●リプレイ本文
「僕は小さき者達の伝道師ギルス! 悪魔は神様の敵! 神様の敵は僕の敵! 絶対に退治するぞ!」
意気込むクレリックのギルス・シャハウ(ea5876)。
「僕は‥‥あまり戦うのは好きじゃないんだ‥‥」
優しい性格で戦う事をあまり好まないが、村人を助けたいという思いから依頼を引き受けたナイトのグラディ・アトール(ea0640)。
ギルドで依頼を受けた冒険者達は、作戦の打ち合わせをしてから村へと向かった。
村までの道中は何事も無かった。
「狭苦し〜、暑苦し〜、でも神様がじ〜っと見ているんだ、がんばるぞ」
村に入る前に、神聖騎士エリス・ローエル(ea3468)のバックパックに隠れるギルス。
冒険者達はバラバラに、別の依頼の帰りに立ち寄ったと言う名目や、旅の医師を装って村に入った。
「ニャ〜」
村のそこかしこに黒猫がいる。ちょっと不気味だ。
「結構荒れてますね‥‥」
ウィザードのラディス・レイオール(ea2698)が呟く。
各自、怪しまれないよう宿屋を宿泊客として訪れていく。
宿帳に依頼を受けた冒険者だと一筆加えておくナイトのゼシュト・ユラファス(ea4554)。両腕に灰色熊につけられた派手な爪痕がある。
宿屋の主人は、一度嬉しそうな顔をすると、察したように普通に振る舞ってくれた。
「のんびりさせてもらいますね‥‥まだ少し余裕が有るので」
仕事も無く骨休めをしてるよう、宿で装う浪人の九門冬華(ea0254)。
「まだ他の仲間と、この村で待ち合わせをしているんだよ。それまでお世話になるよ」
そう話すナイトのクリオ・スパリュダース(ea5678)。
どこに敵の目があるかも分からないため、冒険者達は慎重だった。
医師を装って村長の家に挨拶に行くラディス。
助手役としてエリスが同行している。
黒猫を抱いた村長が、応対をするが目つきが異常なのは明らかだ。
「出来れば体調不良の人達を私に診させて貰えないでしょうか」
自分は旅の医師で、村での病気の話を聞いてきたのだと名乗るラディス。
「好きにしろ‥‥」
素っ気ない村長。
「それで患者さんは何人いるのでしょうか」
尋ねるエリス。これは合図である。
「知らん‥‥」
そう言って、ドアを閉めようとする村長。
バックパックの中のギルスは『デティクトアンデッド』を唱える。
「発見、発見、はっけ〜ん」
こっそり小声でエリス伝えるギルス。
少なくとも、あの黒猫が不死者の類であることは間違いないようだ。
その後は、患者を診るという理由で村を回り、黒猫がいる場所を確認していく。
また、患者達の症状は同じで、薬草などでは手の施しようもなく、『リカバー』を使っても癒せるものでは無かった。
「先程の患者はどうでしょう」
と、エリス。これはギルスへの合図である。
「発見、発見、はっけ〜ん」
こっそり小声でエリス伝えるギルス。
どうやら、黒猫という黒猫が不死者の類のようだ。
これらが全て話に聞いたグリマルキンだとすると大変なことである。
やがて日も暮れ、宿屋に戻るラディスとエリス(inギルス)。
宿屋の周囲にも不死者の類の黒猫が居る。不自然なところを見せないよう、細心の注意を払う。
「どんな感じだった?」
さりげなく状況を尋ねるナイトのアッシュ・クライン(ea3102)。
外からは見えない位置で、事情を話すラディス。
「そやつは中々に小賢しい。村長に飼われる事が村で一番安全だと理解しているのだからな‥‥」
考えを巡らせているゼシュト。
冒険者達は夜間の襲撃に備え、三班に別れて見張りを立てる。
一班。アッシュ、ギルス、クリオ。
天井付近に潜むギルス。アッシュとクリオも見張りをしていると悟られないよう、外からは見えない位置である。
二班。ゼシュト、ラディス、エリス。
昼間に十分な睡眠を取り、見張りに備えていたゼシュト。
「あなたはただの猫ですか、それとも‥‥」
明らかに様子を窺っている風の黒猫を威嚇しようとするエリスをラディスとゼシュトが制する。
今のところ、襲撃してくる気配は無く、刺激しない方針である。
三班。冬華、グラディ。
窓際の死角になる部分の床に腰を下ろして剣を携えて警戒している冬華。グラディもそれに倣う。
結局、その夜は襲撃も無く、夜が明ける。
二日目。
薬草に精通したラディスは、後で被害に遭った人に処方する為、薬草を天日干しして準備している。
エリスは、ギルスを隠したまま、昨日と同じく村を回った。
他の冒険者達は、怪しまれないよう大人しくしているしかない。
見た目は全て黒猫のため、グリマルキンかそうでないかを見破ることは出来なかった。
黒猫の方も冒険者達にはちょっかいを出してこないようだ。
最初に村に入り込んだと思われる村長の飼っている黒猫がリーダーである可能性は高い。冒険者達は、襲撃目標を村長の黒猫に定めた。
三日目。
なるべくさり気なく、村長宅に集合した冒険者達。
『デティクトアンデッド』を掛け、村長宅の不死者を確認するギルス。周囲にも不死者の黒猫達が居るようだ。
一度、剣と盾を置き、自分と仲間の武器に『オーラパワー』を付与していくアッシュ。
「さて、此処からが本番ですね」
冬華も『オーラパワー』を掛けて貰った。
クリオも剣と盾を置き、『オーラパワー』『オーラボディ』を掛ける。
『アイスチャクラ』を出すラディス。
『オーラパワー』をジャイアントソードに付与すると、『バーストアタックEX+スマッシュEX』で扉をブッ壊すゼシュト!
