奇妙な宝箱
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■ショートシナリオ
担当:紅茶えす
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 62 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月14日〜09月19日
リプレイ公開日:2004年09月14日
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●オープニング
それはとある男爵家での出来事だった。
「子爵殿より頂戴したメダル‥‥。確か、宝物庫の宝箱に仕舞ってあったな?」
「は。間違いなく」
男爵の言葉に執事が応える。
「今度の茶会で必要になる。確認を頼む」
引き出しから鍵を取り出し、執事へと渡す。
「かしこまりました。少々お待ちを‥‥」
宝物庫へと向かう執事。
宝物庫。そこそこ裕福な男爵家に相応しい品々が置かれている。
執事が宝箱に鍵を挿そうとしたその時!
宝箱から触手のような物が伸び、執事の手に絡みつく!
「ぎゃあああっ!?」
慌てて手を引っ込め、腰を抜かす執事。
「どうされました!?‥‥執事殿!」
その悲鳴を聞き、駆けつける衛兵。
「何事だ?」
ほどなく男爵も駆けつける。
「は‥‥、宝箱が襲ってきたので御座います」
手を見せる執事。袖が解け、触れられた所が強酸を浴びたかようになっている。
「罠など仕掛けた覚えは無いが‥‥貸してみろ」
執事の手から鍵を取る男爵。
「なりません男爵様! 危のう御座います!」
後ろからしがみついて、男爵を止める執事。
「僭越ながら、私が確認しましょうか?」
「頼む‥‥いや、待てよ?」
衛兵に鍵を渡しかけて思いとどまる男爵。そしてニヤリと笑う。
「面白い。ここは冒険者を呼んで確かめてみようではないか!」
ここは冒険者ギルド。
冒険者達が仕事の斡旋を求めて集う場所である。
「仕事の斡旋か? 急ぎの依頼があるんだが、引き受けてくれないか?」
いつものように冒険者ギルドのおやっさんが依頼書のひとつを見せる。
『当家の宝物庫に何やら怪物が居るようなのです。
我が主のたっての希望で、それを冒険者の方々に退治して頂きたいのです。
また、怪物退治に我が主も立ち会うとの事なので、主に被害が及ばぬよう宜しくお願い致します。
追伸。
成功の暁には、我が主が是非とも冒険者の方々とティータイムを楽しみたいと仰っておられますので、粗相の無いようお願い致します。
男爵家執事』
「紅茶男爵の異名を持つ貴族様からの依頼だ。冒険者と交流を持とうってー奇特な人らしい。‥‥しかし、宝物庫に謎の怪物か。いったい何が居るんだろうな?」
依頼書の控えを渡してくれる。
「理由は分からないが急いで解決して欲しいらしい。依頼期間中は男爵家の方で寝食とも面倒見てくれるから、なかなか美味しい仕事だぞ。‥‥ああ、言うまでもないと思うが、男爵家のお宝かっぱらったりするなよ?」
こうして、新たな依頼を受けた冒険者達であった。
●リプレイ本文
ギルドで依頼を受けた冒険者達は、男爵邸へと向かう。
「あの紅茶男爵の依頼かあ‥‥おいしい紅茶がまた飲めるかな?」
鼻歌を唄いつつレンジャーのアシュレー・ウォルサム(ea0244)。
「宝物庫に巣食う謎の怪物、か‥‥ハッハ、なかなか面白そうじゃないか」
楽しみなようにレンジャーのルカ・レッドロウ(ea0127)。
男爵邸へ到着し、応接室へと通される。
「アミィさまには悪いけど、豪華な屋敷でかっこいい男に囲まれて、女があたい一人なんて最高の依頼だね!」
そう喜んでいる武道家の真慧琉(ea6597)。
「宝箱‥‥の中に勲章だっけ?‥‥流石にコレはくれてやれないしなぁ‥‥」
フランケン勲章を身に着けている武道家の空魔玲璽(ea0187)。
すぐに執事を連れた男爵が現れる。
「オッス」
片手を上げる空魔。
「男爵様になんと無礼な!」
執事がたしなめるが、
「俺は『いかなる相手でも、仲間や友人になる時は対等の立場でいろ』って理論を作ってるからな」
