●リプレイ本文
冒険者ギルドで依頼を受けた冒険者達。
「僕はギルス。小さき者達の伝道師、ギルスです」
いつものように名乗るクレリックのギルス・シャハウ(ea5876)。
「ギルスさん。荷物を馬に乗せますから貸してください」
重くて飛べないギルスの荷物を馬に乗せる神聖騎士エリス・ローエル(ea3468)。
「熊退治〜熊退治〜。さ〜頑張るぞ〜♪」
鼻歌を唄っているレンジャーのアシュレー・ウォルサム(ea0244)。
「熊さんには可哀想だけど、子供達に何かあったら大変だ。なんとかしなきゃ」
銀色の羽で羽ばたきながら、拳を握るギルスであった。
無事、村に到着する。
「毎度ー! 冒険者ギルドでーす」
早速、村長に挨拶するファイターのリオン・ラーディナス(ea1458)。
「おお、よくぞ来て下さった。ワシがこの村の村長をしとる者ですじゃ」
程良く枯れた老人が出迎える。なぜか革鎧を着て、腰に剣を差している。
そして、情報収集も兼ねて、熊に襲われたという猟師に会いに行く冒険者達。
村長は案内すると言って着いてきている。
「大丈夫ですよ。あなたはまだ死にはしませんよ。なぜなら、天国は満室ですから」
そう励ましながら、襲われた猟師を『リカバー』で治療するエリスとギルス。
傷の癒えた猟師は、熊に襲われた場所を説明し、熊に関する知識もある程度教えてくれた。どうやら『ブラウンベア』という中型種のようで、襲われた時は一匹だとのことだった。
「それから‥‥あの村長。凄く良い人なんですが、村では『冷や水村長』と呼ばれてまして、無茶したがるんで気を付けてやってくださいね」
最後にそっと耳打ちする。
「冷や水村長ですか、村が好きなんですね。思いは認めてあげたいのですが、村で熊に対抗できそうな猟師さんが怪我を負ってしまうような相手に戦わせるわけにはいきませんよね」
村長に聞こえないよう仲間達に耳打ちする武道家の李明華(ea4329)。
この村長が熊退治にまで着いてきそうだという事に冒険者達は薄々気付いていた。
冒険者達は罠を張り、熊を迎え撃つ作戦をとる事にした。
「ワシも村の代表として、微力ながらお手伝いしますぞ!」
やけに張り切っている村長。
「やんちゃな御爺ちゃんだこと。ねぇ、村長さん? あっちの方も盛んなのかしら?」
村長に寄り添うようにする武道家の翼天翔(ea6954)。勿論、お目付のためであるが、
「当然ぢゃ!」
妙なポーズをとって誇示する村長。
「村長さん、あなたは村を体で例えると頭です。頭に何かあったら体はどうなるか考えてみてください」
村長を説得するエリス。
「ワシが行かねば、村の者に示しがつきませんわい。これでも昔はならしたモンじゃて」
剣を構えてみせる村長。まるで様になっていない。
「うーん、『村長』の意思も『尊重』したいところだけど‥‥」
オヤジギャグを飛ばすリオン。
「おお、うまい事をいいますなぁ、かっかっか」
笑う村長であった。
言っても聞きそうにない村長に、冒険者達は罠を張る手伝いをしてもらって、戦いから気を逸らせようと試みた。
「罠を仕掛けるのに、食料を用意していただきたいのですよ。村長さんなら用意できますよね。あたし達には出来ないものですからよろしくお願いします」
微笑む明華に二つ返事でOKした村長は、食料を担いで罠の地点へとやってきた。
「何でも言って下され、お力になりますぞ!」
息を切らせながらも張り切る村長。
「熊用の落とし穴掘ります?」
明華が尋ねると、村長は嬉しそうに腕まくりをする。
「村長さん、あなたの腕の見せ所ですよ」
落とし穴を村長と一緒に掘るエリス。
やがて落とし穴が完成し、食料を置く。
「ぅく! なんて刺激臭っ。こんなもんで、ホントに来るのかなぁ、熊‥‥」
最後に『強烈な匂いの保存食』を設置するリオン。
「後は熊がやってきた所をやっつけるだけですな!」
村長は本気で一緒に戦うつもりのようだ。
「里に下りてくる熊は一匹だけとは限らないし、他にもどんな危険が村を襲うかわかりません。そんな時、一体あなた以外の誰がこの村を、そして子供達を守るのですか?
