ハリキリ騎士様

■ショートシナリオ


担当:紅茶えす

対応レベル:3〜7lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 46 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月21日〜11月28日

リプレイ公開日:2004年11月23日

●オープニング

 ここは冒険者ギルド。
 冒険者達が仕事の斡旋を求めて集う場所である。
「仕事の斡旋か? 彼の依頼を受けてくれないか?」
 いつものように冒険者ギルドのおやっさんが依頼人を紹介する。
「僕はハワード。共に魔物退治に行く冒険者を探しているのだ」
 依頼人はヘビーアーマーに身を包んだ完全武装の騎士だった。歳は十代後半といったところだろうか。
「実は僕の父が領主をしている村付近の洞窟に魔物の群れが住み着いてしまったらしく、僕が退治を買ってでたのさ。僕も剣の腕には自信があるけど、一人で魔物退治に行くほど傲慢じゃない。そこで共に戦ってくれる冒険者を求めてキャメロットへとやってきたのさ」
 そう語るハワード。
「報酬バッチリ、道中の食料も騎士様持ちの美味しい仕事だぞ」
 おやっさんが付け加える。
「それから、僕は吟遊の心得もあるのさ。見事魔物を退治した暁には、僕達の活躍を歌にして語り継ぐ事を約束するよ。さあ、共に魔物退治に行こう!」
 こうして、騎士ハワードと冒険者達は魔物退治へと出発したのだった。

●今回の参加者

 ea0424 カシム・ヴォルフィード(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea0579 銀 零雨(32歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea0850 双海 涼(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea1749 夜桜 翠漣(32歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea2929 大隈 えれーな(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea3970 ボルジャー・タックワイズ(37歳・♂・ファイター・パラ・ビザンチン帝国)
 ea5678 クリオ・スパリュダース(36歳・♀・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea7487 ガイン・ハイリロード(30歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

 依頼を受けた冒険者パーティ恒例の挨拶を交わし、信頼を築く冒険者達。
「『深き森』所属、武術家の夜桜翠漣です。よろしくお願いします」
 礼儀正しく、武道家の夜桜翠漣(ea1749)。
「こんにちわ☆ メイド忍者の大隅えれーなです。道中のお世話はお任せです」
 家事を得意とする忍者の大隈えれーな(ea2929)。
「美しいレディの方々に同行してもらえて、道中が華やぐというものさ♪」
 女性陣の手に口付けしていくハワード。
「‥‥男だよ僕は」
 平静を装いつつ、ウィザードのカシム・ヴォルフィード(ea0424)。毎度の如く女性に間違われているようだ。手を取られるも口付けは回避するのだった。

 そして、すぐに出発する冒険者達。
「今度の相手は魔物がいっぱい〜。パラの戦士はどんな敵でもやっつける〜♪」
 鼻歌を口ずさみつつ、御機嫌なファイターのボルジャー・タックワイズ(ea3970)。
「自分も歌はともかく多少楽器の心得があって‥‥冒険を歌にですか‥‥やはり勇ましい選曲が良いですかねえ?」
 リュートベイルを手にナイトのガイン・ハイリロード(ea7487)。
「もちろんさ。せっかくだから、何か弾いてくれるかい?」
 楽しそうに言うハワードに、演奏を始めるガイン。
「そういえば、詩を作るのが得意と聞きました。今までの冒険のこととか聞かせてもらえませんか?」
 ハワードに尋ねる翠漣。
「何を言っているんだい? 直接魔物退治をするのは初めてさ。まあ僕の腕なら大丈夫」
「では、現地の状況や魔物に関する情報は‥‥?」
 続いて尋ねるナイトのクリオ・スパリュダース(ea5678)。
「村は魔物の脅威にさらされている。それを僕達が退治する。簡単な事さ」
 自信満々に言う彼に、一抹の不安を覚える冒険者達。
(「ハワードか、まあ、なんというか、初々しいねえ‥‥俺にもあんな頃あったっけ‥‥」)
 遠い目をするガイン。
「忍者の対極にいるヒト、みたいですね‥‥止めませんけど」
 呟くように忍者の双海涼(ea0850)。
「‥‥」
 自然とハワードを護衛するように動き始める武道家の銀零雨(ea0579)であった。