「良い良い。我が輩を仲間や友人と思ってくれるならば歓迎だ。ようこそ冒険者諸君。我が輩のことは紅茶男爵とでも呼んでくれたまえ」
空魔に笑みを返し、そう答える男爵。
「白の神聖騎士クウェル・グッドウェザーです」
神聖騎士クウェル・グッドウェザー(ea0447)が名乗り、男爵と握手を交わす。
「皆様への依頼内容で御座いますが‥‥」
執事が説明しようとすると、
「宝物庫に潜む怪物か? どう言った類のヤツか、分かるヤツはいるのか? 教えてくれ、俺にはさっぱり皆目検討もつかん!」
朗らかに神聖騎士リュウガ・ダグラス(ea2578)。
「おっと名乗ってなかったな! 蒼穹の牙リュウガ・ダグラスだ! よろしくな!」
と名乗りを上げる。
「此方も命を張っている‥‥・敵を知らずに挑むのは、無謀の極みだからな」
執事に怪物の容姿や何をされたのか、詳しく聞き始める忍者の風霧健武(ea0403)。
「‥‥何でも良い、わかる範囲で教えてくれ」
志士の琥龍蒼羅(ea1442)も続く。
その時の事を詳細に話す執事。
「うーん、このモンスター、クレイジェルまたはそれの同類じゃないのかなあ‥‥はあ、だとするとやだなあ。俺、こいつに溶かされたんだよねえ、前」
その時の事を思い出して身震いするアシュレー。
「予想通りだとすれば‥‥、厄介な相手だな」
腕組みする蒼羅。
「もし、危なくなったら助けてね☆」
シフールにしては豊かな胸を強調して、仲間達を誘惑する慧琉。
宝物庫へと案内された冒険者達。男爵と執事も同行している。
執事が宝物庫の鍵を開け、扉を開く。
そこそこ広い空間に、煌びやかな宝物が陳列されていた。
「どこに潜んでいるか分からんぞ、気を抜かずやろう!」
「敵は何処に居るか分からない‥‥、油断するな」
仲間達に呼びかけるリュウガと蒼羅。
「どの宝箱? 見間違うこともないだろうから指し示してくれないか?」
「あの宝箱で御座います。こちらが鍵で御座います」
空魔の問いに、執事が宝箱のひとつを指す。そして、鍵を渡す。
「期待しているぞ」
興味深そうに冒険者達を見つめる男爵。
クウェルと蒼羅が男爵の護衛につく。
「念のため結界を張るぞ! 再現の神、大いなる父の力を今ここに示せ! 聖なる領域をこの地へ!‥‥ホーリーフィールド!」
リュウガが黒く淡い光に包まれ、そして目に見えない結界が包み込む。
そして、冒険者達は背中合わせに固まって宝物庫へと入り、各自、持てるスキルをフル稼働して警戒する。
釣り竿を持って怪しげな所を突っつくルカ。男爵に頼んで盾を借りている。
「空気が淀んでいる‥‥? 化物が住むには都合が良いと言う事か‥‥」
風霧や他の者も棒きれを使って調べる。
何かが動いた。
目的の宝箱にルカの釣り竿が振れようとした瞬間、宝箱から触手が伸びる!
その触手は『ホーリーフィールド』によって阻まれたが、『ホーリーフィールド』も消滅する。
「いたぞ! あそこだ!‥‥ブラックホーリー!」
リュウガは、すでに唱えておいた聖なる力を解き放つ!
さらに、他の所からも触手が伸び、棒きれを溶かす!
どうやら敵は一匹ではないようだ。
「何のモンスターか分からんがとにかく殴るからどけ!」
叫ぶと『オーラパワー』を掛けたナックルで『ストライク』を見舞う空魔。
触手が飛び散る。効いているようだ。
「で!? アレ何!?」
仲間達を振り返る空魔。
「「知らずに殴りかかるな!!」」
仲間達から総ツッコミを受ける。
怪物の正体はメタリックジェルだった。
金属に張り付いて擬態し、不意打ちを仕掛けてくる。
発見さえしてしまえば戦うことはそう難しくはなかった。
「当たらなければ、どうという事は無い」
触手を回避すると後ろへ下がり、弓矢で射撃する風霧。
アシュレーもそれに続いて射撃開始する。
「‥‥此処で風は使えんな‥‥」
男爵の護衛に立つ蒼羅。彼の使える風の魔法は、宝物庫で使うのには向いていないようだ。ダーツを投擲して援護する。
「男爵に危害を加えさせはしません!!」
護衛をメインにしつつ、ダーツを投擲して援護するクウェル。クルスシールドを構え、いつでも庇える体勢だ。
「マズイな‥‥」