冒険者にはチームワークというものがあります。今ここで村長さんが僕達についてくるとなると、それらが全て無に帰してしまうのです。
村を守るということは、敵に対して剣を振るうことだけではありません。
村長さんにできて、僕達にはできないこと。
そう、村人を気遣い、落ち着かせて、不測の事態に備えることに尽力して下さい」
というギルスの説得に、
「むぅ、そうですなぁ‥‥」
ついに村長は折れて、村で待機することになった。
念のため、ギルスは村長についておく。
身を潜める冒険者達。
『強烈な匂いの保存食』に釣られて熊がやってくる。効果は抜群だったようだ。
「油断しないでいきましょう」
剣と盾を置き、身軽になると『オーラパワー』を発動させるナイトのルーウィン・ルクレール(ea1364)。
天翔も『オーラエリベイション』『オーラパワー』を発動させる。
「やっと欲しかったロングボウが買えたんだ♪」
ロングボウを構えるアシュレー。
村人と協力して、村長が勝手に動かないよう気を付けるギルス。時々、上空に舞い上がり、村の周囲を警戒している。
しかし、居ても立っても居られなくなった村長は、村人やギルスの制止を振り切って飛び出して行ってしまうのだった。
罠とも知らず、食料に飛びつく熊。
「GAaaッ!」
落とし穴にハマり、もがく。
「あなたは冬に備えて当たり前のことをしているだけなのでしょう。しかし、他者の縄張りに入ればどうなるか、知らないわけではないでしょう?」
その熊に射撃するエリス。
そこへ。
「助太刀に参ったぞ〜」
しがみついて止めようとするギルスをそのままに駆けてくる村長。
「やれやれ‥‥困った人だわね。ま、老いた後の楽しみが少ないから仕方が無いとは思うけどね。後でストレス発散させてあげますか」
などと苦笑する天翔。
「暴走されないうちに倒さなければ‥‥」
熊を、そしては村長をチラリと見遣るルーウィン。
「村のために命を賭ける。素晴らしいことです。しかし、あなたに何かあったら村はどうなるか考えてください」
はやる村長に説得を続けるエリス。しかし、
「ワシも負けてはおれん!」
剣を抜き、熊に躍りかかろうとする村長!
「こうなれば最後の手です」
『コアギュレイト』の詠唱を始めるエリス。だが、
グキッ!
「あたたた‥‥こ、腰が‥‥」
腰を押さえてうずくまる村長。
「退治したいという気持ちはわかるが、ここであんたが死んだら、たくさんの人が悲しむと思うぞ。ここは俺達に任せておけばいいんだ」
村長を庇うように立つナイトのアッシュ・クライン(ea3102)。
「無理しちゃダメよ、村長さん。‥‥後で私が夜の御相手をしてあげるわ。だ・か・ら、ちょっと退いててね♪」
そう言って村長を下がらせる天翔。
暴れ出す熊と対峙する冒険者達。
「ここまで重いと『ソニックブーム』は使えないか‥‥だが!」
ラージクレイモアを構えるアッシュ。
予め握っておいた砂を投げつけるリオン。目つぶし効果を狙ったものだ。
「GAaaaッ!!」
滅茶苦茶に爪を振るう熊。
『オフシフト』で爪を避けるリオン。
「‥‥そこだ」
間髪いれず、熊の脇を剣で突く。その口調は冷たい。
「この烈空の刃‥‥受けられるものなら受けてみろ!」
アッシュのラージクレイモアが一閃! その破壊力は絶大だ。そして反撃を刀身全体で受け止める。
「李家の槍術を見せてあげますね」
立ち上がって爪を振るう熊に、トライデントの柄を使って『トリッピング』を仕掛ける明華。
「じゃあ、さっそく獲物の第一号になってもらうよ」
アシュレーの『シューティングPAEX』で放たれた矢が見事、眉間に突き刺さる!
同時に、体勢を崩した熊に『ダブルアタック』を仕掛ける明華。
「一度戦った敵に、これ以上手こずる訳にはいかないんだ!」
更にラージクレイモアを叩き込むアッシュ。
「GUoooooーッ!」
断末魔。倒れ伏す熊。
「これで、どうです」
貫いた剣を引き抜くルーウィン。
「人々の心の平和のため、お前を殺した。だけど、お前の死は無駄にしない」
真顔で告げるリオン。
「皆さんお怪我はありませんか? 武道家としては素手での戦いも魅力でしたかね」
特に村長を気遣う明華。
冒険者達も無傷とは行かなかったが、
「あらあら、いけませんねー。もっと注意しないと駄目ですよ」
仲間達を『リカバー』で癒すエリス。ギルスも手伝っている。
「お主の先ほどの射撃、まるで閃光のようじゃ。スゴイのぅ」
村長がアシュレーを誉める。余程、印象に残ったのだろうか。
「あはは、そうかな?」
満更でもないという風のアシュレー。
「お主の剣も凄かったのぅ。ワシも十年若ければ、それを振るって大暴れしてやったんじゃが」
アッシュの剣を見ながら村長。無理だと思うが。
「と、いうわけで! 村の人達に熊肉料理をご馳走だ! おーい、誰か、コイツ搬送するから手伝って〜♪」
いつものギャグノリに戻っているリオン。
「あたしの国では熊の手の料理があるんですよ、調理法は流石にわかりませんけどね」
熊を運ぶのを手伝う明華。
熊を倒して戻った冷や水村長と冒険者達は、村人達に拍手喝采で迎えられた。
村人達には熊肉を使った料理が振る舞われ、毛皮なども村で加工され、一片たりとも無駄にされる事はないだろう。
翌朝、村長に見送られ、帰路に着く冒険者達。
「達者でな‥‥☆」
何やら村長が天翔に送る視線が熱い。どうやら、約束は果たされたらしい。
「御爺ちゃんもお元気でね♪」
手を振る天翔。
「ワシと皆の熊退治談、子々孫々まで語り継ぎますぞ!」
皆に手を振る村長。
「神様はいつでも、あなたとこの村をじ〜っと見守っていますからね、じ〜っと」
村長にニッコリ笑いかけるギルス。
そうして依頼を達成し、キャメロットへと帰還した冒険者達。
熊肉の弁当で一日分の食料が浮いた事も記しておこう。
今度はどのような冒険が待っているのだろうか。いずれ彼らが英雄と呼ばれる日が来ることを願っている。