迷宮入り口整備工事

■ショートシナリオ


担当:紅茶えす

対応レベル:4〜8lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 3 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月22日〜12月31日

リプレイ公開日:2004年12月23日

●オープニング

 ここは冒険者ギルド。
 冒険者達が仕事の斡旋を求めて集う場所である。
「仕事の斡旋か? 紅茶男爵様からの依頼があるぞ」
 いつものように冒険者ギルドのおやっさんが依頼書を見せる。

『ギルフォード男爵家本邸に地下迷宮への入り口が発見されました。
 男爵様は、この地下迷宮を全ての冒険者達に開放し、調査を進めようとお考えです。
 元々、地震によって発生した亀裂から発見された入り口故、現在、出入りが不便で警備にも支障を来しているのです。
 そこで、入り口の整備工事補助と警備を兼任できる冒険者を募集致します。
 依頼期間は五日間(移動日を含む依頼期間は九日間)となります。
 また、依頼期間内に『聖夜祭』を迎えます。冒険者の皆様のための『聖夜祭』の準備をするよう仰せつかっておりますので、お楽しみ頂ければ幸いで御座います。残念ながら男爵様は、キャメロットでの『聖夜祭』に出席されるため不在となります。
 ギルフォード男爵家執事』

「ギルフォードは、キャメロットから南西二日ほどの街だな。男爵家の『聖夜祭』か、男爵様が不在でもさぞかし御馳走が出るんだろうなぁ‥‥っと」
 零れそうになったヨダレを慌てて拭うおやっさん。
「あくまでも整備工事補助と警備の依頼だから、そこのところを忘れないように! 向こうでの五日間の寝食は保証されてるから、往復四日分の食料は自前で用意しとけよ」
 こうして、新たな依頼を受けた冒険者達であった。

●今回の参加者

 ea0396 レイナ・フォルスター(32歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea0664 ゼファー・ハノーヴァー(35歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1458 リオン・ラーディナス(31歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea2307 キット・ファゼータ(22歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea3075 クリムゾン・コスタクルス(27歳・♀・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea3991 閃我 絶狼(33歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4137 アクテ・シュラウヴェル(26歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea6609 獅臥 柳明(47歳・♂・志士・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

 恒例の挨拶を交わす冒険者達。
「『深き森』の獅臥柳明です、この度みなさんとご一緒させてもらうことになりました、よろしくお願いします」
「柳明殿、お互い『深き森』の一員とは言え、こうしてお会いするのは初めてになるかな。ゼファー・ハノーヴァーという。以後、よろしくお願いする」
 丁寧に挨拶する志士の獅臥柳明(ea6609)と、レンジャーのゼファー・ハノーヴァー(ea0664)。
「ゼファーさん、支部で良く話を交えますが一緒の依頼は初めてですね、よろしく」
 握手をかわす二人。
「今回の依頼ってよぉ、ご馳走が出る上に報酬も高いんだろ? こりゃおいしすぎる話だぜ、ハッハッハッハ!」
 豪快に笑うファイターのクリムゾン・コスタクルス(ea3075)であった。

 ギルフォードの男爵家へとやってきた冒険者達。
「迷宮の地図があると知り合いに聞いた事があるのですけど」
「御座います。必要であればお持ちいたしましょう」
 執事に頼んで地図を借りておくファイターのレイナ・フォルスター(ea0396)。入り口付近の構造が分かれば警備もしやすいだろう。
 迷宮入り口には作業員が集まり、整備工事が始まろうとしていた。
「ふうむ、迷宮その物を冒険者に開放してくれるとは、大胆な人だな、ギルフォード男爵は‥‥仕事自体は地味だが重要な依頼かもしれんな」
 志士の閃我絶狼(ea3991)が呟く。
「いやー、これは深そうだ。『迷』宮だけに、『滅入』っちゃいそうだゼ」
「それは苦しいだろ」
 地割れのような入り口を覗くファイターのリオン・ラーディナス(ea1458)に、ツッコミ入れるファイターのキット・ファゼータ(ea2307)。
「アンタ、もしかして最近噂のギル‥‥?」
「えぇ!? 僕似てる? やったぁ!」
 作業員のおっちゃんに言われて、棒読みな答えを返すキット。ヒーローも大変である。
「やれることがあれば手伝ます」
 現場責任者にそう言っておく柳明。
「頼りにしてるぞ。人手は多いに越した事ねぇからな」
「整備工事はどの辺りまで?」
 ウィザードのアクテ・シュラウヴェル(ea4137)が尋ねる。
「この地割れを削って、通りやすいように階段を作る。後は近くに管理小屋を建てるくらいだな。迷宮の中には手を着けなくても、しっかりした造りになってるって話だ」

