【ケンブリッジ奪還】炎の大脱出!
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■ショートシナリオ
担当:紅茶えす
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 62 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月21日〜09月26日
リプレイ公開日:2004年09月24日
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●オープニング
「なに? モンスターがケンブリッジに!?」
円卓を囲むアーサー王は、騎士からの報告に瞳を研ぎ澄ませた。突然の事態に言葉を呑み込んだままの王に、円卓の騎士は、それぞれに口を開く。
「ケンブリッジといえば、学問を広げている町ですな」
「しかし、魔法も騎士道も学んでいる筈だ。何ゆえモンスターの侵入を許したのか?」
「まだ実戦を経験していない者達だ。怖気づいたのだろう」
「しかも、多くの若者がモンスターの襲来に統率が取れるとは思えんな」
「何という事だ! 今月の下旬には学園祭が開催される予定だというのにッ!!」
「ではモンスター討伐に行きますかな? アーサー王」
「それはどうかのぅ?」
円卓の騎士が一斉に腰を上げようとした時。室内に飛び込んで来たのは、老人のような口調であるが、鈴を転がしたような少女の声だ。聞き覚えのある声に、アーサーと円卓の騎士は視線を流す。視界に映ったのは、白の装束を身に纏った、金髪の少女であった。細い華奢な手には、杖が携われている。どこか神秘的な雰囲気を若さの中に漂わしていた。
「何か考えがあるのか?」
「騎士団が動くのは好ましくないじゃろう? キャメロットの民に不安を抱かせるし‥‥もし、これが陽動だったとしたらどうじゃ?」
「では、どうしろと?」
彼女はアーサーの父、ウーゼル・ペンドラゴン時代から相談役として度々助言と共に導いて来たのである。若き王も例外ではない。彼は少女に縋るような視線を向けた。
「冒険者に依頼を出すのじゃ。ギルドに一斉に依頼を出し、彼等に任せるのじゃよ♪ さすれば、騎士団は不意の事態に対処できよう」
こうして冒険者ギルドに依頼が公開された――――
ここは冒険者ギルド。
冒険者達が仕事の斡旋を求めて集う場所である。
「ケンブリッジに大量のモンスターが襲来したらしい! キミ達もひとつ、引き受けてくれないか?」
興奮したように冒険者ギルドのおやっさんが依頼書のひとつを見せる。
『冒険者諸君。これはケンブリッジにある学校のひとつへ赴き、校舎内に取り残された生徒の救出を依頼するものである。
この依頼を受ける冒険者には、『パピーフォーム』と呼ばれる5歳〜11歳までの生徒を教える学校のひとつへ赴き、生徒達を救出してもらいたい。
その学校にはオークが侵入したという情報も入っており、生徒達の安否が気遣われている。おそらく生徒達は、モンスターへの恐怖、そして餓えに苦しんでいることだろう。
この依頼を受ける冒険者には、馬車の貸し出しと食料を用意しておくので、一刻も早く現地へ向かって欲しい』
「この依頼、受けてくれるな? 依頼書の通り馬車を外で待たせてあるからな。さあ乗った乗った!」
依頼書の控えを渡し、急かすおやっさん。
ケンブリッジの危機を救えるかどうかは、冒険者達の活躍にかかっている。
●リプレイ本文
ケンブリッジを目指し、馬車を走らせる。
「若木を無闇に散らすわけにも行くまい‥‥次代の英雄かも知れないしな」
保存食を一口サイズに切り分けているファイターのマナウス・ドラッケン(ea0021)。
また、ダガーの柄に釣り糸を結び付けておくなどの準備もしている。
「あら‥‥? 今回の依頼、女は私だけですか‥‥? 別に、いいですけど‥‥」
同じ依頼を受けた面々を見渡す浪人の水野伊堵(ea0370)。
(「これで美少年つかみ放題! ふふ、はは‥‥あーっはっはっはっ!!!」)
内心、こんな事を思っていようとは。
馬車のまま校庭に乗りつけ、不要な荷物は置いて冒険者達が飛び出す。
