●リプレイ本文
冒険者ギルドから食料満載の荷車を託された冒険者達。
荷車には荷馬が一頭繋がれているが、量が多く、足は遅そうである。
「今回はお前に苦労をかけるでござるよ。すまぬな」
愛馬のカグヤを荷車に繋ぎつつ、頬を撫でてやっている浪人の天城月夜(ea0321)。
「まだイギリスに来たばかりなんだ。どんな国か楽しみだな」
同じく、馬を荷車に繋ぐ志士の五百蔵蛍夜(ea3799)。
荷台の隅に腰掛けているのは僧侶の紅天華(ea0926)。薔薇色の不思議な色合いの大きな瞳をしている。
いつもニコニコ、楽天的ナイトのトリア・サテッレウス(ea1716)。
「初の依頼となりますわね。頑張りますわ♪」
気負いすぎないようにしつつ、ウィザードのエリス・ロンドフィート(ea3224)。
「宜しくお願いします、ロンドフィートさん」
今回は神聖騎士エリス・ローエル(ea3468)と、二人のエリスが居るため、姓で呼び合うことにしていた。
「準備はいいですか? 行きますよ」
神聖騎士オルフェウス・ガーウェイン(ea3680)が仲間を確認する。
「すまぬ、拙者自身の食料の準備を忘れていた‥‥」
「私も片道分しか用意してない。よく考えたら、食料を届けるのに、向こうで買うわけにも行かないか」
「あっはっは、僕もすっかり忘れてたよー」
「ごめんなさい、わたくしもですわ‥‥。こちらの食料に手を着けるわけにはいきませんものね」
まだ駆け出しの間には、よくあるミスである。出発前に気付いたのが不幸中の幸いだろう。各自、不足分の保存食を買い足して、改めて出発だ!
地図の村までの道と実際の道とを確かめ、道に迷わないよう努める天城。愛馬の横について、励ましの言葉をかけている。
「街並みもそうだけど、こういった道も祖国とは何か雰囲気が違うな」
半分、観光気分の蛍夜。あまり緊張感は無い様子で、しきりと仲間に話しかけている。
二人一組になり、交代で警護・引率と休憩・睡眠を取るというフォーメーションで村への道を進んでいく。
各々、自らの得意なスキル(殺気感知、優良視力、優良聴覚、魔法など)を活かして、警戒に当たる。
夜や暗い場所では、焚き火をしたり、ランタンを使って視界を確保している。
昼間は欠伸したりと眠そうにのんびりしていた蛍夜も、夜間警戒の担当時間には気を張っている。
「む、殺気!」
いち早く殺気を感知した天城が皆に注意を促す。
バックパックは置いたまま手元に置いていた武器を手に取る。
「‥‥デティクトライフフォース」
天華が魔法発動の瞬間、黒く淡い光に包まれる。
「‥‥ブレスセンサー」
ロンドフィートが魔法発動の瞬間、緑の淡い光に包まれる。
「何匹か、すでに探知範囲内に入り込んでいるようだな‥‥」
「はい、わたくし達を包囲するように‥‥皆様、お気をつけて!」
奇襲をかけようとしていた敵を見事に発見し、戦闘体勢を整える冒険者達。
犬のような顔、全身が鱗に被われている小型のオ−ガが姿を現す!
「GAWGAW!」
間違いない、コボルトだ!
「‥‥バキュームフィールド!」
ロンドフィートが魔法発動の瞬間、緑の淡い光に包まれる。
真空空間を手薄な所に張って壁を作る。
「行くぞ!」
たいまつ2本に火をつけ、地面に放りだし、灯りを確保した上で行動を開始する蛍夜。
先手を取った冒険者達の魔法詠唱が完成する!
「‥‥フレイムエリベイション!」
蛍夜が魔法発動の瞬間、赤く淡い光に包まれると、気合いが満ち、動きが良くなる。
「多くの命が掛かってるんですもの。この食料、アナタ方のお腹に収める訳にはいきませんわ! ウインドスラッシュ!」
ロンドフィートが魔法発動の瞬間、緑の淡い光に包まれると、真空の刃がコボルトを切り裂く!