 迷宮へ入ってすぐの部屋に駐屯する待機組と、通路の少し先までを巡回する先行組に別れる。
「魔法を皆様にかける以外は何も出来ないので‥‥」
 リオンからランタンを預かって灯り持ちを担当するアクテ。魔法支援も重要な役割である。
 警戒しつつ先頭を進むレイナとキット。巡回地点には簡単な罠や鳴子を仕掛けておく。リオン、クリムゾン、アクテが続く。彼らが先行組である。

 迷宮の入り口に残り、警備するゼファー、絶狼、柳明。
「ちょいとそこを押さえててくれるかい?」
「これでいいのか?」
 力仕事に向かないゼファーには工事で手伝える事は少ないが、出来る範囲で手伝っている。
「‥‥戦士としては乏しい体力を鍛えるにも良いかもしれんしな」
 積極的に手伝っている絶狼。周囲は常に警戒している。
「おう、ありがとよ!」
 冒険者達の手助けもあって、工事も順調にスタートしているようである。

 先行組も定期的な巡回を繰り返している。
「な〜んか‥‥お宝の一つや二つ眠ってそうな感じねぇ‥‥レイスとか斬ったり出来る武器でも眠ってないかしら?」
 ある程度の気構えを保ちつつ、仲間達と雑談するレイナ。
「是非そんな武器が見たいです。‥‥まぁ、これは。何て素敵なんでしょう‥‥」
 相槌を打ったアクテが、すでに無力化されている仕掛けを見つけて、見入っている。
「聖夜祭、今から楽しみだなぁ」
 こちらはリオン。雑談の話題も自然と聖夜祭関連の話で盛り上がっていったのだった。

 時は流れ。
 ゴブリンズゥンビが数匹出現したが、特に苦戦することなく殲滅する事に成功している。
 そして、聖夜祭を迎えた。
「今年は聖夜祭も冒険か。まあ、一緒に過ごす相手もいないのだし、関係ないといえば関係ないのだが‥‥」
 呟くゼファー。
「‥‥ところで、『せいやさい』ってなんだ?」
 リオンに尋ねる絶狼。
「聖なる野菜で『聖野菜』を食べる日なんだ!」
「んなアホな」
 そんなリオンにキットがツッコミを入れている。
「皆様、御苦労様で御座います。本日は『聖夜祭』、ごゆっくりお楽しみ下さいませ」
 執事の言葉に召使い達が、ガチョウの丸焼き、ドライフルーツや肉類・野菜類を詰め込んだパンケーキやプティングなどを運んでくる。
「こちらは男爵様が今日のためにノルマンより輸入したワインで御座います」
 ワインを注いでいく執事。ブドウが採れないイギリスでは、ワインをノルマンから輸入しているため高価なのである。酒の飲めない者には、ミルクなどが振る舞われる。
「ぉおッ、これは華やか!」
「さすが男爵家ですわね‥‥!」
 御馳走を誉めるリオンとアクテ。紅茶男爵当人が不在なため招待客はなく、冒険者達と作業員達だけの聖夜祭である。貴婦人との出会いに期待していたリオンには少し残念か。
「‥‥ふむ、詳しい事は判らんが、この時期にやるパーティーの事を『せいやさい』と言うようだな」
 御相伴にあずかる絶狼。
「いや、本来よりも食事の質が上な分、返って良かったかもしれんな」
 早速、御馳走を堪能するゼファー。
「俺の知ってる礼儀作法はおそらくジャパンの物だと思うが、このパーティーでは役に立たんかな?」
 武士の作法で対応する絶狼。礼儀正しくしていれば問題は無いだろう。
 談笑し、交流を深めていく冒険者達。
「ホント、最高に美味いね! ハッハッハ!」
 ひたすら食べまくりの飲みまくりのクリムゾン。お酒は飲んでいないのにこのテンションである。
「人生楽しんだ者勝ちってね♪」
 話に花を咲かせ、御馳走を堪能するレイナ。
「うむ、流石に美味い物が揃ってるな‥‥土産に多少包んで貰えないかな?」
 同じく御馳走を堪能している絶狼。残念ながらお持ち帰りはできない。
「でも、こちらにはもっと華やかな‥‥。この聖夜祭、もし相手がいないのなら、このオレが‥‥」
「‥‥あの、何か?」
 アクテをナンパしてみるリオンだが、あっさりかわされている。
「ぅく、来年こそは、彼女をば‥‥」
 順調に連敗記録を伸ばしたリオン、20歳の聖夜祭であった。

