の住民に呼びかけるようにします」
そして、町内会長は礼を言うと報酬を渡す。
「なぁ、仕事も終わったし、飲みに行こうぜ〜?」
またまたレテを口説いているオームであった。
これも何かの縁と、結婚式に参列する冒険者達。
「おめでとうございます。お幸せにね☆」
新郎新婦を祝福するソルティナ。
「彼らはオレ達二人にとって掛け替えのない英雄です! 本当に有り難う!」
泣きながら冒険者達に感謝する若者。
彼らがいずれ、より多くの人達から英雄と呼ばれる日が来る事を願っている。