現場の教師や学校関係者から手早く状況確認するレンジャーのアシュレー・ウォルサム(ea0244)と、ナイトのアッシュ・クライン(ea3102)。
と、そこに。
「か、火事だーっ!」
校舎から煙が上がり、赤い炎が見え始める。風向きが悪く火の勢いが増していく。
「まずい火が!」
ファイターのヒックス・シアラー(ea5430)が校舎へと駆け出す。
「ちっ‥‥想像以上に大きい。早くしないと子供達に被害が出るぞ‥‥」
武道家の天那岐蒼司(ea0763)も舌打ちし、後に続く。
そのまま全員で校舎に突入。
「これからの未来を担っている子供達を、ここで失わせるわけにはいかないな」
呟くアッシュ。
逃げ遅れた子供が散り散りになっている可能性が高く、校舎内にはオークが入り込んでいるとの事で、順次ペアに分かれて探索する冒険者達。
「ゲルマン語も話せるし、イギリス語を修得していない俺には有り難い事だな」
無表情なウィザードのジャドウ・ロスト(ea2030)。ゲルマン語の通じるアッシュとペアである。
彼らは火の出ている方向を担当している。
なぜなら、ジャドウは『クリエイトウォーター』で水を作り、『ウォーターコントロール』で動かして、邪魔な火を消しながら進めるからである。とは言え、すでにそれだけでは完全な鎮火は不可能なことは承知の上だ。
「押し通る〜! 邪魔をするな〜!!」
立ちはだかるオークを突き飛ばすファイターのレオンロート・バルツァー(ea0043)。
「貴様と遊んでいる暇は無い!!」
蒼司とペアを組み、オークを無視して廊下を駆ける。
「「助けに来たよ!」」
各教室を順に大声で呼びかけるマナウス&ヒックス。感覚を研ぎ澄ませ、反応を確認していく。
やがて、ひとつの教室から反応があった。
「「怖かったよぅ‥‥」」
恐怖に震える子供達。マナウスは切り分けておいた保存食を与え、
「外の馬車にもっとあるよ?」
と、子供達を誘導する。
「「ねぇ、もっとちょうだい〜」」
少し安心したのか、空腹を訴える子供達。
「外に出るまで我慢しよう。そうすれば食事を用意してあるから。だからもう少し頑張ろうな」
買っておいたお菓子をあげつつ、励ますヒックス。
しかし、教室を出ようとした所へ、声を聞きつけたのかオークが立ちはだかる!
「ブヒヒ〜ッ」
それに驚いて転んだ子が怪我をしてしまう。
「先に行っててくれ、おにーさんは此処でやる事が有るみたいだからね、友達も外で待ってるぞ?」
自分に注意を向けさせ、ヒックスに子供達を逃がすよう促すマナウス。
煙を吸い込まないよう口を押さえる指示し、怪我をしている子を抱っこして運ぶヒックス。
大声をあげて呼びかけるアシュレーと伊堵。
教室に隠れていた子供達を発見。
「もう大丈夫だよ」
優しく微笑んで安心させるアシュレー。
「美少年の守護者‥‥。この水野伊堵が来たからにはもう大丈夫よ。‥‥ちなみに『美』少年でないガキはどうでもいいわ」
伊堵の刺激的な後半部分の台詞は子供達には聞き取れなかったようで何よりである。
「水野、先に言っておくけど子供に変な真似しないでね」
釘を刺すアシュレーだが、
「坊や、私の事は『おねえたま』と呼ぶのよ?」
早速、何やら気に入った男の子に妙なことを吹き込んでいる伊堵に、アシュレーが肩を落とす。
「おねえたま‥‥? 怖かったよぅ」
瞳をウルウルさせる美少年に御満悦の様子の伊堵であった。
(「戦う方が性に合っているが、今回の依頼目標は『救出』だからな」)
蒸発していく水を程良く補充しつつ進むジャドウとアッシュも火の手が掛かる危ういところで子供達を発見する。
「大丈夫だったか? 俺たちが来たからにはもう安心していいぞ」
保存食を渡し、子供達を落ち着かせるアッシュ。
「急げ、長くは保たないぞ」
身振り手振りをつけて話すジャドウの言葉をできる範囲、丁寧な言葉で通訳するアッシュ。
頃合いを見て速やかに脱出を開始する。
レオンロートと蒼司も子供達を発見する。
「大丈夫か‥‥? 良く頑張ったな。もう、大丈夫だよ‥‥」
子供達を励ます蒼司。
だが、彼らの前にもオークが現れる。
「ここは俺が食い止める! 早く逃げろ!!」
剣を抜くレオンロート。蒼司と子供達を先に行かせる。
「ブヒーッ!」
戦槌を振り上げるオーク!