「人様の物を奪うなどと、不埒な悪行‥‥言語道断! 殺生は好きではないが、全力でいかせてもらう! デストロイ!!」
天華が魔法発動の瞬間、黒く淡い光に包まれると、黒い光がコボルトを襲う!
そして、前衛がコボルトとの距離を詰める!
「騎士道精神どこへやら、逃げて隠れて嘘も吐く!! だけど仲間は裏切らず、お仕事ちゃんとこなす所存♪ ビザンチンのヘタレ騎士、トリア・サテッレウス!! 推して、参りま〜す♪」
胸に下げた勾玉にキスするとチャージングをかけるトリア。
「拙者の居合い。受けるでござる!」
日本刀を鞘走らせると、目にも留まらぬブラインドアタックでコボルトを切り裂く天城。
「援護します!」
ローエルもクルスダガーを構えると天城と組んで戦いに望む。
「GAW! GAWッ!」
コボルト達は奇襲に失敗したとは言え、目の前の獲物を諦めるつもりは無いらしい。
鉱物毒の塗り込まれた武器を振りかざし、襲いかかってくる。
「喰らえッ! 装破斬ッ!!」
相対したコボルトの武器をスマッシュ+バーストアタックで破壊する蛍夜。
「GAW?」
鉱物毒を塗っているとは言え元はナマクラ、見事に叩き折れている。
「我が刀に斬れぬ物無し」
さらに武器を失ったコボルトに斬撃を見舞う。
「邪魔はさせんでござる!」
相方のローエルの詠唱を守るべく立ち回る天城。
「あ〜っはっはっは!! ここを通りたくば、僕を倒してからにしなっさ〜い♪」
相方のオルフェウスの盾となって立ちはだかるトリア
「‥‥コアギュレイト!」
オルフェウスとローエルが魔法発動の瞬間、白く淡い光に包まれると、対象となったコボルトの動きがピタリと止まる。
「チャンス到来☆」
そこへ、すかさずスマッシュを叩き込むトリア。
少しずつ数が減り、劣勢になっていくコボルト盗賊団。
しかし、冒険者達も無傷ではない。多少のかすり傷でも受けると毒を喰らうため、見た目より、ダメージが大きい。
オルフェウスとローエルがリカバーとアンチドートを繰り返し唱えて、持ちこたえている。
「Gyaow!」
うまく回り込んでいたコボルトが悲鳴を上げる。バキュームフィールドに触れてしまったのだ。
「甘いですわ。ウインドスラッシュ!」
さらに追い打ちをかけるロンドフィート。
劣勢になるに連れて、逃亡するコボルトも出始めると、決着がつくのは早かった。
今後を考えると盗賊団を全滅させたいところだったが、輸送が任務である以上、深追いはできない。
「フッ、必殺技を出すまでもなかったな」
刀の血を振り払い、鞘に収める蛍夜。
「今までの己の罪業、詫びたいというのなら聞いてやらなくもないが‥‥。最も、もう聞こえてないか」
物言わぬ骸と化したコボルトに言葉を掛け、
「命とは儚いもの‥‥輪廻は転生する‥‥。今度生まれ変わってくるのなら、もっとマシな生き方を選ぶことだ‥‥」
そして、黙祷する天華。
冒険者達も無傷では済まず、鉱物毒のダメージも受けていたが、神聖騎士二人の魔法とコボルトから発見した解毒剤を使って治療していた。
「道具は使われてこそ、今後に活かしたいでござるよ」
さすがに鉱物毒は、冒険者が使う物ではないため廃棄したが、残った解毒剤は天城が受け取ることとなった。
こうして、冒険者達は無事、食料を村へ届けることに成功した。
「これでなんとか次の収穫期までは持ちこたえられそうです。本当に感謝しています。有り難う御座いました」
深々と頭を下げる村長。いずれ、彼らが英雄と呼ばれる日が来ることを願って冒険者達を見送るのだった。