得物が大きいゼシュトはそのまま入り口に立つ。
村長宅に突入する冒険者達。
「なんだなんだ? 冒険者というのは強盗もするのか!?」
明らかに正気ではない目つきで黒猫を撫でていた村長が立ち上がる。
真っ先に『ブラインドアタック』での先制を仕掛ける冬華。
「ギニャッ!」
慌てて飛び退く黒猫。村長を盾にするかのような動きだ。
「奪った物を返して‥‥そして、逝きなさい」
そのまま刀は抜かず、村長に当て身を入れ、身柄確保する冬華。
「バレちまっちゃしょうがニャいニャ〜。このグリマルキン様が相手をしてやるニャ。さあ、恐れおののき、命乞いするニャら見逃がしてやってもいいニャりよ?」
黒猫が突然喋り出す。
「「ニャ〜〜」」
黒猫が集まってきている。もちろん、ギルスの『デティクトアンデッド』によって冒険者達は気付いている。
「オマエらの動きなど、とっくにお見通しニャ。そのまま去るニャら、見逃してやろうと思ってたんだがニャ〜?」
村長の黒猫がそう言うと、集まってきていた黒猫達が変身を解いてインプになる!
「我は烈空の騎士アッシュ・クライン。この剣を恐れぬのなら、かかってくるがいい!」
名乗りをあげるアッシュ。
「魔物が存在できる場所は、ここには無いのですよ」
窓を塞ぐ様に立つエリス。
「できれば戦いたくない‥‥けど、戦わなければ解決できない事もあるんだよな‥‥」
突入前に準備していた『オーラソード』を構えるグラディ。
「ぁぁ、面倒くさい」
ぼやきつつクリオ。得意の下段突きも飛べるインプには使いづらい。窓側に立ち、逃げ道を塞ぐようにする。
「仕方ニャいニャ。ちょっといたぶってやるかニャ? 逃げるニャら今の内ニャりよ?」
そう勧告してくる村長の黒猫。
しかし、冒険者達は怯まない。
「やっちまうニャ!」
業を煮やした村長の黒猫がインプ達をけしかける。
「「ニャーッ!!」」
魔法を唱えるインプ、爪や牙で襲いかかってくるインプ。
『オーラソード』と『オーラショット』を駆使して遠近両用で戦うグラディ。
「やはり射撃術も磨く必要がありそうですね‥‥」
『アイスチャクラ』を投擲するラディスだが、いかんせん射撃術は素人である。
「なに‥‥デビルと言えど恐るるに足らぬ。我がスマッシュの連撃で終わらせてくれる!」
「ピギャー!」
群がってくるインプに一撃でほぼ致命傷を与えるゼシュト!
そこそこ腕の立つ冒険者達にとって、デビルに有効な攻撃手段さえあれば、数が多くてもザコである。
数多くいたインプもいつの間にか村長の黒猫だけになっていた。
「ギニャー! 許してくれニャー!」
ついに正体を現す!
「ホントはただのインプにゃんだニャー!」
‥‥コイツもインプだったのだ。逃亡を謀る。
「魔物といっても臆病者ですね‥‥ホーリー!」
容赦なく聖なる力で攻撃するエリス。
それでもなんとか扉のあった所に辿り着くインプだが、
「ゼシュトの旦那!」
クリオが声を掛ける。
戸口に立つゼシュトが『スマッシュ』を振り下ろす。
「そんニャ〜〜!」
真っ二つになるインプ。
「‥‥他愛もない」
冷笑し、蔑んだ目で一瞥するゼシュト。
その後、冒険者達は村に残る黒猫インプの掃討と奪われた白い玉を捜索をする。
「悪魔の所行なんて、神様はじ〜っとお見通しさ」
『デティクトアンデッド』を持つギルスを中心に捜索する。
リーダーのインプを失い、隠し場所から白い玉を持ち逃げしようとしていたインプを追撃し、見事取り戻すことに成功した冒険者達。
インプの『デスハートン』によって奪われていた白い玉を村人達に返す。それを呑み込むと、村人達は無事回復したのだった。
「神様はいつでも、あなた達をじ〜っと見守っていますからね、じ〜っと」
銀色の羽でパタパタ飛び回りながらギルス。ついでに村で帰りの食料を買っておく。
「これをどうぞ」
準備しておいた薬草を村人達に処方していくラディス。
「これで‥‥無事終了ですかね。皆元気になってよかったです」
村長宅の修繕や掃除を手伝う冬華。
「そうですね」
相槌をうつグラディ。
「皆も無事で何よりだ」
仲間達を見渡すアッシュ。
エリスの『リカバー』を受け、やがて意識の戻った村長。
「悪魔に魅入られるのは、神様の視線を意識していないからだよ。ほら、村長さんのすぐ後ろで、神様がじ〜っと見ているよ」
彼には、早速ギルスのお説教が待っていたのだった。
「いやはや、面目ないです‥‥」
無事、正気に戻った村長に見送られつつ、冒険者達は村を後にした。
「教会なんて知ったことじゃないけど‥‥こういう事件があったということを教・え・て・や・る!」
キャメロットに戻り、デビルの事件があった事を教会に報告しにいくクリオであった。
彼らがいずれ英雄と呼ばれる日が来る事を願っている。