演劇『アーサー王と円卓の騎士武勇伝』

■ショートシナリオ


担当:紅茶えす

対応レベル:フリーlv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月14日〜11月19日

リプレイ公開日:2004年11月16日

●オープニング

 ――ケンブリッジにも秋が訪れた。
 寒さ厳しく感じる11月。自然とマジカルシードのイベントは室内中心へ移行する。
 今月開催されるイベントは『演劇』だ。呪文を記憶する能力を高める為にも、マジカルシードでは演劇を披露する決まりとなっているのである。
 題目と参加は自由。但し、限られた人数で行い、僅か5日間の相談で配役を決定し、5日間の練習の末、物語を紡がなくてはならない。
 ――演劇参加者募集。詳しくは担当まで☆
 そんな依頼がクエストリガーの壁に貼られ始めていた。

『マジカルシード演劇披露にて、『アーサー王と円卓の騎士武勇伝』をやります。
 そこで先輩冒険者の皆様にも協力をお願いします。
 1.人数不足で配役が揃っていません。役者として出演して下さいませんか? 台本も作成中で、カッコイイ台詞を一緒に考えていただけると嬉しいです。
 2.魔法効果による演出を手伝ってくださいませんか? ボク達も少しは魔法が使えるので、演出効果の指導などもしていただけると嬉しいです。
 アーサー王役担当ケヴィン』

 依頼を貼ったケヴィンは、なかなか精悍な顔立ちの少年だった。

●今回の参加者

 ea2128 ミルク・カルーア(31歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea4675 ミカエル・クライム(28歳・♀・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 ea8375 エリック・マツタニ(24歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea8397 ハイラーン・アズリード(39歳・♂・ファイター・ジャイアント・モンゴル王国)

●リプレイ本文

 慌ただしく、演劇披露の準備が行われているマジカルシード。
 そんな中、冒険者達の協力を得た『アーサー王と円卓の騎士武勇伝』も着々と準備を進めていた。
「知り合いのティオを訪ねてケンブリッジまで来たはいいが‥‥行き違いだったようでな」
 こうしてギルドで見かけたこの依頼を受けてみることにしたファイターのハイラーン・アズリード(ea8397)。肩にかかるくらいの髪を後ろでひとつに結んでいる。量は少なめで、ややぼさぼさっとした印象を受ける。
「僕は劇と言うものを一度やってみたかったのです」
 そう挨拶するレンジャーのエリック・マツタニ(ea8375)。
「みなさん、集まって頂いて有り難う御座います」
 アーサー王役を担当するケヴィンが冒険者達を歓迎する。
「イギリスにきてまだ日が浅い。実は円卓の騎士等、よく知らんのだ」
 ハイラーンに尋ねられ、演劇のあらすじを話すケヴィンであった。

 そして、配役や台詞回し、練り込みを相談していく。
「悪役かぁ‥‥天使の名を受け継いでるんだけどな〜。まぁ、お芝居だし、頑張っていくわよ〜♪」
 敵役『炎熱の女帝』の異名を持つ魔法使いミルファ役を担当するウィザードのミカエル・クライム(ea4675)。先輩として魔法演出の指導をする彼女は、役柄とは裏腹にとても優しい。
「女装するのが好きだから、村娘役をやりたいですねぇ‥‥いえ、男の子が好きと言うのでは無いですよ、女の子が好きですよ」
 微妙な訂正を入れるエリック。願い通り、さらわれる村娘ホリィの役を担当することになった。
「俺が出来そうな役はこれくらいだしさ。だが割り振られた役はちゃんとこなすぜ?」
 円卓の騎士ガウェイン役を担当する事になったハイラーン。
 そして、湖の騎士ラーンス・ロット役を担当する事になったのは、ナイトのミルク・カルーア(ea2128)。演劇とはいえイギリスナイトの憧れである円卓の騎士を演じる事に、気合いを入っている様子。
 美しい容姿で評判のラ―ンス・ロットを女性が演じるのは、案外ハマッているかもしれない。
「実は‥‥という展開は‥‥」
「それは面白いですね‥‥!」
 何やらケヴィンと熱心に相談をしているミルク。
 一方では、
「台本憶えるのは苦手だがアドリブならまかせてくれ!」
 豪快に笑うハイラーン。考えるより、行動するタイプのようだ。裏方として力仕事を手伝っている姿や、
「僕、洋服も作れるの、自分の衣装は自分で作って良いよね」
 衣装作りを手伝うエリックの姿がみえる。
「わぁ、器用なんですねぇ」
 衣装係の生徒に感心されている。エリックは家事全般を得意としていた。
「騎士様より目立つといけないから、地味めにつくるわね」
 自分用には敢えて質素な衣装を作るエリックであった。

 慌ただしく日は流れ、演劇披露当日。
 『アーサー王と円卓の騎士武勇伝』の始まり始まり〜。
「世界は全て私の物よ。さあ、生贄を差し出しなさい。さもなければ‥‥!」
 とある村に、モンスターを引き連れて村に現れたのは『炎熱の女帝』ミルファ=ミカエル。
 炎の魔法とモンスターを操り、極悪非道の限りを尽くす!
 これは『ファイヤーコントロール』による演出で、舞台に燃え移らないよう細心の注意を払っている。

 場面は変わって、アーサー王一行。
「あれは‥‥もしや火事か?」
 いち早く気付いたのは湖の騎士ラーンス=ミルク。これから視察に向かう村の方に火の手が見える。
「私が一足先に様子を見てきます!」
 いきなり駆け出したのは円卓の騎士ガウェイン=ハイラーンであった。