「やはり、ツリーがあると、聖夜祭らしくて良いものだな。これで後は、雪でも降ってくれれば言う事はないのだが」
 ワインを傾けつつ、飾り付けされたツリーを眺めるゼファー。
「ほほう、この妙に着飾った樹はツリーと言うのか‥‥どう言ういわれがあるのだろう?」
 ツリーを眺める絶狼に、再びリオンが、
「ここは男爵家だから綺麗に飾ってるが、庶民は野菜を‥‥」
「ってオイ! 嘘を教えるな!」
 リオンのボケに激しく裏拳ツッコミ入れるキットであった。
「今年も、もうすぐ終わりか‥‥」
 ゼファーの願いが届いたのか、チラチラと雪が降り始める。
「どこかで‥‥、この夜を迎えているのか」
 ひとしきり楽しんだ後、一人輪から外れて空を見上げるキットであった。

 楽しかった聖夜祭も終わり、冒険者達は再び、仕事に戻っていた。
「さてさて、怪しい空気になってきましたね。なにもなく過ぎてくれれば良いのですが‥‥」
 呟く柳明。工事の音に呼ばれるように何度かコボルトズゥンビなどが出現したが、それらは冒険者達によって排除されていた。

 その後の整備工事も順調で、連日騒がしかった工事の音も静かになりつつあった。
 そしてまた、複数の引きずるような足音が聞こえてくる。
 どうやらゴブリン戦士のズゥンビ化した者達らしい。数を考えれば強敵と言える。
「気付かれていないようだし、やり過ごせないかしら?」
 身構えつつ隠れて息を潜めるレイナ。
「「「Zu‥‥」」」
 再び、迷宮の奥へと向かうゴブリン戦士ズゥンビ達。
 そこへ、先ほどまで止んでいた入り口での工事の音が再び聞こえてくる! 気付かれた!
 戦闘体勢になる冒険者達。
 入り口に向かわせないように石などを投げて気を引き付けつつ接近戦を挑むレイナ、リオン、キット、クリムゾン。
「死者は迷宮にお帰りなさい!」
 『バーニングソード』で次々に仲間達の武器を強化していくアクテ。
 すぐに待機組も駆けつける。
「ローリンググラビティーは味方を撒きこみかねないしな‥‥工事も無駄になるだろうし」
 『クリスタルソード』を作る絶狼。
「嵐を司る雷帝よ、汝が力、我と共に‥‥雷帝法衣!」
 『ライトニングアーマー』を掛けておく柳明。
「ここまで来て邪魔はさせられないからな」
 スピアを投擲するゼファー。ロープを結び付けてあるため、うまく回収しながら立ち回る。格闘術の心得もあり、接近戦も可能だ。
(「‥‥崩れろ」)
 無口になったリオンは不恰好な二刀流で、ただひたすら相手を斬り伏せるように戦う。ズゥンビには、何か悪い思い出でもあるのだろうか。
「ドン臭ぇ野郎にはシルバーの切れ味を堪能させてやるよ!」
 小柄な体躯を活かし、壁際を移動して背後に回り挟撃するキット。
「あたいがやんなきゃ、誰がやる?」
 仲間達と連携し、側面からレイピアで攻撃するクリムゾン。
「こっちに出てこられちゃ困るのよ!」
 大きく振りかぶり『スマッシュ』でゴブリン戦士ズゥンビを叩き切るレイナ。
「私は、戦いというものはあまり好きではありませんが‥‥傷つく者を見るのは嫌ですからね、いきますよ!」
 中条流の鋭い突きでゴブリン戦士ズゥンビに見舞う柳明。
「テメェでこの技の試し斬りだ!」
 『カウンターアタック+オフシフト+ポイントアタック』のコンボで、見事に回避しつつ、急所を突く反撃を決めるキット!
「さて‥‥これ以上先に向かわせるわけにいかんのでな、大人しく黄泉路に帰ってもらおう!」
 『クリスタルソード』による『スマッシュ』を叩き込む絶狼!
 次々に崩れ去り、動かなくなっていくゴブリン戦士ズゥンビ達。そして、
「生物ごっこは、終いだ」
 何度もリオンに斬りつけられた最後のゴブリン戦士ズゥンビが崩れ去った。
「なにはともあれ、みなさん無事で良かったですね」
 仲間達を見遣る柳明。全員無事である。

 そして整備工事が完了した。
 ちょうど紅茶男爵も帰還し、自慢の紅茶を御馳走になってから冒険者達は帰路に着いたのだった。