 多少の不安はあるものの、目的地までは何事も無く到着することができた。
「話では、この先に魔物の群れが住み着いてる洞窟があるはずさ」
 剣の柄に手を掛けながらズンズン進むハワード。
 茂みから、洞窟が見える。
 その入り口には、見張りと思しきモンスターの姿があった。幸運な事に見張りは居眠りをしているようだ。
「初めてだ、ゴブリン。もう随分冒険したけど‥‥」
 魔物の正体が解って少し安心するクリオ。
(「ハワードさん張り切っているようだけど、それが裏目に出ないいいけど‥‥」)
 カシムが『ブレスセンサー』を発動させ、洞窟内に潜んでいる魔物の数を確かめようとした矢先。
「我こそは騎士ハワード! 村人を困らせる魔物ども! 覚悟しろ!」
 剣を抜いて飛び出していってしまった!
「ゴブ!?」
 居眠りしていたゴブリンも、その大声に目を覚ます!
 まずはこっそり見張りを倒してから‥‥という常識的な冒険者達の作戦は見事に瓦解した。
「これは予想できたはずだった」
 天を仰いでから矢を射るクリオ。直接当てるより、洞窟の入口の間に撃ち、ひるませて接敵の時間を作る狙いである。
 ハワードの動きに注意して張り付いていた零雨が『トリッピング』で見張りのゴブリンを転倒させる。さりげなく花を持たせようというのだ。
「今だ!」
 へっぴり腰だが、ハワードの剣はゴブリンを捉えていた。

 なんとか見張りを倒したものの、すぐに騒ぎに気付いたゴブリン達がわらわらと洞窟から出現する。罠を張る暇も有りはしなかった。
 すぐさま『オーラエリベイション』を掛けて射撃で対応するクリオ。
「あんまりハリキリ過ぎると空回りしちゃうよ?」
「フッ、何匹居ても同じ事さ。皆で力を合わせてやっつけよう!」
 諫めようとするカシムだが、聞き入れる様子のないハワード。見張りを倒した事で、彼の自信過剰に火がついていた。
「接近戦は不向きだから敵が近づかないように守ってくれませんか」
 そう言ってハワードを呼び戻そうとするカシムの言葉も彼には届かないようだった。
 ゴブリンの群れに真っ向から突っ込んでいくハワード。
「「「ゴブ!?」」」
 一瞬、気迫に押され掛けたゴブリン達だが、突っ込んできた彼を取り囲んで袋叩きにし始める。
(「この際、好きなだけ目立ってください」)
 涼に目配せするえれーな。
「ぼ、僕の父は領主なんだぞ! 助けてパパ〜ッ!」
「「「ゴブーっ!!」」」
 何やら情けないハワードの声は群がるゴブリン達の声にかき消された。ヘビーアーマーのおかげか、致命傷を受けたりはしていないようだが‥‥。
 そこへ、涼の『春花の術』が発動する!
「‥‥おやすみなさい。活躍は夢の中でお願いしますね」
 一斉に倒れ、眠ってしまうゴブリン達。それはハワードも例外ではなかった。
「まあ、実戦なんてそんなもんだ。‥‥ここからが本当の冒険者の戦い方って奴だ」
 眠っているハワードを後方に引きずっていくガイン。
 眠っているゴブリンに気付かれないよう忍者刀でトドメを刺していくえれーな。