 再び、場面は村。
 そこへ登場したのは、
「村が燃えてる‥‥お父さん、お母さん!?」
 お遣い帰りの村娘ホリィ=エリック。
「ふふ、ちょうどいい娘が居たわね。捕らえるのよ!」
 モンスターに命じてホリィ=エリックを連れ去ろうとするミルファ=ミカエル。
「あれ〜誰か助けて〜!」
 ホリィ=エリックの叫びと同時に舞台に登場したのは!
「我が名は円卓の騎士ガウェイン! モンスターめ! その娘を放せ!」
 円卓の騎士ガウェイン=ハイラーンである。
「ふふふっ、この娘は『炎熱の女帝』ミルファがいただいていく。命が惜しくなければ、我が城へと来るがよかろう!」
「ああ、騎士様〜‥‥」
 モンスターとホリィ=エリックを連れて舞台から消えていくミルファ=ミカエル。

 そして、アーサー王一行が駆けつける。
「なんと酷いことを。ガウェイン、いったい何があったのだ?」
 尋ねるアーサー王に、ガウェイン=ハイラーンと村長役の生徒が状況を説明する。
「『炎熱の女帝』ミルファと名乗る者、どうやら若さと美貌を保つために、美しい娘達をさらって生贄にしているとの噂があるようです。王よ、一刻も早く助けに向かいましょう!」
 ガウェイン=ハイラーンの言葉に、アーサー王は救出を決意するのだった。

 『炎熱の女帝』の城へと向かうアーサー王一行の前には、数々の試練が待ち受けていた。
 突如、襲いかかってくる森の植物達。
 幻によって、堂々巡りをさせられる罠。
 これらはミカエル指導の元、生徒達による魔法演出によって成されていった。
 そして、それらの試練を見事撃ち破り、アーサー王一行は『炎熱の女帝』の城へと到達したのだった。

 一気に劇もクライマックス!
 台座に据えられたホリィ=エリックは気を失っている様子。
「ふふっ‥‥身も心も捧げるのよ‥‥私の糧となるのだからありがたいと思いなさい」
 怪しげな儀式を続けるミルファ=ミカエル。
 そこへアーサー王一行が雪崩れ込んでくる!
「『炎熱の女帝』ミルファとは貴様か! 我こそはイギリス国王アーサー! 円卓の騎士と共に、貴様を成敗する!」
 聖剣エクスカリバーを掲げるアーサー王。
「アーサー王自らお出ましとは恐れ入る。だけど世界は全て私の物。私の強さと美貌は永遠に不滅よ‥‥!」
 ミルファ=ミカエルの言葉に呼応するようにモンスター達が出現する。
 『炎熱の女帝』率いるモンスター軍団とアーサー王一行の決戦だ!
 モンスターを次々に打ち倒していく円卓の騎士達。
 だが、『炎熱の女帝』の魔法によって火だるまと化したモンスターの突進がアーサー王に迫る!
「アーサー王!」
 アーサー王の前に飛び出したのはラーンス=ミルクだった。
 見事にモンスターを切り伏せるが、その爪はラーンス=ミルクを捉えていた。
 その一撃によって、細工をしておいた鎧が割れ、服の上からでも女性とわかる胸元が露わになる。
 そう、彼女は男装の騎士だったのである。
「御無事で何よりです‥‥」
 アーサー王を振り返り、頬を染めるラーンス=ミルク。雰囲気だけで、密かに彼女がアーサー王を慕っていた事を表現する。
 一瞬ざわめいた観衆が息を呑んで見守る。
 問おうとするアーサー王に背を向けたラーンス=ミルクは、先陣を切ってモンスターを切り伏せ、道を切り開く!
「今です! 王よ!!」
 ラーンス=ミルクに呼応し、エクスカリバーを構え突進するアーサー王。
「私の力、身を持って味わうがいい!」
 炎の魔法を解き放つミルファ=ミカエル!
「エクスカリバーよ、我に力を!」
 一振りで炎を切り裂いたアーサー王。そして、ミルファ=ミカエルの胸をエクスカリバーが貫く!
「世界は全て‥‥私の物‥‥よ‥‥」
 灰になって崩れ去るミルファ=ミカエル。
 『アッシュエージェンシー』を使った見事な演出に感嘆の声があがる。

 こうして『炎熱の女帝』は倒れた。
「お嬢さん、お怪我はありませんか?」
 ホリィ=エリックを解放するガウェイン=ハイラーン。
「有難う御座います、貴方は命の恩人、何とお礼を言って良いか解りません、本当に有難う御座いました」
 彼に何度も礼を言うホリィ=エリック。
 見つめ合う二人。それはただの憧れか、はたまた恋の始まりか。
「さあ、村までお送りいたします」
 一足先に、彼女の手を引いて、舞台をおりるガウェイン=ハイラーン。

 残されたのはアーサー王とラーンス=ミルク。
「ラーンス・ロットよ」
 尋ねようとするアーサー王の言葉を遮り、
「私は王を慕う女性ではなく、王を守護する剣であり盾であることを選んだ、ただの騎士です」
 顔を見せないよう、膝を突き臣下の礼を取ったままのラーンス=ミルク。
「そうか」
 とだけ答えるアーサー王。
 そして帰ろうと背を向け、
「これからも頼むぞ」
 そう声を掛ける。
「はい」
 ラーンス=ミルクは笑顔で後に続くのだった。
 こうして、演劇『アーサー王と円卓の騎士武勇伝』は拍手喝采を受けて幕を閉じた。
 いずれ彼らが円卓の騎士に負けない真の英雄と呼ばれる日が来ることを願っている。