空魔と並んでナックルで殴りかかるルカだが、タフなメタリックジェルにはカスリ傷程度にしかならないようだ。
「四の五の構うな! 叩き上げろ! 上で壊して中身を取れ!!」
ガンガン『ストライク』で殴打と蹴撃を叩き込む空魔。
何か有効手段は無いものかと自分の装備を漁るルカ。
「えーと、スコップにロープ、それと褌‥‥ダ、ダメかなァこりゃ」
苦笑すると、男爵の護衛を蒼羅と交代する。敵を倒すばかりが冒険者の役目というわけでもない。
その間メタリックジェルを引きつけたのは慧琉。『兎跳姿』を使って華麗に触手を避けている。
「男爵を頼むぞ‥‥斬!」
蒼羅は前衛に立つと『スマッシュ』で斬りかかる。剣の腕はこれからまだまだ磨かなければならないだろうが、メタリックジェルの回避能力は低いようだ。
しぶといメタリックジェルも冒険者達の激しい攻撃に、ようやく動かなくなった。
「やったね♪」
大喜びで、最後のトドメを刺した蒼羅に飛びつく慧琉。
丹念に刀を拭いてから鞘に収める蒼羅。
「何とか片付いた様だな! みんなお疲れ様でした」
朗らかにリュウガ。
「皆さん、ご無事ですか?」
怪我人に『リカバー』を掛けていくクウェル。
「男爵家の宝物ってのも興味深いねェ‥‥。お宝とか見るのって結構好きなんだよねェ」
改めて宝物庫の宝物を眺めるルカ。勿論、かっぱらうつもりは無いようだ。
そして、次々に仲間達に飛びついて喜びを表す慧琉。
そう、冒険者達は、慧琉好みのハンサム揃いだったのだ!
宝箱を開け、メダルを取り出すと男爵の首に掛ける。
「男爵さんよー、その勲章ってあんたが貰ったの? それとも先祖?」
あっけらかんと尋ねる空魔。
「これは我が輩が直々に子爵殿より頂戴した物だ。詳しい話は、ティータイムでも取りながらゆっくり話そうではないか」
豪快に笑う男爵。
「すぐに御用意致しますので、少々お待ち下さいませ」
ティータイム。
注がれた紅茶の香りが漂う。
「先ほどの活躍、見事であった。さあ、皆も楽しんでくれたまえ」
紅茶の香りを楽しむと、一口口を付ける男爵。
「どれほどの一品が味わえるか楽しみです」
礼服に着替えているクウェル。作法もしっかりしている。
「こうして紅茶をご馳走になるのもこれで二度目。やっぱりおいしいですね‥‥」
紅茶を楽しむアシュレー。
「「‥‥素晴らしい!」」
作法に則り、紳士的に振舞うリュウガ。
菓子職人でもあるクウェルは、紅茶だけでなくお茶菓子も絶賛した。
「嬉しいことを言ってくれる」
御満悦の男爵。
そして、メダルの逸話などを話すのだった。
「あ、すいません、差し出がましいのですがこの紅茶少し分けてもらえないでしょうか? 父の執務の休憩にでも飲んで貰おうと思うので」
アシュレーが切り出す。
「ほほう、父上のためとは親孝行だな」
「あ、うちの父は地方の領主なんです。といってもかなりの田舎ですけどね」
「だが、風味が変わるので分け与える訳にはいかないのだ。紅茶の香りと味が変わるのは紅茶を冒涜するのと同義だからな。今度は父上と共に来られるがよい」
その後は風霧のジャパンのお茶の話を男爵は興味深そうに聞いていた。
「‥‥誰かレディを紹介してもらえないかねェ」
ボソッと呟くルカ。
「レディならそこに慧琉嬢がいるではないか」
「あら、レディだなんて紅茶男爵もお上手ね☆」
「‥‥付き合ってみるかい?」
流し目を送るルカ。
一通りティータイムを楽しみ、竪琴演奏を披露する蒼羅と演奏に合わせて踊りを披露する慧琉であった。
その後、冒険者達は依頼期間の残りを紅茶男爵邸で優雅に過ごす。
「とりあえず十人は抜かないとな」
空魔は衛兵の訓練に乱入していたり。
ルカは男爵邸のお手伝いさんを口説いていたり。
「逆ハーレム最高!」
慧琉は逆ハーレム気分を満喫していたり。
そうして、瞬く間に依頼期間は終了した。
「世話になった。何かあったらまたギルドに連絡してくれ。何も無くても茶会なら大歓迎だけどな」
拳と手の平を合わせて一礼する空魔。
「ああ。何か面白い話があれば、ギルドに依頼を出すこともあるはずだ。機会があれば、また我が輩の依頼を引き受けてくれたまえ」
そう言って冒険者達を見送る紅茶男爵。
彼らがいずれ英雄と呼ばれる事を願って。