「ここから先は、何人たりとも通らす訳には行かぬ! だから俺は、ここで命をかける。貴様も命をかけてかかってきやがれ〜!!」
オークに斬りかかっていくレオンロートであった。
アシュレーと伊堵も子供を連れた状態でオークと遭遇してしまう。
「ここを踏ん張ればあとで子供達から尊敬されるよ」
耳打ちして伊堵を嗾け、先に子供を避難させるアシュレー。
「うふふ‥‥任せなさい♪」
「おねえたま、頑張って〜」
美少年の声援を背に受け、『ソニックブーム』主体の遠隔攻撃でオークと戦う伊堵であった。
アッシュとジャドウの行く手にもオークが出現する。辺りには消しきれない炎が浸食してきている。
「今はお前の相手をしている暇はない。退け!」
『ソニックブーム』を放ち、怯んだ所を子供達を庇って駆け抜けるアッシュ。
「‥‥目障りだ。消えろ」
熱湯と化した水を『ウォーターコントロール』でオークに掛けて援護するジャドウ。
「ブヒヒッ!?」
のたうつオーク。
「熱いか? ならば‥‥クーリング!」
ジャドウの冷気の手が触れると、熱湯が一転して凍てつき始める。
そのままオークを置き去りにし、脱出に成功する。
オークを倒したレオンロートが脱出しようとした時。
「‥‥熱いよぅ‥‥げほげほ」
燃える扉の向こうから、弱々しい声を聞き取ったレオンロートは迷うことなく扉を蹴破り飛び込んでいた。
発見した子供にマントを掛けて庇うが、炎は今にも部屋を焼き尽くす勢いだった‥‥。
またも立ちふさがるオークを『龍飛翔』でブッ飛ばし、
「死んでろ‥‥虫唾が走る‥‥!」
吐き捨てるように言う蒼司。
無事、子供達との脱出に成功する。
釣り糸をつけたダガーをうまく使ってオークをあしらったマナウスだが、炎に回り込まれ、逃げ場を失いかけていた。
「助けて‥‥」
そんなか細い声が聞こえる。
今ならまだ逃げ切れるかもしれなかったが、彼には見捨てることはできなかった。
「今行くっ!」
飛び込むマナウス。その教室には最早、逃げ場は無さそうだった。
おもむろに机を掴むと、燃えている窓の木枠を叩き壊す。ここは二階だ。火が強く、下は確認できない。一声掛けて子供を抱きかかえ‥‥。
そして、そのまま飛び降りる!
こちらもオークを倒すことに成功した伊堵。
「クク‥‥マヌケが‥‥。思い知れ。水野の力はまさに美少年を支配する力だという事を‥‥!!」
怖いよ、おねえたま。
そして脱出し、子供達とアシュレーに合流するが、
「子供達なら無事避難させたからもういないよ」
にっこりしながら言うアシュレーであった。
炎はついに、校舎の出入り口に到達しようとしていた。
「まだマナウスさんとレオンロートさんが戻ってないんだ!」
「行く気か? 死ぬなよ‥‥」
ジャドウに『クリエイトウォーター』で水を掛けてもらい、再び校舎内へ入ろうとするヒックス。彼もゲルマン語は修得しているので言葉は通じる。
と、そこへ。
二階の窓が突然破壊される!
「誰か居たら受け止めてくれぇっ!」
子供を庇うように抱えたマナウスが降ってくる!
「え? え? うわぁー!?」
慌てて受け止め、一緒に転がるヒックス。
二人の怪我も大したことなく、子供には怪我は無かった。
そして、炎の中を走り出てくる影!
レオンロートだ!
服は焼け落ち、裸に近い状態だが子供は無事のようだ。
「レオンロート! 無事か!?」
アッシュが声を掛ける。
「心配かけたな。もう大丈夫だ」
助けた子供をアッシュに託して膝をつくレオンロート。
これで、少なくとも冒険者達は、全員脱出に成功したことになる。
校舎を半分ほど焼いて、ようやく炎も鎮火したようだ。
教師や学校関係者が確認した所、逃げ遅れた生徒全員の救出に成功した事が判明し、冒険者達はホッと胸をなで下ろすのだった。
「‥‥‥‥食いな。‥‥子供が遠慮するモンじゃねーよ」
ややぶっきらぼうだが、食料を配る蒼司。
「はい、あーん♪」
アシュレーの阻止にもめげず、気に入った美少年達に食事の世話と称して手を出そうとする伊堵に、
「何をしとるか〜」
今度はヒックスがハリセンでツッコミをいれる。
何はともあれ、子供達を全員無事救出できたのは大成功と言えるだろう。
おどけながらも、その喜びを分かち合う冒険者達。
こうして彼らは、このパピーフォームで英雄として語り継がれる事となったのである。