 大きく数を減らしたとは言え、まだまだたくさん居るゴブリン達と相対する冒険者達。
「ゴブリンなんかに、おいらがやられると思うなよ!!」
 勇敢に戦うボルジャー。彼の回避術を持ってすれば、ゴブリンの攻撃などカスリもしない。
「わたしは貴方達の生き方を否定する気はありません。貴方達を殺害する事を正当化するつもりもありません。これは、わたしの我侭です」
 そう宣言してから、ゴブリン達に立ち向かっていく翠漣。動きを止めないようにし、さらに仲間と孤立しないよう位置にも気を配っている。
「‥‥ウインドスラッシュ!」
 後方から真空の刃で遠距離攻撃するカシム。
 日本刀を手に『トリッピング』を織り交ぜつつゴブリンを切り伏せていく零雨。
 ダーツを主体に、中距離からちくちくと援護している涼。前衛をすり抜けたゴブリンが後衛に近づかないよう注意している。
「さて、報酬分は働きますかね‥‥我が呼ぶは撃ち貫く光!!」
 『オーラショット』で仲間を援護するガイン。
「ゴブーッ!」
 次々に倒れていくゴブリンの中、リーダーと思われるゴブリン戦士が指揮をしつつ果敢に戦いを挑んでくる!
「ゴブリンの戦士が強いかパラの戦士が強いか勝負だ!!」
 ゴブリン戦士と対峙するボルジャー。回避術を駆使し、ラージハンマー二連撃を叩き込む!
 矢を撃ち尽くしたクリオも日本刀に持ち替えて『オーラパワー』『オーラボディ』を掛け、接近戦に雪崩れ込んでいく。
「八卦掌!」
 螺旋の動きで体の捻りを使い『オーラパワー』を掛けた龍叱爪を叩き込んでいく翠漣。
 そして。
 大きなダメージを受けることもなく、冒険者達は見事な連携によってゴブリンの群れを殲滅することに成功した。
「見たかい、僕の大活躍を‥‥むにゃむにゃ」
 そんな中、ハワードは自分が大活躍する夢を見ていたのだった。

「パッラッパパッパ! おいらはパラっさ!!
 パラッパパラッパ! おいらはファイター!!」
 勝利を喜び、今日も元気に歌って踊るボルジャー。へたっぴぃなのも相変わらずだ。
 そして、揺り起こされたハワードが全滅したゴブリンを見て呆けている。
「覚えてないんですか? 敵を全滅させると同時に気絶してしまったんですよ?」
 気を遣って、そう言ってやる翠漣。すると、
「あっはっは、そ、そうさ。いやぁ、激戦だったけど、僕達が力を合わせれば当然の結果さ! あいたたた‥‥っ」
 一気に自信を取り戻して大笑いするハワード。そして、ゴブリンにやられた傷が痛む。
「大丈夫ですか?」
 うずくまりそうになったハワードを支える零雨。
 手当てをしながら、傷の具合を確認する涼。どうやら、重装備のおかげで大した事は無さそうだ。
「ほら、ポーション飲みな。今回で学んだ事は多かったろう?」
 そう言ってリカバーポーションを渡すガイン。そして、一曲爪弾き始める。
「ありがとう。名誉の負傷と言ったところさ」
 それを飲み干すハワード。
「他にポーションの必要な人は居ないね?」
 仲間達を見渡すカシムに頷く仲間達。
「ところで、歌での私達の描写、良くしてくれますよね?」
 何やら含みのある言い方をするえれーな。
「たかがゴブリンで自慢のように思われたくないな」
 まだ使える矢を回収し終えたクリオが涼しい顔で言う。
「まあ、僕に任せておきなよ。悪いようにはしないって!」
 自信満々に胸を叩くハワードであった。

 その後、村では騎士ハワードと冒険者達の賛歌が語られるようになったが、その内容は『ハワードの大活躍とそれを支える冒険者達』だったそうである。ハワード自身は随分美化されていたようだが、冒険者達も恥じるような内容では無かったのはせめてもの救いだろう。
 いずれ彼らが英雄と呼ばれる日が来ることを願っている。